八幡の武偵生活   作:NowHunt

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Mステ見たかった………


第45話

「何でいるの?」

 

「…………」

 

 

 

 

俺は船橋市にあるララポートに来ていた。

 

1年の3学期も終わり、もう春休み。

 

最初の方に単位を取りまくったこともあり、無事に2年進級となった。そもそも、あともうちょっとで卒業分の単位貯まるんだけどな。

 

 

 

 

そこで、部屋でゴロゴロしていた俺だが、暇だし、そうだ!千葉に行こう!と思った。

 

最近愛しの千葉に行く機会がなかったしな。ぶらつきながらMAXコーヒーを飲める。…………いいじゃん。

 

武偵高の制服は着ずに、俺はジーンズに黒のパーカーという、何の捻りもない服装である。………念の為にファイブセブンを持参。

 

電車を乗り継ぎ、やって来たのはいいんだ。

 

今回は独り旅のつもりだった。久しぶりに独りでぶらぶらしたかった。

 

したかった。……のだが、入り口にポツンと立っている人物。

 

言わなくてもわかるだろう…………レキだ。

 

 

 

 

 

「何でいるの?」

 

「…………」

 

無反応。なんだ、ただの屍か。

 

「ハァー。……じゃあな」

 

返事もないし、俺に用事はないのだろう。さっさと去るに限る。

えーっと、さて、先ずはどこに行こうかなーー………………、

 

「……放せよ」

 

後ろを向かず言う。

 

少し歩いたら襟を掴まれた。

 

「……………」

 

「何か言って?」

 

無言のまま襟を掴むのは勘弁してください。

 

周り見て。色んな人がこっちを訝しむ視線で見てくるから。

ただでさえ、レキの髪の色とか、俺の目のせいで目立つんだから。………あとレキ可愛いし。

 

これ、どうすれば正解なの?

 

「レキさーん」 

 

「…………」

 

「ねえ、レキさーん?」

 

「………………」  

 

返事がない。かと思いきや、襟から手を放し、俺の手を握ってくる。

 

「ちょ」  

 

そのままツカツカと歩く。抵抗せずについていくことにする。

 

――何を考えているのか?

 

やはりレキは表情をあまり出さないからわからん。逆に理子みたいに笑ったらそれはそれで怖いが。

 

 

 

 

 

無言のままお互い座る。いつものサイゼである。時間もあと1時間でお昼頃。……人も少なく丁度いい。

 

あと、お互い無言だったせいで店員オドオドしていたよ?少しは気を使おうよ?俺も黙ってたけど。

 

ちなみにレキの服装は、この前買った桃色のワンピースに、水色のジャケット。……と、まあ、一言で表すと可愛い。

 

レキはメニューに指を指して、注文を済ます。俺はドリアを頼む。

 

「八幡さん」

 

待っている間、やっと口を開く。

 

「何だ?」

 

「今からデートしましょう」

 

「……………………」

 

今度は俺が黙る番みたいだ。

 

しばし、間が空く。

 

「デートってあれか。date。日付のことか」

 

「違います」

 

「じゃあ、あれだろ?デートって書いて伊達って読むんだろ?戦うお医者さん」

 

リアルタイムで見ていて、「後藤さんが変身するんだろ?」って思ってたら、「誰やこのおっさん!」と突っ込んだ覚えがある。

 

だって、映画では後藤さんが変身してたんだよ?伊達さんより早く。あ、信長除いて。

 

伊達さん渋くてかっこいいよね。 

 

…………あ、今はレッツゲーム!か。戦うお医者さんは。

あれも面白い。だが、1つ聞きたい。HPゲージの概念どこに行った?

吹っ飛ばされる度にガシャットが抜けているよね?

 

 

等と、頭で今はどうでもいい妄想を繰り広げる。いや、現実逃避だなこれは。

 

「八幡さんの言っている意味がわかりません」

 

うーん、やっぱり知らないかー。面白いんだけどなー。

 

1つのドラマとしても好きだったなー。最後の変身にはマジで泣いた。

 

好きなのにほとんど見ない奴らにバカにされた時ほどムカついたことはない。………○石、お前は許さん。

 

あ、録画していたHDDぶっ壊れて最終回のデータ消えたなーー。

 

………その話は関係ないな。

 

 

話を戻すか。

 

「それで、レキの言うデートとは?」

 

もう答えはわかりきってるんだけどね?

