八幡の武偵生活   作:NowHunt

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おひさしぶりです。遅れました。
大学が大変だったり、中々展開思いつかなったり、別のシリーズを書いてたり、と色々ありました。

オリジナルな設定とか色々不都合な点があると思いますが、目を瞑っていただければ幸いです。



何の為に

 あれから1週間が経ち、ウルスでの生活は続いた。

 

 

 朝起きて、朝飯を食べ、宿泊費として掃除を手伝う。最初は断られた、そのくらいしないと俺が落ち着かなかった。

 

 それが終われば、部屋で柔軟を30分ほどして、持ってきた銃弾450発を使いきらないように撃つ。撃つ感触を忘れないために。

 

 その時ボルテさんやダグバさんに遠距離射撃のコツを教えてもらった。

 

 とりあえず分かったことは1km先の風を読むとかは無理ってことだ。ほら、俺、人間だから。といっても、色々なアドバイスは参考になった。

 

 

 

 後は軽く運動したり、持ってきた本を読んだり、レキと話したりと、のんびり過ごした。

 

 ………まあ、レキとはちゃんと話せてるよ?キスされたことを口に出そうとしたら、露骨に話逸らされたけどね?あいつにそんなトークスキルがあったとは。

 

 

 

 話は変わるが、あと4日ほどしたら武偵国際競技――アドシアードだ。

 

 今さら武偵のイメージを良くしようとしたところでなぁ。

 

 犯罪スレスレもやる何でも屋は世間で評判最悪だ。子供に銃を持たせるなんて!……みたいな感じで。

 

 確かに否定する奴の気持ちは分かるけどよ。例えば留美みたいな子が平気で銃を扱える世の中ってのは正直疑問が生じるし。

 

 でも、クリスマス辺りのカナの事件、あれはさすがに腹が立った。カナがいなきゃ死んでるのにあいつらときたら、責任逃れようと、終始偉そうだった。遠山にも被害及ぼすし。

 

 ………あれ?これ訴えたら金むしり取れるんじゃね?俺も遠山と同じ部屋に住んでるからマスコミ煩かったし、かなり迷惑だった。裁判起こして小遣い稼ぎに行くか!……と言いつつも、面倒だからやらないけど。

 

 まぁ、今は武偵高を休んでるから、アドシアードで何か仕事を割り振られているとは思えない。サボっても問題なし。

 

 たまに俺が休んでることすら気づかれない。通知表の欠席の欄に記録されて数が合わなかった時は驚くと同時にショックを受けた。悲しい。

 

 そもそも担任の綴は割りと放任主義という名のめんどくさがりなので俺が休んでるのなんて気にも留めてないだろう。

 

 そういや、レキは狙撃系の競技に出るって言ってたな。あいつどうするんだろ?

 

 

 

 

 

「………ふぅ」

 

 額から流れる汗を袖で拭う。

 

 今、俺は昼飯を食って運動がてら走って湖に来た。

 

 謎の声がした日から毎日湖に寄っているけど、あの声はもう聞こえない。

 

 ――あれは何だったんだろう?

 

 そう思い、レキに尋ねたことがある。

 

 そして返答はまさかの、

 

『それは風かもしれません』

 

 だった。

 

 俺が見たあの大きい岩は、レキ曰く、風――璃璃色金らしい。

 

 その時は思わず「うそーん……」とかいう俺のキャラに似合わない発言をしてしまったくらいだ。不覚!

 

 いやだって、普通に驚くわ。

 

 シャーロックも色々と言ってたし、なんか珍しい物だから厳重に保管されてると思いきや、あんな湖に沈んでるもんな。

 

 パッと見ではあれが金属なんて分かりっこないけどよ。ただの岩だろ、あれ。

 

 ――それにあれが本当に璃璃色金だったら、尚更おかしい気がする。

 

 璃璃色金はレキもボルテさんも言った通り、無を好む……らしい。対する俺は煩悩ありまくりの普通の人間だ。

 

 そこに矛盾が生じる。璃璃色金は感情を持つ者を嫌うから今までのレキに付いてたのは納得がいく。だが、俺に話しかける理由はないだろ。

 

 それともあれか、暇潰しに話しかけてきたのか?………うん、そういうことにしておくか。

 

