八幡の武偵生活   作:NowHunt

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やべぇよ
滅茶苦茶早く投稿できたよ……




その後にて

 俺がお世話になっている病室に戻る。

 

 この間、俺とレキは無言を貫いている。正直気まずいです。

 

 感情が少しは表に出るようになってきたとはいえ、未だに何を考えているのか分からないのがレキだ。

 

「八幡さん」

 

 俺がベッドに、レキが備え付けの椅子に座ったと同時に、レキは口を開く。

 

「どうした?」

 

「もうすぐで星伽さんがこちらに来ます」

 

「星伽さんが? どうして?」

 

 いきなり意外な人の名前。

 

「後程説明します」

 

 ……そうかい。

 

「そういや、レキ。お前どこで見ていた?」

 

 何を、とは言わない。

 

「1kmほど離れていたビルからです」

 

「マジか………。ヘリ呼んでくれてありがと。つか、手は出さなかったのな」

 

「はい。これは八幡さんの依頼でしたので、私の出番はないかと」

 

「俺死にかけたんだけど?」

 

「八幡さんは死なないから大丈夫です」

 

 ………いや、何だそれ。人は死ぬ。必ず死ぬよ?

 

「てことは、俺が気を失った後のことを知っているのか? ブラドとかどうなった?」

 

「結論から言いますと、ブラドは死にました」

 

「……そうか」

 

「ブラドを殺したのは八幡さんに乗り移った風です。私にはそれが分かりました」

 

 ……………まぁ、薄々そんな感じはしてたから特別驚きはしない。

 

 あれが璃璃神って、前々から璃璃と繋がっていたレキだから分かったのか。

 

「そして、八幡さんが搬送された後、政府の人たちがブラドを確認しにきました。その時のブラドは関節があらゆる方向に曲がっており、ぐしゃぐしゃになっていました」

 

 ぐしゃぐしゃって…………他に言い方はないのかよ。

 

「調べた結果、ブラドの生命活動は停止していました」

 

「よくそこまで知っているな」

 

「私にも色々と繋がりを持っていますので」

 

 そりゃそうか。俺と知り合う前からずっとそういう世界で生きてきたからな。

 

 …………あ。

 

「俺が璃璃に乗っ取られたから星伽さんを呼んだってこと?」

 

「はい。今回のことについて相談しようかと。八幡さんに起こったことや私自身についても事前に話しておきました」

 

 なるほど。ご苦労様です。

 

「そういえば、八幡さんの分の手続きは私がやっておきました」

 

「手続き?」

 

「政府の方々から今回のことを内密にするようにとのことです」

 

「それは分かったけど、なぜにお前が?」

 

「分かりません。政府の方々は私なら問題ないかと言っていましたが」

 

 えぇー………。レキが信用されてるってことでファイナルアンサー?

 

「口止め料としてそこそこの金額を頂きましたがどうしますか?」

 

 そんな金いらんわ。

 

「適当に募金でもしといてくれ」

 

「はい」

 

 そうこう話している内に、コンコン。と、控え目なノックが聞こえた。

 

 お、もう来たのか。

 

「どうぞ」

 

「比企谷さん、こんにちは。調子はどうですか?」

 

「特に問題なしです」

 

 制服姿の星伽さんが入ってきた。そのままレキとは別の椅子に座る。

 

「それで、レキから聞いているんだっけ?」

 

「うん。……それにしても、レキさんから聞いたけど、驚いたよ。まさか比企谷さんがあのイ・ウーにいたり、璃璃色金を持っているだなんて」

 

「全部成り行きだけどな」

 

 ていうか、星伽さんはイ・ウーについて知っていたんだな。あまり驚きの表情は見えない。いや、緋色の研究に星伽の名前があったから何となくは予想してたけど。

 

 俺は目でチラッとレキを見る。それを察したらしく、レキが動く。

 

「星伽さん、どうぞ」

 

「これが璃璃色金………」

 

 レキが手渡した璃璃のネックレスを星伽さんはじっくりと観察している。

 

「でも、どうして乗っ取られたの? 星伽の文献には璃璃色金は基本争いを好まない性格って書いてあったよ」

 

 璃璃色金を持ったまま星伽さんが疑問を投げかける。そりゃそう思うよな。

 

 そこで、俺はぼんやりと思い出してきた璃璃との会話の内容を星伽さんに話す。

 

 俺の話を聞き終えると、しばらく腕を組み考えている。レキも静かにしている。元々こいつは静かな方だな。

 

「醜い、かぁ。私では璃璃色金の考えることは分からないね。璃巫女のレキさんはどう考えている?」

 

 少し間が空き、

 

「風は無を好みます。恐らくですが、ブラドは八幡さんによって1度倒されました。その直後に何者かによって復活しました。誰かの操り人形みたいに。その状態のブラドが醜いと思ったのかと」

 

 お前………めっちゃ喋るな。

 

「なるほど。あ、比企谷さんは緋緋色金のことはどのくらい……」 

 

「まー……ある程度は」  

 

「なら、知っていると思うけど、緋緋色金は争いを好むから危険視されているの。でも、璃璃色金はそうじゃない。だから、今は放っておいても問題はないかな」

 

「言われてみれば確かに……」

 

 緋緋色金は争いが絶えない世界にしようとするんだっけか?

