八幡の武偵生活   作:NowHunt

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大海原の真上で

 ノーチラスへ来てからおよそ2週間経ったかまだギリギリ経ってないかそんな日。アバウトなのは船でいると時間間隔狂うから許してほしい。

 あれからは虎視眈々と脱出の機会を狙っていても当然そんな隙はなく、傍目から見ても真面目に働く日々を送っている。日中は重い荷物を無心で運び、それぞれの目的に合わせて仕分ける。そして、1日おきでの夜は日本語の授業をする毎日。

 

 下手に反抗心やら不真面目な態度を見せると何があるか分かったもんじゃない。

 俺への仕打ちは当然色々とあるだろう。最たる例としては飯抜きとか俺を良くないと思っている者からの闇討ち。単純な戦闘力なら俺は勝てるだろうが、原潜において俺が不利な場所は多い。彼女らの立場を用いれば監禁など容易かもしれない。

 しかし、俺への被害は別にどうでもいい。最悪どうとでもできる自信はある。何より心配なのはラムダの立場が悪くなることだ。

 仕事するついでに観察している限り、ノーチラスにおけるラムダの立ち位置は悪くない。コミュニケーションもしっかり取っておりそれなりに慕われている上、仕事も率先と様々な雑務を淡々とこなしている。

 まぁ……それはそれとして俺の監視兼世話役をしているからか多少なりと良くない視線を感じることがある。俺の主観でしかないし、ラムダからすればなんてことない可能性もある。

 

 だからこそ、下手に騒ぎを起こすわけにはいかないのだ。俺が何かやってしまえば監視の目もきっと厳しくなるし、ラムダに迷惑をかけるのは忍びない。

 もし脱出するならば動きは見せずに一気に決める。……しかないが、現状そう上手いタイミングなんて存在しない。だから大人しくするしかない。

 

 

 ――――そんなある日のこと。

 

 いつも通り働いていると、周りがやたら騒がしくなっているのに気付く。

 

「どしたこれ」

 

 最近は仕事に慣れつつ心のゆとりができていたこともあり、普段ほとんと関わりないノーチラスの船員だとしてもいつもと違う雰囲気だというのは分かる。これぞ長年人間観察で培ってきた眼だ。

 かなりの船員がやたらソワソワし慌ただしくしている。時折、艦内放送が聞こえるが……これ何語? 英語じゃなさそうだからドイツ辺り? さすがにドイツは分かんねぇ。グーテンベルクしか……いやこれ人名だわ。シュヴァルツなら知っているぞ。TGCって高いカードは引くくらい高いよね。500万以上するカード展示されていて正気かなって思ったわ。

 はてさて、今から何かしらイベントでも開催されるのだろうかと疑問に感じる。

 

「あ、八幡様」

 

 キョロキョロと辺りを見ていると、偶然近くを通りがかったラムダ含む数人が現れた。

 他数人はラムダと軽く話しながら、先へとどこか去っていった。あの方向は……たしか進んだ先にはノーチラスの入り口がある方だ。どこか港近くへ着くのかと推測する。

 

「おう。何だか騒がしいが何があった?」

「いえ、今からしばらくの間ノーチラスが浮上するだけですよ。寄港ではありません。周りには水平線が広がっています」

 

 あ、違うんだ。ところで。

 

「浮上?」

 

 俺がせっせと働いてる間にマキリがどこかの港から出ていったときはあるけど、それとは別に?

 

「ずっと閉鎖された空間にいるとストレスが溜まりますし、体内時計が狂いますからね。たまには日光を浴びて休憩するのですよ」

「なるほど」

「とはいえ、上へ行くのは希望者だけで中には行かない人もいますが……今回は八幡様も行っていいそうです。ネモ様の許可も頂きました」

 

 言われてみればその通りだ。イ・ウーにいたときもたまに似たような時間があった覚えがある。要するに船員のメンタルケアの時間も兼ねているとのこと。

 そして、ラムダの心遣いもまたありがたい。ノーチラスにおいて頭が上がらないことばかりだ。

 

