八幡の武偵生活   作:NowHunt

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前回、アホなこと言って、非常に申し訳ないです。ドゲザァ
それと、3/17にランキング10位に入りました!いつか入ったらいいなぁと思ってたんで、嬉しいです。イマイチランキングの仕組みが分かりませんが。


動き出してく、未来を止められない

「比企谷。何で逃げた?」

 

若干項垂れている遠山が俺に尋ねてくる。

 

 

――状況を説明しよう。

 

神崎が、俺と遠山の部屋にいた。……それはいい。

だけど、神崎のドレイになりなさい!発言により、俺はコンビニに避難した。

 

時間潰しにコンビニで雑誌を立ち読みしていると、遠山が入ってきた。そして、俺に文句を言ってきた。

 

以上、説明終わり。

 

 

「あ、気付いてた?」

 

「ああ。ドアの音がしたからな」

 

デスヨネー。

 

「つーか、誰だって逃げるだろ。何?お前らそんな関係なの?」

 

「断じて違う!」

 

「じゃあ、あの状況何なの?」

 

「いや……。実はな――――――」

 

 

遠山の話によると、今朝起こったチャリジャックで、俺には伏せてはいるが、神崎の前でHSSを使った。

そのせいで、神崎は遠山には詳しく言ってないらしいが、武偵殺し逮捕の為にパーティ誘われた、と。 

 

 

何と言うべきか…………、

 

「お疲れ様」

 

「おい!投げやりだな!」

 

「いやだって、俺関係ないじゃん」

 

「いや!関係ある。このままじゃ、俺らの部屋はアリアに侵略されるぞ」

 

「というと?」

 

「俺がアリアのパーティに入らない限り、ここに泊まるって言い出した。着替えも持ってきている」

 

なるほど……。それは困る。確かに困るが、今の俺には選択肢がある。それは――――

 

「だったら、俺外泊するわ」

 

そう、逃げの一手である。

 

「えっ、どこに?」

 

「どこだろうな?……あ、荷物まとめるから一旦帰るわ」

 

「…………お願いだから助けてくれよ、比企谷」

 

遠山は俺の肩を掴み、頭を下げる。

 

「ま、頑張れ」

 

手を振りほどき、遠山から距離を取る。

 

 

お前がパーティに入れば、一瞬で解決する話だが、それが出来ないんだよな。

 

遠山は武偵に呆れて、武偵を止めるつもりでいる。強襲科なんて、なおさらだ。

対する神崎は、遠山のHSSに見惚れて、武偵殺しの逮捕に協力してくれ、と頼んでいる。

 

――正しく水と油。今の2人の道は交わることはない。平行線の話。

 

俺の予想では、最終的に遠山が折れると思う。

だって相手は神崎だぜ?しつこそうなあいつに諦めるように促すなんてムリムリ。

 

 

「あ、そうそう。俺の部屋には入れるなよ」

 

パソコンとか壊されたら迷惑だしな。

 

返事を待たずにコンビニから去る。

 

 

ふぅー。さっさと荷物取りに行くか。

 

遠山は……ももまんを買っている。パシリなの?本格的にドレイになっちゃったの?…………可哀想に。

 

 

部屋に戻る道すがら、携帯である奴に連絡する。

 

『もしもし。レキです』

 

いつもと同じ抑揚のない声が俺の耳に届く。

 

「あ、レキ。ちょっと頼みたいことがあるんだが」

 

電話の相手はレキだ。

 

『何でしょうか?』

 

「あなた様の部屋に泊めてくださいお願いします」

 

土下座しそうな勢いで頼む俺。

 

『なぜでしょうか?』

 

「今現在、俺と遠山の部屋が侵略されつつある。避難する為に」

 

『侵略、ですか?誰から?』

 

「神崎アリア」

 

『分かりました。扉の鍵を開けておきます』

 

早っ。返答早っ。俺が答えてからほとんどラグがなかったぞ。

 

「ありがとな」

 

『八幡さん。私の部屋には毛布の類いがありませんので、必要ならば持参してください』  

 

