「ハッハッ」
俺は今東京都、杉並区をちょっとした観光をかねてランニングしている。もちろん全装備着けてだ。この重さには慣れないといけないしな。
もう秋も真っ只中。しかし、ところどころ木は枯れてる。赤い葉もあるけどな。
文化祭が終わってから1週間経った。今日は日曜日。
レキとは、あまり話してない。挨拶程度だ。なんとなく気まずい。やはり向こうもそれを感じてるのか、話しがたい雰囲気だ。
「ふーー」
息を整えて、時間を確認する。
もうかれこれ1時間は走ってる。そろそろ休憩するか。
コンビニがあったので、そこに寄る。適当に飲み物とエネルギーゼリーを買い、近くの公園のベンチに座る。
「ふー」
さて、ある程度休んだし再開するかと立ち上がった。アキレス腱を伸ばし、軽くストレッチをする。
公園を出て、少しキョロキョロすると、知り合いを見つけた。
武偵高のセーラー服を着て、長めの黒髪、大人しそうな雰囲気の少女、俺のアミカ、ーー鶴見留美だ。
こっそり近づき、後ろに立って、声をかける。
「よぉ、留美」
「うっひゃあ!え、・・・・・・八幡?」
なんだよ、うっひゃあ!って。
留美は俺に気づくとさっきのが恥ずかしいのか脛を蹴ってくる。それを避ける。
「この、ボケ、バカ、八幡」
めっちゃ顔赤いな。
「おいまて、八幡は悪口じゃねぇぞ」
「このっ、うるさい」
ひとしきり終わった、留美が息切れしているからな。
「で、ハァハァ、なんでいるの?」
「観光兼ランニング」
「そう」
興味なさそうにしている。お前が聞いてきたんだろ。
「お前は?」
「私、普段は寮に住んでるけど、実家はここなの」
へー、そうなんだ。
また同じ公園に立ち寄り、2人ともベンチに座る。
「そういえばさ、留美はなんで武偵になろうとしたの?」
ふと問いかける。具体的には聞いたことなかったからな。こんな野蛮な場所にきた理由がイマイチわからなかった。
「それはーーーー」
言葉がつまる。
「すまん、無理しなくていい。失言だ。忘れてくれ」
少しプライベートにつっこみすぎた。
「ううん」
留美は首を振り、
「大丈夫、そんなに大したことじゃないから」
語りだす。
「私ね、6年ぐらいからいじめられてたの。なんだか、よくある風潮でね、いじめる人を交代交代にするの。それで私の番がきたの」
思わず息が詰まる。
「私は態度が生意気とかで卒業まで続いたの。中学でもいじめてた人たちと一緒は嫌だった。逃げたかった。そこで、調べてたら武偵を知ったの」
「あの時は親にも迷惑かけたし、自分も強くなりたかった。だから、武偵を目指した」
空を見上げ、留美は語り終える。表情は暗い。それに釣られ俺も空を見上げる。
「すまなかったな」
「いいよ」
「今は平気なのか?」
「うん、ルームメイトも優しいし」
「ーーそうか」
申し訳ない気持ちと嬉しい気持ちが混ざっている。でも、嬉しい気持ちの方が大きい。
「八幡は?」
「俺?」
「どうして武偵になったの?」
「俺は、ーー成り行きだな」
「そう」
「でも、俺もずっといじめられてたよ」
そう告げる。
「へー」
が、すごい棒読みが返ってきた。
「おい、興味なさげだな」
「実際ないし」
バッサリ言うな、こいつは。
「別に八幡は八幡。それは変わらないもん。過去がどうあれ今八幡がいるからそれでいい」
「そうか」
そのセリフに少し恥ずかしい反面、ジーンってきた。
「そう」
自販機で買ったココアをチビチビ飲んでいる。留美はコンポタ。
すると、
ウーウー!ウーウー!
