八幡の武偵生活   作:NowHunt

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剣king formの真骨頂発売早くしてほしい


第46話

春休み、3月末。

 

「ヨシッ。終わりや。帰ってええで」

 

「お疲れ様、比企谷君」

 

「ありがとうございましたー」

 

俺、比企谷八幡は蘭豹と高天原先生に挨拶を済ます。補習、終わりました。

 

単位は揃っているが、3学期丸々休んだせいで、課題がたくさん溜まっていた。どれもこれも簡単な問題ばかりだったが、いかんせん量が多い。

 

他にも、強襲科の実技等全部やり終えて、時間はもう夕方に差し掛かっていた。

 

「くっそ。せっかくの春休みなのに………」

 

 

 

 

ふと、校門のところで立ち止まる。

このまま部屋に帰ろうかと思ったが、

 

「そういえば、これボロボロだな」

 

腰の裏側にある鞘から、コンバットナイフを取り出し、空に掲げる。

 

イ・ウーで、ジャンヌとかなり模擬戦をして、刃がもう欠けていてる。研いでも持たないだろう。

 

つーか、何回も研いだんだけど、ジャンヌの剣の切れ味良すぎるんだよ。

 

1年間使用して、そろそろこいつも買い換え時だ。

 

「そうだ」

 

どうせ、あいつは装備科籠っているはずだ。何かを弄ることしかしないしな。

 

あいつに相談してみよう。良い商品が揃っているかも。予算は……5万か。何とかなるはず。

 

 

そして、やって来ました装備科の工房。

 

工房の隅っこに目的の人物がいた。

 

「材木座」

 

「おお!八幡。久しいな」

 

「だな」

 

メール寄越してきたけど、基本は無視してたしなー。

平賀さんに売り上げ勝てないとか、リア充滅びろとか、どうでもいい話だったし。真面目な話には付き合ったが。

 

「急に訪れて何か用か?」

 

「じゃなきゃ、こんな機械臭いところ来ねーよ」

 

「それは辛辣な。………で、用とは?」

 

「ああ、そうだ」

 

俺はナイフを見せる。  

 

「むむっ。大分刃こぼれで痛んでおるな。これは使い物にはならないでだろう」

 

材木座は即座に鑑定する。

 

だよなー。さすが材木座、わかってる。

 

「それでた。このくらいのサイズで、お勧めなナイフあるか?」

 

「それならば、こっちからも質問しよう。八幡は斬る、それとも刺す。どちらを重視したい?」

 

それは……大して考えてなかったな。

 

「どっちかと言うと、斬る、だな」

 

そっちの方が実用性高いと思うし。

 

「なら、銀紙1号はどうだろうか?」

 

「銀紙1号?」

 

「この鋼材は、カーボン系の高炭素鋼にクロームを含有させた新しい鋼材だ。しかも、ステンレス系刃物鋼では、サビにくく切れ味も安定しているのである」

 

どや顔で説明しているが、何言ってるかさっぱりわからん…………。だけど、使いやすそうだな。それはわかる。

 

「お前のお勧めだし、それにしてみる。あ、価格はどのくらいだ?」

 

「なるべく品質は良い物を仕入れたいのでな…………。そうだな、2万は用意しといてくれ。3日後には連絡する」

 

2万か、許容範囲だ。

 

「助かる」

 

「気にするな!我と八幡の仲であろう!」

 

「そんな仲になったつもりはない」

 

「なぬっ!?」

 

「…………まあ、頼りにしているぜ」

 

「任せろ!我の名を懸けるぞ!」

 

説得力が高い言葉だな。それだけは信用できるのが、装備科の材木座だ。

逆に平賀さんは色々と怖いんだよなぁ。どんな不備があるかとビクビクするし、と、遠山が言っていた。

 

 

 

後、10日ほどで2年が始まる。それまでに適当に任務受けて、こづかい稼ぎでもするか。

 

教務科の掲示板を見る。

 

「これにするか」

 

 

武器の密輸の調査。

 

東京湾のコンテナが集まっている場所に拳銃等の武器が密輸されているらしい。

1回、警察は調べて、見つからなかった。警察は確かではない情報に、そこまで手が回せない。 

だから、武偵に調べてほしい。

 

という内容。

 

報酬額は15万。

推奨ランクはB以上。

人数は自由とする。

合計で5.2単位

 

日付は始業式の1日前。

 

…………これは独りでやるか。報酬独り占めできるしね!

