緋弾のアリア――碧き守護者――   作:メルチェ

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第2話です。

アップした1話にもうお気に入りがついていて天まで舞い上がる思いです!



陸とアリアの関係が明らかになります。


では本編どうぞっ。


2、束縛プレイ!?

コンコン。

 

 

「どうぞー」

「失礼します」

 

 

 

きっちり一礼してから中に入る。

 

キンジ(一緒に逃亡している間に仲良くなり、お互いを名前で呼び合う事にした)と別れた俺が今入った部屋は、武偵高校が三大危険地帯の1つ・教務科。ここは教師(バケモノ)の巣窟だ。何が悲しくてこんなところに行かなければならないんだ、とも思うが仕方ない。俺は転校生であり、クラスが分からない転校生が教師のところを訪ねるのは普通だろう。俺だってここが普通の学校だったらこんなに緊張しないさ。

 

 

 

「今日は大変でしたね? 転校初日だったのに」

 

 

中に入るとすぐに眼鏡をかけ、髪を軽く巻いた優しそうな女の先生が出迎えてくれた。彼女は高天原(たかまがはら)ゆとり先生。探偵科の教諭でこの学校の『良心』とも呼べるような先生らしいが、この柔和な雰囲気と優しげな垂れ目にだまされてはいけない。さすがに俺もこの人の現役時代を実際に見たわけではないので情報だけだが、『血塗れの(ブラッディ)ゆとり』と呼ばれていた最強の傭兵だ。つまり、怒らせてはいけない。

 

 

 

「ええ、まあ」

「じゃあ桜田くんも来たことだし行きましょうか、神崎さん」

「久しぶりねぇ、陸……!」「げっ」

 

 

 

なにっ、なぜここでアリアとあってしまった!?

ごごご……! とアリアの後ろで火山が噴火しそうになっているのが分かる。笑っているのに目が笑っていないとか、そんな高等技術いつ身につけたんですか、アリアさん!? あまりに怖いので不自然にならない程度にソーッと距離をとることを試みる。が

 

 

 

「りーくー? どこに行こうっていうのかしら?」

「ヒィっ!」

 

 

失敗。アリアに気づかれてがっちりと腕を組まれてしまった。アリアの実家ではピンからキリまで何でもオッケーなバーリ・トゥード(縮めてバリツ)という格闘技が使われている。今は先生の目の前で派手に動けないからだろう。俺と腕を組んだまま肘の関節を外向きに外そうとしてくる。正直に感想を言おう。痛い痛い痛い痛い……!

関節が外されないようにだんだん体をアリアの背中に近づける様に回避しているが、それもそろそろ限界だ。完璧にアリアと背中がごっつんこしてしまっている。今から下手に動かすと逆に肘が粉砕される勢いだ。お主、なかなか……とかほめてる余裕もないよ。……はぁ。仕方がない。あの手を使うか。

 

 

「アリア」ゴリッ

「な、みゅっ!」

 

 

 

名前を呼んで意識を一瞬そらしたうちに、組まれていた右腕の肩の関節を強制的に脱臼させて腕を引き抜く。そのまま振り向いたアリアのおでこにちゅっ、とキスを落とした。アリアはどっきりにあった猫の様な声を出して目をつぶる。

 

 

 

「怒っているアリアも可愛いけど、笑っている方が可愛いよ?」

「ま、また、陸はうまいこと言って……。最後まで怒れないじゃない」

 

 

 

そして極めつけのこの一言。この方法をとると凶暴アリアちゃんはなりを潜め、急にしおらしくなる。いまだなぜかは分からないが、昔からこの方法はよく使ったものだ。ただしこれには『名前を呼ぶだけの隙を突くこと』『パーソナルスペースに入り込む』という条件がある。まず大前提としてアリアの気を自分からそらせなければ意味がない。今回は2つめが最初からクリアしていたため楽だったが、銃撃戦の中でやると骨が折れるんだな、これが。叫んでも聞こえないし、パーソナルスペースなんて入ろうモノなら撃ちまくられるし。それを何とかかいくぐって今の俺がいるわけですよ、はい。

