八幡の武偵生活   作:NowHunt

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ラブコメであれ何であれ、創作物の女の子が嫉妬するシーンが大好物です。なお、流血はNGで




お祈りの時間

 ――――互いにフロントから飲み物を貰い、俺はなぜここに来たのか理由が分からない諸葛と話を始める。

 

 まず最初に確認したいことは……これか。といっても重要性が高いわけでもないが。

 

「なんで俺がここにいるって分かったかは……訊く必要ないか」

 

 あの女性スタッフが情報を流したのだろう。藍幇と密接な関係にあるみたいだしな。日本ではあの猛妹の傍にいたんだ。

 

「えぇ、あの方は猛妹……ココ姉妹のお付きの役割もすることがあるので。普段はこうしてホテルで働いていますが。とはいえ、別に藍幇自体規模が大きい組織ですからね。あの方がいなくても比企谷さんを探すのは容易なことです。香港にいて多少時間をかけていいのであれば、藍幇に捕捉できない人物はいませんよ。それこそ警察にまで手は伸びますからね」

 

 そこのところはさすがヤクザと言うべきだな。ただのこじんまりとしたヤクザではなく、世界から見ても非常にデカい組織だ。人探しなどお茶の子さいさいといったところなのだろう。や、お茶の子さいさいって今時しない表現だな。

 

「それで、わざわざここに来るってことは俺に何か話でもあるんだろ。FEWには関わるつもりないから釘刺さなくても大丈夫だぞ。むしろ関わりたくないまである」

 

 このように弁が立つであろう人物と話をするとき、序盤の無害アピールは欠かさない。こちらは貴方たちに危害を加えるつもりはありませんと主張する。そうすることで、相手の警戒心を減らすことはできる上、いざとなったら多少のムチャな要求は通せることがある。あくまであるだけで、向こうが調子に乗ることもあるから……あまり上手くはいかないんだが。

 

 諸葛は諸葛でニコニコと微笑んで俺のことを全く警戒していないとでも言いたげな表情で口を開く。

 

「簡潔に言えばお詫びに来ました」

 

 さぁ、どんな無理難題が飛び出してくる――――と身構えたが、諸葛の口から出た言葉は意外なものだった。

 

「詫び?」

「先日、猛妹や猴がご迷惑をおかけしたのでね」

 

 あぁ、そういうね。中国のヤクザにしては律儀なことだと思う。いや、むしろヤクザだからか?

 

 猛妹は言わずもがな、もう1人の猴――というのはあの色金の力を使った奴のことだ。あのやたら丈が短い武偵高の制服を着ていた仮生の類いのモノ。下手すりゃあの場でジーサードを殺していたかもしれない状況だったな。

 

 ジーサード……か。

 

「――――」

 

 ふとジーサードがレーザーにヤられたときのことを思い出す。

 

 あのときのレーザーでの攻撃、どことなく違和感があった覚えがある。俺も一応は超々能力者に分類されるが、自身の意思である程度色金の力を使うことができる。まぁ、まだまだ使いこなすとは言えないへなちょこのレベルなのだが。

 

 ただ、あの場面、何て言うか……猴がどんな性格なのかは知らないけれど、特定の個人の意思は感じなかったというか、かなり無機質な雰囲気があった。機械かのように、こちらを下として見ているかのような――そんな感覚。まるで神が乗っ取って使ったようだった。俺も何度かされたことがあるから、それが理解できる。

 

 もしかすると、猴は俺や神崎よりももっと違う存在なのかもしれない。超々能力者として格が違う、遥か上の次元にいるナニカ――――神そのもの可能性がある。猴の持つ色金の種類は分からないけど。

 

 

「詫びってことは金銭的なのか。それならありがたく受け取るぞ。税金に引っかからない程度でお願いするわ」

 

 一旦猴のことは考えるのを止めて、諸葛との話を再開する。

 

「もちろんそれも良いのですが、せっかく香港に来てくれたのです。藍幇城……我が本拠地に案内しまょうか」

 