 

 

 

 

 

「あ、八幡」

 

今度はお前か、留美。

 

教務科から出たところで、留美と出くわした。

 

「今までどこ行ってたの?」

 

ムッとした表情で言い寄ってくる。

 

「ちょっと海外にな」

 

嘘は言ってない。実際は海だけだけど。

 

「……もうアミカ終わったんだけど………」

 

「それは………ま、ごめんな」

 

「申し込んだ時期が遅れていたから、別に」

 

「そういえば、もう同じ人とはアミカになれないけど、次もアミカ取るのか?」

 

留美は横に首を振る。

 

「ううん。私のアミカは八幡だけ。取るつもりはない」

 

何か、嬉しい………。

 

「だから、これからも色々教えてね?」

 

「暇ならな」

 

「それは心配ない。八幡はいつも暇」

 

「おい、俺、武偵だからな?いつも暇とは言ってられないからな?」

 

「じゃあねー」

 

言いたいことを言い終わると、留美はそそくさと帰っていった。

 

「話聞けよ………」

 

留美、お前は変わらないな。ふてぶてしい態度といい。

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

16000円で、銀紙1号のナイフを買い、迎えた始業式前日。任務の日。

 

そういえば、レキは俺が依頼を教務科に行った日に一旦故郷に帰るって言ってたな。モンゴルだっけか。………そこに色金があるんだな。

 

 

 

 

俺は、一応全武装して、午前9時、東京湾に来た。この格好で電車乗るのスッゲー恥ずかしかった。

だって、黒のコートにス黒のズボンの格好だよ?どこのコスプレなのか……。制服にしとけば良かった………。

 

係員や職員とかに説明を受けて、そこらにあるコンテナを調べることになった。………その数150!

 

どうやら、噂がある場所はその辺りとのことだ。 

 

150も1人で調べるの?バカなの?

 

誰か連れてこれば良かった。ん?一体誰をだ?………………あ、いないわ。

 

 

 

「お願いしますね」

 

職員からの説明が終わり、コンテナのマスターキーを貰う。

 

「うっす。……中にある物は確認して大丈夫なんすよね?」

 

「はい、勿論です。私たちは仕事がありますので、これで」

 

ここにいる人たちは去っていった。

 

まあ、見つからなくても、報酬は貰えるし、気楽にするか。

 

 

 

 

 

――――3時間後。

 

「疲れた………」

 

今、現場から支給された弁当を食べている。

 

コンテナに入っては出てを繰り返し、中にある物全部調べて、終わったら、もう昼だ。

 

にしても、全然なかったな。火薬の匂いも拳銃の部品らしき物もさっぱりだった。

 

 

――わざわざ拳銃を密輸しなくても、普通に拳銃とか日本で買えるんだけどな。

 

 

………自分で思ったけど、今の俺は中学の俺からしたら想像もしなかっただろうな。

当たり前のように銃を扱う俺は。

 

それと、日本に武偵という制度が導入されてから、銃刀法違反の取り締まりがさらに厳しくなった。

なぜなら、このようなケースが増えてしまうから。今まで以上に。と、習った。

 

「だったら、やるしかないか」

 

気だるげに呟く。

 

俺は弁当を食べ終え、作業を再開する。

 

「とは言うものの、どこにあるのか?」

 

 

 

――そもそもの話、どこからその情報が流れた?

 

そのことを尋ねたら、ある人がコンテナの隅に落ちてあった1つのベレッタを見つけたことが事の発端。

でも、それ以上は見つからず、それから1ヶ月後、別のコンテナに銃弾が数発転がっていた。未使用の銃弾が。

そこで、警察ではなく、今回は何でも屋の武偵に頼もうという話になった。

 

 

 

 

一応は頼まれた範囲は全て調べた。もしかして、もう運ばれた後か?それとも、まだ探してない場所があるのか?もしくは、全く別の範囲にあるのか?