そういえば、1回行ったことあったけど、何もなかったな。

 

「了解」

 

 

 

部屋のドアを開けると………水の音がする。

 

神崎は入浴中か。人様の風呂に無断で入ってるのは本来殴るべき案件だが、今はよしとしよう。

 

荷物をカバンにまとめて、さっさと退出だ。

 

 

 

 

最大限気配と足音を消して、女子寮にやって来た。

 

これが入るのが不知火(イケメン)や戸塚(説明不要)ならコソコソする必要はない。

 

だけど、そこに目が絶妙に腐っている奴が入ってきたら、不法侵入、覗き、その他色々で警察のお世話になる。

それと、武偵が犯罪をしてしまうと、一般人の3倍の処罰を食らう。

 

何が言いたいかと言うと、誰かに見付かったら、ヤヴァイ。

 

 

耳を澄ませ、足音が聞こえないことを確認し、レキの部屋に着く。

 

ゆっくりドアを開ける。

 

 

 

……………暗いな。

 

先ず、俺はそう思った。

 

廊下は明かりは点いていなく、時間も時間だから暗い。でも、レキがいるであろう場所から光が漏れている。

少し覗いてみると、それは寝室?ベッドが見当たらないから分からないな。まあ、寝室にしよう。

 

「レキー。いるかー?」

 

そう言いながら、寝室に入る。

 

「はい」

 

そこには、恐らく風呂上がりっぽいレキがいた。

無表情なのにやけに色っぽい。

 

「すまんな。押し掛けて」

 

ドサッと荷物を下ろす。

 

「大丈夫です」

 

レキは自分の体が乾いているのを確認してからドラグノフと整備道具を取り出す。

 

今からメンテするのか。一旦離れるか。

 

「シャワー借りていいか?」

 

「はい」

 

 

レキに許可を貰い、シャワーを浴びることにする。

 

シャワールームから、何か良い匂いがする。女子特有の匂いなのか?……………無心でいこう。

 

シャワーを浴び終えた俺は、簡素な格好に着替える。

 

廊下から寝室をそーっと覗く。ふむ。どうやらレキはまだ整備の途中。

 

邪魔したら悪いし、終わるまで廊下に腰掛けていた。

 

 

携帯を弄っていると、

 

「入って大丈夫ですよ」 

 

中からレキの声がした。

 

「ところで、どこかに空き部屋とかあるか?」

 

「どうしてですか?」 

 

「どうしても何も………。わざわざ同じ部屋で寝るわけにはいかんだろ」 

 

俺の理性が持つか微妙なラインだしね。

 

「私は構いませんが?」 

 

無表情で首を傾げるレキ……可愛い。って今は違う。

 

「レキが大丈夫でも、俺が気にする」

 

「ここの家主は私です。私の指示に従ってもらいます」

 

ぐぅ…………。そう言われると、反論ができない。俺は押し掛けている身だから。

 

「八幡さん。ここで寝てください」

 

試しにここで断ってみると…………、

 

①ドラグノフから銃弾がこんばんは。

②ドラグノフに付いている銃剣がこんばんは。

 

………あれ?選択肢なくね?

 

どう足掻いても、五体満足ではいられない体になりそうだ。

 

「分かりましたよ」

 

と言ってもなぁ………。

 

キョロキョロ見渡しても、マジで何もない。いつもどんな風に寝ているのか疑問に思う。地べたに寝転んでいるわけではなさそうだしな。

 

カバンから、よく飛行機とかで貰えるような毛布を取り出し、厚着して寝る準備を整える。

 

「私はもう寝ますので」

 

まだ9時に差し掛かった頃。俺のいつもの就寝時刻までそこそこ時間は残っている。

 

レキはドラグノフを抱えて体操座りで寝始めた。

 

寒くないのかと、不思議に感じる。こいつは本当に機械みたいだ。

 

――感情を出せるようになっても、そう簡単には人の本質は変わらないもんだな。

 

 

 

それから俺は携帯で時間を潰した。そうこうしている内に眠くなってきたので、そろそろ寝ることにした。

 