 

「最悪、そのネックレスを身に付けないようにすれば、乗っ取りに関してはどうにかなると思うの」

 

 ぶっちゃけそうだよな。

 

「ねぇ、比企谷さんは璃璃色金を使ってどうしたいの?」

 

「どう、とは?」

 

 急な問いかけに思わず言葉が詰まる。

 

「乗っ取られた問題を解決しようと思えば、さっき言った通りできると思う。100%とは言えないけれど。だからこそ、この先は比企谷さん自身が決めないといけないの」

 

 俺自身が……か。

 

「俺は……超々能力者(ハイパーステルス)になりたい」

 

 現状、俺は弱い。俺には足りない物が多すぎる。力が手に入るなら、力が欲しい。その意思はモンゴルで璃璃色金を受け取った時から変わっていない。

 

 レキの力になりたい。

 

「だったら、常に持ってたほうがいいかな。本来、超々能力者になるには長い時間が必要になるの」

 

「あぁ……そうだったな」

 

 そんなこと緋色の研究に書いてた。確か、性格も合わないとなれないはず。緋緋神はまんま神崎みたいな性格で、璃璃神はレキみたいな感じ。

 

 ………あれ? よくよく考えてみたら、俺、なれるのか? 

 

「なぁ、星伽さん。超々能力者になるには、その色金と性格が合わないといけない……みたいな話だったはずが、俺、多分璃璃神と相性最悪だと思うんだが、本当になれるのか?」

 

 醜い醜いとか言われたわけだし。

 

「うーん……普通はそうなんだけど、比企谷さんは例外かな?」

 

「例外って?」

 

「ほら、理由は分からないけど、もう比企谷さんは色金の力を使っているから………。しかも異常な早さで」

 

「そんなに早いのか?」

 

「緋緋色金の場合、色金が体に馴染むまで4年はかかるらしいですよ。私は生まれた時からずっと風といましたから今でも繋がることはできます」

 

 と、レキが補足する。

 

「マジでか」

 

 うへー……そんなにかかるのか。レキの話はウルスから聞いていたけど、かなりの時間が必要なんだ。

 

 ………うん?

 

「ゴメン、急にだけどさ、俺の体がほとんど治ってたのって璃璃神が治したのか?」

 

 ずっと気になってた。

 

「多分そうじゃないかな? 超能力には治癒能力もあるんだ。もちろん、私も使えるよ」 

 

「ほー」

 

 戸塚の話を踏まえると、体の傷を治したはいいけど、怪我した分の血は元に戻らなかったっていう解釈でいいのか。

 

「これでアリアのおでこの傷も治したからね!」

 

 そう言って胸を張る星伽さん……エロいです。あ、ごめんなさいレキさんそんなに睨まないでください死んでしまいます。でもね、仕方ないよね? だって男の性だもん。

 

「これで比企谷さんの璃璃色金に対する方針は決まったね」

 

「色々とありがとう」

 

「気にしないで。………あ、1つ質問に答えてもらっていい?」

 

「お、おう」

 

 唐突だな。

 

「比企谷さんとレキさんはアリアの体の中のこと知っているの?」

 

「貧乳」

 

「八幡さん?」

 

「ごめんなさい」

 

 冗談はダメですか。

 

「貧乳は価値です。ステータスです」

 

 レキ、お前何言ってるの?

 

「あれだろ? 体の中に緋緋色金があるんだろ?」

 

 む、星伽さんの表情が暗くなる。

 

「やっぱり知っているんだ。それに関して、比企谷さんたちは何かアリアにするつもり?」

 

「緋緋神が出てくるのを阻止ってところだよな?」

 

「はい。星伽さんもですか?」

 

「私も似たような感じ。それでね、アリアの緋緋色金は色金の力を抑えるためのカバーみたいなのがあるの」

 

 それは初めて知った。

 

「それがある限りは緋緋神はアリアを完璧に乗っ取ることはできない。それにまだアリアの緋緋色金は覚醒してない。だから、しばらくは手は出さないでほしい……んだけど」

 

 恐る恐る頼む星伽さん。家のこととかあるんだろうか?

 

「まぁ、緋緋神が現れないならそれでいいし」

 

「分かりました。星伽さんの意見を尊重します」

 

「良かったぁ……」

 

 星伽さんが安堵していると、足音が複数聞こえる。徐々に音は大きくなっている。俺の周りの病室は現在誰も入院していない。てことは、ここに来るのか?

