まぁ……そのー…………確かに否定はできません。
こんな銃を当たり前に使う日常を一年も経験すれば、さすがに価値観も変わるから仕方ないことかなー……と自分は考えています。
自分だって頑張って寄せたいのですが、渡航先生に比べると、自分の語彙力は貧相すぎて難しいのです……。
これからも精進いたします。
ついにやってきた七夕当日。遠山と神崎はまだ仲直りできてない模様。休み時間にクラス覗いても、かなり距離を取ってて、しかも2人は話したいことを考えると、ちょっと笑える。
で、俺はお台場のあるホテルの一室に呼び出された。
目の前にいる人物は遠山金一。カナではなく、遠山の兄の方……自分で何言ってるか分からんが、この人と話すのは実際初めてだ。
連絡先を知っている理子に頼んで、話したいとお願いしてみた。あれから1週間近く経ったが。
完全武装でここにいる。もしもの時は逃げれるように。
「それで、本題に入ろうか」
「はい。……ええっと、何てお呼びすれば?」
「金一で構わん」
「では、金一さんで」
ここで遠山からアドバイスを貰っている。金一さんの状態でカナと呼んではいけない。万が一呼んでしまったら、弾が飛んでくるわ、ぶん殴られるわと、酷い目に合うとのお達しだ。
どうやら、カナの時は金一さんの記憶はないが、金一さんはカナの時の記憶があるらしく、とても恥ずかしいらしい。これは遠山のHSSでも当てはまるな。
「それでは……何故、このタイミングで神崎を狙ったのですか? 確かに緋緋神になるのは危険ですが、星伽さんは神崎の色金にはカバーみたいなのがあるから完全に乗っ取られないだろう、と言っていました」
「そうくると思っていたよ」
金一さんはまず始めに、と前置きをし、
「君の言ったそのカバーとやらは
「カラガネ……?」
馴染みのない言葉だ。
「なるほど。ではそこから話すとしようか。八幡は緋色の研究を読んだのだろう?」
「まぁ……読みました。けど、よく分からない単語とかもありましたね」
星伽さんみたいな専門家じゃねーしな。俺なりに解釈はしたが、理解できなかった部分の方が多い。
「色金と人は、繋がることができるのは知っているよな?」
「はい」
「その繋がりには2種類あってな。『法結び』――所謂、超能力の力を供給する繋がり。もう1つは『
「そんなに、ですか?」
「あぁ。史上希にみるくらいだ。話を戻す。特に『心結び』。つまり、色金が人の心と繋がりすぎると、人は心が色金と混ざり、しまいには取り憑かれる……乗っ取られてしまう」
この話に当てはまると……俺はどうなる? 俺の心と璃璃神はあの時、繋がったのか?
「大昔に色金関連で緋緋神が発生するという事件が起きた。そして、その事件を反省するように殻金ができた」
それは知らなかった。過去に緋緋神が現れたのは知っていたが、その経緯で殻金が造られたのか。
「殻金の効果を簡単に言えば『法結び』だけを結ばせ、『心結び』絶縁することができる代物だ」
おお、スゴいな。そんな便利な物なんだ。
「そして、その殻があれば、3年ほどで『法結び』が結ばれ、『心結び』は完全に絶たれる。ちなみに、神崎アリアの体の中に色金がある状態から、まだ3年は経っていない」
金一さんはコーヒーを一旦飲む。
「これが殻金の話だ。しかし、今現在、俺が神崎アリアを狙う理由とその話は関係ない」
「そうなんですか? 神崎が乗っ取られそうになるからという理由で狙ってない……?」
「違う。簡潔に言うと、シャーロックがもうすぐ死ぬのだ」
「………………は?」
それは今までの俺の思考を止めるくらい衝撃的な言葉だった。
アイツが……死ぬ? 何かの病気か、それともどこか治せない怪我をしたのか。
「原因は?」
「寿命だよ」
なるほど。言われてみれば、納得がいく。確かに不自然に若かったが、そろそろ限界ってことか。色々と無茶をしてきたのだろう。
その流れで神崎を狙うとなると……もしかして――――
「シャーロックは神崎をイ・ウーの後継ぎにでも考えてるのか……?」
「正解だ」
うっわぁ……マジか。ていうか、あの無法者たちが素直に神崎の言うことを聞くとは思えな…………そうか、だからこその緋緋色金。あれを使って束ねようとアイツは考えているのか。
ということは………。
「あなたはイ・ウーを内部分裂させるのが目的ってことすか?」
「あぁ」
随分とまぁ、でかい話だな。よくあんな組織を潰そうと思うよ。つーか、その流れだと……。
「その過程で神崎を殺す……のか…………」
自然と声が低くなる。怒っている証拠だ。落ち着け。
「そのつもりだ。
「イ・ウーの派閥の
