訂正してくれた方ありがとうございます。
久しぶりの投稿です。どうぞよろしくお願いします。
金髪スーパーぶりっ子ガール、4代目リュパンこと峰理子!――またの名を武偵殺しが起こしたハイジャックの事件は死者は出ることなく無事に終結した。
………初っぱなからどんなテンションだ、俺。気持ち悪いわ。
あれだ、久々に書くから多少のことは許してくれ。この作品は未だにどんな感じで書いてたか掴めないんだよ。……この作品って言っちゃったよ。
話を元に戻して、ハイジャックの事後報告とかは後でしてもらうことにする。後始末は武藤たちに任せた。そもそも特に聞きたいこともないし別にいいか。
ぶっちゃけると、かなり疲れたから早く寝たい。いつも通りだな。
遠山はいつ帰ってくるか分からないし、取り調べやら色々あるかもしれないから最悪朝帰りかもしれないな。それまでに誤魔化すために何を言うかある程度考えとかないと。
そう思いながらベッドに入る。
………気持ちいいわー。よし、このまま寝ようか。
「寝ちゃダメだろ」
と、独りでボケと突っ込みをする。
「………自分でも何やってるか分かんねぇな」
まぁ、いいや。その時になったらその時の俺に任せよう。明日は明日の風が吹くとも言うし……使い方違うな。
国語学年1位が聞いて呆れるぞ。国語と社会だけは星伽さんに勝ててる事実。数学は敵わないし、英語はいつもギリ負けてる。恋する乙女は強し。
それにしても………、
「モンゴル、か」
レキから渡された飛行機のチケットを見た時は驚いた。まさかこのまま海外デビューしちゃうのか。
日本にずっと引き籠りたいのにな。世間はグローバルとか何とか言っているけど、生憎俺は生粋のドメスティックなもんで。何なら学校にも行きたくないレベル。それはただの引きこもり。
てゆーか、小町ちゃん。お兄ちゃんに黙って勝手にパスポート作らないでよ。ビックリしたよ。役所行ったら、もうほとんどできてたんだから。写真渡したらほとんど完成したよ?
その事について文句ついでに電話したら、
「お兄ちゃん、大丈夫だよ。レキさんの存在はまだお母さんたちには知られてないから。ちゃんと紹介するんだよ!」
って感じに言われた。違うぞ、小町。お兄ちゃんと話が絶妙に食い違ってる。
それと脳内でサムズアップをした小町が目に浮かんだ。可愛し和む。
また話脱線したな。
それで、日本は外国と比べるとまだ治安はマシだし、水道設備は整ってるし、出来れば海外行きたくなかった。でもなー、2学期になったらどうせ修学旅行で海外に行くらしいしな…………。アジア辺りだったかな。
ま、海外の手続きとかの予行演習だと考えたら、まだいいか?
「それにあそこには」
――――色金があるらしい。
色金。このワードで調べてみても、大した情報はネットでは公開されてない。だが、所謂「裏の世界」では、割りとポピュラーな存在。それと国家もその存在を把握しているとのこと。
あの推理能力を持つシャーロックでも色金の全容は分からない。1つはっきりと分かるのは、色金の力を際限なく自由に使えることが出来たならば、世界の力のバランスが大いに崩れること。
そして、その力を手にするのに最も近い奴が俺の同級生でもある――神崎アリアなわけだ。
あれ?こうして考えれば色金関係者武偵高に多くないか?
神崎アリア。
星伽白雪。
レキ。
一応はイ・ウー関係者だし理子もか?いや、理子は違うな、多分。
他には遠山はまだ微妙なとこだし……こんなところか。
「普通に多いな」
寝転び天井を見上げながらぼやく。
とはいえ、星伽さんがどのように色金に関わっているのかはまだ正確には理解してない。『緋色の研究』に書いてあったのは、代々緋緋色金に仕えている一家、とのことだ。それだけで、具体的なことはさっぱりだ。
こんな面倒事に自分から巻き込まれるつもりは毛頭ない……と、イ・ウーから戻った時は思っていたが、レキも色金関係者ともなると話は変わってくる。
俺がやれることなんてあるのかどうかすら怪しい。もしかしたら何も出来ないことすらある。けどまぁ、やれることはやってみようか。具体的に何をするのか今現在分からないけど。
珍しく前向きになっているが、これが全てのあいつの推理通りだったら気に食わない。
「だったら、あいつの予想の斜め下を行きまくるか」
そもそもの話、なんでわざわざモンゴルに行く?レキの目的は何だ?