 

 

 

「2人とも仲良しねぇ、もしかしてk」「知り合いです。旧知の仲です」

「あら、そうなの」

「はい、そうなんです!」

 

 

 

先生の勘違いを即座に否定して会話を打ち切る。ここの人たちって何ですぐに恋人だとかそう言う話に持ち込みたがるんだ。アリア火山が噴火寸前なんだからやめてほしい。ホントにやめてほしい。切実に俺のあらゆる関節が危ない。

 

 

 

「あなたたちのクラスはここ、2-A組よ。私が担任だからよろしくね」

「「よろしくお願いします」」

「じゃあ、中に入りましょうか」

 

 

 

先生とともに2人で教室に入る。知り合いも多く盛り上がっていた教室内はその瞬間シィ……ンと耳が痛くなるほどに静まりかえった。なんだ、そんなに転校生が珍しいか?それとも俺とアリアの髪型を見て「なんて対極的なのっ」とか思っているんだろうか。……いや、ないな。

教壇の横に立つと後ろの席の方にキンジが座っているのが見える。おお、同じクラスだったのか! おーい、キンジ! とアリアで落ち込んだ気分を手を振ることで持ち上げた。なんと言うかクラスに知り合いがいるのは助かる。だが、とうのキンジは苦笑いで手を挙げただけだった。なんか女子の皆さんの視線も突き刺さってるし、キンジってば意外と人気者なのか?

 

 

 

「女の子の方は皆さんも知っての通り、3学期に転校してきた神崎・H・アリアさん。男の子の方は今学期から入学することになった桜田陸くんです。皆さん仲良くしましょうね」

「「はーい!」」

 

 

 

待て待て、どこの小学校だここは。

すんでのところでガクッ、と言ってしまうのを押さえ何とか平常心を保とうとする。『バカの吹きだまり』という表現もそれほど間違っていないようだ。武偵高校では専門的な事を学ぶので一応一般教科(ノルマーレ)があるのだがこちらの偏差値は驚くほど低い。普通の高校だったら定員割れするレベルで低い。『武偵』高校としてはこの学校すごく上位らしいんだがな。

 

 

 

「先生、あたしはアイツの隣に座りたい。陸はあたしの後ろね?」

 

 

 

アリアは俺にきろ、とその赤紫色(カメリア)の瞳を向けながらそんな事を言った。クラスの生徒たちは一瞬絶句して、それから一斉にキンジと俺の間を視線を行ったり来たりさせて……わぁーっ! と歓声を上げた。ちなみに俺の意見は反映されていない。アリアと生活していて自分の意見を通すときには、まあコツがいるんだがその話は後々。

 

 

 

「な、何でだよ……!」

「よ……良かったなキンジ! なんか知らんがお前にも春が来たようだぞ! 先生! オレ、転校生さんと席変わりますよ!」

「あ、私も! 桜田くんと席代わります!」

 

 

 

 

絞り出すように呟くキンジに答える男がいた。実際に立つとアリアとは逆の意味で衝撃を受ける。身長(タッパ)がやたらとあるのだ。俺より10㎝ほど高い。いいからだ付きをしているが戦闘職種ではなさそうだな。手の見た目の堅さからして装備科(アムド)あたりだろう。俺に席を譲ってくれた女の子の方は救護科(アンピュラス)だろうな。雰囲気がナースだ。

 

 

 

「あらあら最近の女子高生は積極的ねぇー。じゃあ武藤くんに白石さん、席を変わってあげて」

 

 

 

先生はなんだか嬉しそうな視線をキンジとアリアに向けると、て何で俺にまで向けてるんですか。わーわー。パチパチ。と教室はすぐに拍手喝采を始めた。仲良くなにか1つの事に対して盛り上がるのが好きらしい。そう思ったところでアリアが、

 

 

 

「キンジ、これさっきのベルト。陸のネクタイは後で返すわね」

 

 

