はい、第4話です。
この先の話を書いてから、あ、と思い付け足しで挿入投稿させてもらいました。
思いつきで書くからこうなる。
以後ないように気を付けます。ご迷惑おかけしました。m(_ _)m
ぱかっ。ぱたむ。ぱかっ。……ぱたむ。
「おいキンジぃ~?」
「は、はい?」
「冷蔵庫に水しか入ってないんだけど?!」
キンジの両肩に手を置いてギリギリと力を込める。
冷蔵庫を開けたら水が2本入ってただけ! 後は何も入ってない。冷蔵庫は水を冷やすためにあるワケじゃないんだぞ? 驚きすぎて2回も開けちまったじゃねえか。
「お前普段なに食ってるワケ?」
「下のコンビニの、弁当、ですます」
「はぁ!?」
俺の剣幕にキンジはたじたじになりながらへんな敬語で答える。
コンビニ弁当、だと……?
「今すぐにこれをそのコンビニで買ってこい」
「なにこr「ダッシュ」はい!」
ダダダッ、バタン。
メモとお金を握らせて背中を叩くと、言いつけ通りダッシュで部屋を出ていった。
ったく、普段からそんなものしか食べてないからネクラとか言われるんだぞ?
「……昔から陸はご飯に関しては凄かったわよね」
「戦闘が主な武偵にとって動く体を作るにはまずご飯だからな」
「それもそうね」
「ところでアリア」
「な、みゃきゃおっ!?」
アリアの腰を両側から掴み、30㎝ほど上に持ち上げる。
う~ん、やっぱり。
「細すぎ軽すぎ」
「な、何よ! 急に……!」
「マトモな食事してないだろ?」
「うぐっ」
「デリバリーか外食だな?」
「うぐぐっ」
アリアがしまった! みたいな顔をして、視線を反らす。
図星か。なんとも分かりやすい顔だな。
大方俺と別れてから料理を教えてくれる人がいなくて作らなかったのだろう。事件も追ってただろうし。ちゃんと食べないからチビなんだぞ、とは言わなかった。命の危機に直面することになるからな。
「これからは俺が作るからちゃんと食うこと」
わかった? と聞くとすぐさま首を高速で縦に振りだす。それを確認してから下に下ろした。二人とも俺の監視の本しっかりと食育をせねば。俺が来たからにはコンビニ弁当もデリバリーもとらせん。たまにならいいが栄養が偏りやすいんだぞ?
「陸……買って…きた」
「おー、お疲れー。風呂でも入るか?」
「そう、だな。行ってくる」
キンジから袋を受け取りキッチンに入る。自炊していないわりには用具がしっかり揃っといて、こりゃ誰か作ってるヤツがいるなと簡単に推理できた。
「アリアもキンジが出たら入れよ~?」
「分かったわ!」
アリアはソファーに座ってテレビに釘付けだ。内容は『モフモフ動物大集合!』。アリアこういうの好きだもんな。毛並みがモフモフしてるヤツ。ライオンのたてがみにくるまりたいって行ったときは全力で止めたけど。両ほほに手を当ててカワイイー! とくねくねしている。そんなほほえましい光景を見ながら夕飯作りに取りかかった。
「ん……いいにおいがする」
「ちょうど良かった。いまできたところだ」
タイミング良くあがって来たキンジの前にも料理を並べてやる。今回は急ごしらえなのでビーフシチューとサラダにバゲットだ。
「キンジっ。早く座りなさいよ!」
「分かった分かった」
アリアがキンジの手を引っ張り無理矢理着席させる。こいつさっきから椅子に座ってキンジが出るのは今か今かと待ち構えてたからな。そんなに慌てなくても料理は逃げないのに。アリアが俺たちの顔を見合わせて3人同時に
「「「いただきます」」」
「「ごちそうさまでした」」
「はいよ。これからは毎日まともなもの食わせてやるからな?」
すごい勢いで2人がビーフシチューをさらっていき、30分後には2日分は作ったハズの中身が全てなくなっていた。お前らよく食ったな……。
ぷしゅーー!
