私生活が忙しかったのと、なかなか文章を書けずに、書いては消して、書いては消しての繰り返しでかなり時間がかかりました。
色々とガバガバですが、どうかご勘弁を………
唐突だが、俺は今まで生きてきた中で――死というモノを感じたことは一切なかった。
中学までイジメとかはあったが、さすがにアレは自殺するほどのモノではなかった。
そして、俺は武偵高に入学した。
武偵になっての初めての事件。お台場で立て籠りがあった時、初めて人に向けて銃を撃った。…………スゴい怖かった。が、あそこで俺が死ぬとはこれっぽっちも思っていなかった。
蘭豹と模擬戦をした日。あれはもうマジでメチャクチャ痛かったが、あれくらいでは死なない。蘭豹もかーなーり、手加減してくれてたし。
夏休み前、小町が傷つけられたと思って理性が外れたあの事件。あの時は遠山曰くけっこう危なかったらしいが、まぁ別にレキもいたから大丈夫だっただろう。いや、他人任せか。
留美と一緒に解決した事件でも、あれくらいは俺1人でも何とかなったと思う。もちろん、留美がいたことでかなり動きやすかったのは事実だ。あいつ今何してるかねぇ……。また連絡するか。
イ・ウーに連れ去られた時も、あれは理子が無理矢理拐ったお陰か、シャーロックも命は保証すると言ってくれた。だから、死にはしないだろうとか適当に考えていた。
春休みの事件。あの結末が良かったのかはさておき、あの程度では俺は死なない。何せ、あいつら銃の扱いはド素人だったからな。
――――だが、
俺は今現在、あまりにも身近に――死を感じている。
武偵として本来は想像してはいけないことだが、無理矢理にでも想像させられるほどの圧力。ブラドからそれが恐ろしいくらい伝わってくる。
汗が溢れる。
鳥肌がたつ。
息が荒くなる。
今まで全く感じたことのない、普通に生きてたら感じることのない、圧倒的な……純粋な恐怖。
怖い。恐い。嫌だ。できるならここから逃げ出したい。
それでも、ここにいる以上言い訳はできないし、してはならない。
俺が殺らなきゃいけないから。
………初めての俺の友の、俺への依頼だから。俺ができる最善を選択するために神経を尖らせ、集中する。
幸いにも、ブラドの動きは読みやすい部類に入ると思う。防御は魔臓に任せて、戦ってきたからだろう。予備動作は分かりやすい。加えて体術はぶっちゃけ間宮にも劣る。
しかし、それを余裕で補えるくらいパワーとスピードがブラドにはある。単純なスピードなら蘭豹よりも速い。多分パワーも上だろう。
それだけならマシだが、魔臓の無限回復もある。チートクラスだな。纏めると、
――――正真正銘の化け物。
ってことだ。
遠山たちと合流した時の1回目の攻撃は閃光弾のお陰で鈍ってたからかギリギリ反応できた。でも、2回目はできなかった。あまりにも速かった。攻撃が当たった瞬間に飛んでも威力と勢いは殺しきれなかった。
反応が遅れたら、一瞬でも気が抜けたら、俺は…………。
この考えは止めよう。とりあえず、状況の再確認。
ここは屋上だ。けっこう広い。普通にしてたら落ちないだろうが、さっき俺は殴られて落ちた。
で、これから起こりうる最悪の状況は俺がすぐに殺されること。
そうなったら、いざという時、理子が逃げる時間が無くなる。せめてそれは避けたい。
俺の希望は遠山と神崎がここに戻ってくることだが……こういう期待は動きを鈍らせる。だから、もうそんな甘いことは考えない。
「……あ」
そういや、思いっきりジャンヌの忠告を無視してるな、俺。………悪い。
「なぁガキ、お前は楽しませてくれるのか?」
復活したブラドはつまらなさそうに欠伸をしながら俺を見下してくる。
「………知るか」
「そうかい。ま、期待はしてないがな。まずは俺から行くぜ」
そう言い終えると、ブラドの重心が前に傾いているのが分かる。
これは……突っ込んで来るな。
どう動くか予測してその場で踏み切り、できるだけ前に高く跳躍する。風のクッション――飛翔も使ってさらにもっと跳ぶ。
同時にブラドの太い拳が地面に突き刺さる。ブラドは俺ごと潰すように地面を殴ったみたいだ。
ブラドの右腕に着地すると、そのまま斜めの状態の腕の上を駆ける。肩まで登り腰の後ろからナイフを取り出し、ブラドの右目を思いっきり刺す。
…………どうだ?
