八幡の武偵生活   作:NowHunt

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Disaster of Irregular

「さぁてと、どう攻めるかな……」

 

 目前に相対するは今までとはまるで別物の敵。機械だ。美少女型ロボットのLOO。青い髪に少女体型、背部やらにはメカメカしい武装が見られる。見た目はぶっちゃけ好み。……ロリコンじゃないぞ?

 

 だからと言って手は抜かない。手を抜ける相手ではない。香港のときのように今後に備えて超能力とかの縛りもなしだ。最初から全力で戦える。後のことは知らない。

 

「…………」

 

 LOOの撃破自体は恐らく超々能力である何でも削り取れってしまう次次元六面――――影を使えば容易だ。しかし、そこまで持っていくのがかなり厳しいだろう。

 

 現段階の俺の練度では、まず影を俺の周辺へ出現させるのに1秒、そこから操り始めるのに1秒かかる。

 

 そして、正確に影を操れる範囲は俺を中心に半径15m。それを越えると正確な座標入力が難しくなる。俺本体の守りも疎かになるしな。理想は俺のセンサーの範囲内で操るのがベストだ。

 

 影の操作速度の最高速が時速80km。しかし、これは複雑な操作をするなら速度は格段に落ちる。このスピードで人間相手なら未だしも機械相手では捉えきれるか分からない。操れる数は最大10個。影の数が少なければ少ないほど操作精度は上がる。

 

 何より――――まぁ情けない話、影を使うのに普段とは別の集中力を使うから1分越える辺りで維持ができなくなる。加えて、レーザーほどではないが、力の消費が早い。ヒルダのときは実質動かした数は少なかったから多少は時間を稼げたが、それでも2分も動かしていない。

 

 この体たらくで単純に影を当てるのは難易度が高い。つまり、そこまでの展開にするためにある程度LOOの機動力を削る必要がある。

 

 だから一先ず影はお預けだ。なんなら防御専用にする方がいいか……?

 

 

 

 ――――と、一度話を戻す。

 

 例えアホみたいにイカれているブラドやヒルダ、パトラとかでさえ一応は生物なんで、色々と攻めようはあったが、今回に限ってはな……大見得切ったはいいんだけど、どうしようか迷う。いやまぁ、吸血鬼共の魔臓はあれ反則級だけどな。

 

 操作するのはシイタケだろうとAIとかの自動操縦だろうと、当たり前だがまず人間とは装甲が違う。一先ずはどの攻撃が効いて効かないのか、ハッキリさせないといけない。銃が効いてくれれば普通に助かる。それに、向こうの武装の種類とかもだな。

 

 距離はおよそ50m。どうにか距離を詰めてとりあえずこちらから先制攻撃を――――ってダメだ。

 

「来ます」

「――――あぁ」

 

 LOOの腕が動く。 さっきから見えていた腕に取り付けられている……あれはミニガン――――M134がこちらを捉える。

 

 どうやら背部に取りつけられていたみたいだ。それらを 腰脇から突き出し構える。

 

「うーっわ」

 

 思わず愚痴に近い呻き声を上げる。引くわー。

 

 M134。それは口径7.62mmの機関銃。性能はあまりにも化物過ぎる。6本の銃身を持つ電動式ガトリングガンだ。毎分2000から4000発(秒間60発)という単銃身機関銃では考えられない発射速度を持つ。うん、バカかな? バカだよ。

 

 なんなら当たれば痛みを感じずに死ぬって言われているからな……。一瞬でミンチである。なにそれ怖い。レキの扱う対物ライフルとはまた別ベクトルの恐ろしさがある。

 

 まず人間1人での運用は不可能だ。なにせ本体の重量だけで20kg近くあるからね。それからバッテリーや大量の弾丸とかもろもろ加えたら……まぁ、どんな奴だろうと扱うのは現実的じゃない。加えて反動とか考えたらな……軍用ヘリに付けられてるパターン多いし。

 

 ロボットならではの運用方法か。唯一の救いは弾丸の予備がないって部分だな。見えている部分の弾丸さえ防げばそれ以上はない。

 

 ない、んだけど。

 

「…………」

 

 とはいえ……あのー……明らか過剰戦力じゃありませんこと? 個人相手に使う代物じゃないぞマジで。俺らに死ねと? あ、向こうは最初から殺す気ですねはい。しかも、弾数あれ数百発はあるよね?

