八幡の武偵生活   作:NowHunt

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作者は剣道を部活でしているのですが、この季節になると、足は冷たいを通り越して痛い、最悪の場合は感覚が無くなります。




第38話

おかしいな。

 

ここ最近比企谷を見かけない。あいつどこか出掛けるって言ってたけ?

 

いつもの比企谷なら、外に出るのはタルいとか言って休日は基本引きこもっている。しかし、俺が部屋に籠っている間に姿を消した。

 

大晦日から実家に帰るとは言っていたが。まだ29日だ。

 

「教務部にでも聞くか」

 

携帯を取り出し、武偵高に連絡する。

 

『はーい、もしもーし。ここは武偵高教務部、蘭豹や。誰や』

 

不機嫌そうな蘭豹の声が聞こえる。

 

「遠山キンジです」

 

『ん、遠山かー。お前どうした。というより大丈夫か?』

 

「はい。少しは落ち着きました」

 

もちろん、まだ心の整理はついていない。でも、あの時よりかは冷静だ。

 

『ほぉー。それで、何か用事かー」

 

「あ、その、比企谷について何か知りませんか?ここ最近見かけないんですが」

 

『あーー、比企谷。あいつなぁ。それならこの前に3月の中旬ぐらいに戻るって連絡あったわ。まあ、あいつは成績ええし、出席日数も足りてるし大丈夫や』

 

「それで、どことは言ってましたか?」

 

『……うーん。それは言ってなかったな』

 

「ありがとうございます」

 

『おお』

 

蘭豹は電話を切る。

 

武偵高には連絡しているのか。

 

比企谷はどこかにいるのか。にしても、比企谷の荷物はそのまんまだしな。外泊なら自分の荷物は持っていくよな。

 

他に知っていそうなのは……。あ、レキなら知っているかもな。よく比企谷と一緒にいるし。

 

レキに電話をかける。

 

『はい』 

 

繋がった。

 

「俺だ、遠山だ」

 

『キンジさんですか。何か用事ですか?』

 

いつもの抑揚のない声だ。

 

「比企谷のことなんだが。どこにいるか知っているか?」

 

『私も知りません。八幡さんに連絡しても、音信不通でした。どこにいるのかわかりません』

 

いきなりレキの声が低くなった。……ちょっと怖い。

 

『ですが、風と関係のある者にあっていると思います。そう、風が言っているのです』

 

…………出たな。レキがよく口にする風。このことは深く聞かないことにする。

 

「情報ありがとな、レキ」

 

『はい、キンジさんもお元気で』

 

俺が通話を終了しようとした時に、

 

『次会ったら……覚g』

 

おっと、何か余計な言葉が聞こえた。

 

………まあ、うん。比企谷、頑張れ。死ぬなよ。

 

 

どうせ、いつか、働きたくないとか言って、ひょっこり帰ってくるよな。比企谷だし。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

サヴァン症候群

 

知的障害や発達障害などのある者のうち、ごく特定の分野に限って優れた能力を発揮する者の症状を指す。

 

wiki参照。

 

 

 

 

俺は遠山のことを知ろうと、ジャンヌに尋ねた。そしたら、サヴァン症候群を知っているか、聞かれた。

 

「ああ。聞いたことはあるが」

 

「うむ。それならば、話は早い。遠山の一族は代々、サヴァン症候群の遺伝子を受け継いでいるのだ」

 

ジャンヌがそう話を切り出したから、予想はついてた。だから、特別驚きはしない。

 

「どんなだ?」

 

「その、言いにくいとだが」

 

と、前置きしてから、

 

「性的興奮すると、思考力・判断力・反射神経などが通常の30倍にまで向上するのだ」

 

と、顔を赤らめながら述べた。

 

な、なるほどー、そうなのかーー。遠山すごいなーーーー。………ってなるか!

 

30倍になると具体的にどうなる?

ジャンヌが言うには……、

思考力は頭が良くなるのか?それとも記憶力?

判断力の場合は、頭と体とのタイムラグがなくなる?

反射神経は、勝手に体が動くのか?