常に刺している状態だと回復できないだろ。片目の視力だけでも奪うぞ。
「……うっ!」
そう思っていたら、刺した状態の俺を簡単につまみ上げ、思いっきり投げられた。
「がっ……!」
運が良いのか悪いのか、ぶん投げられた俺は屋上の入り口の壁に激突する。
烈風を使って勢いを軽減した上での受け身はできた。けど、当然のように全部を軽減はできずにダメージは残る。
俺は倒れそうな体を持ち上げ、壁に寄りかかりながら立っている。
壁とぶつかった背中が痛い。受け身した時の両手も痛い。手足が痺れる。イ・ウーから貰った衝撃吸収の性能が高いコートでこのダメージか。
「………」
加えて口の中から血の味がする。吐き出そ。
ん? さっき刺したナイフが手もとにない。えっ……ちょっ…………どこだ?
「おい、マジか」
見渡したら、ブラドがナイフを目から抜き、ポキッと指2本で折っていた。赤い煙をたてて目は一瞬で修復される。
………何だよ、そのバカみたいな力。
「チッ」
これで武器が1つ無くなったか。
次は何を試すべきなのか考える。
これは当然として警戒しているように口を堅くガードしている。そう簡単には当たらないな。
とりあえずファイブセブンを右手に持ち、セミオートに設定する。
独りでどれだけ魔臓に弾撃てるか………。
――――さぁ、実験を始めよか。
いや、理系科目ダメダメですけどね?アホの武偵高で平均がやっとのレベルですから。理系さえなかったら星伽さんに勝てるのに。現実は厳しい。
………その話は置いておき、ここで疑問が浮かぶ。ブラドの奴、俺がフラフラなのにすぐに追撃してこない。
何故だと思い、考えてみた。かなりあやふやだが、1つ案が浮かんだ。
ブラドの奴、多分だが単純にさっき刺した目の傷は一瞬で回復しても、視力はすぐに戻らなかった……みたいな感じだろう。
やはりそこは無限回復を持つ化け物でも人間と変わらないか。何にせよ助かった。
そうと決まったらジッとはしてられない。俺だって万全じゃないが、こっちから仕掛けないと。
――――パァン! パァン! パァン! パァン!
すぐに魔臓がある4ヵ所を狙って撃つ。………けどまぁ、無理だわな。これで殺せたら苦労しねーわ。
右わき腹→右肩→左肩→口の順番で撃ったが、左肩を撃った時点でもう右わき腹は赤い煙をたてて回復してた。
撃ってから2秒も経ってないんだけど。で、口というより舌はきっちり腕で守られた。………魔臓の回復力は伊達じゃないな。
マジでサモンライド並のクソゲーだな。シャーロックはどうやって抑えてたんだよ。
とりあえずは口を狙える機会をどうにかして作らないと。
だが、その方法は?舌の魔臓さえ残しておけば、いくら他の3つがやられても回復できるからそこは堅くガードを張っている。
閃光弾はない。あれ意外に高いんだよ。手榴弾は1つ残っている。
「………っと」
そうこうしている内に、ブラドがまた突撃してくる。それに対し、俺は銃で積極的に目を撃って牽制する。一応距離はそれなりに取っている。
あれ、案外目は当たる。それなら都合がいい。
牽制を続けながら考える。
シャーロックはイ・ウーにいる奴らの能力全てを使える。だったらそれを使ってブラドを抑えてたはず。……どれを使ってだ?
と言うが、俺はそこまでイ・ウーの面子を知っているわけではない。俺が使える能力はセーラから教わった風だけだが、どう考えても風じゃ無理がある。俺はそもそも補助的役割で使っているわけだし。
もしくはシャーロック自身の技術で抑えたとも考えられる。いくらでも案は出る。答えが分からない以上もうこの考えは打ち切ろう。
距離が開けたところで、またブラドがこっちに向かって突進してくる。
応戦しないと。また目を撃つか。……って、あれ? 引き金が引けない?
「………あ、ヤバ」
無駄に悶々と考えていたせいで、弾切れに気付くのが遅れた。
時既に遅し。
――――バキッ!!
と、何かが砕けた音がする。
「うっ……!」
弾切れのせいで反応が遅れた俺を見逃すわけがなく、ブラドの裏拳を腹にモロに喰らう。蘭豹に投げられた時より遥かに吹っ飛ぶ。人間ってこんなに浮くものか。
――――って、ヤバいヤバい! 落ちる!!
