八幡の武偵生活   作:NowHunt

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    キミが僕だけ見てる証拠


    今すぐこの手に ちょうだい







第43話

レキだ。恐らく…っていうか絶対レキだ。

 

 

俺はすぐさま通話アプリを開く。

 

……………そこで気付いた。

 

特に気にしてなかったが、知らない番号がたくさん不在着信として入っている。

もしかして、これ、レキだったのか。

 

ああっ!今はいい!

 

レキに連絡を。

 

……

………

…………

……………

 

出ねぇし!

寸とも言わない。音沙汰なしだ。

 

ちなみに俺がレキに連絡取ろうとしている間に十字型の傷が俺の四方にできた。

 

狙撃地点も想像つかない。しかも、今は夜。かなり暗い。

 

つまり…………何が言いたいかと言うと………。 

 

 

「怖っ!」

 

 

これは狙撃手において悪手だが、とりあえず逃げようそうしよう。じゃなきゃ死ぬ。……まあ、この時点でレキは俺を殺せるんだけどね!

 

武偵法の縛りを信じるしかないな。

 

 

どこに逃げる?部屋まではあと1km程度。……ダメだ、時間がかかる。

 

うん、とにかく逃げ回るか。

 

 

 

 

 

俺は走る。細道だと跳弾が危ない。だから大通りを走っている。そんなのレキには関係ないと思うが。

 

その間にもレキに連絡をかけ続ける。

 

 

 

……………あ、思い出した。

 

そういえば、理子に連絡したのか後日詳しく聞いたら、

 

「ハチハチの家族とねー、武偵高には連絡したよーー。可愛い妹ちゃんと蘭豹先生が出て、2人ともわかったって応えてくれたよーー」

 

と、アイスを食べていながら、言っていた。

 

 

 

 

 

「あっ……」

 

つまりだ、知人には全くもって知らせてなかったということか。なんで気が付かなかった、俺……。

 

あ、なるほど。それは怒るわけだな。

………わかるよ、俺だっていきなり小町が音信不通になったら心配するし。だったら、あまり怒らなかった小町はさすがと言うべきか、可愛いできた妹だな。

 

でもね、普通狙撃する?多少心配してくれるのは嬉しいよ?でもね、普通殺しにかかる?人に銃弾向ける?

 

…………………ここに普通の人なんていないんだな。

 

と、今さらながら実感する、俺こと比企谷八幡であった。

 

と、考えている間に俺が走ろうとしたルートに銃弾の傷痕がアスファルトにつく。

 

「くっ!」

 

それを見ると、反射的に俺はルートを変える。この動作を何回か繰り返す。

 

 

 

 

 

しかし、それさえもレキは読んでいた。俺の行動を操っていた。

 

「うわー。マジでかーー」

 

俺は気を付けていたが、細道に追い込まれる。しかも逃げた先は、行き止まりっていうね。

 

………………………

 

「お願いレキ出て!お願い!」

 

 

 

――死にたくない!死にたくなああい!………俺は、幸せになりたかった、だけなのに………。

 

 

 

思考停止で俺は何度もかけ直す。

 

途中、攻撃が止んだことがあったけど、あれはレキが狙撃地点を変えて移動していた。

今、俺がいるのは一本道。幅は1m。戻るためには10mは走らないといけない。逃げようとしたら、レキの射程に自ら入ることになるはずだ。

 

頼む頼む繋がれ、たの『八幡さん、王手です』む……。あ、切れた。

 

 

完全にレキの声だったな。そして、今、あいつは何て言った?

 

 

 

 

――――王手。

 

つまり、まだ詰んでない。

 

もしそうなら、詰みとかチェックメイトって言うはずた。

 

まだ、逃げ道はあるのか。

 

そこで思い付く。生き延びる案を。

 

 

「戦わなければ生き残れない。……ってか」

 

 

 

あまり嫌だが、こうなったら、行くぞ!最後の足掻き!