 

あまり、生物の授業は受けたことは、ないんだよな。俺の頭ではこれが精一杯だ。

 

 

「ヒステリア・サヴァン・シンドローム。略称はHSSだ。そして、カナ曰く、遠山キンジの場合、女性優先の思考になり、女性の前ではかなりギザ?な行動をとるそうだ」

 

ジャンヌはそう付け足す。あと、ギザじゃなくて、キザだからな。それだとピラミッドのある場所になるから。

 

まあ、だいたいわかった。……ゴメン、ウソです。

 

もし、それが本当なら、嫌すぎるな。なんだよ。要するに強くなるけど、女性の前でカッコつけるナルシストになるんだろ。絶対嫌だわ。確実に黒歴史を創造するんだろ。

 

しかも、それになるには、ほとんどの確率で女性の前ってことになる。

 

なんとなく、遠山が女は嫌いだって言ってたのを思い出した。その理由、わかったよ、何となくはな。

 

 

 

「結局、あれは遠山の兄なの?それとも姉なの?」

 

遠山のことは少し知れたが、本題はこれだ。

 

「カナは性別上は男だ」

 

あれが、ねー。あの絶世の美女が男ね。世の中の女性涙目だぞ。もちろん俺も。いや、……戸塚タイプとするなら納得できる。

 

遠山兄が男なら、また疑問ができる。

 

「遠山兄は、なんで女装するんだ?まさか、そういう趣味?」

 

ジャンヌは首を横に振り、 

 

「HSSは、基本は、その、…性的興奮をキーとして発動するが、人それぞれ、また別のキーがある」

 

言いにくそうに、顔を赤らめるジャンヌが可愛かったりする。

 

でも、マジメな話だから、表情には出さない。いわゆるポーカーフェイスを心がける。

 

「カナは自ら女装して、HSSを発動する。その時は自分が、完璧に女性になりきっているので、自分が男とはわからないらしい」

 

イマイチわかりにくい。

 

えーっと、遠山兄が自ら絶世の美女に化けることによって、そのHSSを発動できる。

 

………何それ、HSSって何でもありなの?

 

しかも、化けるだけならまだしも、男ってわからない。自分が女になる。……………ピンと来ないな。いや、来る方が異常だよな。

 

まあ、深く考えず、そういうことだと理解しておく。

 

「それはわかった。で、なんでここにいる?俺みたいに勧誘でもされたのか?」

 

「正解だ」

 

合ってるんかい。

 

「では、話を変えるぞ。武偵殺しを知っているか?」

 

あれか。乗り物に、減速すると爆発するぞ爆弾を仕掛けて武偵を殺す。でも、あれって……………

 

「逮捕されてなかったか?」

 

「捕まったのは真犯人ではない。……真犯人が誰かは言わないでおくが、そいつがカナを勧誘したのだ」

 

てことは、その武偵殺しはイ・ウーのメンバーだな。誰だ?ってその前に、

 

「そのカナって強いんだろ?そんなホイホイついていったのか?」

 

「カナはイ・ウーでやることがあると、その勧誘を承諾したまでだ」

 

何か、俺の何かが、キレそうになった。

 

遠山兄は遠山の現状を知っているのか。

 

兄という目標を失い、精神はやられ、武偵を嫌いになった。それだけならまだしも、遠山もネットや週刊誌で非難されている。

 

それを気にせず、なんでここにいる。下がいるなら、責任持てよ。常に目標でいられるようにしろよ。………小町の目標になっているかはよくわからないけど。

 

 

「八幡。いいか」

 

ジャンヌに肩を叩かれる。

 

「……ああ」

 

「お前が何を思っているのかは大体想像はつく。私もネットとかを見たからな」

 

「……すまないが、もう眠い。寝かせてくれ」

 

もうあまり考えたくないので、わざと大きなアクビをして、話を中断する。

 

「わかった。今日はもう疲れただろう。ゆっくり休め」

 

ジャンヌがドアに手をかけたところで、背を向けたまま、

 

「おやすみ」

 

と言う。

 

「ああ、おやすみ」

 

今日は疲れた。色々ありすぎた。眠気がヤヴァイ。………………ああ。この微睡み最高…………。あと、ジャンヌが、オカンみたい………。

 

そのまま、俺はベッドに倒れ込んで、意識を手放した。

 

 

 

 

 

…………目を覚ました。

 

まだ海中らしく、時間がわからない。……ってあれ?時間は何を基準にしているんだ?というより、今はどこにイ・ウーはいるんだ?