 

「私の言うデートとは、男性と女性で時間を定めてどこか外へ出掛けることです」

 

「ちょっと待とうか。その理屈だと俺ら時間合わせてなくね?」

 

「では、今からこの場で待ち合わせ、ということでいかがでしょう?」

 

ちょーー屁理屈だな。

 

「八幡さん」

 

「何だ?」

 

「私のこと、好きなんですよね?」

 

……………その話、蒸し返さないで。かなり部屋で悶えて、調子の良くない遠山に心配されたんだから。

 

でも、俺の返事は、

 

「はい…………好きです」

 

小声でボソッと呟く。

 

――は、恥ずかしい!!

 

「でしたら、私のお願い聞いてくれますか?」

 

顔を赤くして、首を軽く傾げ、尋ねるレキ。

 

それは反則やで、レキさん。誰でもオーケーしてしまう破壊力はあると自覚しましょう。

 

まぁ、仕方ない。独りで廻るのは、また別の機会にするか。

 

「飯食ったら、どこか行こうか」

 

「はい」

 

 

 

レキはハヤシライス。俺はドリアを食べている。

 

「そういや、レキ。何で俺の場所がわかった?」

 

これを聞きたくてなぜか遠回りをした。

 

「八幡さんの場所なら、わかりますよ?」

 

「お、おぉ……」

 

何を当然な、みたいな表情するなよ。怖いよ。

 

あ、それと未来予知できるの?俺限定で?

……普通の男なら嬉しいだろうが、相手はレキだ。素直に怖い。

 

 

「八幡さん」

 

レキが、スッとスプーンを差し出す。

そこにはハヤシライスの一部が乗っている。

 

「あーん、です」

 

不意にそんなことを言ってくる。

 

「………は?」

 

いやホント不意に。

 

「だから、あーん、です」

 

「どうして急に?」

 

「調べたところ、デートではこうする……と」

 

「へ、へー」

 

「では、あーん、です」

 

こういうのって、ファミレスじゃなくて、もっとオッサレーな店でやるもんじゃないの?

 

でも断れないこの雰囲気。断ったら何が起こるか、俺にはわかんない。

 

「おう。……あーん」

 

「どうです?」

 

「ふ、普通に美味いぞ」

 

何回も食べてる味だし。

 

レキはそのまま俺が口を付けたスプーンで食べるのを再開する。

 

「……………」

 

もう気にしない。無心だ、無心。

 

 

 

 

少し会話があるだけで、俺たちの飯の時間は終わった。

 

会計する時、同じ店員さんに一言お辞儀して去った。さっきはすいません。

 

「八幡さん」

 

レキが俺に手を差し出してくる。俺はチョキを出す。

 

「八幡さん?」

 

「いや、何?」

 

声色変えるな。お願いだから。

 

「手を繋ぎましょう」

 

「それも調べたと?」

 

「はい」

 

俺は学習した。これは断れないと。

 

「はいよ」

 

レキと手を繋ぐ。

 

肌寒いこの季節、人の体温がほんのり暖かい。

 

「「……………」」

 

俺もレキも少し顔を赤らめ、また無言になる。

 

 

 

 

「さあ、どこ行く?」

 

3分くらいで再起動した俺はレキに言う。

 

「八幡さんに任せます」

 

レキから誘っといてこれか。

 

……いや、これがレキの普通だ。レキが綿密に計画を立ててきたら、俺は病院に連れて行くぞ。

 

「ゲーセン行くか」

 

「ゲーセン、ですか?」

 

「ゲームセンターの略。色んなタイプのゲームがある」

 

歩きながら色々と説明した。

 

 

そして、ゲーセンに着いた。

 

さて、レキにもできそうなゲームは。

 

「これ、やるか」

 

向かった先はUFOキャッチャー。

 

「ルールは……」

 

「理解しました。他の人の動きを見ました。あのアームで景品を取ればいいのですね?」

 

さすがの理解力。

 

「そうだ。ほい、金」

 

とりあえず100円を渡す。適当にぬいぐるみが景品のUFOキャッチャーに並ぶ。

 

スゴい複雑な場所にあるから1回では無理だろう。こういうのは何回かやって、ずらしながら取るもんだ。

 

と、思っている間に、

 

「こうですか?」

 

もうレキは、熊のぬいぐるみを抱えていた。

 

「スゲェな」

 

1発で取れたのか……。Sランクの力はこんなゲーセンでも発揮されるの?俺なんか平均して7回はかかるのに。

 

「それ、どうする?」 

 

部屋に置くにしても、こいつの部屋は何もない。レキの銃、ドラグノフの整備道具ぐらいしかない。

ぬいぐるみだと、埃が舞い散る。それだと整備の邪魔になるのではないか?