 

 まぁ……今の俺なら多分大丈夫だろうけど。

 

「レキ、俺の後ろに」

「はい」

 

 と、レキが俺の後ろに身を隠した瞬間――――バリバリバリバリバリ!!! と、無数の弾丸が閃光と共にやってくる。それはまるでレーザーや火炎放射のようだ。

 

「――――ッ!」

 

 普通にしてたらまず死ぬ。余裕で死ぬ。こんなの、生身なら受け止められるわけがない。代程の重装備で身を護らないと絶対死ぬ。

 

 

 

 だけどお生憎様――――俺も、自分では言いたくないがどうやら普通とはかけ離れているみたいでな。

 

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽

 

 

「…………な、何だと!?」

 

 今、僕は信じられないものを見ている。

 

 ジーサードの追跡を止めるため、単身……ではなく2人だがLOOの足止めを行ったイレギュラーこと比企谷八幡とスナイパーであるレキの相手をしていた。

 

 いくらイレギュラーがSDAランクに入っているとはいえ、所詮は人間だ。軍相手に敵うわけがない。そう思ってLOOに搭載されているM134を掃射した。

 

 何も遮蔽物もなく、通常なら人としての原型を留められないほどミンチにできる武器だ。こんなの防げるわけがない。普通ならそうだ。そのはずなのに――――

 

「どうして無傷なんだ……!?」

 

 目の前の光景が信じられずに独りでに叫ぶ。モニター越しの映像がCGやカメラが壊れていると信じたいほどだ。

 

 無傷、掠り傷すらない。いや、掠り傷が少しでも付くことはない。命中する、それ即ち死んでいると同義だ。ならLOOが外した? いや、あれはM134の反動くらい何なく耐えれる設計はしているし、コンピューターだから計算に狂いはない。

 

「なら……外させた、のか!?」

 

 消去法で考えるとそれしか思い付かない。事実、モニターの映像を解析するとイレギュラーの周りに着弾した跡が何発もある。

 

 一体イレギュラーは何をした――――

 

「そういえば……」

 

 先日イレギュラーと会った際、超能力を使えると言っていた。色金の力も使えるようだが、何より得意なのは――――風の力。

 

「まさか風で銃弾全部逸らしたって言うのか!」

 

 そんなことが可能なのかと悪態を吐きたくなる。たかだか風で銃弾を逸らせるなんて一体いくら風力が必要だと思っている……。その力を目の当たりにすると本当にインチキかと思いたい。何なんだそれは!

 

「――――!」

 

 と、こちらの動きがしばらくなかったからか、動揺が見て取れたのかイレギュラーはスナイパーを置いてこちらへ駆け出す。何もスナイパーには告げずいきなりだ。不味い、完全に気を取られていた。

 

「くっ……」

 

 いきなりの攻防のあり得なさに慌ててしまうが、すぐに次の手を打たなければいけない。こちらにある程度の情報があるとは言え、こういうエキスパートは自身の情報をできる限り伏せるものだ。まだイレギュラーが何をしてくるとは分からない。

 

 LOOを操作して発射し終えたM134をパージして自動手榴弾ランチャーであるMK-47ストライカーを2門構えさせる。と、ちょうどイレギュラーを狙おうとしたその瞬間カメラからイレギュラーの姿が消える。

 

 どこへ? カメラを追うと上にだ……これは……。

 

「飛んだ……?」

 

 先ほど空を滑空していたLOOを叩き落としたときと同じようにいきなり飛び上がる。

 

 イレギュラーが空を飛べることは知っている。まぁ、ただの人間が 何も使わず飛ぶなどどういうことだと問い詰めたいが……今はそんなのはどうでもいい。

 

 なぜ今そのような行動を取ったのか不明だ。空中にいれば避けれると? それは安易な行動だろう。実際自分の体で戦ったことのない僕でも理解できる。それでは逆に身動きが取れなくなるだけ……。

 

 そう判断し、僕は再度イレギュラーへと狙いを変えようとした。その刹那――――ドゴオォォォォン!!! と、MK-47ストライカーがなぜか爆発した。

 

 は、はぁ!?