毛布を手に持ち、自分に掛けようと…………、

 

「……………」

 

したが、体操座りで寝ているレキにソッと掛けておいた。

 

「………………寒いな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「眠い」

 

「八幡、大丈夫か?」

 

「うるさい」

 

「ひどくね!?」

 

「だから、うるさい」

 

「……むぅ。お主を心配しているというのに」

 

「材木座に心配されるなら、戸塚に心配されたい」

 

「そこは同感するがな」

 

「いや、すんのかよ」

 

 

あまり深く眠れなかった俺は、朝早く起きた。

途中コンビニに寄り朝飯を食べた。その後、ゆっくり歩いて学校に向かった。

 

あ、レキにはお礼ちゃんと言ったからな!

 

そのまま校門に入ったら、学校に寝泊まりしていた材木座と出会った。

 

 

「そういや、材木座。今日から授業だっけか?」

 

「うむ。そうだな。この学校に課題テストとかは存在しないのでな。通常通り、午前に座学、午後は実習である」

 

「ありがと。…………って、あ、教科書忘れた」

 

急いで出たから着替えと装備の類いしか持ってなかった。

 

「八幡。それはマズイのでは?」

 

「まあいいや。寝る」

 

「見付かったら、余裕で体罰してくるぞ。ここの教師たちは」

 

「俺は今まで昼寝を1度もバレたことない」

 

「それはそれでスゴいな」

 

「だろ?」

 

 

 

 

 

 

――――午後。

 

強襲科の体育館の隅っこで、独り柔軟している俺――――の隣で、茶髪の女の子と金髪の長身の女子がいる。

 

その2人は何やら、誰かを待っているようだ。その人物とは――――

 

「待たせたわね。あかり」

 

「こんにちは!アリア先輩」

 

「こんにちは。先輩」

 

「ライカもね」

 

神崎アリア!!それは、俺らからしたらただの侵略者!!

 

つーか、こいつらと関係あるのか?

 

「じゃあ先ずは……ってあら?八幡じゃない」

 

「チィ!」

 

バレないように去ろうとしたが、一瞬速く神崎が気付いた。

 

「じゃあな」

 

「何よ失礼ね。いきなり別れの挨拶なんて」 

 

お前とは話したくないんだよ。察しろ。お願いだから察して。と、切に願う。

 

「あの~、アリア先輩。この方は?」

 

小さい方が尋ねると同時に、長身の方が、

 

「あ!もしかして!」

 

俺を見て叫ぶ。

 

「え?ライカ知っているの?」

 

「あぁ。入試が終わってから、強襲科に何度か見学に行ったことあったんだ。そこで、アリア先輩が男女問わずに無双している中、この人が先輩に膝蹴りを5、6発入れてたんだよ」

 

「えぇ!?本当に!?ライカ、どっちがが勝ったの?」

 

「……確か、チャイムが鳴ったから引き分けだったな」

 

あーうんアレね。野次馬の中にこの長身いたんだ。知らなかった。

 

「大丈夫。結構コテンパンにやられたから」

 

「そうよ!あのまま続けたら、あたしが勝ったんだからね!」

 

俺の言葉に直ぐに反応して神崎も付け足す。

 

負けず嫌いめ…………。

 

神崎はコホンと咳払いをして、

 

「とりあえず、あんたら、自己紹介しなさい」

 

俺たちに自己紹介を促してくる。

 

小さい方は素直に言うことを聞く。

 

「はい!私は間宮あかりです。強襲科でEランクです。あと、アリア先輩のアミカです」

 

「火野ライカ。強襲科でBです」

 

「比企谷八幡。強襲科でBだ」

 

…………この小さいのが神崎のアミカか。世界って分からないな。

 

それに火野ライカ、あからさまに嫌そうな顔しているな。腐った目がダメなのか?それとも単に俺のこと嫌いなのか?