 本拠地? そういや先日理子と話したとき、香港にある藍幇の本拠地の所在地は不明と理子は言っていた。それは本拠地そのものが水上にあり自由に移動可能だからだそうだ。ちょうど武偵高がある人工浮島の簡易版といったところだ。

 

 恐らく行くためには近くまで車とかで近付いてから船で移動する必要があると思う。そのせいで、一般人――特に今回藍幇を狙っているバスカービルからは直接藍幇には接触ができないはず。戦闘機にでも乗って空から探し回れたら話は別だろうが、それこそ、藍幇側から招待されない限りは土台ムリだ。

 

 つまるところ、何だ……。

 

「俺を人質に使おうってか?」

 

 そんな結論しか思い浮かばない。バスカービル――というよりレキに対して俺は有効な人質になり得る。ノコノコと付いていったらはい監禁、なんてやられるかもしれない。しかも本拠地ってことは猛妹や猴やらいるんだろ。うーっわ、行きたくねぇ……。

 

 もうやだぁ……お家帰るぅ……。

 

「まさか。比企谷さんは空を飛べるのでしょう? いざとなれば簡単に逃げられてしまいます。加えて、噂程度ですが、どうやら金斗雲も使えると訊いたことがあります。貴方を1ヶ所に留めることは困難ですからね。そこまで警戒なさらずとも」

 

 金斗雲? それって西遊記の? 何だそりゃ……と考えてみたが、当てはまるとすれば色金の瞬間移動か。金斗雲が移動や逃走関連の力ならレーザーではないだろうし、ジーサードに瞬間移動したと言ったことがある。そこから漏れたのだろう。目敏いことだ。いや、どちらかと言うと耳敏い、と表現するべきか? 地獄耳かな?

 

「ただただ、善意として招待しようと考えているのですよ。確か比企谷さんは修学旅行……つまり勉強として香港に来ているのですよね。外観を記録されるのは避けたいですが、内装であれば記録して報告してくれても構いません」

「ほーん。そりゃありがたいけども。てか、猴はともかくとして猛妹は? 詫びならアイツも来るのが筋ってもんじゃないのか」

「彼女は今軽く謹慎中ですよ。日本では色々とやらかしたのでね。特に比企谷さんとの接触を禁じています」

 

 あ、そうなんだ。謹慎中か。道理でアイツの性格上、空港で接触されてもおかしくはないと思っていたけど、来なかったからな。本拠地で大人しくしてい……あれ? でも、それ俺が本拠地に行ったらその縛り緩くなんねぇ?

 

「それで、どうです? もしかしたら猛妹とも会うかもですが、一度訪れてみては」

「あー……」

 

 諸葛は口ではそう言うが、俺は別に猛妹のことは嫌いではない。毛嫌いしているわけでもない。数度襲われたことはあるけれども、ぶっちゃけ襲われた云々は武偵だから当たり前だ。そこにツッコミを入れるなんて馬鹿馬鹿しい話だ。事件が終われば、勝っても負けてもそこに関しての恨みなどはない。……ホントだよ。

 

 ただ……その、なに、これでも男だ。可愛い女の子に好意を向けられるのは嬉しい部分はある。そりゃもうありまくりだ。けれど、俺のお姫様が……ね? バリバリ敵意向けているんですよ。いやもう敵意っていうか殺意? 

 

 俺が猛妹に肩入れしなくても、猛妹は勝手にこちらへ突っ込んでくる。お国柄なのかは知らないが。そうなると、お姫様は異物を追い出そうとするのか……その辺りのバランスが難しいというか、あとで痛い目に遭うの俺なんだよね。選択肢ミスればヒロインに殺される。え、型月主人公? 何それ嫌だわ……。

 

 まぁ、普段は見れないような物が見れるんだ。貰える物は貰っておこう。

 