 

『流石だ』

 

 まさか整備不良かと思ったとき、イレギュラーの呟きが聞こえた。

 

 流石だと? 何が? いや、答えは1つ。ライフルを突き出しているスナイパーが何かしたんだ。まさかドラグノフでこちらの武装を破壊するとは……何をしたのかまだ分析が――――いや、今出た。

 

 …………ドラグノフの銃弾でMK-47ストライカーの銃口を正確に撃ち抜いた? そんな曲芸フィクションだと疑いたくなる。……何なんだ、この2人いくら何でも人間止めすぎていないか?

 

 今度は空中から落下中のイレギュラーが銃を取り出した。あれはFN社のFive-seveNか。P90のサイドアームとして有名な拳銃だ。貫通力のある弾丸を発射できるのが特徴だな。イレギュラーの主武装と記録にはある。

 

 それをLOOに向かって何発かばら蒔いてきた。

 

 先ほどのお返しと言うわけではないが、その程度ならこのLOOは問題なく弾ける。着弾した場所はまばらだ。装甲も駆動部やエンジン部も問題ない。

 

 どうやらあのスナイパーほどの射撃技術はイレギュラーにはないようだ。まぁ、あんな技術持った奴が複数人いてたまるかと思いたい。

 

『……効かないよな』

 

 それはイレギュラーも分かっていたようだ。先ほどの射撃は確認の意味合いが強いのかな。

 

『だったら』

 

 着地の隙を狙うためにLOOを操作しイレギュラーとの距離を詰める。彼が着地したと同時にLOOは肉薄し、彼を殴るためその拳を振りかぶると、イレギュラーの指がLOOと同時にクイッと動いた。

 

 何だ――――と思った瞬間、キンッ! という金属同士がぶつかった耳障りな甲高い音を立て、LOOの腕は少し弾かれ軌道が逸れた。イレギュラーも体を捻っておりLOOの攻撃は当たらず。

 

『鎌鼬も弾くか。固いなこれ……しかも思ってたより速い』

 

 イレギュラーの話す内容は分からないが、推測するにまた何かしらの超能力で迎撃したそうだ。結果として効果は現れなかったが。

 

 しかし、いつまであちらのペースで進められるのは良くない。ということで、攻撃が逸らされたが間髪入れずに機械の力を用いた全力の蹴りを喰らわす。

 

『うおっ』

 

 イレギュラーの胸板に当たる直前、彼は腕をクロスさせ咄嗟に防御体勢を取る。ただの人間相手ならばそれで充分だったろう。だが、相手はLOOだ。それだけでは当然勢いは殺しきれない。持ち前の固さや機動力も相まって威力は相当のものだろう。イレギュラーは蹴りを受けきれず大きく吹っ飛ぶ。

 

 ――――しかし。

 

 

 

 

▽▽▽▽▽▽

 

 

「八幡さん」

「……大丈夫だ」

 

 クッソ、コイツの蹴り威力ありすぎだろ。20m以上離れてたレキの近くまで吹っ飛ばされたぞ。さすが機械か。単純な蹴りの威力なら神崎より勝っているし、カジノで戦ったパトラの巨大ゴレムのパワーとほぼ同等だ。

 

 最初の動きは鎌鼬で逸らせたが、次の行動が速すぎて烈風での威力軽減も間に合わなかった。アンガスさんか付けてくれた腕のアーマーで受けたから軽傷で済んだが、これ直で喰らったら不味い。どうにか転がりつつも受け身も取れたしな。

 

 ……さてと次に肉薄されてあれを避けきれるか? レキに矛先が向かないように注意しないとな。

 

「アンガスさんに感謝だな」

 

 それだけ呟く。一先ず仕切り直しだ。

 

 また互いに距離を取る。とりあえず向こうの遠距離武器はある程度レキが潰してくれた。まさかグレネードランチャーもあったとはな。

 

 まぁ、まだランドセルのようなものを背負っているけども。あれも何かしらの武器だろう。ただ、すぐに使ってこないところを見ると切り札……とでも言うべきものなのかもしれない。現時点では遠距離武器かどうかの判別もつかないし。