 

 

精神を集中させる。

 

周りの壁が少しずつ削れていく。

 

もっと速く………もっと。

 

烈風を使う。

 

俺を中心に最大出力の風を起こす。俺の最大出力は台風並みだ。ドヤッ!

 

上手くいけば、銃弾くらい逸らすことができるはず!

 

 

――ガキッガキッ!

 

レキの銃弾が烈風に乗って壁と床を擦る。よしっ上手いこと逸らせた。

 

 

しかし、次の瞬間――――

 

 

 

 

ピシッと俺の頬に銃弾がかすった。

 

「ちっ……。クソッ」

 

…………風の動きを見抜いて、もう対応してきたか。

 

対応されたら対応する。それを怠った方が負ける。それが――戦いだ。

 

 

風の強弱をつける、風向きを変える。レキに詠ませないようにランダムでだ。

他に色んな方向に突風が起こったり、俺を中心に風を起こさせたり。

 

俺ができるのは、まだこれが限度だ。

 

セーラみたいに自由に操れない。セーラなら風で銃弾をコントロールして、弓矢で狙い打ちできるのにな。

あそこまでくればマジチート。

 

 

「くっ!」

 

今度は肩に銃弾が当たる。一瞬止まった所を狙い撃ちされた。

鈍い音がする。………痛い!

 

だけど、アーマーピアスじゃなくて助かった。もしそれだったら、今は制服を着ているが、簡単に殺られている。

 

精神を集中し直す。その間にも弾が飛んでくる。それを俺はギリギリで逸らしながら避ける。

 

「がっ!」

 

今度は太ももを撃たれる。

 

こ、攻撃的すぎるだ、ろ………。

 

 

 

 

この見た目は地味だが、精神を削る戦いは5分続いた。

 

終わりを告げる合図は、途中攻撃が止んだらと思ったら、スマホが鳴り、

 

『すいません。弾が切れました。終わりにしていいですか?』

 

と、直々に連絡してきた。

 

ぶっちゃけると、長かった………。内心1時間戦った気分である。

 

かなり上からの発言だな。

 

いや、逆に考えろ。そこまでレキの猛攻から耐えたんだ。俺は、Sランク相手にだ。

 

にしても、超能力をこんな連続で使うのがここまでキツいとは。………平然と使うセーラやジャンヌたちは化け物かよ。

 

 

レキはすぐに通話を切り、メールを寄越してきた。どうやら、とあるビルの屋上に来いと言っている。

 

荷物を背負い直し、そこに独り歩く俺。

 

俺の損傷は左肩に3発、右太ももに4発、頬に1発。しかも、寸分違わずに。

俺が風で逸らせたと思ったら、それすら利用して攻撃してきた。まだ、烈風は初動が大きく、わかりやすいのか。

 

 

血が流れる頬を指で擦り、肩を抑えながら、フラフラと足下が安定しない状態で歩く。

 

「ハァ……ハァハァ……。あーもう痛いわ」

 

これ、引き分けたように見えるが、俺は全くレキにダメージを与えられてない。それにレキは超能力を使う前の俺を、殺れるチャンスが何回もあった。

 

まあ、要するに、

 

「完敗だ」

 

強襲科と狙撃科、ここまで相性が悪いとは。強襲科って諜報科とも相性悪いし……大丈夫か?

まあ、俺には握られて困る情報なんて存在しないけど………言ってて悲しいな。

 

 

 

 

20分かかり、やっとの思いでビルの屋上に着いた。

 

「やっと………着、いた」

 

屋上の入り口を開けて、足を踏み入れる。

 

空には、満月が浮かび、星が瞬いている。

 

そして、横を向く。

 

 

 

――――そこにはドラグノフを抱え、夜空を見上げるレキがいた。

 

屋上には電気はなく、月明かりだけがレキを照らしていた。表情がなく、相変わらず何を考えているか読み取れない奴だが………、

 

「綺麗、だな」

 