 

「1日で探すのキツいな……………」

 

もし、全部探すとなったら、あまりにも範囲が広すぎる。

 

 

 

 

とりあえず辺りを歩き回る。

 

コンテナの間の狭い通路もだ。

 

「アリとか出てこないよな………」

 

初めて見た時は強烈な印象を与えた、あのトラウマ。

顔面にブシャー!!

 

 

 

歩いている途中、俺は足を止める。そして、足下を見る。

 

「………ん?」

 

これは………マンホールだ。よく街中で見かけるごく普通のマンホール。

 

………まだ、下水道辺りは見てなかったな。

 

近くにいた作業員に声をかけて、マンホールをどかし、入る。

 

中は、電灯が点々と薄暗い場所を照らしている。そして、少し温かい。通信ケーブルとかがある下水道なのか?

両端に2mほどのコンクリートの足場がある。真ん中に水が幅4mくらいで流れている。その足場にはパイプもある。

 

 

 

耳を澄ましても…………水の音や機械音しかしないか。誰かの話し声は聞こえない。

 

コンクリートの足場を歩き回り、見渡す限りの非常口等、扉の中は調べ終えた。これといって収穫なし。

 

「ないなー」

 

俺が囁くと、中は軽く響く。

 

 

地上に戻ろうかと、元のマンホールの場所に行こうとする。

 

――その時、

 

カラーン―――チャリチャリ―――………………

 

何かが……これは金属?

………金属が落ちた音が響き渡った。そして、俺の耳に届いた。

 

音源まで、遠くない気がする。つーか、すぐそこだ。

だが、ここは1度来た場所だ。特に何もない。

 

「ならここかな?」

 

小声で呟く。

 

俺は、近くある非常口の扉をもう一度開ける。

 

ガチャと音をたてて、中に入る。

 

先ず、目に入るのは地上へと続く階段。階段の裏には何もなし。

そして、上の方に、人1人通れそうな排気口。通路沿いにある。高さはおおよそ3m上にある。

 

俺は、そこでよくゲームでありそうな展開を思い付いた。

 

―――そうだ。この中入るか。

 

俺は、何故この考えが出なかったのか。…………単にそこまで頭が働かなかっただけだな。

 

一旦、地上に戻り、脚立を貸してもらい、再びマンホールの中に入る。

 

元の場所に戻り、早速脚立を立てる。

 

 

排気口の格子は、ナイフで引っかけると、ガチャッと音がして、すぐに外せた。

 

スマホを取り出し、簡易ライトを点ける。中を照らしてみると、どこに繋がっているのか、分からない。が、風がそこそこの勢いで流れていることが分かる。それと5mほどで曲がり角がある。

 

 

広さは充分にあり、武装している状態でも四つん這いなら入れる。

 

俺は、匍匐前進しながら、ライトを頼りに進む。

 

拳銃やナイフ、スタンバトンが邪魔だな。上手く進まない。それに、なるべく音をたてずに進む為、速度はかなり落ちる。

帰ったら、練習しとくか。

 

5mほど進むと、曲がり角があるので、素直に曲がる。そのまま匍匐前進を続けること3m。出口に辿り着いた。

 

格子から、部屋を覗き込む。

 

明かりは点いてある。

高さは入った所からあまり変わらない。

人の姿は確認できない。声もしないし、今はいないだろう。

広さは………縦6m。横は8mぐらいか?

木箱が置いてある。蓋をしてあり、中身は分からない。数はえーっと………30かな?

積んである木箱もある。

そして、その近くには銃弾が数発、落ちてある。恐らくこれが、俺が聞いた銃弾だ。

 

よくよく考えると、よく聞こえたな。こうして見ると、そこそこ距離あったのに。………まあ、結構ここって響くしな。

俺のいた通路の位置から、ここまで3mほど…………聞こえても不思議ではないよな。

 

 

また、ナイフで弄り、格子を外す。格子は中に置いたまま、飛び降りる。

 

木箱の蓋は簡単に開いた。 

 

「うっわ………」

 

そこにあるのはロケランだ。

 

MGL-140

M107A1

RPG-7

RPG-22

AT-4

種類はこれだけ。しかし、数はロケランで合計9個。

 

他の木箱を開けると…………、

 

「マジかよ………」

 

思わずため息つきそうになるり

 

なぜなら、対物ライフルまでもあるから。

 

バレットM82

PGM ヘカートII

シモノフPTRS1941

 

この3個だけだった。さすがに対物ライフルは規制が厳しいのか………。

 

残りは、拳銃多数とそれ用の弾。

 

 

敢えて言おう。――バカじゃねーの?

