八幡の武偵生活   作:NowHunt

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緑が見える景色で

 星伽さんからの依頼により、俺はある場所へ移動していた。

 といっても場所は都内である。しかし、どちらかと言えば郊外よりであり、ビルよりかは木々……自然が目立つ場所だ。

 別にとてつもない田舎というほど緑が多いわけでもない。とはいえ、都会と言えるほど建造物が密集していない、そんな場所。つまりはまぁ、わりと田舎よりの普通の街だ。

 

「さてと……」

 

 依頼に残された時間はざっと7日。依頼された場所は武偵高からざっと電車やバスで片道2時間はかかる。調査が終わったらその都度帰宅しても良かったが、夜に動きがあると駆け付けることが難しい。

 そのため、星伽さんの厚意により近くの元民宿……現空き家を用意してくれたため、一先ずそこへ移動する。管理が最近行き届いていないから汚いだろうとは言っていたけれど、寝泊まりできるだけありがたい。

 

「2人とも大丈夫か?」

「問題ありません」

「だいぶ暑さにも慣れましたので……はい、大丈夫かと」

 

 隣にいる女子たち――――レキとラムダに声をかける。レキは平然と、ラムダは麦わら帽子で影になっていても流れる汗を拭きつつ答える。

 

 星伽さんから依頼を受けたその日にレキへと報告し、チームとして依頼を進めることとなった。そこに居合わせたラムダも付いていきたいと申し出たため、この度俺らに加わり仕事することとなった。

 

 もちろん最初は断ったものの、ラムダが俺たちの仕事に興味があるのとレクテイアのことであるならば役に立てるかもしれないと言われ……こちらが説得しても引く様子も見られず仕方なく同行を許した。

 この人、やたらゴリ押しするときがあるというか、どれだけ俺が忠告しても自分の意見を撤回しようとしないことが多い。つまりは意志が強い。

 まだレクテイアについて知識が薄いところがあるのは自覚しているし、ラムダでなければ気付けないこともあるだろう。無論ありがたい。ただ……あまり危険なことはさせたくないんだけどなぁという本音はある。レキはともかく、彼女は出自が特殊とはいえ一般人だから余計にそう感じる。

 これも当然、ラムダを危険な目に遭わせるわけにはいかないし、レキともまずラムダを守ることを第一にと打ち合わせている。

 

 そして、協力してくれる以上、報酬もちゃんと払う。タダ働きなんて以ての外だ。そんなのまず俺が嫌すぎる。正当な働きには正当な報酬を。ボランティアややり甲斐搾取など耳障りの良い言葉は滅べばいい。

 

「一先ずどう捜査を進めますか?」

 

 途中、コンビニに寄り水分補給している際、レキが訊く。別にレキが方針くらい決めてもいいとは思うけど、これは一応俺が受けた依頼だ。対外的には俺がこのチームのリーダーでもあるし、残念ながら俺が進めるほかない。

 しばし迷ってから、当初からある程度決めていることを俺は口にする。

 

「まずは土地勘養うために宿に荷物置いたら今日はこの辺りを歩くつもりだ。手がかり、怪しい箇所やレクテイアらしき人ががないか探しながらな」

 

 2人が頷くのを確認してから話を続ける。

 

「星伽さんが言うには普通にレクテイアの奴らも隠れて住んでいるわけじゃなくて、多少普通に交じって生活しているみたいだが――――」

「えっと、八幡様……だが、の続きは何ですか?」

 

 すぐさまラムダが興味津々といった風に合いの手を入れ促す。

 

「例えば、日本に暮らしている外国人がいたとする。そして、ソイツが住んでいる近隣に同じ国から自分と同じように日本で生活している人が数人いたとすると、ソイツはどうすると思う?」

 

 ラムダは俺の問いに俯き思案顔になる。

 

「一緒に暮らす……とまではいかなくても、同郷の身であれば言語や話題が共通していますよね。となると、何か機会があれば知り合って自然と親しくなりそうな気がします」

 

 整然と自身の考えを述べるラムダ。

 