もういいかな。
「陸、それ何ー?」
「ももまん。試作品食べる?」
「食べるわ!!」
「熱いからやけどするなよ」
「はむっ、あっつ!?」
だから熱いって言ったのに。
ご飯を食べてる間密かにももまんを作っていた。アリアの好物は変わってないようだ。時々叫びながらもおいしそうに食べている。それだけ幸せそうに食べてくれれば作った方も満足ですよ、はい。
「味、どうだった?」
「さすが陸ね! 松本屋にもひけをとらないわ!!」
「そうか。じゃあ風呂入ってこい」
「……入ってくる……」
まだ食べたそうにしていたアリアに風呂を促す。もちろん気づいてたがわざと知らない振りをした。こいつ下手したら一食ももまんで終わらせるからな。ありえん。
俺は食器の片付け、キンジはテレビを見ていると――
……ピン、ポーン……
やけに慎ましやかなドアチャイムの音。それに反応するかのようにキンジの肩がびくっとあがる。
「知り合いか?」
「や、やばいぞ、陸! 星伽白雪――俺の幼なじみだが――アリアが見つかったら殺される! なぜか俺の周りの女子はあいつにボコられて来たんだ!」
「星伽…白雪…」
キンジの周りの女子がボコられるのは嫉妬からだろ。ドンパチで解決するのは武偵らしい。それより星伽白雪ってどこかで聞いたことがあるような……。
「まずはアリアをどうにかしないと……っ!?」
ガンっ!
慌てた拍子にキンジが机の角に思いっきり小指をぶつける。うっわ、いたそー。
「大丈夫か?」
「~~な、なんとか」
「これで居留守を使うって言う手はなくなったな」
「そんな簡単にいうなよ……」
「1つ手がある」
「ホントか!?」
「ああ」
あの手を使えばアリアが騒ぐ事はないだろう。
「キ、キンちゃんどうしたの? 大丈夫?」
ドアの外から白雪とやらの声がする。やっぱり聞いたことある、この声。顔を見れば思い出せるか?
「あ、ああ。大丈夫。すぐ開ける」
「準備オッケーだ」
キンジと目配せしてそれぞれの持ち場につく。俺が脱衣所に入ったぐらいで玄関のドアを開ける音が聞こえた。さて、俺はあとこれをここに張ってっと。
ガラリラ。
あ。
「~~~!?」
「誤解だから、とりあえずこれを読んでくれ……!」
タイミング悪くアリアが浴室から出て来てしまった。大声で騒がれる前に慌てて目を閉じてもっていた紙を渡す。多分真っ赤になっただろうアリアは、ガラっ! と大夫荒々しく中に戻っていった。
『ワ カ ッ タ。 ゼ ッ タ イ ヨ ?』
おそるおそる目を開けると脱衣所にアリアの姿はない。浴室の向こうからタッピングで返したらしい。い、一命を取り留めたぜ……! かごの中の武器で攻撃されてもおかしくない状況だったからな。まさに奇跡。
「……キンちゃん。私に、何か隠してる事ない?」
「ない! ないない! 隠し事なんてありあ、じゃない、ありえねーから!」
「……そう。少しあがらせてもらうね」
「おい白雪!」
やばい! なんか負のオーラがこっちまで漂ってくる……!
キンジが相当な危機に迫られている。この中にずっといたらアリアが浴室にいることがばれてしまう。その前に俺から出向くしかないっ。
「すまん、キンジ。遅くなった。紹介したい人って?」
「陸! こっちに来てくれ!」
「そんな……紹介したい人だなんて……」
脱衣所から出ると今にも泣き出しそうなキンジと、草履を脱ぎそうな巫女さん。巫女さんの方から発せられていた負のオーラが、俺の一言で一瞬のうちに幸せ全開になる。そんな気に入られる様なこと言ったつもりはないけど……。
「こんばんは。キンジと相部屋の桜田陸で、って白雪!?」
「え?」
「なんだ、お前ら知り合いだったのか?」
顔を間近で上げてよく見ると、ぱっつん前髪の大和撫子の確かに白雪だ。やっと思い出した!