 

こんだけ集めてテロでも起こす気か?つーか先ず、よく集めれたな。逆に関心するわ。

 

 

 

 

「………ん?」

 

そう言えば、ここはどこに繋がっているのか?地下だから、どこかに階段でもあるのか?

 

この部屋を探索しようとした時、コツコツと足音が複数聞こえた。

 

音源は排気口の真反対側。

 

とっさに、木箱の裏に隠れる。

 

ウィーンと何もないと思った壁から、扉が開く。

 

なるほど、ここからは分からなかったが、あそこが自動ドアになっていたのか。

 

「結構重いな、これ」

 

「ここまで集めるのに時間掛かりましたねー」

 

「まあ、コイツがここを提供してくれたから、スムーズにできたんだ」

 

「これ、ばらまくと、かなりの金になりそうだな」

 

「あ、アハハ………。そ、そうですねー」

 

犯人と思われる奴らが入ってきた。

 

木箱と木箱の間から覗く。

 

武藤並の体格。――A

俺より小柄な奴。――B

その2人中間ぐらいの体格。――C

俺と同じくらいの体格。――D

 

それぞれ、こう呼ぼう。 

 

そこは別にどうでもいい。見た感じプロはいなさそうだ。大方ゴロツキが徒党を組んだんだろう。

 

………で、問題はコイツと呼ばれてたと思われる男。

 

どこからどう見ても、サラリーマン風の男にしか見えない。これはEと呼ぼうか。

 

 

 

 

 

 

――よし、取り敢えず制圧するか。でも拳銃は誤射したら、こんなロケラン、対物ライフルがある場所だ。爆発とか危ないし、止めよう。

 

右手にナイフ、左手にスタンバトンを持つ。

 

「あれ?排気口壊れているんすかね?」

 

Bが排気口の異変に気づき、その辺りの木箱の陰に隠れている俺の方に近づいてくる。

 

その距離1m切ったところで、木箱の陰から飛び出し、スタンバトンを首に当てて、電気を流す。

 

「ガッ!」

 

Bはすぐに倒れた。

 

「何だ!お前!」

 

Aが叫び、トカレフを向けてくる。

それに続き、CとDもベレッタを向けてくる。

 

Eは目を見開き、キョロキョロし、後ろに下がる。

 

俺との距離は4m。

 

4mとは、俺の超能力――烈風の範囲内。

 

俺は、殺気を最大限放ち、ゆっくり、ゆっくりと歩を進める。

 

 

「近づくな!」

 

「クソッ!」

 

「死ね!」

 

 

 

――――パァン!パァン!パァン!

 

 

銃声が、この狭い空間にて鳴り響く。

 

しかし、A、C、Dが俺に向けて発砲する直前、烈風を使い、下から上に掬い上げるような突風を起こした。

 

一瞬だったから、そこまで風力はなく、手から拳銃を落とすまではいかなかった。

 

それでも、拳銃を逸らすことはでき、3つの銃弾が抉ったのは、天井だ。

 

俺は、3人の目の前に立つ。その距離は30cm。

 

「大人しく、投降しろ」

 

殺気を解かずに、ナイフとスタンバトンを向けて言う。

 

「う、うるせぇ!」

 

Cが、顔目掛け、殴ってくる。

 

俺は冷静に、ナイフの先端をCの眉間に付ける。

 

「――っ」

 

そこで、ピタッと動きを止める。

 

ナイフは少しだけ刺さり、そこから血が流れる。

 

「もう一度言おう。大人しく投降しろ」

 

と、言っても、

 

――ジャキ!