嫌われることに関しては俺に勝る者なしってか?喧しい。

 

「え?ライカと同じランクなんですか?」

 

間宮は興味津々に聞いてくるな。

 

「あんた。ランクAはあると思ったけど、案外低いのね」

 

神崎も驚いた顔をしている。

 

「3学期丸々休んだからな。筆記で落とした」

 

「へー。確かにいなかったわね」

 

間宮と火野が話している間に、神崎は何に思い付いたように、

 

「そうだわ。あんたたち、勝負してみなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*********

 

 

 

 

 

 

「どうしてこうなった……………」

 

八幡は今の状況に思わずため息が漏れる。

 

なぜなら、八幡対あかり&ライカの模擬戦が始まろうとするからだ。

しかも、あかりとライカには近接武器はありだが、八幡は武器なしというハンデまである。

 

八幡からしたら面倒過ぎることだ。

 

 

 

「先輩!準備はいいですか?」

 

ライカが八幡に呼び掛ける。

 

「ライカ乗り気なの?男嫌いじゃなかったっけ?」

 

ライカは男嫌いで有名。そのことに疑問を持つあかり。

 

「んー……。まぁ、そうだけど。格上とやり合える機会を逃すわけにはいかねーじゃん」

 

「格上……?そんな風には見えないけど」

 

あかりから見ると、八幡はよく分からない存在だ。

 

アリアは、噂もあり、実際見たこともあるから、強いということが直に分かる。

しかし、ライカが八幡とアリアとの戦いを伝えても、見たことがない。本当にアリアを苦しめたのかが分からない。

 

「バカだな、あかり。自分の実力を隠せるのは格上の証拠だ」

 

「そ、そうだね」

 

その言葉に納得しながら、あかりは気持ちを切り換える。

 

八幡は、自然体のまま立つ。あかりはコンバットナイフを、ライカはタクティカルナイフを構える。

 

「じゃあ……始め!」

 

アリアの号令で模擬戦が始まった。

 

 

 

先に動いたのは八幡。普通に、まるで考えがないかのように歩く。

 

「「――っ!」」

 

八幡の意図が読み取れず、膠着する2人。

 

だが、八幡は歩みを止めない。

 

お互いの距離が5m切った所で、あかりが反射的に八幡を止めに行く。

 

「あかり!?……くそっ!」

 

あかりが前から行ったから、ライカは挟む為に八幡の後ろに回る。

 

「やー!」

 

跳躍したあかりは、ナイフを八幡のみぞおちに狙いを定めて刺しに掛かる。

 

八幡は、1歩後ろに下がる。そのまま右足を軸に回転し、あかりの真後ろにつく。

あかりが着地してから1拍置く。そして、あかりの背中を軽く押す。

 

「ひゃっ!」

 

「ちょ!」

 

八幡の後ろにいたライカとあかりは綺麗にゴツンとぶつかる。

 

ナイフを後ろから今にも刺そうとしたライカはあかりを傷つけない為に、ぶつかった瞬間咄嗟に放る。

あかりもぶつかった衝撃でナイフを落とす。

 

 

 

――――この先輩。後ろに目でもあるのか?タイミングよすぎるだろ!

 

起き上がり、ライカは心の中で毒づく。

 

今の動き、八幡はライカとの距離を合わせる為に、ライカが攻撃を仕掛けて回避できない時にあかりを押した。……わざと1拍置いて。

 

 

 

八幡は、あかりたちに背を向けたまま、

 

――――これは……イケるな。

 

自分の感覚を確かめる。

 

八幡の持っている超能力は風を操る。つまり周囲の気流を操れる。

 

その副作用なのか八幡は知らないが、八幡中心に半径4mなら――どこに、何があるか、どんな形か、それが人なら、どんな動きをしているが分かるようになってきた。

自分に近いほど、その精度は増す。

 

最初はそんな事はなかったが、徐々に慣れていく毎に、それがハッキリ分かるようになった。

 

でも、そんなに万能ではない。

 

超能力は日により、まるで雨が降るみたいに使える頻度が変わる。

そのせいで感度はその日で差がある。だから、安定はしない。

 

