八幡の武偵生活   作:NowHunt

66 / 158
連携……?

 少しだけ、過去の話をしよう。

 

 ブラドと戦ったあの日のこと。

 

 まず最初にナイフが折られてしまった。それから銃で中距離を保ちながら戦った。

 

 しかし、思考を働かせながらだったから、途中弾切れに気付かずにまんまと攻撃を喰らってしまった。

 

 あれは武偵がやってはいけないミス。

 

 その反省を活かし、退院してからナイフより射程のある武器を探していた。もちろん、これからもナイフは使うが。

 

 そこで、神崎が使っていた刀を考えた。けど、実際使ってみると、扱うのがとても難しい。正しい方向に、正しい力で振らないとならない武器。それにミスると、すぐ折れるらしいし、すぐ錆びるから手入れも大変。……俺に刀は正直合わないな。

 

 そこで武偵高の購買でブラブラしていると、ふと見付けた武器がある。それは棒だ。ただの棒。長さは180cmほど。鉄でできている。

 

 棒本体にこれといった特徴はなく、強いて言えば、持ち運びがしやすいように分割で持ち運びができるくらいだ。

 

 別に、封印エネルギーが籠められていたり、「俺は最強だー!」みたいなことを言ったり、釣竿になったり、先端が燃えたり、鉄のようにしなったり、ベイブレードできたりしないからな! 今言ったライダー全部分かれば最高だぞ。

 

 そういやリボルケインってあれ剣じゃくて杖らしいな。あ、サイクロン・メタルは頑張れば再現できるんじゃね?

 

 それはさておき、神崎や不知火、後輩の間宮や火野に一色に手伝ってもらいながら練習した。

 

 2、3週間ほど練習し、それなりには扱えるようにはなってきた。完全に我流だがな。案外、しっくりくる。

 

 

――――――

 

―――――

 

――――

 

 

 

 

 そして今、人形が近付いてきてる間に分割していた棒を組み立てる。

 

 今回はカジノ側からの衣装だったから、直接装備はできないから、ショルダーバッグに分割していた棒を取り出す。時間稼ぎにとショルダーバッグを人形に投げつける。

 

 同時に、

 

「皆、気を付けて! この敵の中身に触れると呪われちゃう!」

 

 後ろから星伽さんからの忠告。SSRの専門用語みたいなことを叫んでいる。

 

 ……中身って何だ? あの人形の中に核的な何かがあるのか。

 

伍法緋焔札(ゴホウノヒホムラフダ)――」

 

 星伽さんは、バニーガールの衣装のシッポに手を突っ込み、そこから何枚かの紙切れを撒く。

 

 すると、星伽さんの前方で横一列に滞空し、バッ! と一斉に燃え上がる。

 

 火球になったそれらは、退路を防ぐようにカーブを描き、人形に襲いかかる。

 

 ――――バシュウウウゥゥッッ!!!

 

 紙切れというよりお札が人形にぶつかり、火炎放射みたいに勢いよく炎を浴びせた。

 

 ……えっ、何あれカッコいい。これが噂の星伽さんの超能力か。炎って王道でいいよな。アリババ好きよ。

 

 と思いつつ、組み立て完了させ、棒を構える。

 

 さて、どのくらいダメージ入ったかな? あー……ダメだ。

 

「星伽さん、あれは恐らく火に強いです」

 

 レキの言う通り、それらの炎は人形には効いてない。燃えていてもなお歩いている。

 

 超能力は属性が70以上あって複雑だからな。星伽さんの炎ではあの人形には効果がないのか……。

 

 あ、俺のバッグ燃えた。安物だしいっか。

 

「って、おい」

 

 さっきまで燃えていた人形1体が俺の方に迫り、短い斧を大振りしてくる。

 

 棒で人形の腕を斜めに叩き斧の軌道をズラしながら回避する。そして、羅刹を撃つみたいに烈風で加速して胴体を突く。

 

 魔法が効かないなら、物理攻撃だよな!

 

 吹っ飛ぶには吹っ飛んだが、すぐに立て直し、またこっちに突進してくる。

 

 うーん、さて、どうするか。効いてるかピンとこない。物理攻撃にも耐性あるのか。が、もう1発突くか。

 

 そう決めたその時。

 

 ――――バスバスバスバスバスッ!!