 

「持っておいて下さい」

 

それは妥当な判断だと思う。でも、俺の都合を考えてほしい。

男が女の子が持ってそうな、ぬいぐるみを持っていたら恥ずかしいんだよ。

 

「まあ、他に選択肢ないわな」

 

数回UFOキャッチャーした。俺が1個取るとレキは8個取っていた。

 

ゲーセン歴は俺が長いのに………悔しい。

 

レキに勝てそうなゲームは………。シューティングゲームは止めよう。遊びで銃を握りたくないし、射撃で勝てる気がしない。どんな銃でも撃てそうな感じがする。

 

「…………お、これなら」

 

俺が目を付けたのは、パンチ力を競うゲーム……じゃなくて、レースゲーム。

 

ゲーム自体はやったことはないけど、車を乗ったことはある。武偵高でな。それにレキは初心者だろう。

 

UFOキャッチャーでは悔しい思いしたし、勝ちに行くぜ。……何この大人気なさ。

 

「レキ、あれやるか?」

 

「はい」

 

 

 

 

 

 

結果は3回勝負して、俺が2回勝って、1回負けた。

 

「…………なぜだ。全勝するつもりだったのに」

 

どちらも初心者。でも俺には運転の経験がある。このアドバンテージで、なぜ全勝できない。しかも、最後はかなりの差で負けた。

 

このレースゲームはよくあるアイテムで妨害できたりするゲーム。つまり、マ○カだ。DSではやったことあるから勝てると思ったのに……。

 

そういえば、レキが出したアイテムは、ほとんど加速系だった。

 

「まさか、乱数調整を?」

 

さすがに目押しはこのゲームはできない。できたら俺がやる。

 

もう、この子チートすぎない?

 

「最初はボロボロだったよな?一体どうして?」

 

俺の呟きにレキは反応する。

 

「最初は操作があまりわかりませんでした。2戦目になり、ある程度理解しました。今回、全て同じコースだったので、最後に加速を使い、常に最短距離を走りました」

 

なるほど。………何で加速系のアイテムばっか出たのかが謎だが。レキのluckか。納得いかない。

それに3回目で、常に最短を走れるテクニックよ。

 

 

 

 

 

 

その後、色々遊んだ。

対戦系のゲームは止めたけど。……プリクラ?何それ美味しいの? 

レキはデートについて調べたと言っていたが、プリクラは知らなかったようだな。

 

俺が疲れたから、休憩しようと持ち出し、どこか休める場所を探している。

 

そこで、見つけたのは、アイスの31だ。

 

「並んでるなぁ………」

 

もう世間では春休みに突入している。学生や家族連れが多い。まあ、混んでる。

 

「レキ、食うか?」

 

レキは、こくっ。と頷く。

 

こいつは狙撃手、待つのには慣れているか。

 

待つこと7分。レキはミント、俺はバニラを買い、近くにあったベンチに腰かける。

 

「甘い……」

 

ちょっと肌寒い時期に食べるアイスも美味しい。

 

レキはレキで、食べる間隔が0に等しい位の速度で食べている。頭キーンとかならないのか?

 

その時――――俺に影が覆い被さる。

 

 

 

「あれ?比企谷じゃん」

 

甲高い声が、俺の鼓膜に響く。

 

この声、よく聞いたことがある。

 

ゆっくり、気だるそうに顔を上げる。

 

「久しぶりだな、折本」

 

 

折本かおり。

俺の中学の同級生。

俺の早とちり、勘違いで告白した相手。

翌日には笑い者にされてた。昔でも、今でも構いやしないが。

 

 

「うっわ。チョーなついじゃん!比企谷高校どこなの?えっ、それよりこの子誰なの?比企谷の彼女?」

 

「八幡さん。この人は?」

 

折本はうるさいし、レキは怖いし。

 

ちなみに、折本、俺、レキの順番で座っている。息苦しい。

 

「まず、レキ。こいつは折本かおり。中学での同級生」

 

「よろしくね。えーっと……レキさん。あ、そうそう。私、比企谷に告白されたことあるよー」

 

「「………………」」

 

おい、穏便に済ませようと思っている矢先に爆弾ぶちこむな!

 

「……そうなんですか」

 

低い声出すな。殺気を仕舞え。

 

「振られた!俺、振られたから」

 

弁明する俺。レキの殺気は収まる。

 

「ねぇ、比企谷。レキさんってもしかして、彼女?」

 

くっ、今度はそっちか。

 

「返事待ち」

 

まだ正確には、返事をもらってないし。

 

「てことは、告白したの!?」

 

折本は驚いた表情をする。

 

「……あぁ。俺はレキが好きだ…………」

 

もうやだ……死にたい。今日で2回目だよ………。語尾の方、声出てないし。

 

「へーー。そうなんだ」

 

意外そうな声な折本。

 

「折本は今日1人なのか?」

 

「えっ。……う、うん。今日は1人で買い物」

 

