型月産ワカメは転生者である(仮題)   作:ヒレ酒

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なんかお気に入りが爆発的に増えてて、ワカメスープ噴いた。

なお酒呑ちゃんは出ない模様。
やめて! ヒレ酒のキャッシュ枠はもうゼロよ!

そういうわけで続き(本題
今回は下ネタ祭りなので注意。


第四話

 少女を救ったのは赤髪の正義の味方ではなく。

 自分勝手な蒼銀の騎士だった。

 

 

 

 間桐桜は恵まれた環境に居る。昔はともかく今は確実に。

 間桐(マキリ)という呪いから兄に救いだされて。

 その後に待っていたのは、何一つ不自由することのない生活。

 

 ただしそれは、全て兄が桜に与えたものだ。

 家長となり自分を守り続ける兄に、何か返せているだろうか。

 いや、何も返せてはいない。ただ与えられるだけの毎日。

 桜の現状を説明するには、おんぶにだっこ。まさにこの言葉が相応しい。

 

 大きくなったら、なんて冗談めかして兄は言う。

 けれど大きくなってから、ではダメなのだ。

 今すぐに役に立ちたい。何か兄の助けになりたい。

 

 このままじゃいけない。そんなことはわかっている。

 けれど非力な自分に出来ることなんて知れていて。

 

 だから変えてみよう。いや、変わるんだ。

 桜は確かな決意と共に、兄の下へと向かう。

 

 

 

 

 

 

「というわけで兄さん」

「うん? なにかな桜」

 

 中庭で読書と洒落込んでいた慎二を捕まえる。

 慎二は組んでいた足を優雅に解くと、目元にかかる前髪を掻き上げた。

 

 悔しいことに、兄はそういう細かい所作がいちいちサマになる。

 そんな所に惹かれる女の子(ライバル)も多い。

 

 普段はあれだけポンコツなのに、どうしてだろう。

 あれか、顔なのか。人間は所詮、顔だとでもいうのか。

 

 海産物(ワカメ)のくせに、(ワカメ)のくせに、慎二(ワカメ)のくせに。

 三回唱えれば、魅了の呪縛から解き放たれる。

 

「それで桜、何の用だい?」

 

 いけない。当初の目的を忘れてしまっていた。

 しかし、いざ本題に入ろうとすると、口が思うように動かない。

 まごつく桜に、慎二の表情が険しいモノへと変わっていく。

 

「どうしたんだい桜? まさか僕に言えないような――イジメか? イジメだな!?」

 

 下手人はどこだ、とっ捕まえて成敗してやる! 出会え、出会え!

 ついには自慢の朱槍まで持ち出した慎二。

 なんだろう。この兄を相手に緊張していた自分が馬鹿らしい。

 

「違いますよ兄さん。イジメられてなんていません」

 

 むしろ慎二の妹として、色々な恩恵を得ている。

 冬木の超人と呼ばれる兄の名声は伊達ではない。

 逆に畏れられて、ボッチが加速――いやなんでもない。

 

 なんだか気が抜けた。けれど今は有り難かった。

 そっと居住まいを正し、兄の瞳を真っ直ぐ見つめ、一息に言い切る。

 

「私に魔術を学ばせてください」

 

 言った。言ってやった。

 けれど慎二は首を傾げる。今更改まって言うことか、と。

 

「独学で勉強してなかったっけ?」

 

 確かに屋敷の蔵書を読みふけり、自分なりに勉強はしている。

 けれども今回は違う。さらに一歩踏み込んだ知識が欲しい。

 

「いえ、本格的に学びたいと思いまして」

「そっか、頑張れ」

 

 あっさりと出た承諾の言葉に、桜は拍子抜けしてしまう。

 ポカンと口を開けていると、慎二が首を傾げた。

 

「どうかしたかい?」

「いえ、その……てっきり反対されるかと」

「なんで? 桜がやりたいならやれば良いじゃないか」

 

 僕が今まで反対したことなんてあったかい?

 なんて聞かれれば、確かにそうだ。

 慎二が桜の意思を一方的に否定したことは一度もなかった。

 

「じゃあ……教えてくれるんですね?」

「あ、ゴメン。それは無理」

 

 バッサリと切り捨てられた。

 

「そこは快く了承する所じゃないんですか!?」

「あー、その……学ぶのは構わないけど、僕が教えることはできないんだ」

 

 間桐である桜が魔術を学ぶとなれば、その師は慎二しかありえない。

 けれど自分では教えられないと慎二は言う。

 禅問答か何かだろうか。それこそイジメか、イジメなのか。

 

「まさかとは思いますけど、面倒だから、なんて理由じゃありませんよね?」

 

 ニッコリと天使の微笑(エンジェルスマイル)を向けておく。

 最悪の場合、脅しでなんとかするぞ。その意思表示である。

 幸いなことにネタはいくらでもある。悪い文明(えっちぃ本)は粉砕だ。

 

 この駄兄(ワカメ)は面倒なことから逃げる傾向にある。

 多少、脅して追い立てるくらいが丁度いい。

 物騒な方向に飛んでいく桜の思考を察したのか、慌てて慎二が引き止める。

 その様はさながら、妻に浮気の弁明をする夫のようだった。

 

「い、いや! 違うんだ桜! その……僕の魔術ってかなり特殊でさ」

 

 改造によって埋め込まれた魔術礼装が、思考を元にルーンを自動生成!