 

 ガバの銃声が鳴り響く。後方確認すると、神崎はギャラリーを飛び越え、連射しながらこっちに来る。

 

 どうやら神崎は避難誘導してたから戦闘に参加するのが遅れたっぽいな。

 

 神崎が放った弾丸の何発かは人形に命中し、その衝撃で人形の身がよじれる。俺はその隙に棒で殴りにかかる。

 

「うらっ!」

 

 3発ほど思いっきり殴り、人形がさらに後ずさり怯んだ瞬間――神崎が、走っている勢いで遠山の肩を借りつつジャンプし、正しく渾身! って感じの飛び蹴りを喰らわせる。

 

 人形は攻撃をマトモに喰らい、踏ん張れずにかなり吹っ飛ぶ。いやいや、お前の蹴りどんだけ威力あるねん…………。

 

 それらを喰らってもなお、立ち上がった人形だが、耐久力が尽きたのか、手足を脱力させ、砂になる。黒い砂――砂鉄かな。

 

 ん? その砂鉄の中から黒い黄金虫みたいなのが出てきて飛んでいる。何じゃありゃ。

 

「アリア、あの虫撃って!」

 

「……っ! えぇ」

 

 星伽さんの指示で神崎はガバで黄金虫を仕留める。おぉ、速い。

 

 残りの人形たちは、様子を見てる段階か? まだ動きが鈍く時間がありそうだから、一旦全員で集まる。

 

「あの虫がさっき言った中身ってことでいい?」

 

「うん」

 

 神崎の問いかけに首肯する星伽さん。

 

「……なぁ、白雪。あれは何なんだ?」

 

「日本ではヒトガタ、式神、土偶、ハニワと呼ばれている超能力で動く操り人形のことだよ」

 

「欧米では、ゴレム、ブードゥーって言われてるわね。というより、キンジ、分かんないで戦ってたの?」

 

 神崎の補則。

 

「悪かったな」

 

「ちなみに、俺もよく分かってなかった」

 

 ある程度は知っていたど、名称とか詳しくないからな。仕方ない、仕方ない。

 

「八幡、アンタもねぇ……」

 

「お叱りは後で受ける。……で、今からどうする?」

 

 ざっと見渡す。人形――ゴレムと呼ぶか。で、天井にゴレムが7体。床にいるのが5体。距離はまだそこそこある。あの1体だけ先攻させてたのか。

 

「そんなの自分から出向くに決まっているじゃない!」 

 

 おい、本当にそれでいくのか。そりゃそうか。セオリー無視大好きな神崎だもんな。

 

「なら、神崎は自由に戦闘。レキは少し下がって狙撃。遠山はレキの護衛を頼む。俺と星伽さんで神崎の援護。虫が出てきたら、それ優先で倒すぞ」

 

「おい比企谷、俺が護衛なのか?」

 

「普段なら問題ないけど、レキとゴレムの距離が近いからな」

 

 確かに神崎に合わせるのは遠山が慣れているだろうが、如何せん場所が狭くてこっちの人数が多いからな。連携がそもそも難しい。

 

「その役目、比企谷じゃなくていいのか?」

 

「俺ももうちょい動きたい」

 

 ついでに、実戦で棒をもっと使ってみたい。

 

「はぁ……分かったよ」

 

 若干呆れながらも了承してくれた。ワガママ言ってゴメンな。

 

「オーケー。決まりね。じゃ、行ってくるわ」

 

 2丁の拳銃を持ったまま、跳躍。シャンデリアに掴まり、ヨイショ、ヨイショとよじ登る。

 

「レキ!」

 

 神崎の呼びかけにレキはシャンデリアを支えている金具を狙撃で片方壊す。そこから回って回って撃って撃って暴れている。

 

 ………おぉ、スゴいスゴい。もう天井のは神崎に任せるか。

 

「星伽さん、俺らは地上のゴレムを」

 

「うん。でも、私の超能力は不利だよ……」 

 

「だったら、その刀でアイツら斬れない?」

 

「そのくらいなら…………」

 

「何体か1つに纏めるからそこで斬ってくれ」

 

「うん」

 

 俺が前衛、星伽さんが後衛で飛び出す。

 

 素早い動きのゴレムを4体、多少なりとバラけているが、突いたり、殴ったりしながら、位置を調整する。

 

 時間は少しかかったが、何とか1カ所に纏める。

 

「烈風――!」

 

 ゴレムが纏まっている場所を中心に竜巻っぽい風を起こし拘束する。

 

「星伽さん」

 

星伽(ほとぎ)候天流(そうてんりゅう)――」

 

 大きく息を吸い込み。

 

緋緋星伽神(ヒヒホトギガミ)斬環(ザンカン)――!!」

 

 という声に続けて、抜刀する。俺が烈風を解除するのと同時に、ゴレムの横を瞬時に駆けぬけ――緋色の光を放ちながら一閃。見事にゴレム4体の胴体を斬った。

 

 しかし、その衝撃で星伽さんの刀が折れた。マジか。

 

「もう! イロカネアヤメじゃないから……」

 

 何やら星伽さんもそのことに文句を垂れ流している。へー、普段の刀じゃないんだ。手入れの途中とか?