気付いていたのだろうが、俺の言葉を聞いてから、こっちを向き始めた。多少頬を赤く染めて。

 

「八幡さん」

 

ドラグノフを床に置き、レキは立つ。

 

「お久しぶりです」

 

「そうだな。できれば出会い頭に撃ってほしくないんだが」

 

皮肉を込めて、俺はレキとは対照に腰を下ろす。

 

「そうですか」

 

レキも腰を下ろす。

 

 

「質問、よろしいですか?」

 

「言いたくなかったら言わないからな」

 

「わかりました。では」

 

 

 

「八幡さんはどこに行っていたのですか?」

 

…………いきなり核心に触れてきたか。

 

「黙秘権を行使する」

 

ジャンヌから話すなと言われた。その人の生きた証拠がなくなるから。

 

「わかりました。なら質問を変えます」

 

そう言うと、レキはまた立ち、俺の目の前に移動する。俺を見下ろす。

 

「――――風と近い者に会っていたのですか?」

 

風か。レキがよく口にするワード。

 

 

「風って何だ?それって――」

 

もしかしたら、と頭によぎるキーワードがある。できれば、それだと思いたくない。でも、その可能性が限りなく高い。今現在、俺にもレキにも共通する、と思う――――その言葉は、

 

 

 

 

「――色金、か?」

 

もう1回俺も立つ。レキの顔を正面から見つめる。

 

「はい」

 

俺は、緋色の研究から、シャーロックが緋緋色金持ちだということを知ってる。そして、その緋緋色金を継ぐ者が武偵高に現れることも。

 

「ということは、八幡さん。あなたはイ・ウーにいたのですね」

 

「知っているのか」  

 

「はい」

 

本当にわからない。レキ、お前は何なんだ。今までどんな人生を送ってきた?色金も、イ・ウーも知っている。

…………………怖い。

 

 

 

「ん?待てよ」

 

緋緋色金の継承者の性格とレキの性格は違いすぎる。よってレキに近いのは緋緋色金ではない。

 

「レキの、風って、どの色金だ?」

 

 

 

 

しかし、レキの返答は、

 

「教えません」

 

返ってきた答えは、否定だった。

 

「どうして?」

 

「まだあなたが知るには早いと思います。何れ知る機会が訪れます。その時でも遅くないです」  

 

完璧な否定の言葉だ。俺を巻き込みたくないのだろう。レキの言葉から、そんなニュアンスが伝わる。

 

 

 

 

 

――――でも、それじゃあ、ダメなんだ。それだと、ダメだ、嫌だ。レキが良くても、俺が良くない。

 

だったら、言おう。

 

「それでは遅い。俺は今、お前の――レキのことを知りたい」

 

「なぜです?」

 

レキは首を傾げる。無表情ではなく、本当にわからないという疑問の表情が読み取れる。

 

 

 

 

怖いんだよ。俺は臆病だから。

 

「知らないというのは怖い、とてつもなく怖い。

だから、俺は知って安心したい。その人のことを知っておきたい。安らぎを得たい。

……だからこそ、俺は………。

これは俺のエゴで、独善的な願いや欲望で、自分勝手な我儘だということは俺が!……1番、理解している」

 

レキは黙って聞いている。

 

「……俺は……………」

 

 

どうして、俺はここまでレキのことを知りたいと思う?普段の、今までの俺なら怖かったら、無視をしてきた。関わらず生きてきた。でも、レキにはどうして?