――――少しずつ慣らさないとな。まだ上手いこと使えない。いきなり使うと酔いそうだ。

 

そう思いながら振り返る。

 

 

 

ライカが起き上がる。それに続き、あかりも起き上がる。

 

「あかり。攻撃をずっと仕掛けろ。フォローする」

 

自分のナイフを拾ったあかりは、目を見開き驚く。けど、実績でいえばライカはあかりより上。

 

「分かった」

 

それだけ言って、八幡に突っ込む。

 

ナイフで八幡の体の各所を狙う。胸、膝、腹、腕、等々を連続で攻撃する。八幡は攻撃を避ける、いなす、を繰り返し、全て捌いている。

 

 

 

――――……何だ、これ………?

 

その最中、八幡はあかりに対して、疑問を持つようになる。

 

あかりの動きは、まだまだ未熟。目線も、重心もバラバラ、速さもまだない。次の動きはかなり読みやすい部類に入る。

 

でも、一瞬、ほんの一瞬、あかりから殺気が完全に消えた。周りには決して分からない程度で。

 

そのせいで、八幡の対応が遅れた。

 

あかりが八幡の足を横薙ぎに振ろうとする。

いつもなら最小限の動きで留めている八幡だが、恐怖を感じて、一旦大きく距離を取ろうと、後ろに跳躍する。

 

 

 

ライカはナイフを取りに行き、隙を窺っている。

 

――――ここだ!

 

八幡があかりの攻撃を避ける為に大きく後ろに跳ぶと同時に、ライカは、着地するであろう地点に向かってナイフを投げる。

 

「――!チッ」

 

自分の右側から飛来してくるナイフを、八幡は右手で受ける。角度をずらし、ダメージを少なくする。

 

八幡は分かっている。

ライカの本命は、投げナイフじゃない。ナイフを投げた本人が自分に向かい、走ってきていることが。

 

八幡は着地と同時に、踵から地面に付く。倒れ込むように勢いに身を任せて、さらに後ろに跳ぼうとする。

 

「きゃっ!」

 

オマケに、八幡に追い討ちとばかりに近付いてきたあかりの手も引っ張る。

 

 

――――くっそ。またか!

 

このままだと、またライカはあかりにぶつかることになる。

 

同じことを繰り返すハメになる。

 

それはどうにか避けまいと、ライカは急ブレーキをかける。あかりがこけた隣で止まることに成功する。 

 

ライカは、次どうするか考えたところで、

 

「はーい!そこまでー!」

 

アリアの合図により、3分にも満たない模擬戦は終了した。 

 

 

 

 

 

 

 

 

*******

 

 

 

「お疲れ様。あかり、ライカ。それと八幡もね」

 

「はいっ!」

 

「うっす」

 

「………あ、うん」

 

本当疲れた。体力的には全然だけど、色々試したから精神的に疲れた。

 

「あかり、ライカ。八幡はどうだった?」

 

「強いんですけど、何だか、分からなかったです。私たちに本格的に攻撃してこなかったし」

 

と、間宮。

 

「確かにね。八幡、何でしなかったの?」

 

「見てただろ?ちょっと押したり引っ張るだけで、勝手に自滅しそうだったじゃないか」

 

「「うぅ……」」

 

間宮と火野は同時にへこむ。息ピッタリだな。

 

「ふふっ。それもそうね。八幡、この子たちに先輩として、アドバイスしなさい」

 

「………へいへい。えーっと、先ずは多対1の時の基本だが、味方の位置は常に把握するように。今回は拳銃なしだけど、誤射とか危ないから」

 

「はい……」

 

間宮がしょんぼりしながら返事をする。

 

「逆説的に独りで戦うことが最強ってことに………」

 

「ならないわよ」

 

「デスヨネー」

 

神崎が横やり入れながらも、俺は話を続ける。

 

「…………あとは間宮。目線がバレバレなのはともかく、重心バラバラなのはダメだ。重心が安定すると、次の動作に繋げやすい」

 

間宮はうなずく。

 