とベルトをキンジに放り投げた。ああ、あの死線をともにしたベルトくんか。ネクタイくんも返してもらって良かったんだけど。それを言うと風穴ストームが待っていそうなので、心の中だけにとどめておく。

 

 

 

「理子分かった! 分かっちゃった! ――これフラグばっきばきに立ってるよ!」

 

 

 

俺たちが席に着くと、キンジを挟んでアリアの反対側、つまり俺の右斜め前に座っている女の子が勢いよく立ち上がった。身長はアリアと同じくらいで金色の髪をツーサイドアップで結んでいる。身長の割に出るところが出ていて男性受けが良さそうな甘い見た目だ。制服が改造されまくってフリルが特大セール並についている。この子はロリータファッションというモノが好きなのだろう。

 

 

 

「キーくんベルトしていない! りっくんはネクタイをしていない! でもその両方をツインテールさんが持ってた! これ、謎でしょ謎でしょ!? でも理子には理解できた! できちゃった!」

 

 

 

『キーくん』はキンジ、『りっくん』は俺のあだ名だろう。ずいぶんカワイイ名前をつけられてしまった。

 

 

「キーくんはベルト、りっくんはネクタイを彼女の前でとるような何らかの行為をした! そしてそれを彼女の部屋に忘れてきた! つまり3人は――少しアブノーマルな恋愛の真っ最中なんだよ!」

 

 

 

その一言に教室が沸き上がる。少しアブノーマルな恋愛ってなに。そう思うのは俺だけじゃないはずだ。もし俺だけだったら……泣くよ?

こんな冷やかし満載の推理なんて真に受けないだろうと期待した、が――

 

 

 

「キンジがこんなカワイイ子といつの間に!?」「影の薄いヤツだと思ったのに!」「転校初日からそんなことができるなんて、うらやま…うらやましい!」「陸くんになら縛られたい!!」「「私も!!」」

 

 

―――そうだ。武偵高って頭悪いんだった。さっきも説明したと思うけど、ここは偏差値40をギリギリ切らない程度。中学生の方がまだ賢い。

そんな学校の生徒にマトモな答えを期待した俺が悪かった。男子の発言はまだ良しとしよう。だが2、3聞き捨てならないセリフがある。ちょっと最後の女子軍! ネクタイで何を想像したのかな? 内容によっては俺の沽券にかかわるんですけど?!

 

 

「こいつらバカで構成されてるから気にしないでいいぞ、陸」

「納得。でも1つだけみんなに言っておきたいんだけど」

「なにかね、束縛りっくん」

 

 

そのあだ名ヤメロ。って先生?! 「若い子には刺激が必要なのね~」とか納得するの止めてもらえます?!

ここは昔ながらの奥の手・咳払いで。

 

 

 

「ごほん。少なくとも俺とアリアは恋人じゃないぞ?」

「「え」」「「なんで」」

 

 

 

俺の発言により騒然となるクラス。「え」はまだ許すとしても「なんで」っておかしくね? 逆に俺がその発言の理由を聞きたいわ。だからその『つまんなっ』みたいな目で見るの止めようか。

アリアにアイコンタクトで伝えたけど言っても大丈夫そうだったし。

 

 

 

「じゃあ、りっくんとツインテールさんはどんな深い関係なのさー」

「ロン中(ロンドン武偵高校付属中)にいたときの戦兄妹(アミコ)だよ。ちなみに俺今年で17歳ね」

「「は?」」

 

 

 

先ほどと違ってこの反応は予想通り。理子の深い関係については特に否定しない。実際浅いワケじゃないし。

――――――戦兄妹(アミコ)とは戦徒(アミカ)という先輩の生徒(・・・・・)後輩の生徒(・・・・・)とコンビを組み、1年間指導する二人一組(ツーマンセル)特訓制度の事。あくまでそれは上級生と下級生に付随する制度であり、同級生同士ではあり得ない。

だからこそ今クラスメイトたちは混乱しているのだ。

―――じゃあなんで戦兄妹(アミコ)なんだ、と。

 

