八幡の武偵生活   作:NowHunt

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恐らくこれが今年最後の投稿となります。

アリア新刊の感想。
カツェが、あのカツェが可愛く見えた。あと、アリア出番少ない。



第40話

「あっ……。そういえば、お前のせいで冬アニメ全く録れてないんだが」 

 

「くふふっ。私は全部録画しているから見せようか?武偵同士だし、もちろん有料だよ」  

 

「そこは無料にしろ。人を拐っといて何生意気なこと言ってるんだよ……」

 

俺の部屋にある冷蔵庫から……もう寝るのでMAXコーヒーは止めといてお茶を飲む。ついでにベッドに座っている峰理子にも渡す。

 

「ありがとね。……ハチハチが素直にお茶を出すなんて、睡眠薬とかないよね?」 

 

「俺がそれをしたところでどんなメリットがある?」

 

「そりゃもちろん。寝かせた私を………ベッドで、とか?」

 

「あーはいはいそーですねー」

 

適当に流したが、……一瞬想像してしまった。ベッドではだけながら寝転ぶ峰理子を。

 

落ち着く為にもう1回お茶を飲む。

 

「何よ。つまんなーい」

 

ぶつくさ文句を垂れている……が、武偵高の峰理子とはあまりにも離れている、その仮面は。

 

峰理子を特に知らなかったあの頃は、あいつを見ても明るいぶりっ子でクラスの中心。それと、どこか演技をしている。と言うのが主な感想だった。

誰かがその様子に気づくとは思えないくらい、その演技は上手だった。

 

しかし、今の峰理子は誰でも、例え第3者から見ても、その仮面を見破れる。そのくらい……脆い。

 

その理由は本人しかわからない。

 

 

 

 

俺としては見てて痛々しい。

 

ーーだから、

 

「お前は何が言いたい」

 

そう告げる。

 

その一言で峰理子の明るい感情が消えた。そして、まるで別人みたいに怒りや悲しみの表情をする。……もう1つの峰理子の姿。

 

「ーーハチハチはさ」

 

まるで独り言くらいの声量だ。

 

「私の名前、知ってる?」

 

「……峰、理子」

 

「知ってるよね?」

 

「ーーリュパン4世のことか」

 

俺が低い声で呟く。

 

ピクッと峰理子は体を震わす。リュパン4世という言葉にかなり過剰に反応している。

 

「そうだよ。私は4世だよ」

 

「…………4世の何が悪いんだ?」

 

どうやらリュパンよりも4世の方に反応している。でも、それの何が悪い?

 

ーー途端。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「4世4世4世4世4世!!私はDNAか!!ただの遺伝子か!!数字かよ!!5世を産む為の道具か!!」

 

叫ぶ。この部屋は一応防音。だが、廊下に響き渡りそうなほどの大声で叫ぶ。

 

俺は、いつもは決して見せない、見たことのない峰理子のその顔に思わず息を詰まらせる。その、峰理子の涙に。

 

「誰もお母様がつけてくれたキュートな名前を呼ばない。使用人どもも!どいつもこいつも4世4世4世。ふざけんじゃねぇ!!」

 

その叫びは俺ではない、誰かに向けられている。

 

「だから、勝つんだよ!私は!」

 

叫び終えると、ハァハァと息を整える。

 

「その、勝つってのは誰にだ?」

 

俺は問いかける。

 

自分にか?ブラドにか?それとも、別の誰かか?

 

「それは………ブラド。いや、吸血鬼だよ」

 

あ、鬼って言ってたけど吸血鬼なのかブラドは。

 

「それで私は自由になるんだ」

 

一言一言噛み締めるように言う。

 

 

自由。

 

意味は「他のものから拘束・支配を受けないで、自己自身の本性に従うこと」だ。

 

これだけ見ると武偵高のこいつはほぼ自由に見えるけどな。でも、そうじゃない。心のどこかに過去の呪縛がある。切れることのない鎖。だから、どこか1歩踏み切れない。

 

 

 

「1つ聞くぞ」

 

「…………何?」

 

「お前の過去を俺は聞いた」

 

「だから何だ?」

 

「そこまでお前に固執してきたブラドって奴。そんな簡単にお前を手放すと思うか?」

 

「…………ッ」

 

峰理子は顔を曇らせる。

 

もちろん、その可能性を今までに何回も考えているだろう。だけど、

 

「わかってる。けど、それにすがるしか…ないんだよ」

 

峰理子はこの結論しかないんだ。他に選択肢がない。例え口約束だとしても、可能性が低くとも、それが欺瞞だらけでも、賭けるしかない。己の自由の為に。

 

 

 

「じゃあ、別の質問」

 

峰理子にお茶を注ぎ、渡す。

 

「その、武偵高は楽しいか?」

 

もし、その仮面で自分を偽り続ければ、自分を演じ続けていたら、気がおかしくなっても不思議ではない。

 

