アリア新刊の感想。
カツェが、あのカツェが可愛く見えた。あと、アリア出番少ない。
「あっ……。そういえば、お前のせいで冬アニメ全く録れてないんだが」
「くふふっ。私は全部録画しているから見せようか?武偵同士だし、もちろん有料だよ」
「そこは無料にしろ。人を拐っといて何生意気なこと言ってるんだよ……」
俺の部屋にある冷蔵庫から……もう寝るのでMAXコーヒーは止めといてお茶を飲む。ついでにベッドに座っている峰理子にも渡す。
「ありがとね。……ハチハチが素直にお茶を出すなんて、睡眠薬とかないよね?」
「俺がそれをしたところでどんなメリットがある?」
「そりゃもちろん。寝かせた私を………ベッドで、とか?」
「あーはいはいそーですねー」
適当に流したが、……一瞬想像してしまった。ベッドではだけながら寝転ぶ峰理子を。
落ち着く為にもう1回お茶を飲む。
「何よ。つまんなーい」
ぶつくさ文句を垂れている……が、武偵高の峰理子とはあまりにも離れている、その仮面は。
峰理子を特に知らなかったあの頃は、あいつを見ても明るいぶりっ子でクラスの中心。それと、どこか演技をしている。と言うのが主な感想だった。
誰かがその様子に気づくとは思えないくらい、その演技は上手だった。
しかし、今の峰理子は誰でも、例え第3者から見ても、その仮面を見破れる。そのくらい……脆い。
その理由は本人しかわからない。
俺としては見てて痛々しい。
ーーだから、
「お前は何が言いたい」
そう告げる。
その一言で峰理子の明るい感情が消えた。そして、まるで別人みたいに怒りや悲しみの表情をする。……もう1つの峰理子の姿。
「ーーハチハチはさ」
まるで独り言くらいの声量だ。
「私の名前、知ってる?」
「……峰、理子」
「知ってるよね?」
「ーーリュパン4世のことか」
俺が低い声で呟く。
ピクッと峰理子は体を震わす。リュパン4世という言葉にかなり過剰に反応している。
「そうだよ。私は4世だよ」
「…………4世の何が悪いんだ?」
どうやらリュパンよりも4世の方に反応している。でも、それの何が悪い?
ーー途端。
「4世4世4世4世4世!!私はDNAか!!ただの遺伝子か!!数字かよ!!5世を産む為の道具か!!」
叫ぶ。この部屋は一応防音。だが、廊下に響き渡りそうなほどの大声で叫ぶ。
俺は、いつもは決して見せない、見たことのない峰理子のその顔に思わず息を詰まらせる。その、峰理子の涙に。
「誰もお母様がつけてくれたキュートな名前を呼ばない。使用人どもも!どいつもこいつも4世4世4世。ふざけんじゃねぇ!!」
その叫びは俺ではない、誰かに向けられている。
「だから、勝つんだよ!私は!」
叫び終えると、ハァハァと息を整える。
「その、勝つってのは誰にだ?」
俺は問いかける。
自分にか?ブラドにか?それとも、別の誰かか?
「それは………ブラド。いや、吸血鬼だよ」
あ、鬼って言ってたけど吸血鬼なのかブラドは。
「それで私は自由になるんだ」
一言一言噛み締めるように言う。
自由。
意味は「他のものから拘束・支配を受けないで、自己自身の本性に従うこと」だ。
これだけ見ると武偵高のこいつはほぼ自由に見えるけどな。でも、そうじゃない。心のどこかに過去の呪縛がある。切れることのない鎖。だから、どこか1歩踏み切れない。
「1つ聞くぞ」
「…………何?」
「お前の過去を俺は聞いた」
「だから何だ?」
「そこまでお前に固執してきたブラドって奴。そんな簡単にお前を手放すと思うか?」
「…………ッ」
峰理子は顔を曇らせる。
もちろん、その可能性を今までに何回も考えているだろう。だけど、
「わかってる。けど、それにすがるしか…ないんだよ」
峰理子はこの結論しかないんだ。他に選択肢がない。例え口約束だとしても、可能性が低くとも、それが欺瞞だらけでも、賭けるしかない。己の自由の為に。
「じゃあ、別の質問」
峰理子にお茶を注ぎ、渡す。
「その、武偵高は楽しいか?」
もし、その仮面で自分を偽り続ければ、自分を演じ続けていたら、気がおかしくなっても不思議ではない。