「覚えてないか? 俺だよ、桜田陸。青森の星伽神社で一緒に稽古しただろ?」
「え!? りくちゃん!?」
「そうだよ」
なあーんかこのパターン前もあったような……。まあいっか。
俺は10歳でフランスを離れた後3ヶ月だけ日本に戻っていたんだ。そのとき父さんの伝手で世話になってたのが白雪の実家の『星伽神社』。同い年だったことや、その頃から武偵として活動していた俺は白雪に稽古をつけることもあった。逆に琴や三味線とかの芸術関係は白雪に習ってたけどな。そう言えば数回白雪の元に男の子が訪ねてきて、一緒に遊んだ記憶がある。
「6年前ぐらいに一緒に遊んだのって……もしかしてキンジか」
「6年前……?」
「そうだよ! 確かキンちゃんとりくちゃんと私で何回か遊んだよね!」
「あ! 思い出した! でもあいつは髪も瞳も黒かったぞ?」
「異国の見た目をしたものを敷地に入れるわけには行かない、って言われて変えてたんだよ。ちょうど変装グッズの中に入ってたからな」
「子供のうちから何もち歩いてるんだか……」
あの3ヶ月、すごく楽しかった。武偵の活動は一切しなかったけど充実した日々を送れていた。きっと父さんが裏で手を回していたんだと思う。フランスでは同級生はいても同い年はいなかった。依頼の対応が忙しかったし年相応の遊びをしたのはあれが初だったと思う。
「りくちゃんにも会えたし、きて良かったよ。あ、これタケノコご飯だから良かったら2人で食べて。男の子2人だと少し足りないかもしれないけど……」
「もらうよ。ありがとう」
「あ、ありがとうな」
「じゃあ、明日から恐山に合宿で早く出るからもう帰るね」
「また和食教えてくれ」
「分かった。キンちゃんにリクちゃんさようなら」
白雪は春風みたいにさわやかな笑顔を作ると、こっちに背を向けて去っていった。素早くキンジが玄関の扉を閉める。キンジは一安心したみたいだけど俺、どうしよう。アリアと顔合わせるの気まずい。と、そんな事もいってられないので。
「あのー、アリア? もう出て来て大丈夫だぞ……?」
とりあえず脱衣所の外から声をかける。アリアにはしっかりと聞こえたようで浴室から移動してくる音が聞こえた。ああ、気まずい……。
「アリアさん? 怒ってます…?」
「……怒ってないわよ。でも、陸約束破ったら風穴だからね!」
出て来たところで声をかけると、少し顔を赤くしながらびしっ、とさっき俺が渡した紙を突きつける。本当はこれを脱衣所の内側に貼り付けてすぐ出てくるつもりだった。そうすればすぐにキンジの援軍にいけたんだけどそうは問屋が卸さない。タイミング悪くアリアと鉢合わせになってしまったというわけ。
『静かにしてたらももまん10コプレゼント』
紙の内容はたったこれだけ。これだけで難を逃れるならむしろ儲けもんだよ。
「分かってるよ。特別うまいの作ってやるからな」
「ホントに? 早くたべたいな~」
ほのかに頬を染めたままほほえむアリアは、すごく、可愛かった。見ないうちにずいぶんと雰囲気も大人っぽくなったらしい。それはもう戻ってきたキンジが軽く赤面するほどには。
「……ずいぶん前にさかのぼるが、ドレイってどういう意味だ」
アリアから意識をずらすようにキンジが無理矢理話題を振ってきた。確かにそれは気になるのかも知れないけど、女子に振る話題が『ドレイ』ってどうなの。いや、アリアが言い出したことだし本人は全く気にしてないと思うけどね?