「だろ? 当然、俺のような人見知りがいて周りと関わり持たないって奴もいるかもしれない。でも、大多数は自分の近くに同じ境遇の奴がいれば、何かしらで関係を持つ、持とうとするはずだ。レクテイアという特殊な環境から来たならなおさらな。人間は何だかんだ群れる生き物だ。慣れない環境にいる中、自分と同じ境遇の奴がいるとなればなおさら。独りである程度生活できるかもしれないが、心の奥底では何かしらの繋がりを求める習性をしている。――――つまり、日本で暮らしている上で、その中にどこか異質な集団がいないか……」

「探す、ということですね」

「まぁな。そんな1日で簡単に見付かるとは思えないけど……もし、該当しそうな奴がいれば監視、そんで尾行かな。でも、んー、ピンポイントでNと取引のような現場を抑えられるとは思えないなぁ。1週間そこらの話だし、Nが日本へいるのかも知らないし」

 

 あくまでNに対してどのような情報を渡しているかを調べるまでだ。必ずしもNのメンツにちょっかいかける必要はない。

 

 一応、星伽さんから怪しい場所をいくつか目星を付けていてくれているのでそこを中心に歩いて操作するつもりだ。

 そして、取引の頻度についてはマチマチて不明もいいとこと記されていた。具体的に物資を渡しているのか何か情報を渡しているのかそれすらも分からない状況だからな。

 しかしまぁ、総武高校と違って調べる対象が街と範囲がバカほど広い上、任務の期間はそのときより短い。これ上手く成功するかと甚だ疑問である。なんなら絶対上手くいかない自信しかないまである。

 

 なんなら最初から失敗したらゴメンねと星伽さんに謝っているレベル。

 

「改めて訊くけどラムダ、お前はその辺りの情報は知らないんだよな?」

「はい。日本へ降り立つ機会は今回が初めてであり、私はノーチラスの船員でしかありません。階級で言えば、それこそ1番下のような立ち位置ですので、八幡様が期待するような回答は持ち合わせておりません。私の身内や知り合いにも……そのような人はいないかと」

「分かった。ありがと」

 

 そう上手くはいかないかと内心落胆しそうになる。簡単に進めることができたらそれが最善なのだが……。

 マキリほど重鎮ならまだしも、ラムダはレクテイアから地球へと学びに来た一般人という境遇であることに変わりはない。

 何かしら日本で暮らすからにはレクテイアから与えられた役割があるらしいけど、本人はそれを明かしていない。俺も詳しく訊くつもりはないので、それ以上は知らない。

 

「俺がアメリカやヨーロッパにいる、極僅か……少数の一部の集団のことを知っているわけないし、そりゃそうだよな」

「全世界の詳細を把握しているなど、そんな人物はいないでしょう」

 

 これまたレキの言う通りだ。シャーロックの連絡先を知っていたら鬼電して未来予知に近い推理しろと答えを貰いたいわ。楽してぇ……てか、アイツ今どこにいるんだ? ネモにヤラれた傷は回復したらしいけど。

 まぁいいや。

 

「休憩はここまでにして、そろそろ宿へと行きましょうか」

「おう」

 

 レキから言われ再度目的地へ向けて歩く。その最中、俺はダラダラ喋る。

 

「あー、でもアレか。着いてからすぐ歩こうかと考えていたけど、最初は宿の掃除を軽くしてからだな。星伽さんにそこは頼まれているからな。午前はざっと掃除して、午後から歩き回る感じか。夜は……俺とレキで軽く見回る。夜にこっそり集まっているって場合もあるし」

「分かりました」

「掃除ならお任せください」

 

 今さらながらこの3人だと会話の比重が俺に大きく偏る。普段から口数多い方ではないが、レキとラムダと比較するとやたら俺喋るな? ってなる。

 日本に着いた瞬間はラムダはやたらテンションが高くなりずっと話していたが、しばらく経つと次第に元来の落ち着きが見受けられる。ラムダもノーチラスにいたころからわりと喋る方とはいえ……。まぁ、今回の依頼は俺中心だししゃーないか。

 

 

 あれから20分ほど。そうこうしていると目的地へと到着した。

 

「おぉ……」

 