 で、レキに詳しく色金のことを聞こうと思ったが、ボルテさんが話したこと以上は知らないとのこと。後は神崎が持っている色金の出現を止めることくらい。

 

 やっぱり、一番何か知ってそうなのは星伽さんかな………。まあ、別に今はいいか。

 

 さて、休憩はもういいな。そろそろランニング再開するか。

 

 俺は水を飲み終えると、さっきの思考を振り払い、また走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の夜。俺は借りてる部屋とベッドに腰かけている。床にはレキが体育座りの状態でいる。  

 

 ちなみにレキが泊まっている部屋は俺とは別。

 

「おい、レキ。椅子あるんだし座れば?」

 

「構いません」

 

「そうですか……」

 

 経験上、これ以上言っても聞かないことは分かっている。話題変えるか。

 

「お前、アドシアードどうするんだ?そろそろだろ」

 

「明日には帰るつもりです」

 

 晩飯食った後、チラッとレキが荷造りしてたのを見た気がした。

 

「なあ、俺のチケットもあるよな?」

 

「………………」

 

「何故黙る」

 

 嫌な予感しかしねーぞ。止めてくれよ、本当に。

 

「ウルスからの頼みであと1週間から2週間ほど滞在してほしいそうです。私はアドシアードがあるので日本に戻りますからご一緒できません」

 

 レキは淡々と口を開く。

 

「それマジ?」

 

「マジです」

 

 嫌な予感的中。思わずため息をつきそうになる。アウェイに独りだと居心地悪いな。

 

 しかし、理由が見当たらない。

 

 もしかしたら、レキがいなくなった途端にウルスの皆さんに殺されるのか。

 

 嗚呼、短い人生だった。最期にもう一度小町に会いたかったなぁ………。

 

「八幡さん?」

 

 レキの声で俺の下らない考えは終わり、意識はレキに向けられる。

 

「………おう、大丈夫だ。それで、俺だけ残るって何でだ?」

 

「知りません」

 

「でしょうね」

 

 レキが理由を知っていたら、先に言ってくれるって知ってる。

 

「まぁ、レキが帰ってからボルテさんにでも聞くわ」

 

「はい。お気を付けて」

 

「そっちもな」

 

 思い出したけど、今日本にジャンヌいるんだよな。誰をあの傍迷惑な組織に勧誘しているのか。遠山の周りの人ならいくらジャンヌでも勝つの難しいだろうな。

 

 あ、毒女こと夾竹桃もか。間宮たち大丈夫か?……向こうには神崎がいるしどうとでもなるか。さすがに夾竹桃では神崎に勝てないだろ。

 

「八幡さん」

 

「どうした?」

 

「私がいない間にやましいことはしないでくださいね?」

 

「………する度胸ねーよ」

 

 いきなり何を言われたかと思うと………。あとレキのプレッシャー半端ないです。その目止めて。何かに目覚めそう。

 

 したら、レキに何されるか分からな。俺の命は確実になくなるだろう。

 

 つーか、そもそも………

 

「レキがいるのにする理由がないな」

 

 思ったことを率直に述べる。

 

「………………」

 

 が、レキは無反応………ではないな。少し顔が赤い。

 

「おい、レキ」

 

「おやすみなさい」

 

「あ、おい待――」 

 

「おやすみなさい」

 

 かと思いきや、一目散に部屋から出ていった。

 

 ねぇ、照れてるの?そうだよね?怒ってないよね??

 

 

 

 

 

 

 

 

 で、翌日。

 

 レキを途中まで見送った。その後、ボルテさんを呼び出してリビングに座る。

 

 ボーッとしているとようやくボルテさんがこっちに来た。

 

「お待たせしました」

 

「それで、レキから聞いたんですが……話とは?」

 

「………璃璃と交信したそうですね」

 

 あぁ、それか。

 

「一方的に少し言われただけです。何か問題が?」

 

「あなたは超能力(ステルス)が使えるんですよね?」

 

「ちょっとだけですけどね」

 

「なら……不味い」

 

「どういう意味ですか?」

 

「レキや他の璃巫女は基本的に超能力は使えません。ですから、もし躰を乗っ取られてもあまり害はないでしょう」

 