 

 それよりも、中身の虫だ。崩れ落ちた砂鉄の中から飛んできた虫を、星伽さんに当てないように俺のナイフ、レキの狙撃、で片付ける。

 

 そこで、気付く。

 

「……チッ!」

 

 ヤバい。地上の1体がレキたちの方に走っている。止めなきゃ。

 

 と思いきや――――ガシャアァァン! と、神崎が乗っていたシャンデリアの片方の金具をレキの狙撃で壊し、ゴレムの真上に落とした。

 

 これは……虫ごと潰されたな。気にしてなかったけど、天井のゴレムを全部撃ち落としている。…………うわぁ、神崎強い。さすがはSランク。

 

 落ちてきたゴレムをレキが狙撃し、近くにいるのは遠山が膝を撃って倒している。

 

 さっき遠山の射撃はあんまり効いてなかったが、神崎が落として弱まっているところで撃ったのか、個体差があるのか。虫もきちんと処理している。

 

 残り5体。ここで、その内の2体が窓ガラスを突き破り、逃走を始める。

 

 戦力分散か、客狙いか、それともゴレムを操っている奴への誘導か? どちらせよ、放っておけない。

 

 ここは俺が追うか……と考えたが。

 

「コラ、待ちなさい! せっかく客を逃がしたのにこれじゃ危ないわね。キンジ、追いかけるわよ」

 

「分かった。スマン、後は頼む!」

 

 遠山と神崎はその2体を追い、この場から離脱した。

 

 まぁ、あの2人なら大丈夫か。ジャンヌ曰く化け物コンビらしいしな。

 

「頼まれたからには、さっさと残り倒そうか」

 

「そうですね」

 

「えぇ」

 

「星伽さんは頼りないかもしれんが、とりあえずナイフ渡すわ。レキ、お前は遠山たちの援護……を…………」

 

 そう指示を飛ばしていると――

 

「えっ、これは……?」

 

 星伽さんが呟く。

 

 

 

 ――――床に散らばっていた砂鉄が1カ所に集まり、3体のゴレムも砂鉄に戻る。そこから、全部の砂鉄が集合し…………1体の全長約4m強のゴレムに姿が変わる。

 

 

 

「「「……………」」」

 

 3人、絶句。いや、レキは元から静かだから分からないな。

 

 いや、デケぇよ。

 

 そのゴレムは天井にぶつかるギリギリの大きさ。よくゲームで出てくるゴーレムみたいな風貌をしているんですけど。コイツはもうゴーレムって呼ぶか。

 

 では、一言だけ言わせてくれ。

 

「戦隊もんのお約束か!!」

 

 俺の突っ込みもむなしく、ゴーレムは俺めがけてそのデカい拳を振り下ろしてくる。

 

 それを何とか避け、ゴーレムの拳は勢い余って床を殴る。床がめっちゃ抉れてる。コイツ……もしかしたらブラド並のパワーだな。

 

 その隙にレキが銃剣で刺し、星伽さんが炎で攻撃するが、それらには何のアクションも見せずに――また俺を殴ってくる。

 

「くっ!」

 

 回避の直後で体勢が整わず、棒で攻撃を受け流そうとするが、耐えきれずに吹っ飛ばされる。

 

「――は?」

 

 俺が思った以上に力があり、一気に端まで10m近く転がる。

 

「あぁ、クッソが。いってーな……」

 

 ………棒で衝撃吸収してなかったらヤバかったな。それに何とか首は守れた。ところで、俺の人生難易度高すぎない? 調整ミスってるよ?