 

「気になるなら調べてもらって構わないよ」

「こいつ『静嵐』だから細かい事考えない方がいいわよ」

「「ウソ!?」」

「『静嵐』ってあの『中東王』?」

「中東の犯罪組織1ヶ月で9割つぶしたってヤツ?」

「なんかいろいろ伝説ある人!? こいつが!?」

 

 

 

『静嵐』は俺の2つ名のことだ。いろいろやっているので2つ名だけが1人歩きしていて名前が追いついていない。静かな嵐のようにいつ事件が終わったのかも分からないほどだからだそうだ。と言うか『中東王』ってこんなところまで知られてるのか。……恥ずかしい。

 

 

 

「桜田くんはすごいコだけどみんなのクラスメイトだから仲良くするのよ~?」

「「は、はーい」」

 

 

 

 

と、ここで先生のフォロー。ナイスタイミングです! 

正直自分の活動を目の前でこれだけ騒がれると少し照れる。

教室内も多少のざわつきと俺を凝視している以外落ち着きを取り戻した。ここでHR再開かと思いきや

 

 

「ねぇねぇ! 理子気づいちゃった! 気づいちゃったよ!」

 

 

理子がガタン! と椅子を思いっきり後ろに蹴って立ち上がる。その音にみんなが理子に注目する。

今度は何ですか。やっとアリア火山の噴火を鎮めたんだ。ヘンな事言うなよ?

 

 

 

「りっくんさっき『少なくとも俺とアリアは』って言ったよね!? じゃあ『キンジとツインテールさん』は!?」

「言ってない!」「確かに!!」

 

 

 

……あ。

 

 

 

「熱い熱い恋愛の真っ最中なんだね!!」

 

 

 

やらかした。

確かに俺は『少なくとも』って言った。あの場でそんな言葉の裏まで考えてる余裕ないだろ。誤解を解くので必死だったんだし。第一理子がそんなところまで覚えてるワケないって思ってたんだよ! これは仕方ない。単なる事故で……って、ヒッ。

プルプルとアリアの両腕がホルスターの方へ向いているッ。

死刑をまつ死刑囚の様な気持ちでなるべく頭を低くする。これが俺にできるせめてもの抵抗だ。

 

 

「女子どころか他人に興味なさそうなくせに、裏ではそんな事を!?」「フケツ!」

 

 

 

理子に便乗して教室がまた騒ぎ出す。

武偵高では専門科目があるので学年や組を部活のように飛び越えるのである程度面識率は高いが……新学期早々こういう話題での息のあいかたは万国共通だな。

 

 

 

「お、お前らなぁ……」

 

 

理由は違うものの、キンジが俺と同じように頭を抱えて机に突っ伏したとき―――

 

 

 

ずぎゅんずぎゅん!

 

 

 

鳴り響いた2発の銃弾がクラスを凍り付かせた。そして俺の肝も冷凍保存された。

ついにガバメントに手が伸びたアリアがホルスターから抜きざまに撃ったからである。左右の壁に突き刺さった銃弾が全てを物語っていた。

 

 

 

 

「れ、恋愛なんて……くっだらない!」

 

 

凍り付いた教室にアリアの声が響く。さっきまで意気揚々と冷やかしていた理子は両手と左足をあげたまま後ろ向きに移動という器用な事をしていた。

……武偵高では学校内で発砲しても文句を言われない。銃や刀剣の携帯を必須としている学校だ。生徒同士のケンカが銃撃戦な事もなくはない。だが、自己紹介でやったヤツはいないだろうなぁ……。

 

 

 

「全員覚えておきなさい! そう言うバカな事を言うヤツには……」

 

 

 

それはアリアの決めぜりふと言っても過言ではないほどの発言で。どこに行ってもみんなが愛用してしまう一言だった。

 

 

 

 

「―――風穴開けるわよ!」

 

 

 





2話終わりました! どうだったでしょうか。



少しテンパってヘンな更新の仕方をしてしまいました。すみません……。



これからも頑張って執筆していきます!

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