「くっそ! ……烈風!」
烈風を最大限使ってビルから落ちないように転がりながら体勢を整える。転げた先、ビルの淵にぶつかって止まる。
「いって!」
殴られた時のあまりの痛みに腹を抑える。口内の出血も激しい。
このわりかし高性能のコートでも衝撃をまたもや吸収しきれなかったか。
この痛み……もしかして肋骨にヒビ入ってるかも。
ヤベーな。ここまでダメージを喰らったのは初めてだ。普段からこれほどの痛みには慣れてないから、スゲーキツい。
あー……もういいや。ここは仕方ない。強襲科で使ったら先生や生徒に笑われるが、そんなの言ってる場合じゃない。死ぬ選択肢はナシだ。鎮痛剤を使う。
そのための隙を………これだな。
ブラドがこっちを向いた瞬間に残り1つの手榴弾を投げる。
ドゴォォン!!! と、何とか上手く投げれて、今度はブラドの顔手前で爆発する。
煙で見えないうちに鎮痛剤のラッツォを心臓近くに思いきって刺す。
――ドクンッ! ドクンッ!
「ハァ……ハァ………」
すると、経験したことのない刺激が体中に走る。そういや、これって興奮剤でもあったな。確かにそんな感じはする。
お陰で、多少なりと痛みは和らいだ。ま、骨は多分ヒビ入ってるままですけどね。でも、これでまだ動ける。この流れでリロードも済ませよう。
口内、両腕、体からの出血は激しいが、それはどうしようもない。我慢するしかない。
追撃が来なかったことに安堵しながら、リロードを終えて、また距離を取る。
助かったが、さっきは視力が完全に回復していなかったからっぽいが、今回は何故追撃をしてこないのか疑問に思い、ブラドを見ると、
「…………うっわぁ」
馬鹿にするようにニヤニヤと笑っている。めっちゃ嘗められてるな。
「どうしたぁ? カッコつけて息巻いてたクセにこの程度か?」
と、言っている間にも1発口に向けて撃つが、腕でガードされた。
「おいコラ、いちいち俺を見下すな」
ゆっくり、ゆっくりブラドに近づくように歩く。
「それは無理な話だな」
「だったら………お前を見下してやるよ」
「ハハッ。それこそ無理だろ」
「どうだか。さっきは理子たちにボコボコにされたのにか?」
嘲笑する俺。
恐らく触れられたくない部分を煽った瞬間、
「………あ゛?」
「―――ッ!」
ブラドの表情が怒りに変わる。とてつもないプレッシャーが押し寄せてくる。
が、狙い通り怒らせた。
同時にブラドと接近していた俺は真上にファイブセブンを投げる。
急な出来事だったからか、それに釣られてブラドの視線は俺から逸れる。
そして、完全に気配を――殺気を消す。
一気に距離をゼロに縮め、
「羅刹」
烈風で勢いを乗せ、人体で言うと心臓のある中央、中心にかけて掌底放つ。
本来この技は人間に使うと、震動によって、心臓震盪という致死的不整脈を意図的に起こす技だ。つまり、心臓を無理矢理停止させる。
「チッ」
しかし、不発だ。
ブラドの野郎、すぐに動きやがった。とりあえず落ちてきたファイブセブンをキャッチして股の下を潜ってブラドから離れる。
やはり人間とは体の構造が違うか。一瞬だけは動きが止まったっぽかったけど………上手くはいかない。
「………あ?」
何だ、あれ?ブラドが空気を吸って仰け反ってる。肺が膨らんでるのか?
これ……もしかして!
咄嗟にファイブセブンをホルスターに戻し、耳を塞ぐ。
またあのここに入る前に体感したあの咆哮が鳴り響くかと思えば、そうはならずに俺は――――
倒れていた。
「………は?」
ブラドが遥か遠くに見える。
………………何が、起こった?