「行くだけ行くわ。明日の昼前また来てくれるか?」

「えぇ、もちろん。ありがとうございます」

「あ、このことアイツらには内密にしといた方がいいよな? 一応は立場上敵なわけだし、俺が伝えるのは不公平だよな」

「そうですね、どちらでも大丈夫ですよ。ほら、場所が場所ですので、もし比企谷さんが教えても行ける手段は限られてますからね。場所を伝えても辿り着くのは、慣れていない土地なのが相まって困難かと。それに……」

「それに?」

「……いえ、何でもありません」

 

 不自然に言葉を切った諸葛だが、これ以上追及する気力は湧かなかった。何だかんだで知らないが外国で1人で行動したからか疲れが溜まっている。早く休みたい。もう切り上げよう。そろそろホテルで晩飯の時間だ。これ以上居座られては飯にありつけない。早く帰ってどうぞ。

 

 

 

 

 ――――翌日の昼頃。

 

「うわスッゲぇ……」

 

 諸葛に連れられ、俺は1人で噂の藍幇城にいた。道中、車で香港の西側まで進み、それからクルーザーに乗り停泊できる場所で降りた流れだ。車もクルーザーもひたすら高級な部類だったことにまぁ驚いたね。コイツらどんだけ金持ってんだよ……クルーザーに至っては内装とか高級ホテルに劣らないレベルだったぞ。

 

 ちなみに遠山は午前中に無事神崎たちの元へ帰ってこれたが、神崎とケンカ別れをしたとレキから連絡があった。何でやねん。

 

 改めて藍幇の組織の大きさに驚きながら藍幇城を眺める。

 

 まず初めにホントに洋上にあることに驚いた。よく沈まないもんだと感心する。大きさは……遠山はわりと目算が得意なんだが、俺はそこまでだ。デカいなぁ、としか言えない。せいぜい言えるのが大きさ的に学校の校庭にどデカい城が鎮座しているくらいか。屋根は瓦造りで藍色。ちょいちょい見える中国龍の装飾はビームコーティングをしているかの如く金色。外壁は朱色をメインに様々な色で造られている。あとはビッシリと彫刻があるのだが……あれは四神をモチーフにしているのか。

 

「いやスゴっ。え、何これ……えー」

 

 なんかもうそんな言葉しか出ない。語彙力は死んだ。この先の戦いには付いてこれない。いや、俺何言ってんだか。

 

 それはさておき、豪華絢爛とはこのことか。俺が今まで見てきた建造物で一番豪華じゃないか、これ。

 

「ありがとうございます。お連れしたかいがあると言うものです」

「ぶっちゃけこれ建てるのにいくらしたんだ」

「さぁ、どうでしょうね……?」

 

 少し気になりヤボなことを諸葛に訊いてみたが、実に誤魔化された態度だ。これ以上突っ込むのが余計に怖くなった。

 

 にしてもこの建物、海に浮いているわけだし、波浪やらに弱そうだな。この大きさじゃ素早く移動なんてできないだろう。香港にも位置的に台風とか普通に毎年来るだろうが、どうしてんだろ。なーんか危なそうだ。まぁ、この図体じゃ高速移動はできなさそうだから変に拉致られるってことはなさそうだな。岸まで超能力で飛べる距離。窓もパッと見多いし逃げよう思えば逃げれるだろう。

 

 それだけ判断して案内された入り口に入る。

 

「うぉ……」

 

 玄関にはチャイナ服を着ている大勢の可愛い女の子がお出迎えしてくれた。……さすが中国のヤクザ……スゴい通り越してむしろ怖いまである。いや、どれだけいるんだ……。全員この城の中で生活しているのか……どういう立ち位置なんだろ。

 

「……ん?」

 

 俺をひとしきり見たあと一部女の子たちがコソコソと何やら言い合っている。俺をチラチラ見ながら。え、なに、こんな堂々と陰口言うの? いやもうそれ本人の目の前だし、陰口どころか日向口だろ。

 

 ――――と思ったが、どこか様子が違う。中国語は分からないが、悪口とかで向けられる嫌悪感ある視線というよりかは好奇心に溢れた女子特有の視線を感じる。

 