急にうるさく、重なり合い、鳴り響くサイレン。2台のパトカーが走ってる。しかも面倒な事にこの近くで鳴り止んだ。
まさか、もしかして・・・・・・
「警察?」
留美が呟く。
「恐らく」
うなずき、
「パトカーが見えた。しかも周りがやたらうるさい。ご近所問題かと思ったが違うみたいだ」
「行ってみる?」
「一応」
缶を捨て、俺と留美は駆ける。
パトカーが止まった場所は、小学校みたいだ。野次馬をのけて警察のところに行く。
「武偵だ。何があった?」
それに気づき、警察の一部は苦い顔をする。おい、武偵が嫌いなのはわかるが、あからさまに出すなよ。
「そこの小さいのも武偵か?」
太った腹をした刑事か警部は親指で留美に指を指す。
「ああ、だから?」
「はあー、こんなガキも銃使うたぁ、世も末だな」
イラッとした。留美自身が決めたことにケチつけるな。
「いいから、どういう状況だ?」
自分でもかなり荒い声を出したのがわかる。その言葉にビビるやつもいる。
キュッとブレザーを留美が掴む。心配させたらダメだ。
「警部、僕が話します。それがですね」
俺らの間に割り込み、若い刑事?が話を進める。
「さっきまで、銀行強盗を追跡していたのですが、その途中に交差点で事故が起き、我々は遠回りすることになりました」
「で、もたついている間に立て籠られた、と」
俺の補足に、刑事?はうなずく。俺の当たる事件って立て籠りが多いな。主に作者の技量が・・・・・・っとそれ以上はいけない。
「お恥ずかしいことですが・・・・・・」
「人数はこれだけか?」
見渡すと、数は7。銃を所持しているのは、3といったところだ。
「ええ、その事故が起きたのが、警察の特殊部隊の車輌なので、到着にはまだしばらくかかるかと」
つくづく運が悪い。まさかそうとは思わなかった。思わず口を噛み締める。
「そもそも日曜のこんな時間に人がいるのか?」
これには、太った警部が答える。
「それがな、昨日音楽会があっての。今日は6年の一部と教師数名が体育館の片付けをしているらしい」
マジかよ・・・・・・。チラッと留美を見ると、留美の顔が暗い。
「八幡、ここ、私が通ってた小学校」
俺に聞こえるように少し怯え呟く。そうか、だからさっきから静かなわけだ。だったら、なおさら、
「俺がやる」
しかないだろう。警部の目を見る。時間が惜しい。ぐずぐずしている暇はない。
「いいのか?」
警部は確かめる。それは野次馬がいきなり事件を解決すると言ってるからか。信用はなかなかできないだろう。
「俺は武偵だ。武偵の任務はーー無法者を狩ること」
もう1度警部の目を見る。ふっと笑い、諦めたように言う。
「はあー、わかった、任せるわ」
その一言で周りがざわめく。警部は「やかましい」と言ってそれを抑えている。
「感謝します。それで、人数と武装は?」
その言葉に若い刑事?は、手帳をめくる。
「はい、数は7。全員ベレッタを所持。防弾装備はなし。そして、人質は、約50です」
くそっ、人質50か、多いな。でも、7ならどうにかなるか?
俺がファイブセブンを出し、SS190 弾を籠める。準備している時に、
「私もやる」
声が俺の鼓膜に響いた。留美が、留美の意志を俺に伝える。けど、
「お前は、強襲やったことあるのか?探偵科だろ」
「確かにないけど、でも、助けたい」
1人バックアップがいるだけで、楽になるのは事実だ。
しかし、それは強襲の経験のある奴の話だ。留美は探偵科、一番安全とされている学科だ。当然留美はいくら銃の練習をしてようともその経験がない。
けれど、留美の目は確固たる意志を感じれる。
しばし迷いーー
「わかった。行こうか」
「うん」
「ただ、無理はするな。危ないと感じたらすぐ退避だ」
「っ、でもーー」
「お前が死んだら、俺が9条を違反してしまうからな」
要約、留美に死なれるのが嫌。・・・・・・それを察してか、
「ハハッ、素直じゃないね」
「だろ?」
互いに小さく笑う。
俺たちは移動しながら、
「そういや、アミカ同士が任務にあたる時、作戦コードをつけれるみたいだな」
「じゃあ、つける?」
「だな、小学校救出大作戦とか?」
「却下」
即答である。ですよね、自分でも今のはないと感じた。
「だったら、そうだな。クレインは?」
「ーー鶴?」
「そう」
何かが気に食わないのか留美はムスッとし、
「八幡はいないの?」
「俺?・・・・・・エイトとかか?うまいこと合わないなー」
留美は考えている顔つきで提案してくる。
「いいじゃん。エイトクレインズ」
それで、いいのか?留美がいいなら俺もいいけど。
俺たちの目付きはさっきと打って変わり、真剣になる。しかし、笑みは絶やさない。
「それじゃ、作戦コード『エイトクレインズ』開始だ」
「うん」
ーーーーこうして、俺こと比企谷八幡、そして俺のアミカ、鶴見留美の初の合同任務が始動した。
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この前LiSAさんにお会いでき、とても!とても!感動しました。