家で、部屋で、どこか独りになれる場所で、仮面は外すものだ。俺?俺はぼっちだから仮面を被る必要はない。 

 

しかし、俺は知らない。武偵高の峰理子を、今の峰理子を。

 

 

「もちろん、楽しいよ。色んな可愛い服を着て、みんなとおしゃべりして、今まで経験したことのなかったことをたくさんした」

 

本当に楽しそうな表情で話すが、

 

「……でもっ、どこかでブラドのことが頭をよぎる。怖いんだよ。楽しいけど、けど」

 

言葉の続きは、多分全力で楽しめない、か?そうなのか?見た限りは楽しんでそうだが。

 

お茶を一気に飲むと、ボスンとベッドに倒れ込む。

 

「誰かに頼ろうとはしなかったのか?」

 

俺はまた別の質問を投げ掛ける。

 

「ダメなんだよ。ブラドは強い。圧倒的すぎるほど。イ・ウーでも教授並みに強い」

 

マジか。そんな化け物なのか。

 

「しかもあいつは無敵なんだ。誰にも勝てない」

 

苦々しく告げる。

 

「だから、独りでやる…………。巻き込めない」 

 

寝返り、俺からは顔が見えない。表情はわからない。だけど、肩が震えている。

 

これだけは、言おう。

 

 

 

「ーーーーそれは、本音か?」

 

峰理子は今まで独りで戦ってきた。誰も頼ることをできなかった。そういう意味では俺より孤独だ。俺には家族、小町がいた。

 

……でも、峰理子には何もいない。

 

頼ることを知らない。したことのないことだから。表面上取り繕っても、峰理子は脆い、儚い少女であることに変わりはない。 

 

 

 

 

その時、聞こえた。

 

「そんな…の、いや、嫌だよ……。助けてほしい………よ」

 

これが、峰理子の本音。

 

 

 

 

今度は仰向けになり、大粒の涙を流す。それを抑えるように腕で擦る。

 

でも、止まらない。いや、止めないでいい。思う存分泣け。それができるのは、お前が人間だからだ。

 

 

泣いたままの峰理子に話しかける。

 

「俺は武偵だ。依頼されたら何でもやる」

 

スゥーと息を吐き、空気を吸うと、

 

「それは、依頼か?」

 

近くまで歩き、俺は言う。

 

峰理子はのっそり起き上がると、グスンと鼻をすする。

 

「うん。……依頼。お願い、助けて、私を」

 

「ーーそうか、わかった。この先ブラドとお前が戦う時が来たら、俺も絶対駆けつける。お前を死なせない。…………依頼、承った」

 

「うん、うん。……ありがと」

 

目元は赤い。それでも、可愛い笑顔だ。 

 

 

 

しばらくして、

 

「あ、それで報酬を今、もらっていいか?」

 

「えっ?」

 

俺の急な話題転換に目を丸くする。

 

「何、ハチハチ?もしかして私の体?」

 

顔を赤らめながら体に抱きつく動作をする。 

 

「違うわ。報酬は………」 

 

…………これをセリフにするのは恥ずかしいな。

 

 

 

 

「俺と、その……友達になってくれないか?」

 

 

 

「………えっ?」

 

その言葉にまたもや目を丸くする。

 

「いきなり、どうして?」

 

「いや……俺、友達いないんだよ。欲しいなぁって。それにお前とならなれそうかなと思って」

 

そうなんだよ。いないんだよ。俺に友達。

 

「キー君は?」  

 

「ルームメイト」 

 

「ルミルミちゃんは?」

 

「アミカ。……てか、お前もアダ名それかよ」

 

「……………じゃあ、レキュは?」

 

「あいつは、わからない。けど、友達ではないな」

 

「くふふっ。もしかして、好きなの?」

 

「さぁ?俺もわからん」

 

これは正直な意見だ。

 

「えーっと、クラスでは……。あっ、ホントにハチハチ友達いないんだ」

 

残念そうな目で見てくる。

 

「そんな憐れみの視線を向けるな」

 

アハハっと楽しそうに笑うと、

 

「しょうがないな。……私と友達になろっか」

 

そう言った。

 

そして、峰理子は両手で頭に角を作ると、

 

「でも、お前じゃなくて、理子って呼んでね。じゃなきゃ、プンプンガオーだぞ」

 

それもそうか。友達って名前で呼び合うもの…だよな。いたことないから知らないが。

 

あと、何それ?まあ、いいか。

 

「ああ。よろしく。……理子」

 

「こっちもね。ハチハチ……ううん、八幡」  

 

俺が手を差し出し、理子はベッドから立ち上がり、俺の手を掴む。

 

 

ーーーーお互い、笑顔で。

 

 

 

 

 

 

 

こうして、俺と理子は友達になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 




この話、前から書きたかった話です。多分かなり初期から。


では、よいお年を!

今日もいい日だっ。ばいちっ。
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