 

 ということは、あれが本当に遠距離武器という前提が加わるが、あれを使われない限り向こうに遠距離の武装は今のところない。勝負を決めるには近付く必要がある。

 

 ……それは互いにな。俺の遠距離武器、ファイブセブンは見事に弾かれたし、この調子ではドラグノフで撃ち抜くのも厳しい。LOOの間接部や人体で脆い部分もちゃんと硬い素材で覆われている。

 

「あれ破壊できるか?」

「駆動部を露出させればあるいは」

 

 だよなぁ。

 

 なんかもう嫌になってくる。なんて理不尽な相手と戦わされているんだ俺らは。

 

 ていうか、どうして今膠着しているんだ? 俺がキノコの立場ならさっさと追撃させるが……。今度は距離が離れているから、烈風を使う隙間はあるだろうし、ある程度は対処してみせるが。

 

 こうして時間を消費してくれるのは遠山たちのことを考えればありがたいが――――ん?

 

「八幡さん」

「あ、あぁ。あれは何だ……」

 

 LOOの遥か後方、X-48E『グローバルシャトル』が俺らを通り過ぎようとするには距離がありすぎる時点で何かを射出するのが見えた。いやまぁ、あのシャトルもどうにかしたいが、そこまで手が回らないので遠山たちに任せた!

 

 で、射出したあれは何だ? というより。

 

「何機だ?」

「目視できる範囲で数20」

 

 いやこれ普通に多いな。子機……ドローンか? …………あ、近付いてきて分かったけど、ドローンの方がマシなくらい厄介だわ。あれは授業の資料で見た覚えがある。MQ-1『プレデター』だ。

 

 なんていうか、目のないイルカみたいな、機首が変な……特徴的なデザインの無人攻撃機。特徴的だからわりと覚えていた。無人機つっても全長がたしか15mほどでそこそこデカいんだけどな。まぁ、無人機だから偵察にも使える、ピンポイントでの爆撃や射撃にも使える便利な代物だ。

 

 そりゃ、あまりLOOも動かさないわ。

 

 …………え、ていうかマジでこれ俺らに使うの? 明らか過剰戦力だろ……。ていうか、別に俺らではなくてトランザムの方を狙っているのか。遠山たちの方へと行かせるのもヤバいよな。20機まるまるはキツいだろう。ある程度数削りたい。

 

 と思ったが。

 

「うわっ……」

 

 20機のうち10機が軌道を変え、俺らに狙いを付けてきた。いや数多いなぁ……。それだけ引き付けているからあっちが楽になるって考えになるからまだいいか。ていうか、向こうの戦法が物量で押し潰すってのがまぁアメリカっぽい考えだこと。

 

「……っと」

 

 あ、X-48E『グローバルシャトル』が俺らを通り過ぎてしまった。あー、ごめん、あれの対処は遠山たちに頑張ってもらおう。そうしよう。今はプレデターたちをどうにかしないと。

 

 プレデターは半分ずつ旋回し角度を付けつつ、バララララッ――――と、マシンガンで撃ってくる。が、覚えてないのか、マイタケよ。さっき俺はM134を防ぎきったぞ。いくら撃とうが、いくら数を増やそうが、烈風の出力なら俺とレキに当たらないよう逸らせる。

 

 と内心ドヤ顔を決めていたら、ふとマシンガンでの射撃が止む。次はどう来る…………いやごめん、ちょっと待って? AGM-114ヘルファイア――――空体地ミサイルは訊いていない!

 

「お前はアホか!」

 

 なんで人間2人沈めるのにそんな代物使うんだと思わず感情任せにらしくないツッコミを入れる。

 

「レキ、俺にできる限りくっ付け」

 

 各機2発、合計で20発が発射されたのを確認してからレキにそう指示する。と、レキはピッと俺の背中にもたれかかり背中合わせになる。

 

「プレデターを対処します。八幡さんはヘルファイアを」

 

 そう言ってからレキの絶対半径(キリング・レンジ)の範囲内で飛んでいるプレデターを片っ端から狙撃し、何機か撃墜している。しかし、セミオートのドラグノフだと全部撃墜させるのに時間がかかるっていうか、撃墜されたのを確認してから散開して射程外に逃れている。

