八幡の武偵生活   作:NowHunt

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鹿乃さんの「さよなら、アダムとイヴ」めっちゃいいから聞いて
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世の中ごり押しして良い場面と悪い場面がある

 これから話す内容は雪ノ下姉妹の依頼から数日後の出来事だ。

 

 遠山と星伽さんはあの後、カナと合流し、神崎を救出した。そして、パトラを倒したかと思えば今度はイ・ウーの船艦と共にシャーロックが現れた。多分俺が控え室で雪ノ下と話していた時間帯だな。……この温度差よ。

 

 で、何やかんやありまして遠山と神崎のコンビはシャーロックに勝って撤退させたとさ。…………アイツら改めてヤバいな。どうやってあのシャーロックに勝てたんだろうか。イ・ウー艦内の出来事だったから分からない。

 

 俺は星伽さんの話と衛星から見た映像しか知らないからあまり詳しく語れないんだよ。とりあえず遠山と金一さんとシャーロックの撃ち合いが魔物すぎてヤバかったとだけ言っておこう。あれは普通に引く。

 

 えーっと、何? 遠山が放った銃弾をシャーロックが撃ち返して、その撃ち返された銃弾をまた遠山が撃ち返す? ………………ごめん、自分でも何言ってるか理解できない。銃でベイブレードするんじゃねぇ。

 

 まぁ、いいや。そんな人外の戦いがあったという認識でいてくれたらいい。

 

 そして、遠山が入院中のある日、俺はレキの部屋のリビング(殺風景)にいる。互いに床に直に座る。

 

 今回の議題は。

 

「なぁ、レキ」

 

「はい」

 

「…………神崎、色金の力使ったな」

 

「ですね」

 

 これだ。

 

 遠山がパトラから神崎を救った直後に、神崎……というより緋緋神? が指からビームを出してパトラの船に供えられていたピラミッドの上部を綺麗さっぱり消した。字面にするとやっぱり何言ってるか分からないな。それとイ・ウー艦内でもそのビームを出したらしい。

 

 星伽さんの話では、緋緋色金の力を抑えるカバー――殻金があるから完全には緋緋神に乗っ取られないようだが、それでも早めに対策しないと。

 

「どうする? いくら殻金があってもこのままじゃ緋緋神出てくる可能性は僅かにだがあると思うぞ」

 

「何故アリアさんは緋緋色金の力を使えたのでしょうか? 使う直前までアリアさんは気絶してたのですよね?」

 

「そうだな。……というより、その時の状況を詳しく知ってるのは何より遠山なんだが、話す気なさそうなんだよな。金一さんも知らないって言ってたし」

 

 話したくないことは無理して聞くつもりなんてないからな。ただ、手詰まりなだけ。

 

「でしたら考え方を変えましょう」

 

「考え方?」

 

「緋緋色金……緋緋神は恋と戦いを好む。それらを奪えば緋緋神が出てくることはないでしょう」

 

「あー、そうだったな。それが現実的だな。確か戦いの方は武偵法9条を破るような戦いが必要だったよな?」

 

「はい。ですが、アリアさんのことを考えると、そのくらいの戦闘はまずないかと」

 

 腐ってもSランク。武偵法は守る奴だ。となると残りは必然…………。

 

「恋、か」

 

「アリアさんが恋心を自覚すればするほど、ブレーキが効かなくなり、緋緋神に乗っ取られる確率が高まります」

 

 まーた面倒だな。

 

「神崎が恋してるとなると遠山か。どうする? 神崎を監禁させるとか?」

 

 パッと思い付いたことを言ったが、ナチュラルに屑発言だな。

 

「悪い、撤回する」

 

「監禁は手っ取り早いとは思いますが、倫理的にも、法律的にもダメでしょう。特に私たち武偵には。キンジさんとアリアさんを仲違いさせるか、接近しないように監視するか……どうします?」

 

「前者かな。後者は無理がある。それか直接、神崎たちに互いに近寄るな……みたいなこと言うか」

 

「誰がです?」

 

「そりゃ俺が。ヒール役なら任せろ」

 

「自分を犠牲にするやり方……私は嫌ですよ」

 