確かウルスって種族は全員女って聞いた。それとレキの家族だよな。あれか、家族にご挨拶的なあれか。……バカみたいな考えは止めよう。
なら、逆に考えよう。レキの考えを俺は当てたことはあるか?
「………ないな」
どうせ分かる時が来る。だったら、それまであいつの隣にいればいいだけだ。
「おはよう」
「ん?比企谷か。おはよう」
「お疲れだな」
「まあな」
――翌朝。一応は学校はあるけど、どっちもサボることにした。遠山に関しては独断だけど。
起きると遠山がソファで死んでた。まるでそれはゾンビのように唸っていて……ゾンビは俺か。俺の専売特許だな。そこは譲らないぞ。
疲れてるだろうからと朝飯は俺が作ろうと適当に料理していると、ゆっくり起き上がってきた。
「いただきます」
声に覇気がない遠山と、
「おう」
やる気のない声の俺。
互いに無言のまま朝飯を食べていると、
「なあ、比企谷」
「何だ?」
「その、飛行機での話の続きを」
気まずそうに遠山が話を始める。
そういえば話する予定だったな。すっかり忘れてた。あ、冗談です。
「ああ、分かってる。で、どこから聞きたい?」
「そうだな。俺の体質の……どこまで知ってる?」
「HSSの概要だけだな。あとは知らん」
「そうか。なら、誰から聞いた?」
「…………驚かないんだな」
「そりゃ比企谷だしな」
納得したように言う遠山だが……何だか納得いかないな。
俺だから何だ?コソコソ調べるのが俺らしいってか?何それ悲しい。自分で自分を傷付けるのは止めよう。ただただ虚しいだけだ。
「それで、誰からだ?」
眠気からは覚めた様子で尋ねてくる。
「俺は武偵だぜ?………と、いつもなら秘匿するが、一応教えとく」
さて、どこまで話すか………。
理子と戦ったってことは少しはイ・ウーについて知ってるはずだ。教えてくれたのはジャンヌ。そして、今ジャンヌはここに来ているらしい。前情報は渡しとくか?
いやいや、別に遠山がジャンヌと戦うわけでもない。もし、そうならとんだ巻き込まれ体質だ。ここは嘘ついとくか。
「………武偵殺しこと理子から」
迷った末の答えは――理子に押し付ける!正に外道!
「えっ?比企谷………武偵殺しの正体知っていたのか?」
「まぁな」
色々と悟られないために飯を頬張りながら何食わぬ顔で平然とする。
「理子から聞いたなら…………その、俺の兄がどうなってるか知ってるか?」
とうとう来たか。来てほしくなかった質問。なかなか面倒。
遠山はカナが生存しているかどうかは知らない……はずだ。が、お調子者の理子ならカナが生きている~とか言っててもおかしくない。
だったら、俺が言うべきは――――嘘だ。
「知らん。ちなみにさっきは武偵殺しの理子とか言ったが、実際は武偵の理子に依頼しただけだからな」
そして、またさらっと嘘をつく俺。
「そうなのか。……すまない。忘れてくれ」
「あぁ」
これで全部話したらどうなるだろうか?遠山の気は晴れるだろうか?