ちゃんと人の話聞いてくれて嬉しいよ。俺の周りなんか聞かない輩が多いから。神崎に留美や理子にレキとか。

 

「そうだな……。何だっけアレ?えーっと、そうそう、アレだ、平均台。平均台で、最終目標として、側転とロンダートをできるようになれば?」

 

単純な格闘戦だったら、留美の方が動きは良い。

 

「平均台で、ですか?」

 

冷や汗をかいているのが分かりやすい。

 

「あぁ。神崎は当然できるよな?」

 

「もちろんよ」

 

首肯して答える。ちなみに俺も7割の確率でできるからな。

 

「あ、ちゃんとマット敷けよ。危ないから」

 

「は、はい。やってみます」

 

「比企谷先輩。私は?」

 

火野ライカ……ね。

 

「そんなに直接戦ってないからな…………」

 

何を言うかね………。

 

「お前は間宮よりは強いし、自分の役割を見付けて、それを果たせるようにしたらどうだ?」

 

「……なるほど。ありがとうございます」

 

 

 

 

「ゴメン。あたし用事あるからもう行くわ」

 

神崎は、何やら急いでいる様子で去っていった。

 

「また明日です~」

 

「さようなら」

 

間宮と火野のセットは神崎と別れを済ます。

 

 

 

「ライカぁ!ちょっと来い!」

 

蘭豹に呼ばれた火野はこの場からいなくなった。

ここにいるのは俺と間宮。

 

………都合いい。話聞こうか。

 

「間宮」

 

「はい?」

 

俺たちは、共にストレッチをしている。

 

「誰もいないから聞くけど………。お前、何か隠している?」

 

「えっ。どうしてですか?」

 

顔がひきつる。分かりやすすぎだって。

 

「一瞬、完璧に殺気を消しただろ?あれは見事だ。あんな芸当そう簡単にできないと思う」

 

「…………さすがですね」

 

「そりゃどうも。言っとくけど詳しくは聞かんよ」

 

「そうですか」

 

意外そうな表情だが、普通そうじゃないの?

 

「個人のプライバシーまで深く突っ込むのは趣味じゃない。そこまでしてお前に関わりたくないし」

 

「アハハ。辛辣ですね」

 

「そうか?」

 

うーん。俺からしたら、あんまり思わないな。誰だって余計な詮索はしてほしくないだろ。………レキと理子は除くぞ。

 

「まぁ、今は練習だから隠せるけど、本番何かを見せない為に隠そうとしたら、躊躇ったら、死ぬ。……と、教本とかに書いてた」

 

「そうです、よね」

 

落ち込む具合が半端ないな。

 

「自分の守りたい、守るべきモノは色々あると思うけど………。そこを見失うなよ」

 

一応、立場上俺は先輩。励ましとくか。

 

「はい。今日はありがとうございました」

 

「どういたしまして」

 

さて、射撃場にでも行くか。

 

 

 

 

 

 

 

予想通り、遠山が折れた。

 

どんな事件でも1回だけ神崎と手伝う。という条件で神崎は納得して部屋から去った。

いつもと同じ静かな部屋に戻った。

 

 

 

 

 

――次の日。

 

その日の午後、遠山が強襲科に帰ってきて、かなり話題になった。さすが元Sランク。

 

それと、隣にいた神崎が恋人みたいでリア充爆発しろと呪った。

どうやら近くにいる間宮も同じことを思っているだろう。

 

遠山、お前には星伽さんがいるだろ。

 

うん?俺はリア充じゃないかって?ご想像にお任せします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――そして、その翌日の夕方。

もう夜に差し掛かろうとする時間帯。

 

俺は、ある人の病室にいた。

 

決して見舞いなんかではない。呼ばれたからいるだけだ。

 

 

 

「――――で、話って何だ?神崎」

 

そいつは、頭に包帯を巻いてベッドに横たわっている。

 

そして、なぜか目元を腫らしている――神崎アリアに、俺は問う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




後半、駆け足気味になってすいません。

それでは、皆さん、これから私は現実(勉強)に戻ります。また会う日まで。ばいちっ。

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