「イ・ウーで蓄えた力を使って世界侵略をしようとする頭イカれてる奴ら」
「…………言い方がアレだが、その通りだ。それに対し、純粋に己の力を高めようと精進する者たちを――
「神崎を見つけた」
しかも、シャーロックが神崎に頼めば、その役目を絶対と言っていいほど受けてしまうのがネックだ。
神崎は貴族の家で、除け者扱いされて上手くいってなかったらしい。そこにシャーロックが現れれば……面倒な展開だな。神崎の母親を助けるだなんて言われれば尚更だ。
「そこで、俺が導きだし、辿り着いた可能性は2つ。その1つはシャーロックの死と同時期に神崎アリアを抹殺。そうすれば、リーダーを決めるのに空白の期間ができる。もう1つはシャーロックの暗殺だ。それができれば、神崎アリアをイ・ウーに連れていかれる前に逮捕が可能になる」
薄々分かっていたが、この人……本気かよ。
「……武偵が、人を殺すのか?」
「そう威嚇するな。まだ決めた訳ではない」
「は?」
「まだ俺は第二の可能性……シャーロックの暗殺に懸けている。もっとも、それにはキンジが必要だがな。アイツの成長具合を確かめてから決める。……そこでだ、八幡。お前はどうするんだ? 今なら、俺を止められるかもしれんぞ」
その言葉で我に返り、ふと考える。
――――何故、俺はそこまでして神崎を死なせたくないのかを。
果たして何故だろう?
レキに言われたから? いや、違うな。レキの言い方だと、最悪、神崎を殺してでも緋緋神の出現を阻止するだろう。
それなら、星伽さんに頼まれたから? 確かにそれもあるかもしれないが、多分それだけじゃないはずだ。
最初、不本意で俺は武偵になった。
俺はそこで生活するうちに、人の生死に触れるようになった。銃を使う、刃物を使う。それらは簡単に人を殺せる道具。武偵はそれらを自由に使う代わりに、殺人を禁ずる武偵法9条がある。
でも、それには別の理由もあると思う。何て言うか……人を殺すという選択肢が常にあると、いつか命の価値が薄れていく気がする。もし、大事な人が死んでも、それに対して無関心になってしまうかもしれない。感情がこれっぽっちも動かないかもしれない。
俺にとって、それがとても恐ろしい。
しかし、人はいつか必ず死ぬ。それは自然の摂理だ。だからこそ、俺は自分の納得のいくように死にたい。
そして、神崎がそんなことで死ぬのは…………俺の中では性に合わない。どこまでいっても、俺のエゴだな。
俺が神崎を死なせたくないのは改めて分かった。だが、今の状況はどうだ?
ここでイ・ウーを潰せなかったら、もっと多くの人が死ぬかもしれない。それを見過ごすのか? 俺には関係ないだろって言い聞かせるのか? それは断る。だったら、そのためにも金一さんは必要だ。
それならば、
「その時に決めます」
金一さんが確かめた結果、神崎が死なないならそれで良し。もし殺そうとするなら、どうにかして止める。
それに――――
「あんたを止めるのは、神崎のパートナーだろうしな」
きっと、神崎を殺すと決めた時に、その場には遠山がいるはずだ。それだったら、そこは俺の出る幕じゃない。
というよりね、今のこの状況で遠山の兄をどうこうできるとはとても思えない。
その後、適当に少し話して、俺はその場を後にした。すぐに台場から七夕祭りの場所に移動する。駅前の広場に……いたいた。
「八幡さん」
「悪い、待たせた」
「気にしません」
いつもの武偵高の制服姿のレキ。ドラグノフは分解してケースにしまって肩に背負ってる。まぁ、俺も武装した制服姿だけど。
「にしても、珍しいな。お前から祭りに行きたいって誘ってくるとは」
もし言われなかったら、俺から誘ってみようかとは考えてた。
「一度は体験したいと思いました。八幡さんは祭りのご経験は?」
「あまり大きな祭りは行かないな。人混み苦手だし。自治体や神社の小さな祭りぐらいかな」
大きい規模の祭りは移動するのがやっとなんだよな。特に欲しいものがないし。基本的に、小さな祭りで晩飯の調達に家族に駆り出されるっていうね。俺と親父で頑張りましたよ。
「迷惑ですか?」
「いや全く。むしろレキと祭り行けるのは嬉しい」
女子と2人で祭りとか願ってもないです。
「そうですか……」
うつむきながら、ちょっと照れてるレキ。可愛い。
「ま、いい機会だし楽しむか。でも、俺らは武偵だから何かトラブルがあればそっち優先でいくぞ」
「了解です」
そんなこんなで屋台のある方へと歩く。
スーパーボール掬い、くじ、食べ物系、型抜き、色々な屋台がある。俺も見たことのない屋台も沢山だ。冷やしきゅうりとか初めて見た。……え、おでん? この夏におでん? 買う人いるのか?