答えは――否だ。
余計遠山に負担をかけさせ、イ・ウーとの戦いに巻き込まんでしまう。俺まで巻き込まれたくはないし。
いずれ知る時は来るだろう。だが、話すべきは今じゃない。
「その話でお前が女子が苦手な理由は何となく察したわ」
「ああ。中学の時はクラスの女子に利用されまくって」
「それはそれは。ご愁傷さま」
その時の事を思い出したのか遠山は顔が暗くなった。変な汗まで掻いているようだ。
あれだな、恐らくは遠山の黒歴史だろう。キザな行動を取ってしまうらしいしな。
「それで比企谷。頼むから他の奴らには言わないでくれないか?」
「その点は大丈夫だ。特に言う相手もいないから」
胸を張って答える。
それにレキと理子は知っているわけだし。というよりあなたの姉?兄?のせいでイ・ウーの面子には知れ渡っているから今さらなぁ………。
「助かる。でも、もうちょい人との繋がり作ったらどうだ?」
「おう。ごちそうさま。そこは、まぁ……気にすんな」
「そうか」
と、ホッとする表情の遠山。
「あ、そうそう。明日からしばらくここにいないから」
「ん?どこかに行くのか?」
「そんなところ。荷物は整理しておくけど、神崎とかが来たらまた説明しといてくれ」
「………あぁ、分かった」
遠山は一瞬言い淀んだが、すぐに元に戻って返事をする。
「じゃ、ちょっと出掛けるわ」
「昼メシはどうする?」
「適当に食っといてくれ」
それだけ言い残し、モンゴルに持ってく暇潰しのための本でも買おうと本屋に向かう。
本屋で物色していると、理子からメールが来た。《司法取引めんどくさーい!!》みたいな内容で。
ハイジャックの翌日なのに連絡寄越すの早い。これを俺が誰かに伝えたらどうするつもりだ?考えなくても伝える相手はいませんでした。ありがとうございます。
……ハァ、そこまで分かってて送ってきたなら尚更、質が悪いぞ。
――――――――――――
以上、遠山との会話でした。
長い!編集仕事しろ。お前(作者)は何のために存在するんだ。
そういえば、材木座に頼んでるブツどうなってるかな?あいつは任せろとか言ってたが。あれができればけっこう戦闘が楽になるんだよな。慣れはもちろん必要だが。
そう考えながらボーッと空港を歩いてたら売店が目に入った。
入国の手続きはレキに手伝ってもらいながら何とか完了した。初めてでかなり手間取った。スゴいややこしい。ますます国内に留まりたくなった。書類が多すぎるんだよな。
さて、何か買おうか。せっかくの海外だしなー。何かモンゴル産の物でも買いたいな。
あれ、今俺日本円しかない。……ヤバ。肝心なこと忘れてた。
「レキさんレキさん」
「何でしょうか?」
「帰り、いつ?」
「まだチケットを取っていませんよ」
えぇ…………。いささか行き当たりばったりすぎやしませんか?
「大丈夫だろうな?」
「心配いりません。私はアドシアードまでには帰ろうと思いますから」
「あぁ。確かにもうそんな時期か」
去年はこれといって何もやってないな。今年もそうなるかも。もういっそ参加するのもダルい。
そうだ、サボろう。そうしよう。単位は揃ってるし殴られるだけで痛い目みないしね!実に矛盾した言葉だな。
「それとウルスの所までどのように行くつもりだ?金まだ日本円しか持ってないんだが。モンゴル通貨がない」
さすがに1日2日で金をすぐには用意できなかった。確か空港でなら替えることはできるんだよな?そんな話を聞いたことあるんだが……、
「八幡さん。私はSランクです」
意訳します。すると、「金なら任せろ」か。そりゃSランクなら俺ら一般庶民が想像つかないほどの大金持ってても全く不思議じゃない。
………でも、
「まるでヒモみたいだな」
俺は自嘲気味に笑う。
武偵になって働いているが、今でも専業主夫は諦めてない。まだ完全には諦めてない。大事なことなので(ry
確かに養ってはもらいたい。でも、施しを受けるつもりはない。レキなら余計に。俺の変なプライドが邪魔をする。
頭の中でそんなやり取りを続けていると、
「そう言いますが、行きのチケットは私持ちです。今さらですね。それと私の我儘ですから、気にしないでください」
「………ははっ」
「八幡さん?」
「何でもない。気にすんな」
レキの、その言葉に思わず笑ってしまった。
あのレキが『我儘』と言った。
我儘とは、感情だ。自分を表現するための。厄介な感情だ。周りを考慮せずに自分勝手に振る舞うつもりか。
「なら、お言葉に甘えるぞ」
「どうぞ甘えてください」
…………理性をどこかに追いやって甘えたい。という思考が頭によぎる。その位今の言葉は強烈だった。少しあなたは可愛いという事実を認識してください。
――――キングクリムゾン!!
「広っ」
着いたぜ、ウルスの集落に(倒置法)。
といっても、あと1、2km歩かないといけないらしいが。
そういえば、久しぶりにキングクリムゾン使ったな。
移動過程は作者が分からないので、カットさせてもらった。モンゴルとか分かるわけねーじゃん。
想像を絶する程の方向音痴発揮する作者なのに。普段の行動範囲が決まってるから、違う場所に移動しようとしたら一瞬で迷うんだよ。
それにバスとタクシー乗って歩いただけだからな。レキが俺の分の料金払っている時の運転手の目線が痛かった。日本ならともかく海外だと、レキに任せきりなのは仕方ないのだ。そう、仕方ない。
気を取り直して周りを見渡すと、それはもう地平線に広がる草原だ。よーく見ると1、2km先に何かポツンと建っているような気もする。うっすらとな。
そして、その集落の近くにそこそこ大きい湖もある。いやー、ここまで広いと草加生えるわ。CSM高すぎるんだよな。オーズ予約したぞ。
ウルスに着いたら何をするのかまだ聞いてなかったので、そろそろ今回の目的をレキに話しかけようとした。が、その時、
――――ビュン!
