八幡の武偵生活   作:NowHunt

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遅れて申し訳ない!

東京の話を書こうとすると、関西民族の作者には時間がかかるのです。


第33話

あの後、材木座から逃げて、電車を乗り、俺とレキはお台場に来ていた。俺たちいつもここだな。

 

時刻はもう5時。でも、学生が多い。その中には武偵高の奴らもちらほらと見える。それは男子や女子だけのグループだったり、男女混合のグループだったりする。

 

お台場は武偵高からしたら、割りと近く、羽を伸ばせるスポットなのだ。色々な店が揃っているし、便利である。

 

 

レキとは1回か行ったことある。あの時はその、成り行きみたいな感じだったな。いきなり部屋に押しかけてきて大変だったな。

 

 

「八幡さん、行きますよ」

 

ーー感傷に浸っていると、レキが俺の横から顔を覗き込み、そう告げる。

 

「わかった」

 

俺が返事すると同時に歩き出す。レキの歩幅は俺より小さく、それに合わせてのんびり歩く。

 

お台場にいるといっても、今は有明駅のホームを出たところだ。そこからそこそこ距離がある。

 

 

歩きながら、

 

「レキは何買うんだ?」

 

「防弾のインナーの数が少ないので補充しようかと」

 

なるほど。そういや俺もそれは必要だな。予備として多く買っても損はない。

 

「防弾のインナーとかシャツ買うか………」

 

残金を確認する。材木座に直接払うと思っていたから、けっこう持ってきた。6万か。これだけあれば足りるだろ。

 

「レキ、金は?」

 

「問題ありません」

 

だよな。Sランクのレキにその心配は杞憂だな。

 

「八幡さん」

 

「何だ?」

 

「ご飯はどうしますか?」

 

「そうだな…………。時間もアレだしここで食べることにする。レキはカロリーメイト?」

 

「いえ、八幡さんがここで食べるならそれに合わせます」

 

「そうか」

 

 

と、こんな感じに会話を続けていたら、お台場ダイバーシティ東京に着いた。いつ見てもでかいな。

 

 

 

俺たちはそこの5階にあるユニクロに入る。ここはけっこう安く、しかもそこそこ丈夫である。レキも特に反対などせず(するかどうか怪しいが)についてきた。 

 

 

 

一旦、レキとは別行動をとる。

 

 

 

ただ今、服を物色中。

 

中学では服など基本親任せだったので、あまりこういう機会がなかった。因みに、服は全部ユニクロでした。家庭に易しい俺。

 

実際見てみると、安い。………いや安いんだろうけど、他の店と比べてないからどのくらい安いのかわからない。

 

と、歩いていたら、男性用の防弾シャツのコーナーに来た。

 

 

なんでも、武偵という制度が日本でも導入された辺りから、こんな一般の店でも防弾製品が売られてきた、…らしい。

今の世の中、手に入れようと思えば簡単に銃を手に入れれる。ーー本当、物騒だな。

 

 

そんな事を思いながら、防弾のインナーやシャツの縫い目をチェックする。ここが荒かったら、いざというとき危ない。しかし見る限り問題ない。

 

ーーーーまぁ、周り見てみると、やはりと言うべきか。防弾のシャツやインナーの種類は少ない。

普通の服みたいなバリエーションがない。あるのは黒、白、灰色。

 

売っていても需要はないのか。………確かに色んな人がホイホイと買っていたら怖いけど。

 

 

俺はカゴに防弾製のMサイズの長袖のインナー、白地のカッターシャツを3着ずつ入れた。

 

防弾製品ということで、普通の服より値段は高めだが、それでも2万あれば事足りる。

 

 

先に会計を済ませることをレキに連絡しようとして、少し探すことにする。

 

探すこと数十秒。何やら試着室がうるさい。トラブルかと思い駆け寄ってみる。

 

ーーそこには、薄い桃色のワンピース。その上に水色のジャケットを着ているレキがいた。

 

………何やってんの?

