八幡の武偵生活   作:NowHunt

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テスト週間に入ります、やったね!…じゃねぇよ。

更新ペースは落ちます。


第29話

「お兄ちゃん、遊びにき・・・た・・・・・・よ・・・・・・・・・」

 

小町は徐々に言葉を失う。俺たちの体勢を見て、顔を蒼白とさせている。

 

「お兄ちゃん、いや、ゴミいちゃん、今なら警察間に合うよ?」

 

まるで、汚いゴミを見るような目で、そう告げる。

 

止めろ!武偵が犯罪を犯すと、武偵三倍刑といって一般人の三倍の刑罰を食らうんだ。

 

「小町、君から見たら俺、押し倒されているよね?」

 

説得を試みる。

 

「そうだね。まー、お兄ちゃんが女性を襲うなんてしないよね、チキンだし。チキンだし」

 

こらっ、失礼でしょ。兄にそんなこと言うのは。

 

「小町さん、大丈夫です。私からしたくてしたので八幡さんは悪くないです」

 

と、ここで火に油を加えるのはレキ。しかし、以前小町と会った時よりも無表情ではない。

 

「お、お兄ちゃん、レキさんに何を仕込んだの?前と印象大分違うんだけど」

 

それに目ざとく気づき、驚く。

 

「とりあえず、移動していい?」

 

 

 

 

 

全員リビングにある椅子に腰をかける。

 

「ところで小町、なんでここにいるんだ?」

 

「えーっとねー、武偵高の文化祭に興味あったから遊びにきたの。それでどうせならお兄ちゃん探そっかなーって歩いていたら、遠山さんを見つたの」

 

「ほうほう」

 

「お兄ちゃんいますか?って聞いてみてら、部屋で休んでいるって言うから、部屋の場所を教えてもらって乗り込んだってわけです」

 

なるほどなるほど。ただ単に文化祭に来ただけなのか。

 

「寮監は?」

 

「兄に会いに来ましたって言ったら通してくれたよ」

 

そうか。ならいい。

 

「ところでなんで今日は文化祭に行かないの?」

 

「1日でもうほとんど回ったから」 

 

「へー、そうなんだ。ちなみに独りぼっちで?」

 

「俺を誰だと思ってる。当たり前だろ」

 

胸を張って答える。

 

「そこ堂々と言うところじゃないでしょ・・・」

 

頭を抑え、悩む動作をする。すると小町は何か思い出したように顔を上げ、

 

「レキさん、こうして会うのは久しぶりですねー」

 

突然話をすり替え、笑顔でレキに声をかける。

 

「そうですね、会うのはお久しぶりです」

 

キョロキョロ2人を見る。その視線に気づいたであろうレキが俺の疑問に答える。

 

「あれから小町さんとは連絡先を交換して、何度かやりとりをしています」

 

その言葉に驚く。

 

「えっ、そうなの?」

 

「はい」

 

いつの間に、そんなことを。小町、すごいな。

 

「とはいっても、他愛のない雑談だけどね」

 

小町がそう言うけど、レキ、雑談できるの?できないよね?そうだよね?

 

 

 

「それで、お兄ちゃん、今日はもう文化祭行かないの?」

 

小町が立って、尋ねてくる。

 

「ああ、さっきも言ったが、昨日で充分だしな」

 

「なーんだ。それでは小町はまた文化祭に行ってきます」  

 

敬礼をする小町、可愛い、異論は認めん。

 

そう思っていると、ガシッと足を蹴られた。蹴られた方を向くとレキがなにやら不満そうな顔をしていた。

 

「痛いんですけど」

 

ぼやいてみるが、レキの反応はなし。

 

「んーー?はっ!おーー!ほうほう」

 

小町は小町で何か納得している。しかも大声で。その顔はイラッとするな。

 

「もう小町行くね、じゃあねお兄ちゃん」

 

「ああ」

 

「レキさん、頑張ってくださいね」

 

頑張る?何をだ?

 

「はい」

 

レキはそれが何かわかっているようだ。俺はわからない。まあ、女子同士の秘密ということにして詮索はしないでおこう。

 

 

 

 

小町も部屋から出て、今は俺とレキの2人だ。そして、なんか気まずい。理由は言わずもかな。

 

「レキ」

 

「はい」

 

「女子寮の様子はどうだ?」

 

「確認します」

 

そう言い、窓から女子寮がある方向を見る。レキは俺の方を見て、

 

「恐らく大丈夫でしょう」

 

良かった良かった、これでレキから解放される。

 

「ですが、まだ人だかりがあります。もうしばらくここにいることにします」

 

えぇ、マジで?お前は気まずくないのかよ・・・・・・・・・

 

「こんなとこいて楽しいか?」

 

思わず口からこぼれ落ちる。少しやっちまったという感じはした。しかし、レキは間髪入れず、

 

「はい」

 

と、答える。

 

 

 

ーー少し驚いた。レキが楽しいって思ったことにだ。

 

その返答に恐らく俺の顔は赤くなっているだろう。なにせこんな真っ正面から言われることは少ないから。

 

 

「そうか」

 

俺はぽつりと呟く。それに対し、レキは、こくり、とうなずく。

 

 

 

 

いつまでこの状態が続いただろうか。気づけばもう夕方、文化祭も終わりである。生徒がちらほら見える。

 

それまで俺とレキはずっと無言のままボーッとしていた。それが特別不快ではない。

 

 

 

そこでふと思う。

 

俺はレキをどう思っているのか、と。

 

俺とレキの関係をどう表せればいいのか上手く言えない。最初はカルテットでの敵、しばらく一緒に暮らしたことのある人、そして、俺を、俺なんかを助けてくれた恩人。

 

そこで、俺は再度俺に問いかける。このことに関して、レキをどう思っているのか?

 

レキは可愛いと思う。客観的に見ても。

 

もし、レキが他の男と一緒にいたらどう感じる?

 

 

そんなの答えは決まっている。ーーそいつからレキを奪いそうになる。

 

ってことは、俺はレキを好きなのか?・・・・・・いや、俺には好きという感情を理解できない。 

 

だから、わからない。

 

 

 

 

そんな考えを頭の中で巡らせていると、

 

「八幡さん、私はもう帰ります。ありがとうございました」

 

レキが俺の隣にきて、軽くおじぎをする。

 

「あ、ああ。じゃあな」

 

「はい、また」

 

玄関までついていき、レキを見送った。

 

 

 

1年の文化祭は終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 




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