 はてさて、別に行かなくてもいいとのことだが、せっかくラムダが労力を割いてわざわざ許可を取ってくれた。これで無視というのはあまりにも心象が良くないだろう。

 普段から引きこもっている俺からすればずっと屋内にいるのは問題ない。しかし、それはあくまで精神的な話であり、肉体的な話は別だ。

 日光を浴びないと先ほどラムダが言っていた通り体内時計が狂うのも1つ。加えてビタミンD不足によって色々と体が不調に陥る。たしか免疫力の低下とか他にも何かあった気がする。

 機会が貰えるなら天邪鬼にならずに頂戴しよう。

 

「いつも悪いな。あとで行くわ」

「いえいえ、八幡様にはいつも良くしてもらっていますから。あ、今日は良く晴れているそうですよ。私は先に行きますね」

 

 と第三者が聞いたら勘違いしそうなことだけ言い残し、ペコっと小さくお辞儀したラムダは先ほど一緒にいた数人の人たちへと追い付くよう小走りで去る。

 ラムダの人間関係は全く知らないが、仲がいい人がいるなら俺に肩入れしていても立場諸々はきっと大丈夫だろう。

 

「さて……」

 

 まだ仕事が残っている。俺もやることやったら行こう。

 

 

 ――――15分後。

 

「おー……」

 

 太陽が眩しい。

 甲板まで上がった俺は久しぶりの太陽に目を細める。潜水艦はやたら電気も暗い場所が多いのもあり、その眩しさにすぐには慣れない。

 

 甲板はわりと広い。原潜がデカいから当たり前かもしれないけど、ざっと学校の運動場ほどの広さはありそうだ。周りにはちゃんと柵が設置されているが、仮に海へ落ちたら元に戻るには大変かもしれない。

 

「……うーん、気持ち良いなぁ」

 

 端の方へ行き思いきり準備運動よろしく体を伸ばす。肉体的にも精神的にも窮屈な生活だったせいか、日光を浴びながらストレッチするのはなかなかの快感だ。

 もしかすると自分で思っていた以上にストレスが溜まっていたのかもしれない。味方がいない敵地という環境はわりと毒だったのだろう。こうして発散できるとはありがたい。場と機会を用意してくれたラムダには感謝しかない。あとネモにか。

 

「…………」

 

 ストレッチをしつつ周りを観察する。各々日光浴を楽しんでいるように見える。

 キャンプで使うようなチェアを持ち出している者、独りでボーっとしている者。はたまた数人でおやつを食べている者たち、談笑している者たち。

 そもそも俺たちの敵や領海侵犯などの事情により頻繁には浮上できないらしく、この時間を満喫しようとしている人たちばかりだろう。まぁ、こんな海のど真ん中で領海云々何もないだろうけど。周りをどれだけ見渡してもマジで青色しか見えないわ。

 

「んー……」

 

 たしかに大海原が広がっている。どれだけ目を凝らしても島など到底見えない。これでは瞬間移動を使っても逃げることは不可能だ。その前に死ぬ。

 

「……お」

 

 観察している最中はたと見付ける。

 

 少し離れている場所には俺の日本語授業を受けているレクテイアの3人がいる。

 年齢はおよそ中学生程度で全員小柄だ。ラムダのように耳は尖っておらず、外見は地球に住む人とそう大差ない。日本人からすれば髪色が珍しいだけだ。

 

 3人それぞれ髪色は別であり、薄めの金髪はニュー、ピンクのように明るい茶髪のノルン、蒼色の髪をしたリゼル。

 

 英語では多少会話できるので、それなりに打ち解けたつもりではある。まぁ、俺はどうにか日常会話をこなせるレベルでしかない。それでも、これまで武偵として活動してきた経験はそれなりにあったため、そこそこ話せるようにはなってきた。この先、生きていくには必要だしな。

 そして、彼女たちは俺たちのように血なまぐさい世界では生きていない、純粋に真面目で性格が良い娘たちといった印象だ。間宮や火野から戦闘能力を除いたような性格と言えばいい? んー、ちょっとこの例え微妙か。まぁ、裏表なさそうってことで。