 

 ヤバい、棒はどこかに落として手元にない。

 

「八幡さん!」

 

「比企谷さん!」

 

 レキが頭部を撃つが、やっぱりレキには反応を見せてくれない。星伽さんに腕を掴まれ、コイツからは離れることに成功する。

 

「ハァ、助かった」

 

「そこはお互い様だよ」

 

 こっわ。星伽さんに感謝。

 

 …………で、このゴーレムが、俺しか狙ってないことが嫌でも分かる。……本当に嫌だな。

 

 とりあえず、やることは決まったかな。

 

「レキ、遠山たちの援護を。星伽さんはレキの護衛をお願い」

 

「八幡さんは?」

 

「逃げる」

 

 それだけ言い残し、このお高い金持ち御用達のフロアの門めがけて走る。

 

 ああダメだ。ダメージ残ってるから全力で走れない。……これは中の人並に遅いぞ(高校生のとき50m8秒後半のレベル)。

 

 案の定、ゴーレムも追いかけてくる。

 

 どこ行こうか迷ったけど、1階のフロアに海と繋がった水路がある。あれは噴水と繋がっているはずだ。砂鉄でも砂は砂だし、水かければどうにかなる…………と願いたい!!

 

 2階のフロアから1階のフロアまでの階段まで少し距離がある。そこまで全力で走る。

 

 センサーのおかげで後ろ確認しなくても位置は分かる。狭い廊下だとそこデカいゴーレムの体躯ではキツいだろ。攻撃はない……よね?

 

 そう思ったのも束の間、後ろにいるから具体的にな分からないけど、ゴーレムの何かが変わった。

 

 ――――ゾクッ。

 

 突如背筋に寒気が走り、咄嗟にしゃがむ。

 

 すると。

 

 

 ガリガリガリガリッッ!!!

 

 

 横の壁の両側が削れる。削れているっていうか、抉れている。……ちょうど俺の首の位置の。

 

 チラッと見てみると、ゴーレムの腕を部分が鋭利な刃物みたいに変化している。刃物みたいな腕は、さっきと違い短い。それを横に振ったのか。

 

 オマケに廊下に収まるサイズに変わっている。自在に大きさを変えれるのか。材料砂鉄だもんな。そうだよな。もしかして……レールガン?

 

 狭い廊下という俺のアドバンテージが一瞬で消え去った。

 

 これはあれだ。

 

 

 ……………ムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリ。

 

 

「烈風!」

 

 最大の風力――あれから力も上昇し。およそ22m/sでゴーレムを飛ばそうとする。………が、少し後退するだけだ。足をスパイク状にして支えているのが見える。

 

 あぁ、クソ! せめて手榴弾があれば……。無い物ねだりしても仕方ない。とりあえず水路まで目指そう。

 

 もう1回走ろうと思ったその時。

 

『なるほど、セーラほどの力はないようぢゃ。その程度では、妾の人形を飛ばせるわけないの』

 

 …………んん?

 

 どこから若いけど古めかい話し方の女性の声が聞こえ、思わず足を止める。

 

 廊下にあるスピーカー……とかではないな。だったら、その俺と同じタイミングで止まったゴーレムからか? 

 

「えーっと、どちら様でしょう?」

 

 一応、ゴーレムに話しかける。

 

『パトラぢゃ。この名前を覚えておくがいい』

 

 その名前、確か。

 

「イ・ウーのエジプト女か」

 

 ジャンヌ曰く、世界最高の超能力使い。イ・ウーの元No.2。実力はあのブラドよりも上らしい。そして、主戦派。世界征服を目論んでるとか。

 

 にしても、この名前最近聞いたような……? あっ、そうだ。

 

「ブラドに何かしたパトラって奴が、もしかしてお前か? 呪いって言ってたような……」

 

『そうぢゃ、そうぢゃ。……なるほど、お主がブラドを追い詰めておったな』

 

「そりゃどうも」

 

『呪いについてだな? せっかくだ、教えてあげよう。今、妾は気分が良い。ブラドにかけた呪いはの2つある。アイツには……そうだな、簡単に言うと、お主が倒したのは、アイツの真の姿ではないのぢゃよ』

 

「あの獣みたいな姿のことか?」

 

『うむ。お主が倒した姿が第2態。所謂、鬼ぢゃな。しかし、第3態という真の姿があの一族にはあるのぢゃ。それが実に厄介でなぁ。それを封印した呪いと、ブラドが死ぬときに目の前の生きてる物体を破壊するという呪いをかけたのぢゃ』

 

 ほう。つまり、あれよりもう1段階上があったのか。呪いをかけてくれてありがとう、パトラ。でも、もう1つのせいで俺死にかけたからな? それは絶許。

 