 そこに魔力を流すことによって、誰でもお手軽に魔術が行使出来る!

 これこそ慎二に搭載された最新装備、名付けてケルト式ルーン生成システム!

 

「つまりどういうことですか?」

「えーっとだね」

 

 要するに慎二は、わけのわからない力を、わけのわからないまま振るっているのだ。

 だから教えられない。なるほど、わからないことがわかった。

 

「……魔術っていうか、それほぼ科学の産物ですよね?」

「一応は魔術なんじゃない? 魔術だと思う……魔術だといいなぁ」

 

 なんだか凄く理不尽なモノを見たような気がする。

 世の中の魔術師が聞いたら卒倒すること間違いなしだ。

 兄に常識が通用しないことは知っていたが、ここまでとは。

 

「というかアレだよ、アレ」

「アレ?」

「桜の属性って虚数だろ?」

 

 桜の属性は、架空元素・虚数。

 兄が言うには中々に珍しい属性なのだそうだ。

 具体的に言えば、星四つ分くらいのレア度とは兄の弁。

 ちなみに慎二は星三つのハズレ枠らしい。何の話だろう。

 

「虚数魔術なんて特殊すぎて、どっちにしろ僕じゃ教えられないよ」

 

 “ありえるが物質界にないもの”を司るのが虚数という属性らしい。

 どうしよう。全くイメージが湧かない。

 あれだ、こういう時は兄に尋ねるに限る。無駄な知識の宝庫だし。

 

「ちなみに虚数って何が出来るんです?」

「平面から影を立体化させたり? 虚数空間への扉を開いたり?」

 

 ほら、ちゃんと答えてくれた。疑問形だったけど。

 他にも未来へ物質を転送したり出来るらしいが――

 影? 空間? なるほど、意味がわからない。

 

「多分だけど、僕の魔術よりもふわっふわな系統だと思う」

「兄さんよりもふわっふわ……!?」

「おい待て、そこ驚くところか? 僕をなんだと思ってる!?」

 

 それにしても困った。兄が使えないとなると、他のアテなど桜は知らない。

 どうしたものかと二人で悩んでいると、名案が浮かんだと慎二が手を叩いた。

 

「そうだ、まずは遠坂の魔術でも学んでみたらどうかな?」

「遠坂、ですか」

「宝石魔術って言ってね。桜とも相性が良い……はず。おそらく、きっと」

 

 宝石に魔力を移し、それを使って魔術を行使する。

 転換の特性を持つ遠坂の魔術師とは相性が良いらしい。

 最終的にどうするかは別として、基礎としては悪くない。

 

 とはいえ遠坂、遠坂か。

 あの家にはまだ、複雑な思いがしこりとなって残っている。

 相性が良いからと言われて、はいそうですかと受け入れられるモノでもない。

 

「間桐の魔術は……ダメですよね」

「ああ、うん。流石にアレ(十八禁)は僕も勘弁してほしいかなぁ……」

 

 脳裏に浮かぶのは間桐の家に来た直後。兄に救われる前の記憶。

 遠坂以上に無理だ。もう生理的に受け付けない。

 だがしかし。いや、ひょっとすると――これならいけるかも。

 

「仮に……仮にですよ? 間桐(十八禁)方式で行くとして」

「うん? なんか不穏な文字が隠れてた気がするぞ!」

「神秘の塊である兄さんとアレコレすれば、私も魔術が使えたり――」

「スタァーップ! ストップだ桜!」

 

 慎二が焦った様子で桜の肩を掴む。

 その額からは汗がまるで滝のように流れている。

 

「桜、それは僕の死亡フラグだ」

「ふ、ふらぐ?」

「妹に手を出した兄貴(ワカメ)は死ぬ。いいね?」

「えっ? そんな話聞いたこと……」

「いいね?」

「あ、はい」

 

 こちらとしてはウェルカムなのだが、どうにも兄のガードは固い。

 事あるごとに誘惑してみてはいるのだが、どうにも乗ってくれない。

 

 別にいいじゃないか、義兄妹なんだし。

 さきっちょくらい、減るもんじゃあるまいし。

 義兄(おにい)ちゃんだから、愛さえあれば関係ないのだ。

 

 それともあれか、やっぱり胸部装甲をもっと厚くしないとダメなのか。

 ベッドの下の宝物庫(バビロン)的にも、そういうのが好みなのだろう。

 こうなったら是が非でも大きくしなければならない。もっと牛乳を飲もう。

 大きくなったら――というのはつまり、そういうことなのだから。

 