これは後で知ったことだが、ブラドは咆哮をした振りをして俺が耳を塞いだ隙にぶん殴ったらしい。
その時の俺は、右足が折れていて、全身から血が溢れ流れていたそうだ。
しかし、これほどの怪我を負っていても、意識は別の所にあった。
――――まだ、不思議と少しは動ける。
アドレナリンが放出されているのか、そこまで痛みは感じない。ラッツォのお陰もあるかもしれないな。
「っと……」
ギリギリ手は動く。とはいえ、足は折れてるから立てないわけだが俺の倒れている場所はまたあの扉の壁のとこ。そこに寄りかかる。
「ハッ! あんだけ大口叩いて……無様だな」
血まみれで、ボロボロな俺を見て、そう告げるブラド。もう既に勝ちを確信したような喋り口調。
ブラドにバレないよう背中で隠しながらマガジンを入れ換える。
「遠山のガキもそうだがお前もバカだよな。4世の為に命懸けるなんてよ」
「4世と呼ぶなと言ったぞ。それに、俺とお前では理子の命の価値は違う」
間髪入れずに答える。
「あいつなんか優秀なリュパンの血を継げなかった失敗作。そこに価値なんてないぞ」
そうだ、もっと話せ。油断してくれ。
「血で全て決まったら、世の中の奴ら何もできないだろ」
もう少しで終わる。
「そりゃそうさ。あんな雑魚共生きてるだけ無駄さ」
………よし、交換できた。
「本当にそうか? あのシャーロックだって、別に親や親族の血が特別優秀だったわけでもないのにな。シャーロックに勝てない、理子たちにも勝てない……負け犬よ」
そう言い切った瞬間、ブラドが口を開く。怒声を浴びせようとしたのだろう。
――――パァン!!! パァン!!!
それに合わせ、舌に描いてある魔臓の紋様をある弾で撃つ。
その弾が魔臓を抉ったと同時に、
――――パン!!
と、銃声に似ているくぐもった音がする。その音が数回鳴り響く。すると、舌にある魔臓が、跡形もなく吹っ飛ぶ。
受けた傷の回復は……まだしていない。
「な、何が、何が起こった!!?!?!か、回復しねぇ!!!」
ブラドは慌てている。これはまるで、断末魔。つーか、舌ないのに器用に喋るな。
俺は残りの魔臓に数発ずつ撃つ。マガジンにある弾は使いきった。
またくぐもった音がし、ブラドの動きは停止する。
…………どうやら成功、か。明らかに魔臓の回復が遅れていた。
俺が使った弾はある特撮で出てきた『神経断裂弾』という代物。それをちょーっと強力にしたモノを材木座と平賀さんが再現した。材木座曰く、神経断裂弾+武偵弾の炸裂弾を合わせたみたいな弾。
これは標的に命中すると体内に留まり、装填された火薬が連鎖的に炸裂し、神経組織を破壊する。
魔臓と言えども『臓』の漢字があるからには他の組織へと繋ぐ神経がある。そこに何かしらのロジックで体を治しているのだろう。
つまり、回復するには必ず遅れが生じる。実際見て感じたが、銃弾程度の小さな穴なら、傷と神経が繋がっているからすぐに治る。でも、回復するための神経さえ破壊すれば、その根元を絶ちきれば、その遅れは大きくなる。
………というのが、俺の仮説だ。
無限回復を持つ魔臓も万能ではない。加えて、ブラドは人間の技術を、進化を侮った。
何でもない。ただ、それだけの話。
もし、最初にこれを舌以外の場所に撃っていたとしても、途中で気づかれて口をガードされたら、確実に詰んでいた。最後の切り札を浪費するだけだった。
そして、ドスンッッ!! と、とうとうブラドの巨体は膝をつき倒れる。
それでも、まだ死んでない。魔臓を撃ち抜かれて弱体化し、吸血鬼としての弱点諸々が復活した。
………今なら殺せる。
地に伏せ、俺を見上げながらブラドは喚く。
「俺が、俺の魔臓が!何故、こんなガキに!お前は何なんだ!?」
「ただの………人間だ」
満身創痍の俺は、それだけ答える。
止めを指すために通常弾に入れ換える。壁に寄りかかりながら左足を軸に立ち上がり、頭を狙い、撃つ。
――――パァン!!
「…………」
今まで何回も聞いてきたその銃声が、やけに鮮明に聞こえた。
その後、数発撃ち込む。ブラドは…………死んだのか?分からん。
「うおっ………」
あー、ヤベぇ。足下ふらつく。頭クラクラする。ダメだ、血流しすぎた。
ここからどうするか。これっぽっちも考えてねぇ。スマホは電源切れてるし、身動き取れない。そもそもブラドの攻撃の衝撃で潰れた。これだと助け呼べないじゃん。
まぁ、相討ちなら、損はしてないよな。誰かー、俺に気付いてくれー。
どうするか悩んでいる突如、
――――バギッ!