 

 プレデターはレキに任せて俺は俺で仕事をするか。

 

 レキもまるでヘルファイアは気にしていない。下手にレキが狙撃すると爆発し巻き込まれるだけなのに加え――――俺がどうにかしてくれると信頼しているからこその行動だろう。それはある種の脅迫に近いかもしれないがな。

 

 

 ――――ならば、彼女の信頼には応えないといけない。

 

 そうでなければ、彼女と背中を合わせる意味がない。そうする必要性もなくなる。俺がこの立ち位置にいていいと、彼女に俺を必要だと言わせるためにも、何よりそうであると俺自身を納得させるために――――その信頼に応えてみせろ。

 

 

 着弾まであと10秒もない。四方八方から20発のミサイルが迫っている。何もしなければここでお陀仏。だから、まだ試したことないことを今からする。

 

 俺が使える超々能力の影は一辺およそ30cm。ヒルダ戦ではそれを複数出したが、今回に限り、それでは足りないことを察する。

 

 もしヘルファイアの一部だけ削り取ればその時点で爆発してしまうだろうからだ。いくら直径が20cmもないとは言えな。影で防ぐには全部呑み込む必要がある。

 

「来い、影よ」

 

 もう俺たちのすぐ側までヘルファイアが来る。あと3秒あれば俺たちに当たる。――――その寸前、影を出す。

 

 数は7つ。大きさは一辺およそ1m。今まで出したことのない大きさだ。それを俺とレキを護るため周囲に展開する。

 

「くッ……」

 

 今まで展開したことのない大きさと数に集中力が切れそうになる。ただでさえ、影を長時間出現させることは慣れていない上に、サイズをいつもより大きくしている。多分これは30秒も維持できない。

 

 しかし、この状況では30秒もいらない。

 

 ――――巨大な影はヘルファイアを全て呑み込む。地獄の業火の名前は不発に終わる。否、不発ではない。まだ業火そのものは影の中で生きている。そして、その業火は既に俺のモノだ。

 

「お返しだ」

 

 そのまま影からヘルファイアを排出する。特に狙いは付けていないが、プレデターのいる空へと撃ち出す。

 

 シイタケからしたら全くの想定外なのだろう。何機かはいきなりのことで対処できず俺が返したヘルファイアに命中し爆発する。そして、全機の操縦にも焦りが見える。ヘルファイアから免れたプレデター残り――――6機はレキの絶対半径に入ってしまう。

 

 こうなってしまってはもうこの最高峰の狙撃手からは逃れられない。レキは片っ端から捕食者の名を持つ無人攻撃機を撃ち落とす。

 

 

「……ふぅ」

 

 プレデターが沈むのを確認してから影を解除し、緊張感からの解放からか影を出した疲れからか、ほんの少し気が抜けた。その瞬間、それが間違いと気付く。厄介なのがまだいることを思い出した。

 

「不味い――――うッ!」

 

 完全に意識から抜けていたLOOがとてつもないスピードで突っ込んで、迫って来る。しかも、その狙いはレキだ。俺は咄嗟にレキと立ち位置を入れ換える。ヤバい、防御体勢が取れない。

 

 LOOが展開した巨大な3本爪の鉤爪をアーマーを付けた腕と比べては防御の薄い腹に喰らう。

 

 もしここで殴り飛ばされてしまえば、更に追撃で無防備なレキが危ない。そう判断した俺はどうにかレキを抱え踏ん張る。

 

「……ゴホッ……!」

「八幡さんっ!」

 

 結果として、少しばかり後退した俺は衝撃は逃がし切れず全部のダメージを受けてしまう。かなりの力に口から吐血する。

 

 あー、口の中で血の味がする。気持ち悪い……。つーか、めっちゃ痛い……あのコートでも吸収できないってどんだけ強いんだよ。クッソが、かなりのダメージ負ってしまったわ。それも……。

 

「多分肋骨かどっかヒビ入ったか折れたけど、今は大丈夫」

 

 ただ、今この瞬間は平気……とは違うかもしれないが、まだ動ける。あと骨折は経験しているからね。

 