 かつては民宿に使われていただけあり、見た目はかなり立派な一軒家だ。パッと見はちょっと古めかしい日本家屋といった様相をしている。

 玉藻の知り合いが使っていたらしい。つまりはヒルダや緋緋といった超常の奴らの一族だ。だからこそ外せない用事が重なりもう民宿自体は辞めてしまったと。なかなか戻ってこれずに数年経ってしまった。せいぜい1年に1回戻れたらマシだと言っていた。

 それを使わせてもらうついでに軽く掃除して整えてほしいと星伽さんから伺った。

 

「んじゃ入るか。……って」

 

 ラムダはまた目を輝かせている。

 

「八幡様、アニメや漫画で見た和風建築ですね。早く行きましょう!」

 

 The・日本といったモノを見るや否や、普段の冷静さはどこ吹く風……まるで理子のような話し方になる。ラムダからすればようやく憧れの地へ来れて、見るモノ全て新鮮に映るのだろう。

 それはいいことだ。だからね? 肩をバンバン叩くのは止めてね? 地味に痛いから。

 

 そんで入ったはいい。電気も水道も生きている。リビングに置かれている家具やらも日本の旅館といった内装をしている。……しかし、これはまぁ。

 

「ホコリまみれだな」

「ですね」

「特別汚いとか家具が壊れているとか虫が湧いているとかはなさそうだが……ちょいちょい手入れはしているって話みたいだわな。それを差し引いても……」

「腕がなりますね」

 

 ラムダがどこかを目を輝かせている。随分やる気だね。

 荷物を片隅に纏めてから掃除用具を探す。掃除機はないか。え、この広さでないのか。雑巾や箒はあるけど、なかなかにキツそうだ。

 

「八幡さん、役割分担をしましょう」

「だな。ラムダはキッチン周りを綺麗にしてくれ。レキはリビング中心の掃除。俺は廊下や風呂に他の部屋……リビング以外を中心にやる」

「分かりました」

「気合入りますね。終わり次第、八幡様やレキさんも手伝います」

「頼もしい。とりあえず昼までにある程度終わらせよう」

 

 

 

「……しんどっ」

 

 一応、俺が掃除する範囲が多くなるよう割り振りした。ざっと終わりが近付いてきたけど、いざ掃除をしてみると思ってた以上に重労働だ。これほどまでに掃除機を欲したことはないだろう。

 ただそのおかげでだいぶ綺麗にはなってきた。レキとラムダも自分の持ち場を終わらせ、途中から俺の持ち場を手伝ったくれたこともあり、どうにか昼までには完了した。……あれ、これは相対的に1番掃除をしていないのは俺になるのでは? もしかするとマッチポンプというやつ? ……レキたちが来るまでには7割くらいはやっていたし、セーフ? うんセーフ。

 

「けっこうな重労働でしたね」

「だな。一先ずこんなもんで大丈夫か」

 

 ラムダに返事をしつつ周りを見渡す。レキもむひさながら満足そうというか、これならセーフかという目線で部屋を見渡している。

 

 レキは銃の整備をするとき埃を極力排除しようとする。

 銃は非常にアナログな存在だ。毎日同じ状態でいられるなんてほとんどない。1日1日過ぎ去る度にどこかズレが生じる。埃であったり、部品の摩耗であったり、銃弾であったり、原因は多岐に渡る。そのズレを少しずつ矯正し、ニュートラルに近付ける作業を武偵はしている。

 だからこそ少しでも埃が交じれば、彼女にとってドラグノフの違和感は大きくなる。整備1つとってもレキの拘りは度を越しているほど細かい。たとえどこであろうとその態度は変わりない。

 

 まぁ、そんなレキが及第点を出しているのだ。とりあえずはセーフだろう。

 

「さすがに腹減ったわ。朝から移動からの掃除だし。近くに飯食えそうなとこあったな。そこ行くか」

「道中あったあのカフェですね。私も気になっていました。ぜひぜひ行きましょう」

 

 掃除用具を片付け荷物を纏めて移動する。

 

「…………」

 

 そこから10分ほど歩き先ほどラムダと話したカフェへと到着した。和風な様相をしているこじんまりとした店構えだ。いかにも地域の個人経営といった雰囲気で好ましい感じだ。

 

「……八幡様、あれは何でしょうか?」

「さぁ……? 蔵? 物置? にしてはわりと大きいし、なんかの離れみたいなもんかな?」

 