と、何かが俺とレキの間を物凄い速さで横切った。ついでに頬が少し切れた。
「…………え?」
頬から流れた血を拭い、振り向く。地面の様子を確認すると、地面に対して斜めに刺さってる矢があった。
「八幡さん、ウルスからです」
「いやいやいやいや、なんでだよ………」
冷静なレキの返答に思わず文句を垂れる。下手すりゃ、顔面グサリだぞ。綺麗な草原の一部に血がドバドバ流れることになるぞ。
一応それらしく文句は言うが、悲しいことに常時戦闘集団の中で揉まれた俺は………あ、蘭豹ぐらいにしか揉まれてないわ。まぁ、武偵高にいると嫌でも戦闘態勢に入る。
ほとんど反射的にナイフを取り出す。
烈風で上手いこと逸らしながら当たりそうな矢をナイフで叩くか。
「お前は攻撃準備しないのか?」
俺の横でボーッと突っ立ってるレキに問いかける。
「………………」
しかし、その目線は矢に向いている。
何かあるのかと思い、見てみると、矢尻に紙が結ばれてる。これは……所謂、矢文ってやつか?初めて見るけど何か、古風だな。まあ、インターネット繋がってなさそうな場所だもんな。
それに付け加えて、集落が見える辺りからここってかなりの距離があるんたが…………。
しかも矢文で矢の重心も狂ってるはずなのに。セーラには劣るけど、かなりの腕前だな。
…………ちょっと待て。冷静に考えよう。
一瞬変に納得しかけが、矢ってそもそもこんなに飛ぶの?せいぜい500m位だと記憶している。あ、風を自由に扱うセーラは例外で。ここにも超人がいるのか。…………レキもウルスだし、それもそうか。
俺は少しの納得と驚きが混ざった感情になる。
矢が飛んできてから、ある程度経つ。どうやら最初の攻撃からもう来ないようだ。つまり、目的はこの矢文になるのか。
うっわ恥ずかしい。独りでテンション上げちゃったよ。誰もいない場所で悶えよう。
そう決心し、矢を引っこ抜く。念のため周りを警戒しながら破かないようにそっと手紙を広げる。
して、その内容は………、
「レキ、頼む」
ダメだこりゃ、と、すぐさまレキに渡す。多分モンゴル語であろう文字が並んでいる。日本語も英語も見当たらない。話を纏めると、これっぽっちも読めない。
「はい」
手紙を受け取り10秒程でレキは、
「要約するとこのまま来い、だそうです」
「さいで……」
何だかスゴい恐ろしいんですけど。蘭豹が不機嫌の時の教務部並みに行きたくない。
遠山と行った時は平塚先生と合コンに失敗して、荒れに荒れてた。壁は凹んでたり、穴が空いてたり、悲惨な状況だった。後日校長に減給喰らったらしいけど。
それが男性に相手されない理由だと何故分からない。ちなみにその時は巻き添えは嫌だったので、遠山と一目散に逃げた。
話を戻して、俺は歓迎されてるのか、身ぐるみ剥がされるのか……想像付かない。まぁ、歓迎はされてねーな。
「そういや、ウルスでのレキの立場ってどんな感じだ?璃璃色金から外れたとか言ってたが」
ナイフを納刀し、ふと思い付いたことを言う。
「外されはしましたが、それでも風と繋がっているのは私含め数人です。それに付け加え、私もまだ少しだけ風と繋がっている状態です」
「えっ、そうなのか?」
「はい。ただ干渉してこなくなっただけです。恐らくですが、私を通じて私が見ている景色を見ることは可能でしょう」
「お、おう………。それより、お前けっこう喋るな」
レキの饒舌ぶりに思わずかなり場違いな事を口に出してしまう。俺より喋ってるぞ。
「そうですか?」
「そうですね」
「「………………」」
そして、何故か、沈黙が訪れる。
………本当、何でだよ。お互い話繋げるの下手か。はい、下手です。コミュ症ですいません。
くだらない自問自答してから1分。荷物を互いに拾い直して、
「では、行きましょうか」
「………おう」
レキは俺に近寄り、手は繋ぎこそしないが、離れてもピッタリ引っ付きそうな雰囲気なので、そのまま歩くことにする。このお互い黙ってても不快ではない雰囲気は嫌いじゃない。
でだ、レキはウルスの元に行こうと言うが、全くもって行きたくない。できればこのまま振り返ってゴーホームしたい気分だ。帰りのチケットないけどな。早く頂戴!