家で、部屋で、どこか独りになれる場所で、仮面は外すものだ。俺?俺はぼっちだから仮面を被る必要はない。
しかし、俺は知らない。武偵高の峰理子を、今の峰理子を。
「もちろん、楽しいよ。色んな可愛い服を着て、みんなとおしゃべりして、今まで経験したことのなかったことをたくさんした」
本当に楽しそうな表情で話すが、
「……でもっ、どこかでブラドのことが頭をよぎる。怖いんだよ。楽しいけど、けど」
言葉の続きは、多分全力で楽しめない、か?そうなのか?見た限りは楽しんでそうだが。
お茶を一気に飲むと、ボスンとベッドに倒れ込む。
「誰かに頼ろうとはしなかったのか?」
俺はまた別の質問を投げ掛ける。
「ダメなんだよ。ブラドは強い。圧倒的すぎるほど。イ・ウーでも教授並みに強い」
マジか。そんな化け物なのか。
「しかもあいつは無敵なんだ。誰にも勝てない」
苦々しく告げる。
「だから、独りでやる…………。巻き込めない」
寝返り、俺からは顔が見えない。表情はわからない。だけど、肩が震えている。
これだけは、言おう。
「ーーーーそれは、本音か?」
峰理子は今まで独りで戦ってきた。誰も頼ることをできなかった。そういう意味では俺より孤独だ。俺には家族、小町がいた。
……でも、峰理子には何もいない。
頼ることを知らない。したことのないことだから。表面上取り繕っても、峰理子は脆い、儚い少女であることに変わりはない。
その時、聞こえた。
「そんな…の、いや、嫌だよ……。助けてほしい………よ」
これが、峰理子の本音。
今度は仰向けになり、大粒の涙を流す。それを抑えるように腕で擦る。
でも、止まらない。いや、止めないでいい。思う存分泣け。それができるのは、お前が人間だからだ。
泣いたままの峰理子に話しかける。
「俺は武偵だ。依頼されたら何でもやる」
スゥーと息を吐き、空気を吸うと、
「それは、依頼か?」
近くまで歩き、俺は言う。
峰理子はのっそり起き上がると、グスンと鼻をすする。
「うん。……依頼。お願い、助けて、私を」
「ーーそうか、わかった。この先ブラドとお前が戦う時が来たら、俺も絶対駆けつける。お前を死なせない。…………依頼、承った」
「うん、うん。……ありがと」
目元は赤い。それでも、可愛い笑顔だ。
しばらくして、
「あ、それで報酬を今、もらっていいか?」
「えっ?」
俺の急な話題転換に目を丸くする。
「何、ハチハチ?もしかして私の体?」
顔を赤らめながら体に抱きつく動作をする。
「違うわ。報酬は………」
…………これをセリフにするのは恥ずかしいな。
「俺と、その……友達になってくれないか?」
「………えっ?」
その言葉にまたもや目を丸くする。
「いきなり、どうして?」
「いや……俺、友達いないんだよ。欲しいなぁって。それにお前とならなれそうかなと思って」
そうなんだよ。いないんだよ。俺に友達。
「キー君は?」
「ルームメイト」
「ルミルミちゃんは?」
「アミカ。……てか、お前もアダ名それかよ」
「……………じゃあ、レキュは?」
「あいつは、わからない。けど、友達ではないな」
「くふふっ。もしかして、好きなの?」
「さぁ?俺もわからん」
これは正直な意見だ。
「えーっと、クラスでは……。あっ、ホントにハチハチ友達いないんだ」
残念そうな目で見てくる。
「そんな憐れみの視線を向けるな」
アハハっと楽しそうに笑うと、
「しょうがないな。……私と友達になろっか」
そう言った。
そして、峰理子は両手で頭に角を作ると、
「でも、お前じゃなくて、理子って呼んでね。じゃなきゃ、プンプンガオーだぞ」
それもそうか。友達って名前で呼び合うもの…だよな。いたことないから知らないが。
あと、何それ?まあ、いいか。
「ああ。よろしく。……理子」
「こっちもね。ハチハチ……ううん、八幡」
俺が手を差し出し、理子はベッドから立ち上がり、俺の手を掴む。
ーーーーお互い、笑顔で。
こうして、俺と理子は友達になった。
この話、前から書きたかった話です。多分かなり初期から。
では、よいお年を!
今日もいい日だっ。ばいちっ。