 読唇術で何となく分かるけど……今も習いたての日本語で会話の練習をしようとしているのが見える。

 

「熱心だな」

 

 空気に消えるような独り言を漏らす。

 そこに不満や軽蔑などはなく、ただただその前向きさに感心とどこか嬉しさがある。教えるなんて柄じゃないが、それでも教えた内容を復習しようとしてくれる心意気に胸を打たれる。

 あれ、こんなの初めてだぞ? いつもは教えるっても大概肉体言語でしかないからかそこに感動などない。できなければボコられるだけという無慈悲さしかないのだ。やっぱりバカだな武偵高は。

 

「間宮……」

 

 教えるで思い出したが、アミカになってからまだ数回程度しか一緒に稽古できずに誘拐されのは何とも申し訳ない。そもそも海外旅行中だったのもあったり、3年生という立場からあまり相手できないとは言っていたりしたが、それはそれ。

 もし帰れたらちゃんと相手しよう。何度か手合わせしていると、時々背筋が冷えるような動きをすることあるんだよな間宮って。けっこう心臓に悪い。

 実家が殺しの技術を追求していたみたく、その技術をある程度継承している間宮は現在、それを武偵の技術に応用しようと四苦八苦している。すれ違い様に拳銃などスる技は元々臓器を抉る技と言っていて物騒さしか感じなかったわ。

 

「……ん」

 

 思わず3人と目が合ったので会釈だけしておく。いや、そんな大きく手を振らなくていいから……。

 

 なんて日光を浴びながらボーっと色々なことが頭を巡っていると――――不意に声をかけられる。

 

「比企谷八幡」

 

 足音も気配もあったから分かってはいたけど、俺に用事か。誰だってその軍服姿は……ノーチラスの艦長であるネモ。あ、俺に用事なんだ。

 いきなり話しかけるのは止めてくれと思いながら俺は英語で返す。

 

「何だ?」

 

 問いかけると同時にネモは俺の隣まで寄りつつ壁へもたれる。

 

「あまりゆっくりと話すことができていなかったから、世間話でもと思ってな」

 

 言葉は偉そうに見えるし、実際ここでは偉い。しかし、声色や態度はどこか普通の女の子といった印象が垣間見える。

 

「俺とお前が話すことあるか?」

「あるさ。比企谷八幡。存外、真面目な奴だと思ってな。事前情報だと、貴様はかなりの大物を倒してきた。マキリとも接戦を演じた。私からすれば、それほど凶暴と思っていたよ」

 

 不敵に微笑みながらそう語るネモに対して、俺は内心ため息をつきたくもなる。分不相応な評価が相変わらず出回っている事実に項垂れたくなる。

 必要だからやったまでだ。誰彼構わず襲いかかるほど狂戦士でもないぞこちとら。

 

「俺は普通の人間だよ。それにマキリには負けたからな」

 

 しかもかなりボコボコにされたし、俺の技のほとんどが通用しなかった。

 

「しかし、彼女も言っていたよ。あれほど攻撃を貰ったのはかなり久しぶりだったと」

 

 それ絶対褒めてねぇな。喧しいぞ。

 

「ノーチラスやN、レクテイアのことを知った上で仕事も追加でお願いした授業も問題なく貴様はこなしている」

「別にレクテイアのことは……住んでる世界が違うだけの外国人だろ。外国人なら周りに何人かいるからな。というより、Nに関しては国際テロリストだろうが。将来、決着は付けさせてもらうぞ」

 

 俺ではない誰かがな! 俺はあまり関わりたくないですね。

 

「ほう……レクテイアに関して偏見はないと。ラムダが言っていた通りだな。フフッ、これはまた随分と珍しい意見だ」

 

 目を丸くさせたり面白そうに笑ったりと忙しい奴だ。そんなネモと話していると、俺も俺で少し打ち解けてしまったのか気さくな態度になってしまう。

 

「そうかぁ? 世の中にはレクテイアよりあり得ないことで溢れているもんでな」

 