レキの歩幅に合わせてのーんびり歩くと、ようやくはっきりと集落が見えてきた。
どうやら有名な移動式の家――ゲルではなく、普通に木造の家がある。というより、モンゴルって言ったらゲルのイメージが強いだけだ。
そのことからウルスは移住はしない民族だと推測できる。色金があるとすれば、簡単に移動なんてできないのか………。
その前に色金の大きさはどのくらいだろうか?気になるな。後で聞いておくか。
それで、家の数は目視で大体15ちょい確認できる。確かレキ含めてウルスは47人だっけか?あれ?48?………うん、覚えてないわ。
そして、ざっと見渡すと、電線はない。携帯は予想通りの圏外。多分電話くらいは使えるのかな。
「八幡さん。ここはWi-Fiが通ってるので安心してください。後程設定すれば使えます」
「その一言予想外すぎるんだけど」
まさかのWi-Fi完備でした。……デジタル化進んでますね。それにしても、どこから電気引っ張って来てるんですかね?どこにも変電所的な建物見当たらないんですけど。
そうこうしていると、その15人がこちらに寄ってくる。全員が銀髪。髪の長さはそれぞれ違う。
レキと同じような水色じゃないんだ。
そして、その手には弓や狙撃銃がある。弓が10人、狙撃銃が5人。
距離が10m切ると、全員武器を構え始める。俺に向けて。
…………何故だぁ??
「………レキ」
考えられることはただ1つ。
「何でしょう?」
「あの手紙に書いてたこと全部教えてくれ」
「八幡さんの実力を確かめたいので連れてきなさい、です」
「………全ッ然、要約してないじゃん!!!」
俺、渾身の突っ込み!
どこがだよ!どこをどう要約したら『来い』だけになるんだよ。肝心な部分抜けすぎじゃねーか!
あまりの大声のせいで、あのレキやウルスの人たちもビクッとする。
やべぇな。キャラ崩壊がすさまじい。
――しかも10mって短すぎだろ。余裕で死ぬぞコラ。いや、まだ俺の射程範囲内だから有り難い。烈風は距離詰めないと届かないけど。
レキは俺の左側に数メートル程離れ、ドラグノフの銃弾を取り出している。その様子をウルスの人も俺も見ている。
その銃弾をコイントスの要領でピンと弾く。
………あ、これって、もしかしてしなくても始まりの合図か。
銃弾が空中に舞っている間に俺はナイフを取り出し、すぐに走れるよう体を屈める。
ファイブセブンは撃つ暇がなさそうなので閉まっておく。右手にナイフを持つ。
―――作戦はとにかく突撃!
ウルスの人たちは矢をつがえ、狙撃銃を構え直す。
陣形は弓矢の人たちが前に、その1、2m程後ろに狙撃銃を構えている人たち。
―――あの中で何となくリーダーらしき人物は狙撃銃グループの真ん中。銀髪の長髪の美人さん。雰囲気が他の人たちと違う。まずはそこに辿り着かねば。
弾いた銃弾は頂点に達し、重力に従い落下する。
草原地帯だからか銃弾は落ちてもコンクリート程の音はしない。俺は視界の片隅で落ちた銃弾を捉える。
銃弾が落ちた。その瞬間――――
「烈風」
ウルスの矢が10本、俺の体全体に飛んでくる。互いの矢がぶつからない角度で。
対する俺は、烈風で台風程の風を起こす。その風を使い、飛んでくる矢を、レキに当たらないように左から右に受け流す。
矢の受け流しが完了すると同時に走り出す。
「烈風……!」
最大威力の烈風で追い風を起こし、その風の勢いに乗るように跳ぶ。体勢を崩さないためにバランスを取りながら。
ひとっ跳びで5、6mぐらいの距離を詰める。が、着地し、ブレーキをかけてる間、残りの5人が狙撃銃で俺に狙いをつけている。
どうやら弓矢の人たちは俺から離れているらしい。矢を放ったらすぐに移動したのか。この判断の早さは間宮たちにも見習わせたいな。
俺と狙撃手たちとの距離はさっき跳んだ距離とブレーキした距離を合わせて残り―――ギリギリ4m。これなら届く。この範囲は、
「俺の間合いだ」
向こうが引き金をひくと同時に春休み最後の時に使った下から掬い上げる風を起こす。あの時はできなかった最大出力で。