「強襲科であたしと陸のパーティーにあんたも入りなさい。そこで一緒に武偵活動をするの」
「なにいってんだ。俺は強襲科がイヤで、武偵高で一番まともな探偵科に転科したんだぞ。それにこの学校からも、一般高校に転校しようと思ってる。武偵事態辞めるつもりなんだよ。それをよりによってあんなトチ狂ったところに戻るなんて――ムリだ」
「あたしには嫌いな言葉が3つあるわ」
「聞けよ人の話を」
「「『ムリ』『疲れた』『面倒くさい』。この3つは、人間の持つ無限の可能性を自ら押しとどめる良くない言葉。あたしの前では二度と言わないこと。いいわね?」」
「いや、いいわね? って言われても。てか何で陸はハモってるんだ?」
「俺も初めて会ったときに言われたから」
ロンドンでアリアに追い回されてる最中、ぽろっと『疲れた』って言ったらガバメントの銃弾とともに上から降ってきたんだよ。言葉に自分自身納得したのと、その状況がやけに印象に残ってて今でも忘れられない。
「陸は前、中、後衛のどれでもいけるからそうね……キンジのポジションはあたしと一緒にフロントにしましょ」
「勝手に決めるな。そもそも何で俺なんだ」
「太陽は何で昇る? 月はなぜ輝く? キンジは質問ばかりの子供みたい。仮にも武偵なら、自分で情報を集めて推理しなさいよね」
言ってることは武偵としてすごく正しい。だが、アリアのたとえはいつもスケールがでかい。本当にでかい。それも話の最中にぶっ込まれるから一瞬「はい?」ってなる。
「とにかく帰ってくれ。風呂も入ってさっぱりしただろ?」
「まあ、そのうちね」
「そのうちっていつだよ」
「キンジが強襲科であたしのパーティーに入るって言うまで」
「でももう夜だぞ?」
「何が何でも入ってもらうわ。私には時間がないの。うんと言わないなら――」
「言わねーよ。なら? どうするつもりだ。やってみろ」
キンジの横柄な態度にアリアがその赤い瞳をぎんっ、とつり上げて。
「言わないなら、泊まってくから! 長期戦も想定済みよ!」
「は!?」
アリアの指さした方向を見るとトランプ柄のブランドものっぽいトランクが鎮座していた。なんかでかくね? これ何日分だよ。服足りなくなったら近いんだから自分の部屋に取りに戻ればいいのに。『面倒くさい』とはいわせねぇ。
まあ、なんにしろアリアがこの部屋に泊まるのはあいつの脳内ですでに決定事項だ。今からその考えをひっくり返すのは至難の業。
「キンジ、あきらめろ。部屋もベッドも空いてるし困らないだろ?」
「あきらめろって、お前はいいけどさぁ」
「アリアは自分が決めたことは納得できる根拠がないと変えないぞ? なんかあるのか?」
「なんか考えるのもめんd「それ禁止」……イヤになってきた」
アリアの前で2度目の禁句とはなかなか度胸があるな、キンジ。次言ったら多分サマーソルトくるぞ。
「とりあえず寝室を要塞化するわ。陸手伝って」
「はいよ」
「バカキンジ。アンタはここにいなさい」
「いろいろ小さいヤツに言われなくてもいかねーよ」
「誰が! 胸が! 極小! だ!」
「いた、いだだだだ!! そこまでは言ってない! いだだだ!」
キンジの一言にアリアがサマーソルト→三角締め→腕ひしぎのコンビネーション技をお見舞いする。
あーあ、アリアを胸の話題でからかうからこういうことになるんだよ。ご愁傷様です。
それからしばらくは寮の廊下までキンジの悲鳴が響いていたらしい。
どうでしたでしょうか。
白雪とも知り合いな陸。こいつの交友関係は誰までつながっているのでしょう?
これからも亀並に精一杯更新しますのでお願いします。