 

時間の感覚がおかしくなりそう。

 

部屋にある洗面所で顔を洗う。そして、制服のブレザーを脱ぎ、昨日もらった黒のコートを着る。

 

おお、軽い。しかも動きやすい。

 

体を伸ばしたり試すと抵抗なく動く。

 

あとは防弾の性能を調べないと。でも、編み目を見る限り、大丈夫そうだけどな。

 

 

 

 

部屋から出ると、どこに行けばいいのかわからず、とりあえず食堂に行くことにする。

 

 

 

食堂に着いた。

    

食堂の中に入ると、そこには遠山兄、カナがいた。他に人は見当たらない。

 

「話、しましょうか」

 

高い声で、俺に話しかけてくる。

 

 

 

俺は無言でカナの正面に座る。食事を俺の方に引き寄せる。

 

「1つ聞いていいか」

 

スープを飲みながら、尋ねる。

 

「いいわよ」

 

こいつ、本当に男なのか………。

 

「あんたがここにいる理由は聞かない。……が、今の遠山の状況を知っているのか?」

 

「想像はつくわ」

 

しれっと答える。

 

「もちろんキンジには悪いと思ってるわ。でも、私もやることがあるの。それにあの子にも成長してほしいしね」

 

成長……?

 

「今の遠山を見て、同じことが言えるか?あいつは目標のあんたを失い、しかもそのせいであいつまで世間から非難されているんだぞ」

 

思いの丈をぶつける。

 

「そう。……でも、あの子なら大丈夫よ。私の弟だもの。それに私よりもあの子は強い。だから、大丈夫よ」

 

なんだか、やけに自信のある言葉だな。俺を納得させるような響きだ。

 

……そう言うならこれ以上は言わない。言えない。人様の家庭だからな。

 

しかし、これだけは言おう。

 

「でも……、ちゃんと見届けろよ」

 

これは上である者の義務だ。

 

「もちろん」

 

誰でも見とれるような笑顔で答えた。

 

「あ、それと、お願いだから、あなたが戻っても私の無事は言わないでね」

 

「いつかは知るだろ」

 

「それでもよ」

 

仕方ない、ここは従うか。あ、そうだ。

 

「じゃあ、条件いいか?」

 

「あら、何?」

 

「俺でもできそうな技を教えてくれ」

 

そう言うと、カナは少し目を開く。

 

ここに来たからには色々学ばさせてもらう。じゃなきゃ、誘拐された意味がない。

 

「いいけど……。どんな技がいいかしら?」

 

ふむ。

 

………シャーロックと戦ってからの俺の課題。それは、近接格闘だな。シャーロックに近寄られてから、何もできなかった。あそこで少しぐらい動けたら何かは変わったかもしれない。

 

「体術だな」

 

カナはうなずき、

 

「そうね。なら私の技を1つ教えるわ。……その前にご飯食べちゃいましょう」

 

「ああ」

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、何やら格闘場みたいなとこにいる。

 

「教えてもいいけど、これ武偵法9条も破る技だから、使用する際には注意してね」

 

………さらっととんでもないこと言ったぞ。要するに殺人技かよ。

 

「わかった」

 

「じゃ、見せるわ」

 

カナは近くにあるマネキンを目標に見据える。このマネキンはできる限り人間の感覚に近いことになっている。

 

そして、

 

「羅刹」

 

そう呟くと、

 

 

ーーーーズドオォォン!!