 それと気になることを言ったな。あの一族? まだブラドには仲間がいるのか? 一族って言うには、家族とかか。

 

 つーか、それより。

 

「やけに饒舌だな。いいのか? そんなこと俺に教えて」

 

『知ったところで、今のお主程度では何も変わらんだろう』

 

「あ、そうですか」

 

 それもそうだな。呪いとか言われても俺が使えるわけないし、関係ないか。

 

『ほう、お主が首に提げているものが璃璃色金だな?』

 

「まぁ、そうですけど」

 

『いいのぉ。欲しいな』

 

 ……なんか機嫌よさそうだし、もう少し聞いてみよう。

 

「なぁ、パトラさん。それはそうと、さっきからどうして俺を狙うんだ?」

 

 答えてくれるか?

 

『それこそ簡単な話、少し考えれば分かること。お主が色金を持っているから。それに加え、色金の力を使ったからであろう。比企谷八幡……いや、予測不能(イレギュラー)

 

「…………何それ?」

 

 聞き慣れない単語がでたぞ。

 

『お主の裏で呼ばれているアダ名ぢゃ』

 

 それマジ?

 

『無敗を誇ったブラドを誰が殺せるだろうか。皆そう思っていた。ぢゃが、今まで無名どころではない――いきなりぽっと出のお主がブラドを殺したではないか。しかも世にも珍しい色金の力を使って。誰も予想なんてしていなかった。故に予測不能』

 

 パトラは長々と語ってくれたが…………はっきり言って恥ずかしい。カナが言ってたアダ名ってのはそれか。

 

 誰だよ、そんな痛い名前付けた奴は。恥ずかしい。ソイツも絶許だ。もし分かったら全身全霊の羅刹をお見舞いしてやるからな。覚悟しとけよ。

 

 というよりさ、ブラド殺したのって俺ではなくて璃璃神の方なんだよなぁ。おまけに材木座が創ってくれた銃弾なかったら到底ムリだったし。それを俺の力とか言われても……あんまり納得いかねぇな。

 

 端から見ればそんな細かいとこまで分からないもんだと、勝手に想像してみる。

 

 まぁ、そんな名前知ってる奴らなんてごく一部だけだろうし気にしない方針でいくか。

 

「それは分かった。でも、あれだな、今の俺のやることは変わらない」

 

『ほう……それは?』

 

「んなもん、逃げるに決まってるだろ」

 

 背を向け全速力で再びダッシュ!! まだまだ回復してなくて遅いけどな。

 

『あ、コラ! 全く、カッコつけおって』

 

 パトラがどこにいるか分からない以上、遠山たちにさっさと見付けてもらうのを願うしかないか。早くしてください、頼みます。……多分近くにいるよね? いなかったら詰みます。マサラタウンにさよならバイバイしちゃうぞ。

 

 

 それから走った。必死に走った。横腹痛いわ。それより、全身痛いわ。まださっきのダメージ残ってるんだよ。

 

 廊下を駆け抜け、階段を降りてる最中に気付いたが……やけにゴーレムの動きが単調になってきている。

 

「…………?」

 

 さっきまで形を変えたり、ゴーレムの大きさを変えたりと色々していた。が、途中から4mくらいの巨体に戻り、通りにくそうにただただ直線で俺を追いかけているだけになっている。

 

 たまに攻撃してくるが、まだギリギリ何とかなるレベル。おまけに直線的で避けやすさすらある。

 

 さっきまでそんなことなかったぞ。可笑しいな、パトラも話しかけてこない。

 

 …………何かあったか?

 

 そう思いつつも一気に跳び、階段を降りた。受け身を取りつつ転がりながら距離を取る。

 

「チッ!」

 

 が、ヤバい。

 

 俺が飛び降りたと同時に、ゴーレムは同じく一気に階段を飛び降り、そのまま真っ直ぐ突っ込んできた。

 

 厄介なことに廊下を抜けてスピードが増した。その勢いで殴ろうとしている。相変わらず動き自体単調だが、スピードは変わらずメチャクチャ速い。

 

 今から回避は……ムリだ、間に合わない!

 

 さっきは衝撃を受け止めてくれた棒もない。あんなの喰らったら余裕で死ぬぞ。

 

 どうする――――!?

