八幡の武偵生活   作:NowHunt

33 / 138
やっとテストから開放されたーー!

お待たせしやした!


第31話

今、俺と留美は小学生たちが閉じ込められている体育館の裏にいる。立て籠りの犯人の数は7。さあ、どうするか。

 

体育館の壁に耳をあて、中の様子を聞く。

 

これは蘭豹に聴覚鍛えろと言われ、鍛えてみた。耳は劇的に良くなるわけではない。が、聞き分けを今まで以上にできるようにした。

 

……ふむ、どうやら、まだケガをしている人はいないみたいだ。

それと、犯人は今現在、足を絶たれている。確かに途中で見つけた車はパンクしていた。だから立て籠ったのか。それを警察に用意しろと掛け合っている。

 

体育館の構造はよくある、ステージの裏に扉が左右に2つだ。そこから入れる。

 

そして、声の発声源からして、犯人のほとんどはステージ側にいるだろう。だから裏から浸入しよう。

 

 

俺は留美に小声で話す。

 

「まず俺が左から強襲する。少し経ったら、お前は右からだ。なるべく意識はこっちに向けさせる。――だからコレを使え」

 

そう言い、スタンバトンを留美に渡す。

 

「使い方、わかるな?」

 

「うん」

 

「それで、最低1人、できれば2人意識を奪え。あとはその流れで一気に片付ける」

 

「わ、わかった」

 

「犯人は全員銃を所持している。が、もしかしたら、何丁かはモデルガンかもしれない。警察も詳しくはわからなかったそうだ」

 

そこで、一旦言葉を切り、留美の反応を見る。

 

顔からは汗が流れている。返事もはっきりしていなかった。緊張しているのだろう。 

 

 

誰だってそうだ。でも、それはなんの言い訳にはならない。……それを俺は身をもって知っている。

 

 

「まあ、落ち着け。お前の目標は相手の武装を無力化すること。あとは俺がやる」  

 

「……う、うん」

 

「まず、狙うのは?」

 

「手。銃を叩き落とす」

 

「優先することは?」 

 

「人質の安全の確保」

 

それがわかってたら、上出来だ。

 

「人質が多い。俺らは銃はなるべく使わない」

 

留美はうなずく。軽く頭を撫でながら、

 

「心配するな、これが終わったら何か飯食おうぜ」

 

俺を見て、何かを感じとったのか、目を閉じて深呼吸をする。もう大丈夫だな。

 

「――――行くぞ」

 

 

 

 

 

俺は扉をゆっくりと開ける。反対側では留美も同じ行動をとっている。足音をたてずに中に浸入は成功した。

 

中は、ステージに上がるための階段。フロアに入るための金属の扉。この扉は人1人分通れるくらいには開いてある。

 

中の様子を武偵手帳にある鏡を使って覗く。

……予想通り犯人は全員ステージ側にいる。何やら騒ぎ立てている。おおかた逃走用の車を用意をまだできてないのだろう。

 

留美にはスタンバトンを渡したから、俺は制服の内ポケットから小型のスタンガンを取り出す。

 

 

俺はふと、夏休み前の、事件を思い出す。あの、1歩遅れたら、取り返しのつかなかった、あの事件を。

 

――大丈夫。もうあの時と同じ失敗はしない。

 

 

ダッ!俺は扉から出て、近くにいた犯人の1人の首にスタンガンを当てる。そのまま、

 

ビリッ。

 

電気を流し込む。このスタンガンもスタンバトンも材木座に頼み、出力を上げてもらってる。よほどのことが無い限り、1発で気絶させれるように。

 

ドサッと1人倒れた。

 

「なんだ、サツか!?」「ちっ、くそが」

 

などと喚くが、それを気に介せず、すぐに別の奴にスタンガンを首に当てる。俺が電気を流すと同時に、留美が反対側から突入してくる。 

 

犯人たちは全員俺の方に向いている。上手く虚をつくことができ、背後から留美はスタンバトンを使い、1人から意識を奪う。俺も2人目を気絶させる。

 

――残り4。

 

「何がどうなってんだ!!」「知るか!」

 

うるせぇな。次に行こうと思った時、1人がチャキ、と俺の頭に拳銃が向ける。……冷静だな。恐らくリーダーかそれに近い者辺りだろう。かなり肩幅が広い。そしてゴツい。

 

「失せろや!」

 

「八幡!」

 

留美が俺を呼びながら、流麗な動作で他の奴の拳銃を蹴り上げ、弾き、スタンバトンの電気を首に流す。ーー残り3。

 

俺の元に駆けようとするが、もう2人が留美の前に立ち塞がる。間に合わないだろうな。

 

そこで、俺は夏休みに学んだ技を使う。

 

 