「なぁ諸葛。俺のこと、この人らになんて説明した?」

「私は大切な客人が来ると言っただけですよ」

「……………………私は?」

 

 その表現、嫌な予感しかしねぇ。

 

「はい。猛妹が比企谷さんのことを何と吹聴していたのかは私の預かり知らぬところですが」

「あぁ、うん」

 

 何となく予想はできる。あることないこと言ったんだろうなぁ。

 

「まぁいいや。それで、猛妹はどの辺りにいるんだ? まだ謹慎中なら近付かないようにしたいけど」

「そうですね…………ん。これはまさか」

 

 と、少し険しい顔になった諸葛は近くにいる人に何か話しかけている。トラブル?

 

「申し訳ありません、比企谷さん。ちょっと急用ができました。しばし席を外します。好きに見学をして構いませんので、ご自由にどうぞ」

「えっ」

 

 そう言い残してから諸葛は慌てた様子で引き返していった。――――俺を残して。

 

「……あの、困るんだけど?」

 

 何が困るって多分この場にいる人たちと言葉通じない。周りにいる女の子たちは中国語ばかりで日本語を話せる人はいなさそうだ。あの、ただでさえ俺がコミュ症だとしても周りが話せないと物理的にどうしようもないんだが? 諸葛ー! せめて俺も連れていってくれー! お前の邪魔はしないし、大人しくしてるからー!

 

 ……なんて心の中で叫びたがったり。あの映画見たときは何て言うか、よく分かんねぇって気持ちが強かったな。あ、そういう結末になるんだ? とかね。どこかスッキリしない終わりだった。って、どうでもいいな。

 

「えー……」

 

 周りにいる女の子たちは俺を遠巻きに見ている。や、やりづれぇ……。マジでどう動けばいいのか判断つかない。ここまで心細いと感じたことは生まれて初めてかもしれない。折本に告白とかで変に目立つことは今まであれど、こういう状況で不安になることはあまりなかったような気がする。断言できないけど。

 

 と、とりあえず諸葛に言われた通り、見学でもするか。もし逃走とかなったときのために中の構造やら把握しておきたいし。その前に荷物置きたいな。どこに置けばいいのやら。

 

「――――」

 

 荷物は応接間であろう目立つ場所に置いてから歩き始める。まぁ、もし盗られても逃げ場ないんだし、すぐ見付けれるだろう。…………うん、頭の中でゴチャゴチャ考えているけれど、至るところから視線めっちゃ感じる。こうなったら話しかけてくれ生殺しすぎる。って話しかけられても答えられないか。

 

 動こうにも女の子たちが多くて階段やら通りにくいな。あの中を断りを入れつつ通るのもしにくい。こんなとこで人見知り拗らせなくてもと思うが、そういう性分なんです。まぁいいや。飛翔で2階に上がろう。昨日に比べれば超能力は普通に使える。

 

「……っと」

 

 飛翔で女の子たちの上を飛び、踊り場に着地。後ろからざわめく声が届く。何を言っているのかは分からないけれど、離れていてもその喧騒は大きいものだと分かる。まぁ、いきなり人が飛ぶのを間近で見たらそうもなるか。正確に言うと、フライってよりかは空中で何回もジャンプしているのが近いんだけども。

 

 2階に上がる。しばらく廊下を歩くと扉が開いていたあ部屋があったので覗く。そこには大理石の床に赤色の絨毯、円柱には黄金の龍の装飾もある。成金かよ。ちょっと奪ってもバレないんじゃないかと邪な考えが浮かぶほど、これでもかと金がかかっている造りだ。

 

 それから廊下、バルコニー、3階とゆっくり見回ることにした。バルコニーは陽射しを防ぐような造りになっていたり、途中に植物園のような場所もあったので見学させてもらったりした。が、中にいる人たちは一般人ばかりだった。さすがにそこいらに戦闘要員はいないか。使用人と思わしき人がとても多いな。確かにデカい建物だし、そのくらい雇う必要あるんだろう。