 

 

 

「……ッ!」

 

 

 

 その限りない一瞬、俺は周りがスローになった感覚に陥る。初めての感覚。

 

 …………まるで、走馬灯を見ているみたいだ。

 

 走馬灯。自分が死にそうになる時に見られるというアレか。

 

 自分が死ぬ直前に人が走馬灯を見る理由の1つに、今まで生きた経験や記憶の中から“死”を回避する方法を探すらしい。そう言われている。

 

 ――――思考が、加速する。

 

 パワーでは絶対に勝てない。それはさっきの攻撃で理解している。ならば、力なき者はどうする? どうすればいい? 

 

 

  

 俺の答えは――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………これ、弁償かな」

 

 ロビーにある綺麗な噴水が壊れ、粉々になった。なぜなら、ゴーレムが勢いよく突っ込んだからだ。

 

 結論から言えば、ゴーレムを投げた。豪快にぶん投げた。

 

 別にただ力任せに投げたわけではないぞ。ゴーレムが殴ってきた勢いを利用して、力に抗わず、受け流すように投げただけ。

 

 あの一瞬、頭に思いついたのは去年に蘭豹の戦った記憶。俺は、どうやって……手を抜いていたとしても、あの化け物と渡り合えたか。

 

 自分からは手を出さずに何とか動きを予測して攻撃をいなし続けた。これを利用しようとした。

 

 で、投げた先は運悪くロビーにある噴水だった。

 

 けっこう丈夫そうに見えるけど、ゴーレムの勢いがありすぎたのか……まぁ綺麗に壊れたこと。弁償したくねぇ。

 

 幸いにも、客やカジノの店員は避難していて、人的被害はなかった。

 

 さてと、ゴーレムはどうなった?

 

 パトラのゴレムは一定の衝撃を与えれば、耐久値がなくなって崩れることが分かった。俺のファイブセブンではあまりその衝撃を与えられなかったのだろうな。貫通特化だしよ。

 

 だから、水でもぶっかけて攻撃を通りやすくしたかった。まぁ、これでゴーレムが壊れりゃ万々歳だがな。

 

「はぁ……めんど」

 

 が、立ち上がってきた。それでも、ところどころ欠けて崩れてきてはいる。

 

 ダメージはちゃんと入ってる。もう一押しか。これでノーダメだったらさすがに匙投げてたわ。

 

 うーん。つっても、武器がねぇな。棒は2階で落としたし、ナイフは星伽さんに渡したし。……仕方ない、素手でいくか。

 

 もう後手に回るのは終わりだ。今度は俺から仕掛ける。

 

「ふー……」

 

 大きく呼吸をして気分を落ち着かせる。その場をゆっくりと歩き、距離を詰める。走るほど体力やら回復してないしな。

 

 ゴーレムの射程距離に近づいたところで向こうもまた殴りかかってくる……が、もうコイツのスピードにも慣れた。それに加え、コイツは手負いだ。さっきより遅い。

 

 烈風を使いながら冷静に攻撃を避けて、懐に潜り込む。

 

「――――羅刹」

 

 烈風を全開。その追い風に乗る。衝撃を一点に集中させるように放った打撃はゴーレムの腹部に命中する。

 

 パラパラ…………と、ゴーレムは完全に崩れ落ちた。砂鉄が舞うわ舞うわ。鬱陶しい。中の虫たちも生気を失ったように動いていない。

 

 羅刹といっても、これは何てことのない普通の打撃だけど。本来の羅刹人の心臓を無理矢理止める技だしな。むしろ羅刹を使う機会がないまである。そりゃ殺人技なんかそんなポンポン使えないわ。

 

 ……今回は俺の勝利かな? ヒヤッとする場面はけっこうあったが、どうにかなって良かった。わりと死にかけたもしたが。毎回こんなのばっかりだなぁ。

 

 そう安心したのも束の間。

 

『キンイチ……妾を使ったな? 好いてもおらぬクセして』

 

 砂鉄の中からそんなパトラの声が聞こえた。パトラとゴーレムはまだ繋がっていたのか? よく分からん仕組みだな。

 

 というより……マジか。パトラの近くに金一さんいるのか? どうして? つーか、パトラどこだ? 神崎と遠山はどうなっている? 

 

 分からないことだらけだ。疑問が止まらない。

 

 とにかく、こうしちゃいられない。とりあえずは遠山たちのもとに向かうか。

 

「ったく、次から次へと……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




えー……だいぶ期間が空きました
正直言って、リアルが大変なんです。何か資格が欲しくて、便利と聞く簿記の資格を取ろう!と、思い勉強中です。最初の方はまだ分かるけど、決算がムズい

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。