――――殺気を全開に放出。

 

 

留美を含む、全員が怯む。

 

「なっ、どこっ」

 

リーダー格は声を荒げる。それもそうだろう。今、俺を視認できてないのだろうから。

 

俺は校長みたいにずっと姿ぼやかすことはまだできない。最大で3秒だ。

 

俺はリーダー格の横を走り抜け、留美の前にいる奴の元に行く。ちょうど戸惑い、あたふたしている。そいつの頭に掌底を叩き込む。そいつは怯み、足下がぐらつく。

 

――そこで俺のステルスは消えた。すぐに俺に視線が集まる。

 

それを気にせず、留美とアイコンタクトを取る。

察してか、俺が掌底をした奴の手を蹴り銃を弾いたところで、スタンバトンを浴びせる。ダウン。

 

もう1人はリーダー格の元に行く。

 

残り2。

 

「くそっ!」「ちくしょう!ガキ共撃つぞ!」

 

2人共拳銃を小学生たちに向ける。てことはどっちも実銃か。

 

「させねぇよ」

 

走りながら、リーダー格にスタンガンを投げる。狙いは拳銃の銃身にだ。なぜなら、そこは金属だから。金属は電気を通す。

 

「がっ!」

 

手、痺れたよな。リーダー格が拳銃を落とす。その隙を逃さず、留美の跳び蹴りがみぞおちをえぐる。

 

留美は着地した瞬間に隣にいたもう1人に屈みながら足を払う。

 

――留美、ナイス。

 

と思い、パシッとスタンバトンを取る。

 

それは留美が蹴る前に宙に投げたスタンバトンだ。俺は一気に距離を詰める。

 

そして、スタンバトンの電気を最後の奴の首に流す。

 

「ぐぁ!」

 

呻き、倒れる。

 

留美は、KAHR PM 9。スカートの中から抜き、俺は腰のホルスターからファイブセブンを抜く。

それをまだ意識のある、が、痺れてから5秒だ。体勢は整えられなかったな。リーダー格に向けて構える。

 

「武偵だ」

 

「――抵抗は止めなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

犯人は全員残らず警察に引き渡し、事件は解決した。結果としては、中に重傷者はおらず、被害はゼロと言ってもいいだろう。

 

正直な話、俺1人だったら、ここまでスムーズにできるかわからなかった。留美の強襲は初めてと思えない出来だった。

 

俺とアイコンタクトし、自分がどう動けばいいのかすぐに判断を下し、動けた。最後のスタンバトンを渡す時なんか、良い判断だ。

 

うーむ、探偵科とはもったいない。もし強襲科なら、かなりの成績を叩き出すに違いない。

 

 

 

「鶴見さん、久しぶりね」

 

「はい、お久しぶりです」

 

そんな声が聞こえ、そっちに目をやる。若い女性の先生と留美が話している。

 

「本当ありがとね、助かったわ」

 

「いえ、仕事ですから…」

 

「それでもよ」

 

楽しく話してそうだな。

 

俺は警察の報告も兼ねてこの場から去ることにする。なんとなくここは留美1人にしたかった。

 

警察に報告も終えて、校門で留美を待っている。あの太い警部にも誉められた。

ーー武偵もやるなぁ。みたいな感じに。

なんか連絡先も交換したよ。……報酬たんまりもらうからな。あと、マスコミは警察でどうにかするらしい。

 

 

 

校門で待つこと数分。タッタッと足音が聞こえる。この軽い足音は。

 

「八幡!」

 

もちろん留美。笑顔でこっちにきた。良いことでもあったのかな。聞きはしないが。

 

「これからどうする?1回武偵高に戻らなきゃいけないが」

 

どうせ、蘭豹やらのありがたい説教とか待ってる。いや、怒られないよな、今回は。

 

「その前に、何が奢ってよ」

 

そういやそんなこと言ったな。今財布には4000円。足りるだろ。

 

「いいぜ、どこ行く?」

 

「えーっとねー………」

 

 

 

 

 

 

 

 

余談たが、留美がお高いカフェに入り、金の大半が消えた。まあスイーツ美味しかったけど……。

そのせいで、交通機関が途中までしか使えずに、かなり歩いた。

 

 

 

 

 

 




おかしな点があれば質問してください。こっちも確認しましたが、自信がないです。


あと、ここで八幡の装備紹介です。

まず、ベルトの右側にファイブセブンを納めるホルスター。
ベルトの後ろにコンバットナイフ。柄は右側。
制服の内ポケット(右側)にはスタンガン。ファイブセブン20発のマガジン×2。
制服の内ポケット(左側)にはマガジン×3。
左袖を改造してポケットを作り、その中にスタンバトンを入れています。
スタンバトンの長さ25cm。

デスッ!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。