 

 それはともかく――――

 

「……いや、暇だな」

 

 だいたいの構造は把握したころ、俺はポツリと呟く。することがないというより、できることが少ない。暇を潰すための本は昨日の晩に読み尽くしてしまった。2階のバルコニーにベンチがあるからそこに座って景色を眺めつつボーッと過ごす。

 

「……ん?  ……あっ」

 

 数分、数十分、どのくらいいたのか分からないほどベンチに座っていると、しばらくしてクルーザーがこちらにやってくるのが見えてくる。誰か来たのか、あ、諸葛帰ってきたのかと思い身を乗り出して観察する。んー、確かに諸葛が乗っているのは確認できた。その周りにいる人物たちは――――

 

「お」

 

 誰か分かった瞬間、思わずバルコニーからジャンプしてクルーザーまで一直線に飛び降りる。烈風で減速をかけつつ着地に成功。

 

「レキ、お前もこっち来てたのか」

「はい」

 

 いたのはバスカービル+αの面々だ。普段ならこんなことしないだろうけど、周りが言葉通じない人だらけで不安だったんだ。知っている顔を見付けたら近付いちゃうよね。

 

「うわっ、うっそぉ、八幡じゃない。ホントにレキの言った通りだわ……」

 

 神崎は俺が現れたこととは別の意味で唖然としている。どしたの?

 

「何がだ?」

 

 何のことだか気になり神崎に訊く。

 

「八幡、アンタが藍幇の本拠地にいるかもってレキが言っていたのよね」

 

 あれ、さすがにこの情報を教えるのは不公平だと思って黙っていたけど。

 

「俺、レキに行き先言ってないだろ」

「はい、行き先は訊いていませんでした。ただ、八幡さんに仕込んでいるGPSがどうも洋上を示していたので、恐らくそうなのだろうと話していました」

 

 ……。

 …………。

 ………………。

 ……………………。

 

 

 …………………………うん?

 

 

「え、なに、お前今何つった? GPS?」

「そうですよ」

「いつ仕込んだ!? ていうかどこだ!?」

 

 何それ初耳なんだけど!

 

 いきなりの事態で声が荒げてしまう。待って待って。え、マジで? GPS? 俺に今付いているの? そんなのされた覚えないんだけど。てか、俺のプライバシーはどこへ行った。……そう青ざめつつ未だに無表情を保つレキに恐る恐る訊ねる。

 

「……えーっと、俺の携帯からか? それなら納得できるけど」

「違います。場所は言及しませんが、基本的に八幡さん本体からの信号です」

 

 …………怖いよ。ひたすらに怖いよ。

 

「とはいっても、分かるのは場所だけですよ? 盗聴はしていませんので安心を」

「できるかっ!」

 

 思わず叫ぶ。『私は別に悪いことはしてないですよ? 何か問題が?』とでも言いたげな顔は止めろ。

 

「う、うわぁ……ハチハチ、うーん、ドンマイだねこれは。いやー、レキュってばわりと拘束したがる系女子? アハハ、愛されてますなぁー!」

「理子、それは愛されてるって言うのか。いや、比企谷、なんつーか……頑張れ」

 

 理子はめちゃくちゃ笑いながら俺の肩をバンバン叩き、遠山は同情の視線を見せつつ半ば諦めた様子。そして、星伽さんは――――

 

「なるほど……GPS……そんな手もあるのね。覚えておかなきゃ。でも、私にそういうの扱えるかな。レキさんに教えてもらえるかなぁ……それならキンちゃんを…………」

 

 なんてことをブツブツ呟いている。訊かなかったことにしよう。案の定というか、遠山は星伽さんの呟きを訊いてないみたいだし。

 

 あとでじっくりと俺の持ち物調べておかないこと今後が――――

 

「――――ッ」

 

 船内からかすかに足音が耳に届く。その音は徐々に大きくなると同時に嫌な予感が迸る。そして、この俺に対して向けられるこの独特な気配は――――

 