 

ぽかーんとしていると俺に気づいた女性の店員が近寄ってくる。

 

「あなたこの子の彼氏?」

 

「違います」

 

「あら、そうなの………。でも、この子の連れよね?」

 

「そうですね。つか、なんでこんな状況になったんですか?」

 

「いやー、最初は防弾製品の場所を聞いてきたんだけど。……あ、制服で武偵ってわかったわ。でもねー、私服持ってないらしいのよ。素材が最高なんだし着せ替えしたかったのよ」

 

「そうですか」

 

確かにレキはお人形みたいな顔立ちだ。客観的に見ても可愛い部類に入るだろう。

 

ってあれ?私服ないんだ。

 

「で、どう?可愛いよね?」

 

「まぁ…、可愛いと思いますよ」

 

恥ずかしい。女子にここまで面と向かって言ったのは小町しかいねぇ。しかもその時の反応が「うっわ、本当にお兄ちゃん?」と引かれた。解せない。

 

しかし、その言葉にレキは顔を少し伏せ、赤らめる。なにそれ可愛い。可愛いけど、怒っている?

 

 

「すいませーん!」

 

と他の客が店員を呼んでいるので、ここにいた店員が向かう。俺たちを残して………。

 

 

 

レキは何も言わず、俺も何も言えず、そこに微妙な空気が流れる。

 

ーー息苦しい。なんか空気重い。やっぱりキモいよな。俺がそんなこと言うなんて。

 

「あ、俺もう、会計…する…から」

 

当初の予定を思いだし、レキに伝える。所々詰まりながら。

無言でうなずいたのを確認してからその場から離脱。

 

 

 

 

会計を済ませて、店の外でレキを待つ。

 

にしても、今日の俺、大丈夫か?いつもなら、女子に可愛いなどと思うことはあれど、直接言うことなんてないのに。

 

あー、恥ずかしいなー。

 

 

待つこと数分。

 

「お待たせしました」

 

武偵高の制服のレキが俺の隣に立つ。あのあと着替えたらしい。

レキは紙袋を手にぶら下げている。俺よりその量は多い。 

レキならそんなに買わないと思っていたが。

 

「持つぞ」

 

手を差し出し、レキの荷物を持とうとする。

 

いくら日常で4kgあるドラグノフを所持しているとはいえ女の子。ここは男の俺が持つのが道理だろう。

 

「結構です」

 

ーーが、お断り。

 

俺に荷物を頑固として渡そうとしないレキ。

 

「なんでだよ」

 

「………………」

 

来ましたー。ダンマリ。こいつ都合の良いの時だけ無視しやがって。俺も人のこと言えないけどさ。

 

チラッと紙袋の中身を覗いた。どうやらさっきのワンピースとジャケットを買っていたのか。

だったら重いだろうし余計に俺が持つのに。

 

ま、本人が結構と言うなら、これ以上は言わないけど。

 

 

 

 

 

 

 

時間は6時を過ぎた。もう夕方の雰囲気が消え、見上げると空は黒く、暗い。

 

俺とレキはクアアイナというハンバーガーショップにやって来た。

ここはウマイらしい(作者談)。またお台場に行く機会があるなら、是非食べてみてくれ。

 

 

店の中は平日とはいえかなりの人だかりだ。ほとんど席は埋まっている。

 

「レキ、外でいいか?」

 

「はい」

 

レキの了承を得た所で、カウンターに並び、注文する。

 

「奢るけど、何か食べたいのあるか?」

 

「八幡さんと一緒で」

 

「了解。……えーっとベーコンバーガー2つ」

 

 

 

ハンバーガーを受け取り、どこか食べれる場所を探しに移動を開始する。

 

少し歩くと、自由の女神の横にベンチを発見した。寒いからか人はいない。

 

俺がベンチに座ってから、レキも俺の隣に座る。

 

