短めですが、どうぞ。
ーキンジsideー
ゾクッ!!!
ものすごい寒気がした。
その寒気の正体は・・・・・・・・・、
とてつもない殺気だ。
な、何だ。何なんだこの溢れんばかりの殺気は・・・・・・、
思わず俺は1歩下がる。不知火も同様に俺の所に下がってくる。
「と、遠山君、これは・・・・・・」
「あ、ああ・・・」
この殺気の発生源は・・・・・・比企谷だ。
比企谷八幡と言えば、いつも理性に従い動く印象がある。自分が出来ることをして、出来ないことは極力しないけど、でも、いざと言うときは捻くれながらも動く、そんな奴だ。
だけど、今の状態は危険だ。
何が比企谷をここまでさせたのかわからない。
しかし、これでは武偵法9条を破る行為、つまり人を殺しそうな勢いだ。それほどの殺気を放っている。ダメだ、マズイ。急いで止めないと。
「比企谷!!止まれ!!」
叫ぶが、俺の声は比企谷には届かない。だったら、比企谷を止めるために走ろうとするが・・・・・・、
足が動かない、体が震えている。
なぜなら、こんな純度の高い殺気は初めて感じるからだ。
今まで生きてきた中で、こんなにも恐怖を覚えたことはなかった。
ダメだ、全然足が動かない。横を見ると不知火も動こうとしない。いや、やはり不知火も動けないのか。
人って恐怖でここまで動けなくなるのか・・・・・・。
俺が今ヒステリアモードならば、なんとかなったのかもしれない。でも、今はあの俺になれる要素がない。
くそっ、所詮俺が受けたSランクなんて紛い物だ。今の俺は無力だ。
そうこうしている間に比企谷がゆっくりと、歩いている。殺気は解かずにゆっくりと。
人質全員は泣いている。
犯人達残り4人はビビって腰を抜かしている。特に銃を撃った奴は特に。
あいつが比企谷に何かしたのか?
もしかして撃たれそうになった人質の1人は比企谷と関係のある人なのか?それなら納得がいく。
そう言えば、あの子どことなく比企谷に似ているな。
そんな考えをしている内に、
「こ、この野郎!!」
犯人の中の2人が急に立って比企谷を撃とうとする。ガタガタ震えながら、撃とうとする。この時比企谷との距離は目測3m。これは外れるな、照準がぶれぶれだ。
比企谷はその間合いを一気に詰めてファイブセブンを抜き、グリップで1人は頭を殴る。もう1人はスタンバトンで、頬を思いっきり殴ってから電気を流した。
モロに攻撃を食らったから2人は気絶した。
しかし、比企谷は気絶しているそいつらを蹴る、蹴る、ひたすら蹴る。もうただのオーバーキルだ。
や、止めろ、比企谷。もうそいつらはボロボロだ。
それでも、比企谷がこんなになっていても、俺と不知火は動くことが出来ない。怖い、比企谷が怖い。ただただ怖い。
俺は情けない、本当に情けない。こんな時に同じ武偵が危うい道に進んでいるのに、止めることが出来ない。
ひとしきり蹴った後、別の1人に近づく。そいつは涙目で腰が抜けて、戦意なんてものは少したりとも存在しない。
だが、それを気にせずに蹴る、倒れたところを踏みつける、踏みつける、踏みつける。
こ、これは、戦闘じゃない、蹂躙だ。一方的に、圧倒的な力で敵をいたぶっているだけだ。
そして遂に、比企谷は恐らく比企谷との関係者だと思う者を撃った奴を見る。その距離6m。
「く、来るなよ。来るな、来るな来るな来るな来るな来るな来るな!!」
そいつは肌は真っ青、涙目、全身震えて、比企谷を見ている。後退りながら必死に命乞いをしている。
そんなこと気にせず、比企谷はファイブセブンを構える。そして相手の頭に照準を合わせる。
「ひ、ひいぃぃ」
ヤバイ!マジで殺すつもりか。あいつならこの距離で外すことはない。
ここで、やっと俺達は動くことが出来た。
俺はベレッタをホルスターから抜こうとする。あいつは防弾制服だし、とりあえず撃っても死なない。少しでも動きを止めないといけない。不知火も同様に拳銃H&K MARK 23を抜こうとする。
だけど、俺達のその動作はほんの1歩遅れた。
その時比企谷八幡は、
パアァン!!!!
もう既にファイブセブンの引き金を引いていた。
しかし、その直前にパリィィンと窓が割れる音がした。
そして、比企谷が撃ったと同時に
ガキィィン!!
金属がぶつかり合う音がした。
気付いた時には天井と床に銃弾がめり込んでいた。
比企谷に撃たれた奴は無事だ。もちろん人質も。比企谷自身は、今は動いてない。
そしてゆっくりと窓が割れた方角へ振り向く。
「・・・・・・これは、どういうことだい?」
不知火が俺に聞いてくるが、
「わ、わからない・・・。何が起こったんだ?」
すると、耳に付けている通信機から通信が入った。
『キンジさん、不知火さん。遅れてしまい、申し訳ありません。お待たせしました』
通信機から、とある狙撃手の声がした。
八幡誕生日のくせして
こんな暗い話ですいません