 

と、AとDは俺から距離を取り、拳銃を構え直す。

 

 

……………言うこと聞いてくれよ。動きたくないんだよ。

 

半ば呆れる俺。

 

 

取り敢えず、右手に持ってるナイフを右側にいるAに向けて、左手に持ってるスタンバトンをDに目掛けて、同時に投げる。

 

と一緒に右足を蹴り上げCの股関を蹴る。

 

「ふぐお!」

 

奇妙な声を上げて崩れ落ちるC。

 

投げたナイフは、狙った場所から少し外れる。

肩を刺すつもりだったが、Aの二の腕を斬る。その勢いのまま、壁にぶつかり、落ちる。

 

スタンバトンはDの拳銃に当たり、電気が流れる。ただでさえ電力を上げているスタンバトンだ。それに耐えきれず、拳銃から手を離す。

 

その隙を逃さず、できるだけ体重を乗せた俺のパンチは、Dのみぞおちを捉える。

 

「ぐわっ!」

 

転がり、頭をぶつけて気絶するD。

 

Aの方を向くと、二の腕を抑えながら、膝から地面に倒れる。

 

………そこそこ深く刺さったな。

 

痛そうにしていたので、仕方なしにAの服の袖をちぎり、無理矢理止血する。

 

そこで、気づく。

 

 

 

 

Eが……グロック17を手に持ち、

 

「く、来るなー!」

 

涙目で訴えてくる。

 

「なぁ………何でこんな事した?」

 

構えや照準はバラバラ、戦意もなさそう。仮に撃っても当たらない。

だから、ナイフとスタンバトンを拾い直しながら問い掛ける。

 

「う、うるさい!こ、コイツらに脅されて、今まで散々手伝いをしてきた。言うこと聞かないと、俺を殺してから、妻と息子を殺すって」

 

「………誰かに相談しなかったのか?」

 

「GPSが四六時中仕込まれて、行動を監視されてたんだよ!下手に動けば、すぐにでも殺す……って」

 

「期間はどのくらいだ?」

 

「もう、1ヶ月は経っている」

 

 

後に話を聞いたが、ここは変電所。その地下にほとんど誰も知らない一室だそうだ。

Eはそこ一帯の管理を任されていて、そこを偶然見掛けたコイツらに漬け込まれた。

 

 

腰を抜かしながらも、俺に拳銃を向けることを止めない。

 

「なぁ、お前から見たら、俺はどう映っている?」

 

「それは、あ、悪だ。も、もうすぐで解放してくれたのに。それを邪魔して!平穏に戻れたのに!俺は、罪を犯したことなんかバレずに!……お前なんか悪だ!」

 

――――ハハッ。そうか、悪、ときたか………………。

 

「だけど、世間一般からだと、お前が悪だ。……例え脅されていても、法を犯した――無法者だ」

 

「うるさい黙れ!」

 

「武偵の仕事は無法者を狩ること。事情があろうと、お前みたいな無法者を」 

 

「アダッ」

 

撃つ気はないのか、簡単に近づけた。手首を捻り、拳銃を奪う。  

 

 

 

グロック17をEの目の前に持っていき、見せる。

 

「お前はこれで人を傷付けたか?」

 

「してない。……俺がしたのは、ここの手引きだけだ。これは渡されただけだ。怖くて撃てない」

 

もう逃げ場はないと悟ったのか、色々と諦めた様子で、素直に口を割ってくれるな。

 

……………だが、特に聞けることはないな。聞こうとも思わない。

 

後は、警察の仕事だな。

 

「取り敢えず、銃刀法違反で全員逮捕だ。…………少しでも早く罪を償うことだな、無法者」

 

「このっ!悪め!」

 

「………………………」

 

そいつの恨めしそうな視線を、少なくても、すぐには忘れることはできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さぁ、ここで全世界の人々に問おう。

 

――――悪、とは何だ?

 

法に背くこと?常識の枠から外れること?

 

もちろんそれも含まれるだろう。しかし、身近なとこにも悪はある。

 

 

例えばの話をしよう。

 

オモチャ売り場に、子供が2人いたとする。

その子供たちが欲しいオモチャは残り1つ。それを寸での差で片方が取れたら、もう片方はどう思う?

 

「欲しい欲しい!」

 

と、喚き、極端な話そいつを悪と認識するだろう。

 

 

 

他には…………身近ではないが、ウルトラマンの話をしようか。

 

仮に、街を破壊することをここでは悪と定めることにする。

 

怪獣が街を破壊する。その怪獣をウルトラマンが倒す。

 

――だが、よくよく考えてみてくれ。

 

ウルトラマンも街を破壊してるじゃん。

 

怪獣を倒す度に、着地する度に、走る度に、吹っ飛ばされる度に。

道路割れたり、綺麗にビルが爆破したりしているよね?