 気になる点としてはカフェの敷地内の少し離れた場所にちょい大きめの建築物があることだ。ラムダも疑問に感じたようで俺に質問するが、自信がなく俺もちゃんとした回答を出せない。

 

「まぁ、入るか」

 

 店内に入る。

 これまた内装もいい。畳が使われている座敷、どことなく古めかしいものの丁寧に手入れされているテーブル、諸々含めて個人的に店内の雰囲気も落ち着いており俺好みだ。

 

「いらっしゃいませ〜」

 

 黒と白を基調としたいかにも大正浪漫なメイド服を着こなしている少女が俺たちを出迎える。

 

「3名様ですかぁ〜?」

「あ、はい」

「分かりましたぁ。こちらへどうぞぉ。お座席へ案内しますねぇ〜」

 

 背丈はレキやラムダよりも小さい、理子ほどの身長。腰まで伸びている綺麗な黒髪、そしてどこかおっとりとした雰囲気を醸し出している店員だ。

 

 年頃は俺たちとそう大差はなさそう。年齢的にアルバイトだろう。

 

「メニューはこちらです〜。お決まり次第お呼びくださ〜い」

 

 俺たちが座ると店員はメニューを手渡しゆっくりと立ち去る。

 

「ほーん、カフェかと思ったけど蕎麦あるんだ。カフェにある飯ってスパゲッティとかのイメージだわ」

「このお店のイメージに合わない、とかですかね」

「あー、なるほど。和風っぽさあるもんな。……あ、抹茶のスイーツある。パフェか。いいな……最初にパフェにしようか」

「まずご飯を食べませんか八幡様……?」

「それはそう。他に飯……」

 

 目移りしたいたところをラムダに咎められる。いやね? お腹に余裕あるうちにデザート食べたいことない? 美味しく味わうために。

 カフェらしくパンケーキもあるけど、午前やたら動いたしもうちょいガッツリ食いたい気持ちがある。

 

「レキはどうする?」

「私はざる蕎麦を」

「おっけー」

 

 俺はどうしようかとメニューを見ながら迷う。丼物もあるのか。

 

「んじゃ俺は豚丼を。んでパフェ……はあとで頼むか。ラムダは?」

「では私はこのサバ味噌定食を」

「渋いな」

 

 軽口を叩きながらもメニューを決めた俺たちは先ほどの店員にメニューを言う。店員はそれを厨房へと流れるように伝える。

 先ほどのように立ち去るかと思ったけど、おっとりとした店員はこちらをジッと見つめながら観察するように眺める。

 

「ところでぇ……お兄さん方は、この辺に住んでる人、ではないですよねぇ」

 

 え、なに、いきなり世間話振られたんだけど。美容院ですかここは。どうでもいいけど美容院にであれ何であれ急に話振られてもきちんと返せないパターン、泣きたくなる。変に声上擦るよね。

 とまぁ、冗談は置いておいて。あ、これ俺が返事するパターン? レキとラムダの方を見ると目線が合う。特にレキからは早く話してくれという視線が刺さる。

 

「まぁ、はい。そうっすね」

「観光ですかぁ? この街、一応は東京ですけど、23区とかにある、そんな観光名所のような目立つモノ何もありませんけどぉ」

「んー、観光って言うよりかは仕事、みたいな感じですね」

「あ、敬語外していいですよ〜。それで、仕事って何ですかぁ?」

 

 バカ正直に依頼内容伝えることはしないが、何と言ったらいいものか迷うは迷う。

 

「知り合いからほぼ空き家になっていた場所の掃除やらしてほしいって頼まれたんです……だ。夏休みももうすぐ終わるし、休暇がてらのんびりしようかなって。数日好きにしていいって言われたんでな。報酬がてら泊まるって流れだ。都会の喧騒から一時離れるのもいいし」

「あ、そうなんですかぁ。たしかに緑に囲まれるって心休まりますよねぇ〜」

 

 俺の適当な返しにも頷いてしっかり反応してくれるこの店員……もはや良い子では? うんチョロいぞ俺。

 

 何だかんだ千葉にいたときも今も都会育ちではあるけど、たまに自然に触れるというのも悪くはない。いつも荒んでいる気持ちも落ち着くというものだ。

 