 きっぱりと否定される。

 

「…………ゴメン」

 

 そんな悲しそうな目をされるとは……考え改めないと。これは俺だけの問題じゃないんだ。

 

「だから、私もやります。そのヒール役を」

 

 はっきりとそう宣言するレキに驚く。俺がやろうとしたことは、人として限りなく最低なことだぞ。

 

「……いいのか?」

 

「もちろんです」

 

「ありがとう」

 

「いえ、気にしないでください。2人でやりましょう」

 

「あぁ。とりあえずどうするかは後々決めよう。俺はそろそろ用事が……」

 

「用事ですか?」

 

「つっても、材木座の帰国祝いにカラオケで遊ぶだけだが」

 

「そうでしたか。では、お気を付けて」

 

「おう」

 

 その後、5時間ぶっ通しで俺と材木座で特撮ソング歌った。楽しかったけど、翌日喉ガラガラだった。調子乗りすぎた…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――

 

――――――

 

――――

 

―――

 

 

 

 

 それからかなりの日数が経ち、夏休みももう終盤に差し掛かっている。

 

 短すぎない? もう2ヶ月長くても誰も文句ないぞ。……まぁ、グチグチ言っても仕方ない。現実見よう。

 

 ちなみに、それまでの間適当に任務を受け、空いてる時間に訓練、宿題を済ました。たまに材木座と戸塚と遊んだり、理子とゲームしたり。そこはあまり去年と変わってない。

 

 …………途中何故かレキと実家に帰ったけど、あれは中々にキツかった。時が来れば語るとしよう。いや、語りたくねぇわ。

 

 今はエアコンを効かした部屋で、ソファーと一体化し、めちゃくちゃだらけている。

 

「あぁ……最高」

 

 断言しよう。人類最大の発明はエアコンと。エアコンガンガン効かせて布団にくるまるの気持ちいい。……電気代ヤバくなるし、さすがに控えよ。

 

「静かだ」

 

 遠山はこの前のカジノの警備の仕事が微妙に完遂できてなく、単位が足りないのでサッカーで単位取りに行くだとか。正直よく分からん。そんなんで単位取れるのか。本当に武偵って何でもやるんだな。

 

 レキも理子に拐われ、遠山チームでサッカーすると。俺も遠山に誘われはしたけど、その時は蘭豹にボコボコにされた後で疲れてたから断ったな。俺も付いてきゃ良かったか。

 

 まぁ、いいや。試合は昼過ぎには終わるけど、適当に飯食ってくるって言ってたから、遠山は帰ってくるのはだいたい夕方だし、アイツの飯は作らなくていいよな。てか、まだ9時だじゃん。もうしばらく寝よう。

 

 ……にしても、遠山の人生波乱万丈だな。まさかアホの武偵高で単位落としかけてるとは。

 

 

 

 

 

 

「んんっ……ねむっ…………」

 

 目が覚めると、正午を回っていた。

 

 昼か。まだ寝たいけど、腹減ったな。…………野菜やら肉やら残ってるし炒めて飯食うか。……ダメだ、動くのめんどい。怠惰ですねぇ。

 

 よりにもよってカップ麺は尽きている。出前頼もうにも今からじゃ時間かかる。ああもう、誰か飯作って。

 

 最終手段発動。コンビニで適当に済ますか。でも動きたくない。暑いし外出たくない。アミカの一色にお使い頼むか。……なんか1人でくだらんやり取り繰り広げてるな。

 

 よし、サッと行ってサッと帰ろう。

 

 ――ピンポーン。

 

 家着から着替えようとしたところで、インターホンが鳴る。誰だろ? 星伽さんか? 他には……特に宅配くる用事はなかったはずだが。

 

 外の様子をカメラで確認する。

 

「…………あ?」

 

 誰もいない。イタズラか? 今時そんな益にもならんことをする奴いるのか。暇なことで。……って、待て。なんか視界の端に黒色の帽子がちょっと見える。なんだか見覚えある帽子だな。そして、若干見える銀髪。……もしかして。

 

 どことなく億劫な気持ちでドアを開ける。

 