 ヘルファイアを迎撃してからアドレナリンがドバドバで見た目以上の痛みはない。まぁ、もしアドレナリンが切れたらあまりの痛みでのたうち回るけどな! とりあえず痛み止めを打つ前に。

 

「――――動くな」

 

 かつてセーラが俺に使ったように烈風でLOOを抑え付ける。

 

 ……うん、一先ずギシギシと動こうとしているLOOの足止めには成功している。人間より軽いし抑え付けやすいまである。ただ、これ痛み止め打とうとすれば烈風が途切れてしまうな。

 

「悪い、ちょっと打ってくれ」

「分かりました」

 

 レキに注射してもらうことにしました。字面がえっち。

 

 と、痛み止めで少しはマシになった。頭も少しは澄んでクリアになった。逆に痛みのお陰で不思議と心は落ち着き冷静になれている。

 

「…………」

 

 この状態で影を使えれば勝てるが、そうはいかないのが現実。なぜなら、もう影を使う力は残っていないからだ。

 

 何と表現すればいいのか、俺が使える超能力と色金の超々能力を使うMPとでも言えばいいのか。まぁ、単位で表すなら超能力はGなんだが……これは別物に近い。

 

 これは完全に俺の感覚だが、それぞれ別物2本のゲージが存在するのだ。烈風を使えるゲージはかなり長いが、超々能力のゲージは烈風と比べるとかなり短い。だから、レーザーはすぐキャパオーバーするし、瞬間移動でも使いすぎると限界が早く来てしまう。香港ではそれで気絶したからな。

 

 先ほどの影で超々能力のゲージはもう使い果たした。だから、今はもう使えないのだ。ただ、烈風はまた別だ。あれだけ防御に使ってもまだまだ使える。

 

「さてと、決着を付けるか」

 

 キノコ頭に向けてそう口では言うが、ファイブセブンも鎌鼬も効果は表れなかったのは事実だ。しかし、烈風で抑え付けはできているし、最初の軌道をズラすのも成功している。烈風での攻撃は効果があるにはある。

 

 であれば、やり方を変えるだけだ。

 

 

 ――――俺の新技の最大火力を魅せてやる。

 

 

 そう決心した俺はまた新たに集中力を練り始める。

 

 

 ――――烈風で扱ってきた風の操作。

 

 ――――飛翔で用いた風の暴発。

 

 ――――鎌鼬で使う圧縮させた風の斬撃。

 

 

 人差し指と中指で銃の形を作る。

 

 今から行うのは今まで俺がしてきたことの集大成。烈風、飛翔、鎌鼬、今まで使ってきたこれらの技術を全て応用させた1つの技。

 

 指の先に風を圧縮させる。ひたすら、ひたすら、ひたすら、圧縮させる先を1つに収縮させる。

 

 風の操れる範囲はセーラに及ばない。それは紛れもない事実だ。しかし、そんな俺でも威力だけで言えばセーラに劣るが、それに近い威力は出せる。台風やハリケーンの中でも高レベルの風は生み出せる。

 

 つまり、俺の指先に集まっている風は台風やハリケーンそのものだ。災害、天災の1つだ。どれだけ一個体として強かろうとも、軍事力そのものが相手でも天災には敵わない。これはそういう代物だ。

 

 この技は一点に固めた天災そのものを解放する風の弾丸。

 

 

 

「――――災禍」

 

 

 

 放つ瞬間、烈風での拘束を解除する。次の瞬間――――風の弾丸を腹部へと命中し、メキメキッという音を立ててLOOは大きく吹っ飛ぶ。恐らく50mは吹っ飛び転がる。

 

 その硬い装甲は腹部を中心に広く深くヒビ割れている。ヒビ割れた部分からは煙を上げ、明らか大ダメージなのが分かる。

 

「…………」

 

 ……一先ず成功して良かったと安堵する気持ちが大きい。

 

 この技は確かに強力だが、撃つまでに時間がかかる。なんで、相手が動かない間に溜めるしかないし、おまけに反撃されたらそれだけで集中切れるし、うっかり解除してしまったら暴発することになる。それに射程距離も5mと短いしね。

 