「あの、店員さん……」

 

 と、ここでラムダが反応する。

 

「はぁい可愛い外国人さん、何でしょうかぁ……あ、私の名前はミノトって言いますので〜……。ぜひそう呼んでくださぁい」

「あはい。私はラムダと言います。ではミノトさん。隣にある建物は何ですか? 何かのお店ですか?」

 

 珍しく勢いに押されているラムダだったが、すぐさま切り替え自分の疑問を問いかける。

 

「ラムダさんですね。よろしくお願いします〜。……で、隣? というと……あ〜、アレですかぁ。ただの道場ですよ〜」

 

 遠目からだけどもかなり立派な造りだったが、道場だったとは。今日日学校くらいでしか見たことないな。

 

「道場……? 剣道、とかをするのでしょうか」

「お、ラムダさん、剣道ってよく知っていますねぇ。前は近所の人たち集めて剣道やら教えていたみたいなんですけどぉ……最近はもっぱら私の遊び場ですねぇ」

「というと、ここに住んでるのか? アルバイトじゃなくて?」

 

 つい横入りで気になったことについて口出ししてしまう。

 

「色々と事情がありましてぇ、いわゆる住み込みって感じですかねぇ」

「へぇ……」

 

 そりゃまた珍しい。てことは学校には行ってないのだろうか。いや、今は夏休みだから働いているだ……け?

 

「……?」

 

 ふとミノトと名乗った店員を眺める。

 何となく、明確な回答を出せないモノではあるが、彼女の見た目について、どこか言葉では言い表せない違和感がある。

 見た目は客観的に見ても可愛い部類に入るだろう。年頃の少女として出で立ちは気にならない。それでも、何か気になる、言葉にはできない違和感が頭をよぎる。

 今まで見たこと、知り合いではない。誰かに似ているわけでもない。では何だろうか頭を悩ませるけど……答えは出ない。

 

 なら、今は気にしないでおこうか。んー、なんだこのモヤッとした感じは。

 

「どうかしましたかぁ?」

「えっ、あぁいや……俺らと話して大丈夫なのかって。仕事は」 

 

 咄嗟に出た言い訳に怪しむことはなく穏やかな雰囲気なミノトは笑顔を絶やさず返答する。

 

「大丈夫ですよぉ。今は皆さましかいませんし〜」

 

 たしかに。

 

「何かあったらおばさんに呼ばれますので〜」

「なら良いんだけど。てか、なんで話しかけたんだ?」

「そりゃあ、見たことない人たちでしたからねぇ。しかも、外国人の方もいるじゃないですかぁ。常連さんならテキトーに接客しますよ〜」

 

 いや常連ならちゃんと接客した方が良いのでは? ボブは訝しんだ。そういやレキは外国人カウントなのだろうか。いやうん、まぁ、コイツ外国人ではあるな。モンゴルの血だし。なんか今さらすぎて忘れていた。

 

「お兄さんたちは観光で来られたそうですけど、何をされるんですかぁ?」

「まぁ、観光つっても仕事……頼まれたことはするけど。……とはいえ休暇みたいなもんだから、グータラして、あとはこの辺り適当にブラブラとうろつくくらいかな」

 

 半分以上嘘ではあるけど、別にこの程度で疑われはしないだろう。

 こちとら休暇どころかバリバリ仕事ですよ。悲しいことに拉致られて帰還して早々仕事が舞い込んできたのです。とまぁ、余所者が怪しまれるわけにもいかないし、いざ仕事のために外にいてもおかしくない程度についてはさらっと嘘を交ぜて話す。

 

「思う存分羽を伸ばしてくださいねぇ。あ、もし時間あるならまたここに来てくださ〜い」

「飯、美味かったらな。まだ食べてないんだわ」

「たしかに〜。でも、ここの料理美味しいですよぉ」

 

 そう、あどけない様子でおかしく楽しそうに笑うミノトだった。

 

 

 と、しばらくミノトと話していると時間が経ち、料理が届く。料理を運んでからのミノトは他の客が来たこともあり仕事へ戻り、俺たち3人で食べ始める。

 

 料理は丁寧に作られており、満足度が高い食事だった。やはり肉×米は正義だ。普通に美味い。

 どうやら大学生ほどの年齢である女性が料理を全部作っていたそうだ。ミノトが言っていたけど、パッと見若く見えたし別におばさんではなくないか?