 

ならば、その場合、ウルトラマンも悪と呼べるのではないだろうか?

 

もちろん、人々を救っていることには変わりはないが。

 

物の見方を変えるだけで、そんな考えを持つことが出来る。

 

――戦争だってそうだ。

自分が正義で、何をしようが、されようが、その相手が悪。その逆もまた然り。

 

…………これも極端な例だがな。あ、ウルトラマン好きですよ?

 

 

 

 

 

だから、この世の中に、絶対的な悪なんて存在しないのかもしれない。

 

でも、誰もが、戦う理由がある。

 

警察、武偵、軍人。戦う職業はもちろんのこと、公務員や会社員だって日々、何かと戦っている。

 

生活や家族の為に。理由は様々。

 

 

それが犯罪者や無法者だろうとだ。

 

正当防衛、金、一時の快楽。

 

これらだって当然、戦う理由になる。

 

被害者にとっては、迷惑極まりないが。

 

それに、だからと言って、何でも許されるわけではない。いざとなれば、止めないといけないこともある。

 

 

 

ならば、今度は俺自身に問おう。

 

俺の戦う理由とら何だ?

 

もちろん、答えは決まっている。

 

 

――――――俺の為だ。

 

俺が死なない為。

俺が後悔しない為。

俺の欲望の為。

 

…………ここまで来ると笑えるなぁ。

 

どこまでも自分の為。とんだエゴイストだ。

 

でも、それでも、俺の戦う理由の中に、少しは、少しだけ…………………、

 

 

 

「こんばんは、八幡さん」

 

「よぉ。……レキ」 

 

 

 

 

――――自分の好きな人、1人だけの友達、守りたい誰か。

 

――これらが、もし、俺の戦う理由に含まれているのなら――――

 

 

 

 

 

「お疲れ様です」

 

……ここで、俺の思考は中断される。

 

無意識に歩いていたが、もう学園島にいるわ。

 

……もう、空は暗い。三日月と半月の中間くらいの月が浮かんでいる。

 

時間を確認すると、20:30。

 

「今帰りか?」

 

「はい。故郷に帰り、気持ちを整理してきました」  

 

レキを見ると、キャリーバッグとドラグノフのケースを持っている。

 

キャリーバッグをレキから奪い、運ぶことにする。

 

「そうか。明日から2年だもんな」 

 

「はい」

 

「…………色々面倒な年になりそうだな」

 

ポツリと呟く。

 

「そうでしょうか?」

 

「いや、知らんけど」

 

「そうですか」

 

そのままブラブラとお互いの目的地まで歩いていたが、

 

「八幡さん」

 

唐突に俺を呼んでくるレキ。レキが発した一言は、

 

「勝手に死なないでください」

 

「……急にどうした?」

 

「いえ。今言っておこうと思いまして」 

 

一呼吸置き、レキは話を続ける。

 

「あなたが死ぬ時は、私があなたを殺す時です」

 

「……………」

 

思わず黙る俺。

 

「どうしてその発想に至ったのか説明求む」

 

「…………」

 

俺殺されるの?まぁ何だ。冗談として受け取っておこう。

 

「ハァー。……レキ。俺を殺すのはいつだ?」

 

「それは知りません」

 

「おい」

 

「だから、その時まで一緒にいてくださいね?」

 

そんなの答えは決まっている。

 

「当たり前だ」

 

何だかレキを見るのが恥ずかしくなるな。

 

 

 

 

 

俺の戦う理由は、俺自身の為。それは変わらない。

 

だけど、今の俺なら、こんな俺でも、誰かの為に戦えるかもしれないな。

 

 

等と、珍しく前向きに考えるようになってきたな。

 

………これも武偵の影響なのか。それとも、隣にいる少女の影響なのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――そして、遠山キンジと神崎アリア。

 

この2人が運命的な出会いを果たすまで――12時間を切っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




これで、1年終わり!

原作に入るわけですが、話の都合上、キンジの位置により、八幡の行動も違ってくるわけです。
オリジナルの話も入ってくるかもしれません。

まあ、気長に待ってくださいな。

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