「ほらよ」

 

レキの分のハンバーガーを渡す。

 

「ありがとうございます」

 

食べている最中、ふと前を見る。

 

そこは夜の海だ。かなり暗い。ザザーっと波の音は聞こえるが、水はほとんど見えない。しかし、一部月に照らされ、そこだけ輝いている。それがどこか神秘的だ。

 

 

 

しばらく経ち、お互い食べ終わった。ゴミを回収して近くのゴミ箱に捨てる。そのまま、もう1度同じ場所に座る。

 

1分かそれとも10分か。俺たちは座ったまま何もせずに、ただただボーッとしていた。時おり寒いと感じたが、たがらといって何もするわけでもなかった。

 

 

不意に、

 

「八幡さん」

 

俺を呼ぶ声がした。言わずもがな、レキだ。

 

「なんだ?」

 

「今日はありがとうございました」

 

「別に気にすんな」

 

「そうですか」

 

「ああ」

 

 

さっきまで海の方を見ていたが、今度はこっちを向きながら、

 

「八幡さん」

 

俺を呼ぶ。どことなくマジメな声色だ。

 

「なんだ?」  

 

レキを横目で見ながら、さっきと同じトーンで答える。

 

「私はあなたを知りません」

 

「………俺もお前のこと知らないよ」

 

そう返す。

 

 

誰だって、人のことを全部なんて知らない。自分を理解できるのはいつだって自分自身だけだ。

……もし、誰かのことを理解しているって奴がいるなら、そいつは傲慢だ。100%わかるわけがない。そんなのはただのまやかしだ。所詮、知った気になっているだけだ。理解とは呼べない。

 

だからーー

 

 

「私はあなたのことを知りたいです」

 

 

 

ーーーーだから、知ろうとする。知りたいと思う。そう願う。知りたいという努力をする。

 

 

 

「あなたは私にいつもと変わらず接してくれました。他の人は必要以上に私と話そうとしませんでした。今までそれが普通でした」

 

「だから、夏休みの最後。あなたが私に投げ掛けてくれた言葉が嬉しかったーーと思います。私を銃弾ではなく、1人の人として見てくれたこと」

 

 

「……レキ」

 

話を聞き終えて、俺が言うことはこれだろう。

 

「もう1度言う。お前は銃弾なんかじゃない。絶対にだ。

今お前は何かを感じ、それを表現した。そんなの機械にはできない。

できたのはお前が人間だからだ」 

 

俺は思ったことを包み隠さず、レキに全て伝えた。

 

 

 

 

 

「ーーありがとうございます」

 

少しだけ、でも確実にレキは笑った。月に照らされた中で。

それは俺が見た中で一番綺麗な笑顔だった。

 

 

 

 

「これからは比企谷八幡という人を私に教えてください」

 

「だったら、俺にもレキという人を教えてくれよ」  

 

「はい」

 

 

 

こうして、レキとはどこか通じ合ったように感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから1ヶ月以上経ったある日。

 

 

 

「あれ、ここどこだ………?」

 

俺はいつも通り目が覚めた。

 

しかし、俺の部屋の天井ではない。どこか別の場所だ。

 

どうしてこうなった?ここはどこだ?

 

俺が寝ていたベッドの横に丸窓がある。

そこからなら、何かわかるかもしれない。

 

そう思い窓を覗くと、

 

 

「えっ、魚……?」  

 

窓から映る景色は魚がそこらじゅうにいて泳いでいる姿だった。

 

どうやら映像ではなさそうだ。

 

「もしかして………、ここ、海中?」

 

1人でつぶやいていると、部屋の扉がカチャっと開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、ジャンヌ~~。ハチハチ起きたみたいだよ」

 

「ふむ、彼が理子の言っていた少年か」

 

 

 

 

 

 

 




さぁ!八幡はどこにいるでしょうか?
原作読んでいる人にはわかるはずです。

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