 

 

ノーモーションで右手をマネキンの左胸に掌底をぶち当てる。

 

それを確認できたのは、カナが殴った後の体勢でだ。手の開き具合から何となく掌底だ。

 

マネキンはかなり吹っ飛んだ。

 

 

 

「………なにこれ?普通の掌底?」

 

俺の言葉に首を振るカナ。

 

「違うわ。これは相手の心臓のある中央、中心にかけて掌底を放つのよ。震動によって、心臓震盪、という致死的不整脈を意図的に起こす技よ」

 

簡単に纏めると、相手の心肺を強制的に止める技……か。確かにこれは9条破りだ。

 

……マネキンを見ると、胸の中央、中心がへこんでいる。5cmほど。

 

とんでもない威力だ。恐ろしい速さでもある。

 

おまけに、絶対これ横隔膜とかもヤバいだろ。

 

かなり、器用な、必殺技。

 

ーー必ず殺す技。

 

 

 

 

「これは武偵が持っていたらダメだろ」

 

思わず、そう言葉が漏れる。

 

「あら、そんなことないわ。だって人と戦うとは限らないじゃない」

 

さらっと言いますが、何と戦うんですか?崔?ゴリラ?象?

 

ーーーーあ、そういえば、ジャンヌがブラドを鬼って言ってたな。………人以外と戦うことあるのかな。

 

 

 

「質問いいか?」

 

「いいわよ」

 

「カナにはHSSがある。神経を強化できるからこその威力だろ。………俺はどうやって威力を底上げする?」

 

素直な疑問だ。

 

「教授が言ってたわよ。風を習う予定でしょ。どこまで使えるかは知らないけど。だったら、それで上手に使って上げなさい」

 

なるほど。上手いこと使えばイケる。何せ弾丸を弾き飛ばせるほどの風を起こせる。…………言われたように、俺がどこまで使えるか知らんけど。

 

 

 

 

 

「あ、八幡」

 

不意に呼ばれると、カナの手元が光った。と、同時にパァンと鳴り響く銃声と俺の腹に衝撃が走る。

 

「ぐぁっ……!」

 

急な痛みに腹を抑える。

 

 

 

ーーが、武偵高のブレザーに比べたらそこまで痛くない。至近距離なのに。例えるなら、蘭豹の本気の一撃から時速20kmのスクーターにぶつかった位まで減った。……………減ってるんだよ?

 

スゴい。ここまで衝撃を分散してくれるとは。イ・ウー恐るべし。まあ、でも、分散したかわりに体全体痛いけど。

 

あと、回転弾倉、リボルバーの拳銃のシルエットが見えた。この距離、俺の目があったから見えた。

 

 

あのマズルフラッシュは何だ?銃声からして、けっこう古い。

 

「今の見えたかしら?」

 

「うっすらとな」

 

カナは驚いた顔をする。

 

「へぇ…。じゃあ、原理は理解できたのかしらね」

 

大方の予想はつく。

 

「ーー早撃ち、だろ?」

 

それもとてつもなく正確の、恐ろしいスピード。HSSはここまでできるのか。

 

「そうよ。…見せた、から」

 

そう言い残し、カナは去っていく。

 

その言葉の真意は、

 

「見せたから、あとは自分で真似でもしなさい」

 

ってところか。

 

 

試してみるが、全然できません。

 

自動拳銃より回転弾倉の方が早撃ちには向いている。…………うん、ムリ。止めよ。

 

とりあえずはシャーロック待ちだな。

 

 

 

 

 

 

 

あれから4日ほど経った。

 

俺はノーモーションであの動きを再現しようと練習した。こればかりは一朝一夕ではできない。

 

他には、俺はナイフ、ジャンヌは大型の剣で模擬戦した。結果は俺の全敗。1回だけ惜しいとこまでいったけど。

 

あと、ここは教え合う場所というわけで、ジャンヌに意識の逸らし方を軽く教えたりした。

 

あ、あれ?俺、ここに来てから1回も勝ってない。………………みんなおかしいからね。

 

 

 

そうして、俺に超能力を教えてくれる師匠とやらのご対面。

 

イ・ウーの看板に上がると、そこには留美と同じくらいの身長の少女がいた。それとシャーロックも。

 

この子じゃないよね?

 

と、シャーロック目配せするが、シャーロックはうなずくだけ。

 

 

 

マジですか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




なんか、カナとの話し合いがあっさり終わった。
うーん、これでいいかな?

あと教えてほしいことがあります。
皆さんは、暗記科目……主に世界史Bなのですが、どのように暗記しますか?
よろしければぜひ。

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