 

 

 

 

 

 で、その後。

 慎二はなんとか桜の誘惑回避に成功。

 とりあえず宝石魔術を試してみようと、地下にある蟲蔵跡にやって来ていた。

 あまり良い思い出はないが、魔術の練習が出来る場所なんてここしかない。

 改装された間桐邸は人には住みやすく、魔術師には住みにくい場所なのである。

 

「そういうわけで桜には早速、宝石魔術を試してもらうわけだけど」

「何か問題でも?」

「問題というか……困ったことに宝石がない」

「企画倒れじゃないですか。開幕から頓挫してますし」

 

 父である鶴野がアレになった後、金目のモノは全て整理してしまった。

 当然、その中には美術品や宝石類も含まれるわけで。

 

「そこで今回は特別に代用品を用意したんだ」

「代用品ですか?」

「要するに魔力を貯蔵する性質があればいいワケだからね」

 

 そう言って桜に差し出すのは、蒼銀色の棘。

 どこかで見覚えのある色をしたソレは、鈍く輝きを発している。

 

「これはもしかして兄さんの」

「そう、それは僕の」

「おいなりさん――」

「違うわ!」

 

 肩辺りから削り取った装甲の一部である。

 私のおいなりさんでは断じてない。

 

 紅海の魔獣、クリードの外殻たる装甲には、非常に高度な神秘が宿っている。

 そこに慎二の魔術が加われば、魔力を貯蔵する機能を持たせるくらいは容易い。

 ちなみに放っておけばまた生えてくる。甲殻類の足みたいなもんである。

 

「これが兄さんの……フフフ、そう思うと可愛く思えてきました」

 

 恍惚とした表情で蒼銀の棘を撫でる桜。凄まじく卑猥な手つきだ。

 なんだろう。軽くヤンデレ方向に向かっているのは気のせいだろうか。

 ホントどうしてこうなった。原作だとこんな芸風じゃなかった。

 

 だがしかし。しかしだ。

 その変化の原因を挙げるなら、間違いなくソレは慎二にある。

 立派にここまで育て上げてしまったのは、紛れもなく自分なのだから。

 桜には聞こえぬよう、小声で呟く。

 

「……教育方針、間違えたかな」

 

 原作ヒロイン育てたら、変態になった。

 どうしたらいい? どうにもできない。

 諦め、全てを悟ったような表情で慎二は続けた。

 

「……今回はそれに魔力を込めて貰おうと思う」

「兄さんに私のを注ぎ込むんですね……」

「卑猥な言い方にすんのヤメてくれるかなぁ!?」

「ちなみに私的には逆のほうが好みです!」

 

 知りたくもない情報をありがとう。本当に絶好調だね桜ちゃん。

 なおこの家の最高権力者は桜なので、止められる人間は居ない。

 ブレーキのない機関車と言えばわかりやすい。これが絶望か。

 ごめんね時臣(トッキー)。娘さん、こんなんになっちゃった。

 

 いやまぁ、この家に預けたのはトッキーなんだけども。

 これも全部、時臣ってやつの仕業なんだぜ!

 そういうことにしておこう。そのほうが精神衛生上よろしい。

 

「とりあえず桜、早速やって――」

「できました!」

「うっそだろオイ」

「ホントですよ、ほら!」

 

 そんなアッサリ出来るモノだったか。

 あの天才と名高い遠坂さん家の凛ちゃんですら最初は失敗していたのに。

 自信満々な桜の手に乗せられていたのは――

 

「なんだこの蛍光ピンクの物体……」

 

 桜が注ぎ込んだ魔力でピンク色に変色し、ついでに丸くなった棘、もとい棒。

 成功はしていた。けれども絵面がアレだった。どう見ても大人のアレである。

 人のことを奇人だ変態だなどと散々に言っておいて、本人はこのザマ。

 ドン引きである。お兄ちゃん悲しくて涙が出てきそうだった。

 

「アウトォ!」

「なんでですか! 成功したじゃないですか!」

「成功は成功だけどさぁ! あるじゃん、ほら!」

 

 言いつつそっと目を逸らす。

 美少女がアレを持っているというのは、青少年には少々刺激的だった。

 中身は大人でも体は青少年なのである。ヤりたい盛りの猿なのである。

 

「なんで目を逸らすんですか、ちゃんと見てくださいよ!」

「ちょ、押し付けるな! なんか生温――やめ、ヤメロォ!」

 

 なんというか。

 間桐邸は今日も平和だった。

 

 

 

 




デッドプールを観に行った。
で、悟った。

R-15ってここまでヤっていいのかと。
なるほど、なるほど。よくわかった。

で、出来上がったのがコチラ(白目


<追記>

あと感想で頂いてる慎二君のスペックについて。

戦争まで行ったら詳しく描写するつもりなんで、暫しお待ちを。
具体的には同じアレ持ってる人とかその辺りで書きます。

それであんまアレになりそうなら、タグ追加するかもしれないです。


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