それと同時に狙撃手たちが引き金を引く。
パァァァン!と甲高い銃声が重なり合い、鳴り響く。
上を向いている銃口から放たれた銃弾は屈んでる俺には1発も当たらない。
急な突風に対して驚いたのか狙撃手たちの陣形が一瞬崩れる。
――その隙を逃したら俺の敗け。
ならば、相手の予想してない形で不意を付く。
「飛翔」
屈んだ状態で跳躍する。その途中、空中に空気のクッションを作る。そのクッションは爆弾みたいに弾ける―――セーラに教えてもらった擬似的に空を飛ぶ方法。
正直連続で使おうとしてもまだ安定しない。かなりの集中力が必要だ。最高で3回連続。2回はそれなりに安定している。でも、1回跳ぶだけならイケる。
名前は適当。やっぱり名前を言うだけですぐにイメージできる。
70cm程の高さで、1m程の前にを跳躍する。それから空気のクッションを思いっきり踏んづける。
すると、ボォォン!と、クッションが弾け、そこからまた加速し、跳ぶ。
さっきより斜めに跳んだ俺はリーダー(仮)の頭上を越える。
跳躍の軌道が予想外だったのか、狙撃手たちは反応できてない。
跳んだ勢いを殺すために烈風で向かい風を起こし、落下しながらリーダー(仮)の肩を掴む。
着地した瞬間、体勢を整えながらナイフの刃をリーダー(仮)の首筋に当てる。
………なんか、レキと似たようなミントっぽい香りがする。ぼ、煩悩退散!
ウルスの人たちはその様子を確認すると、全員武器の構えを解く。
「合格です」
狙撃銃を降ろしたリーダー(仮)がいきなり話し始める。
それより気になることが……、
「日本語?」
がっつり、日本にいても通用するくらいの流暢な日本語だった。
「私たち、ウルスの祖先をご存じですか?」
俺もナイフを首筋から放す。そのまま納刀する。
そう言えば、前にレキが言ってたな。
「えーっと、確か、源……何だっけ?」
「源義経です、八幡さん」
「あ、そうそう。だから日本語も喋れるのか」
いつの間にか俺の荷物も持ちながら近づいてきたレキに補足説明してもらいながら納得する。荷物は受け取った。
というより、レキも日本語話せるし不思議な事ではない。
「で、合格って何のことだ?」
「その前に自己紹介をしましょう。比企谷八幡さん」
………うん、それはいいんだけど、この場に残ってるのリーダー(仮)を含めて3人しかいないんだけど?他の人たち消えるの速くない?
それとやっぱりレキに似てるな。主に会話のキャッチボールをしてくれない所が。
「私はボルテです」
今までリーダー(仮)と呼んでいた人物は肩にかかるぐらいの銀髪、レキとは違う蒼い瞳をしている。
身長は俺より、少し低い168cmくらいだ。服装はウルス共有なのか、全員同じでデールと呼ばれる民族衣装。調べた。
「アランです」
次に、だいたい155cmの銀髪の女の子。スゴい無表情。
「私はダグバです」
身長は160cmかな。これまた銀髪だ。
それより、否定する気は全くないけど、ダグバってある界隈からしてら恐い名前だな。そして、これまた無表情。笑顔でいられるとそれはそれで恐いけど。
それにこの3人、揃いも揃って日本語上手だな。
「改めて、俺は比企谷八幡だ」
――さて、レキのご実家に突入だー!
みたいにテンション上げれたらいいけどなぁ。無理に決まってるだろ。絶対面倒じゃん。ハァ………。
ウルスの家に向けて歩き始めたその時―――
「―――っ」
辺り一帯にかなり強い風が吹き荒れる。
俺を含めた5人はそれぞれ服や髪を抑えている。
道中、そこそこ風は吹いてたけど、ここまで強い風は起こってなかった。俺が起こした風を除いて。
「………………」
「どうしました?八幡さん」
「………いや、何でもない」
「何かあったら頼ってくださいね」
「ああ。その時は頼む」
と、レキとは会話する。が、これから何が起きるか全く予想がつかない。……本当、不安でしかない。
まだ後期残ってるんで、また更新開くかも……(;・ω・)
次はWかアクセル・ワールドになるかな?