 超能力を使えない人間はどこまで頑張っても使えない。だから、圧倒的な超能力を使える色金の神でもそういう人間を乗っ取っても、ぶっちゃけ意味ないんだろう。

 

「でも、俺は使える」

 

「ええ」

 

「といっても、璃璃色金の性格的にこれ以上俺に干渉してくるか?」

 

「ゼロとは言い切れません」

 

「対策なんてできないでしょ。そもそも俺の近くに璃璃色金がなかったら済む話だろ」

 

「それはそうですけど……」

 

 何か言いにくそうにしているボルテさん。

 

「何かあるんですか?」

 

「いきなり璃璃色金があなたに話しかけたこと自体が問題なのです。レキを含む璃巫女たちは璃璃色金と交信するために長い時間を消費しました」

 

「………つまり?」

 

「色金の影響は凄まじい。例えその身にしていなくても、あなたの身に何か起こるかもしれません」

 

「そう言い切れる理由はないだろ」

 

「理由はありません。でも、可能性はあります。なぜなら、あなたの側にはレキがいるから。長年、璃璃色金と寄り添ってきたあの子がいる。もし、璃璃色金がレキを通してあなに何かできるなら、あなたにも被害が及ぶ」

 

「だったら、俺にどうしろと?」

 

 少し怒気を籠めた声を出す。それに臆せずボルテさんは淡々と告げる。

 

「あなたには璃璃色金を持ってほしいのです。ほんの一欠片でもいい」

 

 ………どうしてそうなった。

 

「一応、理由聞いてもいいっすか?」

 

「簡単です。あなたには超々能力者(ハイパーステルス)になってもらいます」

 

 いきなり出てきた単語に思わずビックリする。

 

 

 ――――超々能力者(ハイパーステルス)

 

 

 それは自由自在に色金の能力を使える存在。本気を出せば、その力は国1つにも該当するほど。

 

 そんな存在に俺が?

 

「冗談よせよ」

 

「もちろん、断ってもいいです。強制力は私にはありません。ですが、選択肢の1つに入れてほしい」

 

「まずそうなる理由を教えてほしいな」

 

「あなたは璃璃色金とかなり相性が良い。恐らく、今までの誰よりも。理由は分かりませんが、出会ってすぐに璃璃色金から話しかけられることなんてまずなかった」

 

 らしいな。緋緋色金も適合するのに何年もかかるらしいし。ますますなんで俺に話しかけてきたのかが分からん。

 

「何も璃璃色金の力を自由に使えとは言いません。乗っ取られない程度には耐性を付けてほしい」

 

「簡単に言うなよ………」

 

 まだ完全な超々能力者はいないだぞ。俺の知らないところでいるかもしれないけどな。

 

「方法はあるのか?」

 

「星伽に頼んでください。そこは専門外なので」

 

「ここまで来て人任せかよ!!」

 

 またキャラに似合わない突っ込みをしてしまったぜ。反省反省。

 

「まあ、星伽が色金に一番詳しいというのもあるので………。それと、歴史上、緋緋色金が一番人間を乗っ取って神になっているのもあります」

 

 気まずそうにポツリとそれだけ漏らす。あ、自分で話を振っておいてちょっと無責任な自覚はあるんだね。

 

「それで、この話をお受けしますか?」

 

「………考えさせてくれ」

 

「分かりました」

 

 それを聞くと俺は席を外す。

 

 

 

 別にこれしか選択肢がないわけでもない。

 

 これまで通りレキと暮らしても何も変わらないかもしれない。

 

 この話は杞憂に終わるかもしれない。

 

 ………………だから、わざわざ自分から危険な賭けに乗らなくてもいいんだ。

 

 

 

 

  帰国ギリギリまで考えていた。この判断は正しいか間違っているのか。

 

 しかし、2週間後に俺はこの返事を受けることになる。

 

 力が欲しいから。

 

 ジャンヌからあるメッセージが届いたことによって決断する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『理子がブラドと接触するかもしれない』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




久しぶりに5000文字切ったかも

次も更新されたらよろしくお願いします。疑問点、不可解な点あればご指摘ください。丸っと訂正するかも………

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