 そして、これを使えば烈風のMPの大部分を使うこととなる。連発はできない、文字通りこちらの切り札だ。相変わらずピーキーな性能しているな。使いにくいことこの上ない。

 

「……って」

 

 まだ大破していないLOOは両手両足の鉤爪で自身を固定させる と、背中にランドセルのように装着していた装備が展開させる。それはまるで1つのデカい大砲。ゲームみたいに名付けるならキャノンモードってところか。

 

 コイツ、あそこまで壊れていてもまだ動けるのか。なんて丈夫な奴なんだ。しかし、それも限界に近いはずだ。割れた装甲は徐々に燃え始めている。

 

 ――――これがLOOの最後の一撃だ。

 

 その砲身の中身からバチバチッと電流が走る様子が肉眼でも確認できる。これは今までの兵器とは違う。ジーサードやかなめが扱う超最先端科学の兵器だろう。パッと見の印象はレールガンや陽電子砲のようだ。

 

「…………はぁ」

 

 どうやらそれを俺らに撃ち込むつもりらしい。とはいえ、もう俺にあれを防ぐ力は残っていない。影も出せない、烈風で防ぐのは厳しいだろうし、そもそも防げるほどの風力はもう出せない。俺ではあれはもうどうにもできない。

 

 

 

 だからこそ、俺の出番はここまでだ。そんな大技を放つためのあまりにも大きすぎる隙を――――蕾の姫は見逃さない。

 

 

 

 タァン、タァン……! という銃声が俺の側で聞こえる。そう感じた瞬間にはLOOの砲身がとてつもない音を奏で、爆発する。ドラグノフの弾丸が砲口に入り、着弾すると銃弾そのものが連鎖的に爆発し、その結果砲身も爆発した。

 

 あの爆破の仕方は、武偵弾の炸裂弾だ。最後の最後でレキも魅せてくれたな。普通の銃弾ではあそこまで破壊できるか怪しいと判断したのか、即座に切り替えたみたいだ。

 

 砲身が爆発しだが、それを支えていたまだLOOは原型は留めている。しかし、爆発に耐えきれなかったのか、もう限界なのかうつ伏せの状態で倒れ、もう起き上がる気配はない。

 

 つまり、これは……。

 

「どうにか勝ったな」

「はい。追加で何かしらの戦力をここに持ってくることもないでしょう」

「まぁ、そろそろあっちも到着するだろうし、戦力割くにしてもあっちだわな」

「お疲れ様でした」

 

 LOOの撃破、向こうの追撃もだいぶ削った。充分な戦果だろう。

 

 ……あれ、ヤバい。終わったと思ったらいきなり力が抜けてきた……。と、不意に体に力が入らなくて倒れかけるとレキが肩を貸してくれた。

 

「大丈夫ですか?」

「って言いたいけど、そろそろキツくなってきた……」

 

 アドレナリンが切れてきたなこれ。痛みも相まって立つのがマジでキツい。

 

 レキは俺の様子を見ると砂漠に腰かけ、そのまま俺を寝転ばせてくれる。流れに逆らえず倒れた俺の頭には柔らかい弾力と暖かさが感じ取れる。

 

 ……どうやら成すがまま膝枕をしてくれているみたいだ。気持ちいいと思う感情と恥ずかしい感情がせめぎ合う。

 

「それ、辛いだろ。別にこのまま砂漠で寝転んでもいいぞ」

「いえ、それはできません。また八幡さんに何度も助けてもらいました。これはせめてもののお礼です」

「……お互い様だ。俺だってレキに何度も助けられた」

 

 真正面からの謝辞に思わず視線を逸らすと、レキは両手で俺の頭を掴み、グイッと視線を固定させる。あ、あの地味に勢い強くて痛いんですけど……。

 

「それでも、です。本当に助かりました。ありがとうございます」

 

 しかし、その綺麗な紅い瞳が俺を離さない。真っ直ぐ俺を見て、レキは感謝を述べる。

 

「さすが、八幡さんです。カッコ良かったですよ」

 

 そのふと自然に浮かべた微笑みが、決して脳裏に焼き付いて離れない。

 

「だから、これはそのお礼です」

 

 

 

 

 

 ――――それだけ話したレキはゆっくりと顔を下ろし、俺との距離はゼロになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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