 人間の寿命を超越しているシャーロック・ホームズ。2kmのキルレンジを誇るレキ。死んでも生き返る遠山キンジ。死んでたと思ったら生きてた遠山金一。近接◎拳銃◎、加えて色金使える……と色々とアレな神崎アリア。

 このイカれた奴らと比べたら異世界人なんて可愛いモノだ。うんうん。

 

「なるほどな。ニュー、ノルン、リゼルから訊いてみたところ授業の評判も悪くない。案外、教師に向いているかもしれんぞ?」

「人に教えを説くほどマトモな人生送ってないな」

「そのわりに彼女らに気に入られているぞ。愉快なことだ」

 

 ノーチラスにはいない男だから珍しがっているだけだろうに。

 

「…………」

 

 しかし、こうしてネモとじっくり話すのは初めてだ。英語だからところどころ聞き取れていない部分は否めないが、こちらを卑下するわけではなく、かといってこちらを持ち上げて気分を良くさせようという意図は感じない。

 つまるところ、ノーチラスの艦長やNの上役という看板はあるものの、それらを除けば先ほども思った通り普通の女の子だと感じてしまう。年齢も恐らく俺とさほど変わらないだろう。それを相まって余計にそう意識する。

 本当にテロリストなのかコイツ。噂ではシャーロックを瀕死に追い込んだらしいかど……。

 

「フム……」

 

 今度はネモがやたら俺をジロジロと睨んでくる。

 

「なんだ?」

「いやなに、こうして接してみるとラムダやニューたちからも好かれているのが分かるなと思っただけだ」

「はぁ?」

「思っていたより普通ということだよ」

 

 考えていることはお互いさまってか。イレギュラーという二つ名がある身としては久しぶりであり嬉しい評価だ。

 ネモの語るその言葉を訊いて思わず笑みがこぼれそうになる。

 敵の親玉の1人であるというのに随分と敵意が削がれそうになってしまう。イケないことと頭では理解しているものの心ではこういうのも良いではないかと許してしまう俺がいる。

 何だかんだ敵であった関係から良好(?)な関係を築く人たちもいる。やはり敵である意識は全て抜けないけれど、心地良く流れる潮風と共に一瞬忘れてしまう時間がある。

 

「決め付けは良くないってことか――――ん?」

 

 日本語で独りでに呟くと同時にふと気付く。誰かこちらを見ている? 遠くに見えるあの人物は――――ラムダか?

 先ほどの数人で話しているであろうラムダと視線が合う。なに、どしたの? とりあえず会釈だけ返しておこう。

 ……うん? 未だにこっちを見ているんだけど。俺会釈したよ? 挨拶はしたよ? ここからでは表情までは詳しく伺えないけど何あれ怖い。

 

「……」

 

 ま、まぁいいや。なんか身震いするしラムダは置いておこう。

 それよか今はネモだ。ネモは世間話をしにきたと言っていたけど、それが全部とは考えられない。俺に何かしら用事があると推測している。でなければわざわざ話しかけてこないだろうと謎の自信がある。いやだって俺だし。

 また面倒事を押し付けるのだろうかと内心辟易しながら訊ねる。

 

「それでネモ。本題はなんだ?」

「……そろそろ話すとしよう。私は任務で近々ノーチラスを離れる。副艦長のエリーセがいるからノーチラスの運用は問題ないが、一番の火種は貴様だ」

 

 ネモはため息を吐きながら億劫そうに話し始める。

 任務か。Nの組織構造は未だにこれっぽっちも理解できていないが、ネモが幹部的立ち位置にいる以上、ずっとノーチラスにかかりきりというわけにはいかない……ということになるのだろう。

 

 そして、ネモが懸念している理由も分かる。当然俺だ。仮にも2週間は懸命に仕事をしていており無害を演じているとはいえ、ノーチラスからすれば敵である俺を放置することになる。

 ネモ以上の実力者が不在になる=俺が自由になる。この図式を不安に感じているのだ。

 

「貴様が自身の立場を危うくしないのう真面目に働いているのは見てきた。しかし、私がいなくなると、ノーチラスにおいて単純な戦闘力なら貴様が一番上だ。貴様に度胸とセンスがあるかは知らないが、ノーチラス乗っ取られると非常に困る」

 

 したいしたくないかという俺の意思は別として、可能か不可能かで判断すればネモは可能と見た。

 

「俺がそんなことしないと言っても、ネモは艦長としてそれを安易に信じることはできないだろう」

「その通りだ」

 

 毅然と言い放つネモ。

 信じられない。だったら俺をどうする? 