「はっちまーん!」

「出たな猛妹!」

 

 他のココ3人に引き留められながらも猛妹は這い出るように船内から突撃してくる。

 

 さっきは猛妹のことを嫌いではない云々と思ったが、出会ったからには話は別だ。俺が殺られる(主にレキに)前に気絶させる。我が身は大切なのでね。俺はすぐさまヴァイスを組み立て迎撃体勢をとるけど、遠山に肩を掴まれ忠告される。

 

「船で暴れるな! しかもわりと小さい船で! ていうか棍棒は止めろ。こっちが危ない」

「そうよ、アンタらが暴れたら船が壊れるわ」

 

 神崎には言われたくないけど? お前みたいな暴走列車と一緒にするなよ。

 

「猛妹止めるネー。今はイレギュラーと接触は禁止ヨ。また厳罰喰らうヨー!」

「諸葛のネチネチ口撃は嫌ヨー」

 

 ココ姉妹にも必死に止められている。その様子を見つつ諸葛にコイツらどうにかしろといった視線を送る。

 

「…………」

 

 お前はニコニコと見守っているだけかい。

 

 いやまぁ、戦力として恐らく弱いであろう諸葛がこの場に突っ込んだらケガしそうだしな。超能力を使える雰囲気は特にないし、参加する気はなさそうだ。触らぬ神に祟りなしってか。

 

 と、俺の近くでまた別の声が発生する。

 

「――――」

「ちょ、レキュレキュ! 無言でドラグノフ構えないで!」

「レキさん、止めようね!? ね?」

 

 また別の方向ではレキがドラグノフを猛妹に向けているのを理子(わりと焦っている。どうやら防弾服をぶち抜く弾であるアーマー・ピアスを装備していたらしい)と星伽さん(あなた散々俺らの部屋壊してきたよね?)がレキを止めている。

 

 ものスッゴいデジャブ。ついこの間も似たようなことがあった気が……あ、記憶から消したい。でも負の記憶って基本的に消えないんだよね。ふとしたときに思い出して、どうして自分はあのときこうしたのだろうと黒歴史が発掘されて死にたくなる。

 

 つーか、お前らホント、水と油だなぁ!?

 

「やーん、八幡怖ーい」

「ちょ……猛妹、こんなに力あったの!?」

「止まらナイ……」

 

 猛妹は猛妹で姉妹を力ずくで引きずりながらこちらへと進んでいる。

 

 姉妹たちは迷惑を必死に止めているように見えるが、さすが近接戦で遠山に一度勝った化物なだけある。我関せずと言わんがばかりの勢いだ。しかもこの状態で猫なで声を出しながら。喉絞められてるのにどうやって出してんだよ。

 

「…………よしっ」

 

 状況は確認し終えた。

 

 結論として、俺がここにいたら特に何ともなかった爆薬に火を付けるだけだ。これはあれだな、さっさと逃げるに限る。爆弾が爆発したらこの場にいる全員に迷惑がかかるだろう。いきなり飛び降りて現れたのになんだけど、飛翔でバルコニーに帰らせてもらいます。

 

「ハチハチー! コラー、逃げるなー!」

 

 理子の叫び声を背中に俺は空を駆け抜けちゃっちゃと逃げた。

 

 ごめんな、理子。悪いとは思っているけど、俺はできないことはしない主義だ。時間のムダなのに加え、効率が悪い。もうちっぽけな俺にはこの場を収めることなど不可能に近い。ねじれの位置にある存在はどうあっても交わらないのだ。……交わらないよね? 数学の成績は終わっているので自信がない。まぁ、帰国したらジュースでも奢ってやるよ。

 

 つまり……もうなるようになーれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




なんか似たような引きが多いのどうにかしないとな……あまりにもレパートリーがなさすぎる……
感想、評価などお待ちしております(今更感)


9-nine-の主題歌のカラオケ配信始まったからカラオケ行きたい

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