途中レキの足が止まる。どうやらある方向を見ているようだ。
「ん?」
レキと同じとこを見る。あ、うん。なるほどなるほど。あれは的屋か。
「あれは何でしょう?」
「的屋と言ってな。店側が用意したおもちゃの銃で景品を狙って落としたり、倒したりしたらそれを貰えるんだよ。大抵は重石とかがあってなかなか落ちないもんなんだがな」
近寄ってみると、うわっ、プレ4あるじゃん。でも、あんなの絶対落とせないだろうな。簡単に落とせたら、的屋はめちゃくちゃ損だし。
「八幡さん」
…………うん? レキの雰囲気変わったぞ。これは仕事で一緒になる時に発するオーラ。
「あれ、やってみてもいいでしょうか?」
あ、スイッチ入った。
「金はやるから全部取ってこい。応援するぞ」
とは言ってみたが、ぶっちゃけ実銃じゃないからさすがに全部は無理だろ…………みたいな気持ちで送り出した。
はい、結果は――――
「全部取りました」
「「うそーん……」」
俺と的屋の店主の声が重なる。
マジで全部取っちゃったよ。ごめんね、店主。レキが思いの外チートだったんで。
ええっと、景品はプレ4、プレ4のソフト数種、3DSのソフト数種か。気前いいな。取られないように色々細工してたっぽいが、レキには通用しなかったか。…………南無。
他に、アニメや動物のストラップやぬいぐるみが沢山に豚の貯金箱……豚の貯金箱!? まぁいいや。後はフルボトルが数種か。これは意外。フルボトルは嬉しいな。
つっても、ストラップとかは要らないな。俺の知らないやつだし。
「景品いるの?」
「いりません」
即答するなよ。店主膝をついて項垂れてるから……。これは来年『レキ禁止』みたいな看板あってもおかしくないな。
「プレ4とかは?」
「あげます」
「せっかくだし、レキも遊んでみようぜ」
レキの正確なプレイ見てみたい。FPSとか凄そう。キルレどんぐらいいくだろうか……。
「でしたら残しておきます。荷物は八幡さんが持っておいてください」
「了解。ストラップとかは?」
「いりませ……ん。あれは?」
「どうしたって、アイツらか」
少し離れた場所に間宮、火野、佐々木、島のいつもの4人組と一色と留美がいる。だけじゃないな。知らない奴が増えてる。黒髪のツインテールの女子。
皆して祭り楽しんでるな。
「留美さんたちにあげてもいいでしょうか?」
「いいと思うぞ」
そう言うと、レキは留美たちに近づく。
「こんばんは、留美さん」
「あ、レキ先輩。どうも。……八幡も」
「えっ! レキ先輩と比企谷先輩! ご無沙汰してます」
留美と間宮は対照的だな。
「せんぱ~い、こんばんはー」
わたあめを食べながら挨拶する一色。まぁ、一色とは授業で会ってるからわりと適当でも問題ない。逆に懇切丁寧だと困惑する。
等と、適当に火野たちとも話す。相変わらず佐々木と島は俺を睨んでくる。怖い。
「ところで、レキ先輩。どうしましたか?」
「これあげます」
「うわっ……。こんなに沢山も」
留美が驚く。
「これ、何なんすか?」
「レキが的屋で景品全部取ってな。全部はいらないなーって言っていたら、丁度お前らがいたてな。いらない分は譲るかってなった」
火野の疑問に答える。
「あのー……。どちら様でしょうか?」
と、ツインテールの子が俺に話しかけてくる。
「比企谷八幡。
「あ、あなたが。お話は伺っております。私は
一体俺の何を話されているのでしょうか?