「八幡、久しぶり」

 

 開けた先には予想通りセーラがいた。

 

「おう。連絡なしでいきなりどうした?」

 

 しかし、その程度でイチイチ驚いてはいられない。目が覚めたらイ・ウーだった時や出会い頭にレキに狙撃された時より遥かにマシだ。変な耐性付いたな……。

 

「上がっていい?」

 

「まぁ、いいが」

 

 散らかってないはず。

 

「訳はちゃんと話すから。飛行機疲れたの」

 

 セーラはキャリーケースを引きながらリビングのソファーにちょこんと座る。

 

「で、今日はどうした? 日本で仕事か?」

 

 麦茶を入れながら訊ねる。

 

「それもあるけど、しばらく日本に用事があって」

 

 セーラのことだから、色々と忙しいんだろうな。てか、キャリーケースって。

 

「宿は?」

 

「予約してるにはしてるけど、向こうの手違いで1日ズレてて今日泊まるとこないの。探すのも面倒だし」

 

「要するに?」

 

「1泊させて」

 

「この部屋、俺の他に別の同居人いるぞ」

 

「そこはバレないように」

 

「無理あるだろ」

 

 いきなり押しかけてこの師匠は全く…………。淡々と話す仕草に可愛さの欠片もねぇ。語尾にハートくらい付けてもいいんだぞ。ちょっと部屋探すくらいしてくれませんかねぇ。

 

「っていうか、俺、セーラにこの部屋の場所教えたっけ?」

 

「理子に聞いた」

 

「人の個人情報をベラベラと……。だったら理子の部屋に泊まれよ。もしくはジャンヌ」

 

「えー、なんか嫌」

 

「そんな理由でこっち来られても困るわ」

 

「一応ジャンヌに頼んでみたけど、ジャンヌと一緒に暮らしてる人、スゴい人見知りみたいで断られた」

 

 へー。人見知りか。誰だろ? いや、武偵は俺含め人見知りの性格難ありだらけだわ……。

 

「それに、理子とはあまり気が合わない」 

 

「分からんでもないけど」

 

 基本大人しい性格のセーラと基本騒がしい性格の理子では確かに大変そうだよな。その辺り、理子は上手いことコントロールしてくれるとは思うけど、無理強いはさせたくない。

 

「そこらの民間宿は?」

 

「きちんとした高いホテルじゃないとヤダ」

 

 ……ワガママだな、全く。

 

「さて、どうするか」

 

 遠山がどっか――武藤辺りの部屋に今日だけでも泊まってくれればそれがいいんだが、俺の都合押し付けるわけにはいかない。かといって、俺が誰かの部屋に泊まったらそれはそれで問題だよな。……とりあえず後回しにしよう。

 

「八幡」

 

「何だ」

 

「お腹すいた」

 

「おう、金渡すからコンビニで適当に買ってきてくれ。あ、俺の分も」 

 

「何か作って」

 

「押し掛けておいて図々しすぎないか?」

 

「師匠命令」

 

「こんなどうでもいい場面で師匠権限使うなよ」

 

 とは言うものの、強く断れない。一応客人だし……いや、やっぱり客人にしては態度でかいな。元々は作るつもりだったんだ。こうなったらついでだ、セーラの分も作るか。

 

「ハァ……」

 

「作ってくれるの?」

 

「仕方なしだぞ」

 

「ん、大人しくしておく」

 

 台所に移動して野菜と豚肉を切って簡単に炒め、味付けをする。スパゲッティーでもあれば大分腹が膨れるんだが、ないので昨日の晩飯の残りの冷や飯を温め、出来上がったのをテーブルに置く。

 

 まさかセーラに飯を作るとはこれぽっちも思ってなかったからかなり適当。

 

「ありがと。いただきます」

 

 セーラが食べ始めたのを見て、俺も食べ始める。

 

 それから数分。俺たち2人が黙々と食べている途中にまた。

 

 ――ピンポーン。

 

 と、インターホンが鳴る。

 

 ……またか。今度は誰だ。多分俺ではないよな。遠山が何か宅配予約してたっけ。そんなこと言ってないはずだが。

 