………まるで何かが、砕けるような異質な音がする。今の音、何だ?
その発生源に目を向けると、
「パ、パトラの奴……俺が死ぬ時に、こんな呪いを残してるとは…………糞がッ!!」
ブラドがその場で苦しみ、もがいている。
って、まだ生きてたのかよ。タフすぎるわ。頭に銃弾数発ぶち込んだのに。
……それより、パトラだと?
確かその名前は、イ・ウーのNo.2だったような。あの如何にもエジプトって感じの格好をしていた女。今、ブラドと何の関係がある?呪いって何だ?
考えている間にもその異質な音は続く。
「あの女! ふざけんな!! ア゛ア゛アア゛ア゛アア゛アアアァァァ……!!!」
ブラドは散々喚き散らしていたが、叫び終えると、今度こそ動かなくなる。
「何だよ、これ………」
が、俺が驚いたのはそこではない。
動かなくなったと思ったら……まるで操り人形みたいに、生気はなく、腕は下がっていて、その場に立ち上がる。
何も言わない。もしかして、パトラが操っていたりするのだろうか?どうなっている?
クッソが! 逃げたいのに、こっちはもう動く気力ないんだけど。俺の人生ちょーっとハードモードじゃない?バランス狂ってるよ?
ちょ、こっち来る。来んなよ。お願いマジで来ないで。
「――ハチハチ!!」
ただただ突進してきたブラドに為すすべなく殺られると思ったが、誰かが助けてくれた。
…………その誰かとは、
「ハァ……助かった。おい、理子、お前どうしてここに?」
いつもの武偵高ロリータ服の理子が血相変えて戻ってきていた。
「説明は後! ………ねぇ、あれってブラドなの?」
察しがいいことで。
「ブラドを殺そうとしたら、急に苦しみだして、パトラの呪いがどうとか言ってた。で、今は人形みたいな感じ」
「パトラか! ……とりあえず一旦退くよ」
突進して、少し倒れていたブラドはユラユラと揺れながら俺たちを見る。標的に定めているのか。
「ハチハチ、まだ超能力は使える?」
「全開で1秒は」
「飛び降りるから指示したら使って」
「分かっ……――危ない!」
「ちょ!」
理子を思いきり押す。
理子に肩を貸してもらっていたら、ブラドは……いや、パトラか?パトラは理子に狙いを変えていた。ついでに俺も纏めて始末するように。
俺を助けることに気を取られていたから理子は気付くのが遅れた。これでは2人とも攻撃を喰らうと思った。
だから、理子は助かってほしいという俺のエゴ。
そして、攻撃をマトモに喰らった俺は――空高く、舞い上がっていた。
「理子、逃げろ!!」
叫ぶ。
俺みたいな足手まといがいては理子が死んでしまう。
次に着地。
――五接地転回法。
地面に転がりながらすねの外側、尻、背中、肩の順に着地する高所からの受け身に向いている技術。1年の頃から訓練させられてきた。
「ガッ!」
しかし、最後でミスった。肩の着地地点がズレた。
完全には受け身できなかった。しかも、最後の烈風まで使っての受け身で、超能力はもう使えない。
そもそも、これでとうとう体も動かない。アドレナリンも切れてきた。……今まで蓄積されたダメージが体を襲う。
「アアッ………!!」
あまりの痛みに悶え苦しむ。
ブラド(パトラ)は俺の方に来るが、理子がいつの間にか俺から盗っていたファイブセブンでブラドを攻撃しているが、そのせいでブラドはターゲットを理子に変更している。
「こっちだ!」
引き付けようとしてくれてる理子の声が聞こえる。
止めろ。理子、バカか……早く逃げろ。頼むから逃げてくれよ。このままじゃ、お前が死ぬぞ。………俺はいいから!
俺はどうせ死ぬから………。
――――その時、
『あなたが死ぬ時は、私があなたを殺す時です』
『だから、その時まで一緒にいてくださいね?』
いつの日か、レキに言われた言葉を思い出す。
………レキ。ゴメン、本当にゴメン。その約束、守れそうにない。
せめて、もう1回、話したかった。
――――ヤバい……意識、が………………。
「八幡!!!」
理子の声も届かない。
そして――――俺は意識を失った。
感想、高評価お願いします
貰えると、かなりやる気出ます、はい。