 

 なんて疑問はさて置き……俺とラムダは食後のデザートのパフェも頼み、一時ながら休憩時間を堪能した。

 

 そして、退店してから再度歩くこととなる。

 

「料理、美味しかったですね」

「パフェも良かったな」

「ですねぇ。抹茶を使ったデザート、非常に美味でした」

「また今度も行っていいかもな」

「ぜひそうしましょう」

 

 俺とラムダは道中、感想を言い合いながら歩く。

 その隣には無言で目線を左右に動かしながら歩くレキもいる。恐らく脳内でマッピングを意識しながら進んでいるのだろう。俺もレキと同様、片隅で意識しつつ歩を進めるもレキには到底及ばない。そもそもの経験やレベルが違う。

 

「これからはどこに行かれますか?」

「特に目的地があるわけでもないしな。……まぁ、今日は言った通りここに慣れるために歩く流れだ。んー、一応それなりに目星は教えてもらっているんでその辺り周ってはみるか」

「なるほど」

「こんな日中から、んな怪しい現場出くわすなんてまずないから気楽にな」

 

 と、レキが俺をつんとつつく。

 

「聞き込みはしますか?」

「……ケースバイケース? いきなり武偵って明かすわけにもいかないし、怪しまれない程度には訊きたいが……まだ初日だからなぁ。焦らずにだな」

 

 事前に調べた限りだと俺たちのいる範囲で事故や事件など目立った事例はここ最近存在しない。交通事故などは別としてトラブルというモノは人が集まっている個所で起こりやすい。

 一応ここは東京とはいえ、街の規模は23区ほどではない。だからこそ、治安はわりと良い。

 東京で例えると原宿とか新宿とかけっこうヤバいからな。武偵や警察が常駐していないと歩いていたら銃持った奴に絡まれる、なんてのはよくあることだ。

 

 うーん、世紀末かな? 終わってんなおい。

 

「そもそも1週間そこらで解決するかどうかだけどな」

「小さい集落などの取引などであれば数カ月に1回という可能性もあります」

 

 レキの意見に同意するように俺は続きを話す。

 

「だな。星伽さんもそこらは了承済みだったし、上手いこといけばって話だ。まぁ、一応勝算……のようなもんがないわけじゃない」

「八幡様……というと、どういう……?」

「最近遠山っていう……巻き込まれ体質でありながらイカれるほど強い奴が日本でNと継続的に関わっているからな。Nの構成メンバーが日本にいてもおかしくない。低い確率だけども」

 

 まだラムダは遠山と会ってはいないため、あまり詳しくは知らないだろう。

 

「遠山……? その名前、どこかで訊いた気が……?」

「あれだ、ネモと1ヶ月くらい無人島に遭難した奴」

「あ、それです! たしか遠山キンジと言いましたね。ネモ様始め、多くの方々と戦って生き延びている不思議な人」

 

 これで伝わるのある意味遠山可哀想だな。印象があまりにも終わっている……。

 

「ちなみに、八幡様とどちらが強いですか?」

「え、そりゃアイツだろ」

「……八幡さんと変わらない気がしますが」

「だって遠山の奴マッハで殴ってくるんだぞ? 銃は基本的に効かないぞ? 普通にムリだろ。どうしろってんだ」

 

 レーザーですら対処したことある化け物ぞ。一般人の俺にどうしろと?

 

「例えるなら、キンジさんと八幡さんはベクトルが違う理不尽さがある……と言いましょうか。さすがにミサイル10発以上撃ち込まれたらキンジさんでは厳しいような気がします」

「そこでムリとか不可能とか言わない辺り、アイツのヤバさが際立つんだけどな……」

「無傷だった八幡さんに言われたくないかとキンジさんも思います」

「えっ……八幡様そのような状況で傷を負っていないのですか……えぇ」

「おいドン引いた目を向けるな。失礼だなお前ら」

 

 なんて駄弁りながらのんびりと調査を進めるのだった。

 

 

 

 

 

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