 セーラに黙るようジェスチャーし、足音たてずにカメラを確認する。

 

「…………」

  

 普通にレキでした。ボーッと立っている。もうサッカー終わったのか。お早いお帰りで。

 

 うーん、今セーラがリビングに居座っている状況は面倒だな。前に理子から送られたメールでセーラのこと知られてるし……。別にやましいことは何もないぞ? ただ、ややこしくはなりそうなだけ。

 

 幸いにもカーテンは閉まっているから外から見られることはない。ていうか、わざわざ開けるの怠かった。

 

 よし、居留守使おう。反応なかったら流石に引き返すだろう。その間にセーラをどうにかするか。

 

 座って、食事再開……しようとした瞬間。

 

 

 

 ――――ドガアァァン!!

 

 

 

「……ねぇ、八幡」

 

「何も言うな…………何も」

 

 玄関から爆発音がしました、はい。それはそれは見事な爆発音でした。廊下から煙漂ってる……。ほらぁ、若干セーラも引いてるよ

 

 2人揃ってゆっくりと廊下まで様子を見に行く。

 

 煙が晴れていくにつれて、その姿が明確になっていく――こんな言い方してるけど、犯人は分かりきっているがな――で、そこには……ドラグノフを構えたレキが立っていた。

 

「わぁ……」

 

 セーラのひきつった声が聞こえる。

 

 少し髪の毛に隠れた目がニュータイプを見つけたユニコーンガンダム並にユラリユラリと光っているよ。あらやだこの子怖い。

 

 あ、ドアひしゃげてる。そりゃそうか。これ先生どもに怒られたりしないかな。わりとこの部屋ドンパチ起きてる頻度高いし、他の部屋の奴らが報告しないことを祈るしかない。

 

「……ちなみにレキさん、その爆弾はどこから? お前持ってないよな」

 

 と、動揺のあまり始めに聞くには場違いな質問をしてしまう。

 

「理子さんからです」

 

「あの爆弾魔が!」

 

 狙撃手に持たせたらダメだろ!!

 

「……で、なんでいきなり玄関爆破した?」

 

「これも理子さんに、もしかしたら八幡さんの部屋にセーラさんがいるかもしれないと情報を得まして」

 

 理子め……アイツの部屋の洗剤の中身全部お酢に変えてやる。

 

「八幡さんが居留守使わなかったら爆破しないですみましたよ」

 

「居留守云々は置いといて、そもそもの話、部屋いるの俺だけの可能性もあるわけだろ。例えばまだ俺が寝てたり……何? 盗聴でもしてるの?」

 

「そんなのしなくても、その程度の距離なら音で分かります。集中すればセーラさん……若い女性の呼吸音くらい聞こえます」

 

 ちょっと待って待って怖い怖い怖い怖い怖い。

 

 チラッとセーラを見る。セーラは首を勢いよくフルフルと横に振っている。あ、うん。流石にそんな細かい音の聞き分けセーラもできないよね。レキ、才能を無駄に使ってない? もっと別の場面で活かしてよ。

 

 

 

――――――

 

 

 

 あ、ここから前回の続きになります。随分長くかかりましたね。  

 

 わりと衝撃的な出来事があった割りにはセーラ普通に好物のブロッコリー要求してきたな。切り替え早いね。見習いたいわ。こっちはまだビクビクしてるんだが。まぁ、俺も飯は食べてるんだけど。

 

「なぁ、レキ。あのドア直してくれ……」

 

「あと30分もすれば平賀さんが直しに来てくれます。料金は私持ちです」

 

「そんなに手際いいのになぜ爆破したのか」 

 

「サプラーイズというやつです。理子さんに教わりました」

 

 レキになかなか似合わない言葉だな。

 

「多分だけど、かなり趣旨間違ってるぞ、それ。普通にパーティーの登場の時とか想定しているはずだろ」

 

「ですが、貰った爆弾はC4でしたよ?」

 

 ……アイツのゲーム機の設定言語アラビア語に変えてやる。

 

「もういいや。これ以上言及するのなんか怖いわ」

 

「分かりました。では、話を変えます。なぜセーラさんがここに?」

 