恩人だから?……違う。

パートナーと思うから?……違う。

俺を構ってくれたから?……これも違う。

俺と仲良くしてくれたから?……違う違う。

 

理子の時感じた――友情、友達になりたいともどこか違う。

 

多分、俺の答えは………もっと別のとこにある。

 

 

 

 

 

「俺は、レキが、好き………」

 

「………っ!」

 

口から零れ落ちる。レキが息を吸う音がする。

 

思わず、自然と、零れ落ちるということは、これが俺の――本音――なんだな。

 

 

「俺はレキ、お前のことが好きだ。だから、お台場で言ったように、レキのことが知りたい。教えてくれ。……俺に」

 

レキを見つめ、俺は言う。

 

対するレキは、顔を赤くし、うつむく。

 

俺はしばし経つ。

 

「私は」

 

顔は赤いまま、上げる。

 

「私には、わかりません」

 

淡々と告げる。

 

「まだ、私には好き、という感情がわかりません」

 

しかし、初めて会話した時と違う。

 

「だから、教えてください。これから私と一緒にいてください」

 

 

もう離したくない。

 

俺の側にいてほしい。

 

俺を見てほしい。

 

俺を知ってほしい。

 

だから、俺の答えは――――当然、

 

 

 

俺とレキは、互いに1歩近付く。

 

「もちろんだ。レキ」

 

「お願いしますね。八幡さん」

 

 

そこで、俺とレキは夜空に浮かぶ満月を見上げる。

 

「月が綺麗ですね」

 

「ああ、月が、綺麗だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、聞いてください。教えます。私、レキを――――」

 

 

 

 

――――璃璃色金。

 

その色金がレキの一族の色金。

 

レキの一族はウルス族。レキを含め47人しか残っていない。チンギス・ハンと源義経が同一人物でその末裔。

 

璃璃色金は「無」を好む。レキは「璃巫女」として育てられた。だからレキは無感情だった。

 

でも、今は璃璃色金がほとんど憑いてない状態らしい。

 

 

それらの説明を30分ほど、レキの隣で座りながら受けた。 

 

正直な話、頭が追い付かない。でも、イ・ウーの経験のおかげである程度の耐性はついていたので、何とかなった。

 

 

「それで、レキ。お前は、色金関係で何かしないといけないことはあるのか?」

 

「はい」

 

俺の言葉にレキはうなずく。

 

「それは何だ?俺も協力する」

 

俺は聞くと、  

 

「すいません。また今度でいいですか?」

 

「……えっ?」

 

返ってきた言葉はまさかの持ち越しだった。

 

「………眠いです」

 

そう言われてから、時計を確認する。もう夜中の2時だ。確かに眠い。特に俺の場合、痛みもある。

 

「すまんな。色々と」

 

「構いません。……………では、お休みなさい」

 

言い終えると、レキは俺に体を傾け、頭を俺の肩に預ける。

 

「れ、レキさーん?」

 

「スゥー、スゥー………」

 

あらやだこの子、もう寝てらっしゃる。

 

 

まあ、いいか。

 

 

 

俺もレキに体を預け、ぐっすり寝た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――翌日。武偵高、5時限目。

 

久しぶりに登校(遅刻)した俺は、強襲科の体育館の端っこで柔軟をしていた。

 

そこで、ふと見た。

 

 

とある少女が、男子女子問わず無双している姿を。

 

 

 

ピンク色の髪、ツインテール。赤い瞳。………あとチビ。

 

 

 

こんな奴今までいたっけ?にしても、何か引っかかる容姿だな。

 

 

不知火に近付き、話しかける。

 

「なあ、不知火。あいつ誰だ?」

 

俺はその少女を指を向ける。

 

「ん?ああ、比企谷君。彼女は3学期に転校してきたSランクだよ。あ、ちなみに同い年だからね」

 

Sランク………マジか。あのチビが?見るからに沸点低そうなのが?

 

「名前は?」

 

「名前は……神崎アリアだよ。いやー恐ろしいよねー」

 

へーー。神崎アリアか。

 

 

………………へ?

 

 

 

アリア?

 

まさか……あの容姿。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――緋弾のアリア?

 

 

 

 

  

 

 

 




グアムから俺!参上!

いやー前回の感想数半端なかったでw
まさかあそこまで来るとは予想外でした。

LiSAっ子祭、当選したぜイエーイ!


感想、評価待ってます!

あ、誤字などわかりにくい箇所があれば教えてくださいな

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