こうなったら、話の話題を無理矢理逸らすぞ。

 

「それで、比企谷さ。高校どこなの?どこに転校したか知らないだよねー」

 

………武偵なんて世間から評判悪い。中学生や高校生が簡単に銃を持てる職業。

うーん、武偵と言っても大丈夫か?折本に。まぁ、いっか。言いふらすことはできなさそうだし、中学の知り合いほとんどいないから。

 

「俺の高校は、レキと同じ――――――」

 

俺の言葉が途切れる。なぜなら、

 

 

 

「ひったくりよーー!!」

 

 

そう叫ぶ声が聞こえた。

 

金持ちそうなおばさんのバッグを持ち、ガキ大将の大人バージョンみたいな男がナイフを片手にこっちに走ってきた。 

 

「レキ、折本連れて離れろ」

 

「わかりました。折本さん、こっちです」

 

レキはすぐに行動に移す。

 

「ちょっ。比企谷?」

 

「ああ、そうだ、折本。さっきの質問に答える。俺は……俺たちは―――武偵だ」

 

ひったくりの方に向く。

 

「ど、どけーー!」

 

ナイフを刺すように、真っ直ぐ突っ込んでくる。

 

「バカが」

 

互いの戦力の差を見抜けないとは。

 

ナイフは俺の胸を狙っている。このままだと綺麗に刺さるだろう。

 

しかし、刺さる直前に俺は、

 

「フッ!」

 

カウンターの回し蹴りをひったくり犯の頬に叩き込んだ。

………こっそり烈風で威力をブーストして。

 

「うがあっ!」

 

ひったくり犯は横に吹っ飛ぶ。

 

うーむ。ここで人指し指を空に掲げたいところだ。

 

「あ、ノビてる」

 

……弱っ。

 

 

 

 

 

 

 

その後、ひったくり犯を警察に引き渡し、諸々手続きをしてもう夕方。

 

俺とレキ、折本は駅の改札前にいる。

 

「比企谷。スゴいね。中学の時とは全然違う。スゴいウケる」

 

「ウケねーよ」  

 

「……それと、ゴメンね」

 

「えっ、何が?」

 

「告白された翌日。その、笑い者にして」

 

「気にすんな」

 

あれは俺の勘違いが起こした行動だ。ただ俺がアホだっただけだ。折本は悪くない。

あれがなくても、俺の立ち位置は良くはならなかった。多少酷くなっただけ。

 

「そう………」

 

「八幡さん、笑い者にされたんですか?」

 

折本が呟くと同時にレキが尋ねる。

 

「まあな」

 

「…………」

 

アレ?それだけ?他に感想ないの?無反応は困る…………。あ、レキの基本は無反応でしたね。

 

駅の近くのバス停にバスが来た。

 

「あ……、じゃあ、私これで」

 

折本がバスの方に向かう。

 

俺は息を吸い込む。

 

「折本、またな」

 

「折本さん。また、お会いしましょう」

 

レキと挨拶が被る。

 

「う、うん。比企谷にレキさん、またね」

 

俺とレキの挨拶に戸惑ったのか、少し詰まったが、折本も返事をしてくれた。

 

折本を見送り、体はかなりの疲労感を覚える。

 

「俺らも帰るか」

 

「はい」

 

ぬいぐるみの袋を両手で持ち直す。レキ、取りすぎだって。10個も俺の部屋に飾るの?大きさほとんど20cm以上だよ?

 

「ところで八幡さん」

 

「何だ?」

 

「八幡さんの中学の頃の写真はありますか?」

 

俺の黒歴史の写真を見たいと申すか?

 

「残念だったな。集合写真以外ない!」

 

ここに小町がいたら、「そこは胸を張るところじゃないでしょ………」と突っ込みが入るセリフを言う。

 

「そうですか」

 

そこはレキ。この一言で済ます。

 

「なら、八幡さんのお宅にお邪魔して、アルバムでも見ましょうか。小町さんに頼んだら引き受けてくれるでしょう」

 

「絶対止めろよ」

 

小町ならやりかねんから。つーか、それ以前にレキが俺んち入ってきたら、両親の反応が恐ろしいから。

 

「冗談です」

 

「冗談に聞こえねーよ」

 

 

 

「では、行きましょうか」

 

レキが俺から2つある袋の内1つを取る。そして、手を差し出してくる。

 

つまり、あれか。

 

「手、繋ぐか」 

 

「はい」

 

心なしか、レキの声はいつもより弾んでるように聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




砂糖回を書きたかったのに……何か折本登場したw


明日は大阪のLiSAっ子祭。とても楽しみです。

神戸のライブも当たってウハウハ。………勉強はちゃんとしますよ。

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