 レキの視線がセーラに移る。

 

「日本に用事で来て、八幡の部屋に遊びにきたの。それで、色々と事情があって1泊だけさせてほしいと頼んだ」

 

 あ、それ言っちゃうのね。

 

「ですが、ここには遠山さんも住んでるので難しいのでは?」

 

「俺もそう言ってとりあえず先送りにしたんだが、まだどうするか決めてない。……てか、2人は初対面だよな?」

 

 少し気になる。

 

「はい。私は八幡さんから写真を見せていただいたことがあるので名前と顔だけは知っています。話すのは初めてです」

 

 と、レキ。

 

「噂は聞いてるけど、実際に会うのは初めて。改めて、名前はセーラ。よろしく」

 

 と、セーラ。

 

「レキと言います。よろしくお願いします」

 

 自己紹介が済んだところで。

 

「八幡、おかわり」

 

「へいへい」

 

 空になった皿を受け取ってあまりをよそる。

 

「レキは食べるか?」

 

「大丈夫です」

 

「分かった」

 

 ソファーに座り直す。

 

「で、セーラ。けっきょくお前どうすんの? ここ東京だけど、神奈川とか千葉とか探せばどこかあるだろ」

 

「今からじゃ厳しくない? それに日本って電車が多くてよく分からない」

 

 日本というより、関東だな。

 

 確かに俺だって、たまに路線間違えるな。乗り慣れてる路線ならまだしも、関東の路線多すぎるんだよなぁ。

 

「それはそうだが……それしかないだろ」

 

「でしたら、セーラさん。私の部屋に泊まりませんか?」

 

 予想外の提案に俺もセーラも少し戸惑う。まさかレキがそう言うとは。

 

「いいの?」

 

「はい」

 

「じゃ、一晩よろしく」

 

「いいんかい」

 

 初対面でいきなり部屋に泊まるってスゴいな。俺は無理。人見知り発揮するし、何よりソイツに対して警戒しちゃう。

 

「でも、1つ頼みいい?」

 

「どうぞ」

 

「八幡も一緒の部屋で寝ること」

 

「構いません」

 

「俺が構うわ」

 

 突然何言い出すんだよ。 

 

「何かあったら嫌だし、万が一のストッパーとして八幡も参加すること」

 

「ご遠慮ねが…………分かった、やるって」

 

 断ろうとしたが、セーラの超能力でコップが綺麗に斬られた。そういや、セーラの風は鎌鼬も作れるからな。人体切断できるレベルの。飲み物入ってなくてよかった。

 

 流石にレキに対して警戒心はあるか。そりゃこの子、いきなりドア爆破して入ってきちゃうお茶目な人ですから……。

 

「あ、レキの部屋ベッドとかないから雑魚寝だぞ」

 

「え」

 

 セーラの驚く声。

 

 セーラって声のテンションは常に一定だけど、わりと顔に出るから可愛い。

 

「マジで何もないからな。タオルケットとか持ってきてる?」

 

「ない」

 

「なら、俺の貸すわ」

 

「ありがと」

 

 すると、レキに肩を叩かれる。

 

「私の分はありますか?」

 

「え、いつも使ってるっけ?」

 

「今日は使いたいです」

 

「つっても、俺タオルケット2枚しか持ってないんだけどな……」

 

 1週間毎に取り替えてるから2枚で充分だしな。後は冬用の布団しかない。

 

「ま、別に1日くらい大丈夫か」

 

 夏に適当に寝ても風邪は引かん。

 

「ん? 八幡はレキの部屋に入ったことあるの?」

 

 唐突なセーラの疑問に答える。

 

「何度かな」

 

「一緒に隣で寝たこともありますね」

 

「床硬かったな…………」

 

 というより、そこ、余計なこと言わない。あと微妙に勝ち誇った顔もしない。

 

「へー…………」

 

 セーラの機嫌損ねたら、最悪俺の首飛ぶぞ。そうなったらリアルアンパンマンになるだろうな。

 

「では、平賀さんの修理を待ってから移動しましょうか」

 

 …………あ、ドア壊れてたじゃん。忘れてた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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