 

「とりあえず話は一旦ここで終わりだね」

 

「そうだな」

 

「また何かあれば連絡します」

 

 星伽さん、俺、レキとそれぞれ言ったと同時に、

 

「比企谷……起きたのか!!」

 

「八幡!」

 

 うるさっ。

 

 ガラガラ! と勢いよくドアを開けて入ってきたのは遠山と神崎。おい、せめてノックしろやコラ。

 

「よう。遠山、それに神崎も。元気か?」

 

「私たちは元気よ。八幡……ホントごめんなさい! まさかあの後ああなるなんて」

 

「比企谷、本当にすまない」

 

 珍しく神崎も頭を下げている。

 

「気にすんな。あれはさすがに俺も予想してなかった」

 

 この言葉に嘘はない。気まぐれで戻ったら、なんかああなってたもん。

 

「あ、遠山。明日でいいから充電器とか持ってきて」

 

「それはいいけど、いつ頃退院なんだ?」

 

「4日後」

 

「ふーん。けっこうするのね。案外平気そうに見えるわ」

 

 と、神崎。あ、デコの傷ないじゃん。良かったね。

 

「俺はお前みたいな元気の塊ではないからな」

 

「何よそれ。褒めてるの?」

 

「さぁ?」

 

「あ、そうそう、理子とあたしが借りた銃、ちゃんと返したわよ」

 

「分かった」

 

 これで延滞料金取られる心配はなくなった。

 

「って、あれ? 白雪来てたんだ」

 

「は、はい。私のクラスは早く終わったから」

 

「俺は掃除があったんだよ」

 

「あたしは色々と手続きが……あぁまだ残ってるし面倒だわ」

 

 と、なんかわちゃわちゃ騒がしくなってきたところに、

 

 

 

 

「やっほー、お兄ちゃーん! 元気ー?」

 

 さらに騒がしくなりそうな妹までやってきた。思わず頭を抱える。

 

「小町……お前何しに来た?」

 

 半ば呆れながら質問する。

 

「そりゃもちろんお見舞いですよ」

 

「ちょっと言い方変えるわ。どうやって来た? ここ危ないぞ?」

 

 銃弾がポンポン飛んでくる危険地帯だぞ? だから本州から隔離されているんだぞ? 一般人がポケーッとのんびり歩いたら命なくなるからな。文化祭の時は色んな人が来るから比較的マシだが。

 

「えーっとね、それは――――」

 

「ハチハチ、私が連れてきたんだよ!!」

 

 颯爽登場峰理子。

 

「お前かい」

 

 元気そうで何より。

 

「お台場に用事があったから出掛けてたら、小町ちゃんに道聞かれてね。そしたら、ハチハチの見舞いに行くではありませんか!」

 

「武偵高の制服着ていたから訪ねたの。で、案内してもらったのです!」

 

 小町と理子……初めてあったとは思えないくらい仲良いね。

 

「小町さん、こんにちは」

 

「レキさん! 直接会うのは久しぶりですね! っと、遠山さんも久しぶりです!!」

 

「………比企谷妹、相変わらず元気そうだな」

 

 そういや、遠山と小町が会ったのって1年の文化祭が最後だったよな。

 

 その時は俺がどこにいるか聞いたらしいが、小町お前、遠山にそのテンションで話しかけたのか……。

 

「その子、あんたの妹さん?」

 

「おう」

 

 すると、神崎は自己紹介を始める。

 

「あたしは神崎アリア。よろしくね」

 

 続いて星伽さんも。

 

「私は星伽白雪です」

 

「ふぉ――!! めっちゃ美人さん! ……失礼、比企谷小町と言います。お好きに呼んでくださいな」

 

 自己紹介を終えると、小町はこっちに近づき、

 

「お兄ちゃん、この人たちと本当に知り合いなの? レベル高すぎない?」

 

「同級生だ」

 

 いくら美人だろうと武偵は、俺含め基本的に性格に難ありだ。過度な期待はしないでくれ。

 

「というより、お兄ちゃん何やらかしたの?」

 

「ある依頼でちょっと無理しただけ」

 

「うへー……。武偵って大変だね」

 

「その通りすぎて泣ける」

 

「そうそう、入院費や治療費はお母さんたちが出すって言ってたよ」

 

「あ、マジで? それはありがたい」

 

「まー、お兄ちゃんがいくら武偵でもまだ未成年だもん。そのくらいは当然だー……とのこと」

 

 何だかんだでいい親だ。たまには顔見せに帰るか。

 

「お兄ちゃんは安静にしといてね。その間に私はお兄ちゃんの恥ずかしエピソードを皆に話しとくから」

 

 何だその不穏なワード。

 

「ハチハチの? スゴい面白そう」

 

 おい理子よ。

 

「小町さん、私も興味あります。教えてください」

 

 レキ……お前まで。

 

「あ、なら俺も」

 

「あたしも!」

 

「せっかくですし、私も」

 

 

「よしっ! 外出て話そっか。ハチハチはきちんと寝ておくんだよ」

 

「では八幡さん。さようなら」

 

「じゃあねー、お兄ちゃん。また来るよー」

 

「充電器は明日持ってくるから」

 

「ま、またね、比企谷さん」

 

「さっさと復帰して私にボコられなさいよ! その前に話を楽しんでくるわ」

 

 ……………それでは皆さんご一緒に。

 

「お前ら待てコラアアアァァァ!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 この時はスマホの充電はなく気付かなかったが、理子からメールで一言『ありがとう』と、送られていた。

 

 

       

 

 

 

 

 

 


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