 最悪のパターンは俺を殺すか重症を負わせて動けないようにする? 完全に拘束する? もし今ここで襲われても対応してみせるが――――ネモに戦意は確認できない。

 

「確実な期間は今だと保証できないが、いずれ貴様を日本へ送ることを約束しよう」

 

 と告げた内容に俺は耳を疑う。

 は? 俺を返す? 日本へ? 誘拐したんだぞお前らは?

 

「…………」

「信じられないと言いたい顔だな。ムリもない。当たり前なことだ」

「理由を訊いてもいいか?」

「簡単な話、リスクとリターンだ。貴様がノーチラスを自由にできてしまうリスクを負うくらいなら、そうさせないように貴様にそれ相応のメリットを提示し、最悪な事態を避けてもらう」

 

 まぁ、理に適ってはいる。

 

「しかしながら、これも貴様の言っていた通り口約束に過ぎない。貴様の立場からすると簡単に信じることは難しいだろう」

「まぁな」

「だが、この機会を除けば貴様は日本へ帰ることは困難となる。つまるところ、貴様はこの言葉を訊いた以上大人しくするしかないということだ。仮に貴様が私がいない状態で暴れたとしても、原潜を運用するのは独りでは不可能だ。どうあっても誰かを頼るしかない」

「…………」

「ただ暴力で従わせても全員が言うことを守るとは限らない。貴様に好意的なラムダですら、そのような状態で貴様に従うとは思わない」

 

 だろうな。

 口約束であろうと何だろうと、これで俺の行動はかなり制限されたというわけだ。やられた、随分と上手な相手だ。

 

 まぁ? 元よりそんな面倒くせぇことやるつもりなかったよ? ホントだよ? ただネモがいないならどこかへ寄港したときに脱出しやすくなるとは考えていたけどね?

 しかし……そうなると基本的には無一文だからなぁ。脱出したとしてもその先が不明瞭なのは事実。

 理想は日本、せめてアジア辺りで脱出できれば良かった。アジア近辺なら最悪瞬間移動でギリギリ日本へ届かなくもない。加えて中国ならこれまた最悪、ヤクザの猛妹を頼れる。

 

「これは1つ忠告でもある。しかし、今まで通り暮らすならば不便なく過ごせるだろう」

「いつ俺は日本へ帰れる?」

 

 剣呑な雰囲気は収まり、少し空気は揺らぐ。

 

「済まないが、確約はできない。私の用事がいつ終わるか不明だ。加えて諸々の準備も途中だ」

「準備?」

「うむ、まだラムダのパスポートは取れていないからな。せめてパスポートが届くまでは日本へは行けまい」

 

 自信あり気に何言ってんだコイツは。無い胸張りやがって。

 

「なんでラムダが出てくる」

「え? ラムダも一緒に日本へ行くのだぞ?」

「なんで?」

 

 なんで?

 

「あれ? 貴様はラムダの役割を教えてもらっていなかったのか?」

「……あー、あー……地球のことを学ぶって……」

「それだ。ラムダには日本へ行き、現地で色々と学んでもらおうと前々から考えていたのだが、そこで丁度良く貴様が来た。ならば利用するべきだ」

 

 ……とても頭が痛くなってきた。

 

「仮にラムダが俺と一緒へ来たとしてだ」

「うむ」

「ラムダはNの一員だ。俺の周りにはNと敵対している奴らが多い。俺もその1人だ。危険だろ」

「貴様が守れ」

 

 いやえっと……その、スゴい理不尽なんだが?

 

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