「よろしく。……なぁ、間宮。架橋生って何だ?」
「えーっとですね、警察で研修を受ける武偵高生のことです」
そんな制度もあるのか。なんかチラッと授業でやった気はするな。不勉強でごめん。
「ところで、比企谷先輩ってこの前謎の美人武偵と揉めてた人ですか?」
ん? ……あ、カナのことか。
「そうなるな」
「美人?」
レキが反応する。
「カナのこと」
「なるほど」
火野が手を挙げ、
「私もあかりと遠目で見てましたよ。先輩あの人に一撃入れてましたよね」
「まー……あれは不意討ちだからな。真正面から戦ったら、それこそ神崎以上にボコられるわ」
これは紛れもない事実。
「よく分かりませんでしたけど、何だかスゴかったです」
と、乾。
「そりゃどうも」
コイツらは超能力は知らない感じか。いやまぁ、あんな一瞬で超能力と分かったらそれはそれでスゴいけど。
俺らが話してるその隣では、
「では、ありがたく貰います。レキ先輩、ありがとうございます」
「はい」
留美とレキ……お互い表情動かないな。
「先輩、また手合わせお願いできますか?」
「いいぞ。……気が向いたら」
「約束ですよ!」
火野が話しかけると、島のヘイトが溜まっている気がして……怖いです。
「あ、私も私も!」
「その内にな」
間宮……あんまり近づかないで。佐々木の瞳孔が開いているよ。大丈夫、君らのパートナー盗らないから安心して。
「あんまり羽目外しまくるなよ」
と、忠告してから一色たちと別れる。またのんびり歩く。
次にスーパーボール掬いでレキと勝負した。1回でどれくらい取れるか。結果は引き分け。互いに全部取った。しかし、かかった時間は圧倒的にレキが早かった。あんな素早くポイを動かせるのかよ……。人間業じゃないぞ、あれ。
興味本意で型抜きをやらせてみると、まぁ高得点ポンポン出すし、ヨーヨー釣りもめっちゃできてし………。
本当にコイツスゲーな。と、思いながらレキをじっと見つめる。
「…………」
「どうかしましたか?」
「ん。何でもない」
来年は祭り荒らしとして畏れられるんじゃなかろうか……と真剣に思う。よし、来年も一緒に行こう。
………………来年はここにいられるかどうかなんて、全然分からないけどな。
屋台の飯をそれなりに買って、祭りの外れにある公園のベンチに座る。すっかり夜になり暗くなる。
いやー、トラブルとかはなくて良かった。こういう時のトラブルって大概面倒なものばかり。特に酔っ払いが厄介。酷い時は話通じなくて無理矢理黙らせないといけない。そうすると、次はそのせいで周りが煩くなるからなー。
イベントの警備は強襲科にとってあまり人気のない任務で、それならと俺がよく受けるから、大変さが分かるんだよ。
俺は焼きそば、レキはたこ焼きを食べながら、
「今日はどうだった?」
「楽しかった……と思います」
「それは何より」
「八幡さんは?」
「めちゃくちゃ楽しかった」
何せ、初めて女子と2人で祭りに行ったからな!
「小町さんとは行かないのですか?」
「さらっと思考読まないでくれる?」
「顔に出ていました」
くっ、俺のポーカーフェイスが崩れたか。裏を返せばそれだけ楽しみにしてたってことだな。
「それで?」
「行くとしたら家族でだからな。そもそも妹はカウントしないわ」
「なるほど。そういうものですか」
「そういうものです」
飯も食べ終わり、ゴミをまとめて近くにあるゴミ箱に捨てる。またベンチに座る。
夜空を見上げながらボーッとしていると、
「八幡さん」
「ん?」
「来年も祭りに行きましょう。2人で」
「……あぁ、そうだな。2人で行こうか」
「約束ですよ」
さっきは来年があるかどうか分からないとか思ったけど……レキとの約束は守らないとな。
「もちろん、約束だ」
「えぇ。もし破ったら……覚悟しといてください」
「破らねーよ」
「それならいいです。……八幡さん」
「……っと」
レキが唐突に俺の肩に頭を預ける。
「疲れたか?」
「はい。しばらくこのままでいいですか?」
「おう」
「ありがとうございます」
夜風が吹き、肌寒くなる。レキはさらに体を俺に寄せる。
顔が近い。けっこう恥ずかしいな。
「なぁ、レキ」
「何でしょうか?」
「また祭りに行くためにさ、まずはカジノの警備、頑張ろうぜ」
頭を撫で、そう言葉にする。
「…………はい」
レキは頬を緩ませ、精一杯の笑顔を至近距離で見せてくれる。初めて出会った時には考えられない笑顔で。
これからもずっと、2人で祭りに行こう。それだけじゃない。もっと色々な場所で俺たちの足跡を残そう。
きっと……いや、違うな。絶対、楽しいから。頑張って、楽しくするから。
この裏でアリアとキンジは仲直りを無事完了し、良い感じのムードになりましたとさ。めでたし、めでたし