八幡の武偵生活   作:NowHunt

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narrative

 あの後平賀さんが来て、ドアを修理してくれた。その時、「どうせなら、セキュリティのためにがっつり電気とか流しちゃう?」とか聞かれたので丁重に断った。普通でいいです……普通で。

 

 それでセーラの荷物とか諸々運んで、今はレキの部屋にいるわけだが――

 

「――まだ昼過ぎじゃねぇか。何すんの?」

 

 ただいまの時刻は3時。せいぜい夕方だろう。

 

「確かに移動するの早かった。もう少し八幡の部屋でゆっくりしたかった」

 

「んー……それだと遠山と鉢合わせするかもしれないからな。とりあえずセーラだけレキの部屋に送ればよかった。てか、俺の出番夜だろ? まだ部屋にいるわ」

 

 と、背中を向けると、後ろからチャキ……という音と弦を引く音がする。センサーを使わなくてもドラグノフとセーラの弓で狙われていることが嫌でも分かる。

 

「後1歩でも動いたらどうなるか分かる?」

 

「さっきまで命だったモノが辺り一面に転がる」

 

「正解」

 

 千翼ルォォ!! 逃げろォォ!!!

 

「……帰ってもいいだろ。夜には戻るから」

 

「仕事じゃないのにほぼ初対面の人と2人きりだと気まずい」

 

 気持ちは分かるが、それレキが隣にいる状況で言うことか?

 

「で、レキはなぜドラグノフを構える?」

 

 特に理由ある?

 

「何となくです」

 

「もっと明確な理由が欲しかった……」

 

 せめてセーラと同じ理由でいいから。

 

 選択肢がなくなったので、ここに留まることにした。そこで気になることがあり、ちょっと移動する。

 

「どうしたの?」

 

 セーラに聞かれる。

 

「ここの台所どんな感じかなーって」

 

 レキの食事事情を知る者からして台所はチェックしないといけないだろつ。ざっと見渡す。

 

 炊飯器に冷蔵庫。包丁に神崎(まな板)、他にも調味料やボウルに鍋とかわりと問題ないレベルで揃っている。電子レンジとかはないけどな。

 

 冷蔵庫の中身はスッカスカだ。水とカロリーメイト。後は……ココナッツオイルとクリームチーズ? 何に使うのか分からない。というより、肉も野菜もないな。マジかよ………。カロリーメイトは腐らせないために冷やしてるのか。

 

 まともな食料は米とカロリーメイトしかない。予想はしてたけど、あまりにも少なくて軽く驚いた。

 

「レキって料理するの?」

 

「しないこともないです」

 

「ちなみにどんな感じの料理を?」

 

「ライスケーキです」

 

 ケーキだと? レキ、そういうデザートも食べるのか。それは知らなかった。

 

「今冷蔵庫に冷やしてあります」

 

 あ、本当だ。奥に何か包装されてる物がある。食べかけとかのカロリーメイトかと思ってたがどうやら違うみたいだ。

 

「これです」

 

 冷蔵庫から取り出したそのライスケーキとやらを見る。何て言うか……パッと見、ただのカロリーメイト。イメージとかけ離れている。

 

「これが?」

 

「ライスケーキです」

 

「へぇ。……なぁ、作り方は?」

 

「お鍋にご飯と水、砂糖に好みのフレーバーを入れて水気が飛ぶまで20分ほど煮ます」

 

 ご飯と砂糖……いきなり炭水化物の塊だな。その組み合わせって合うの?

 

「次にココナッツオイルとクリームチーズをよく混ぜます」

 

 へぇ、そこでその2つ使うんだ。

 

「氷水で冷やしてから冷蔵庫で更に冷やせば完成です。後は食べやすい大きさにカットして包むだけです」

 

 ケーキって言うわりにはけっこう簡単にできるんだな。聞いてるかぎりは難しくなさそう。

 

「武偵が食べる飯としては優秀だな」

 

「はい。カロリーメイト同様片手で食べやすい携帯食として優秀です」

 

 実際、少量でもかなり高カロリーだろう。任務中、片手間に食べやすそうなのも良い。

 

 ……ただ、女の子が作った料理として、可愛い感じはしないかな。

 

「食べてみていいか?」

 

「どうぞ」

 

 1つ貰い口に放り込む。ココナッツオイルにクリームチーズとか砂糖にご飯とか合うのかと思ったけど、ビックリする味ではない。問題なく食べれる。

 

「どうでしょう?」

 

「ん、普通に美味い」

 

「ありがとうございます」

 

 僅かに微笑むレキに釣られて俺も笑う。

 

 さて、台所はある程度使えると分かったり、レキの意外な一面が見れたりしたところで。

 

「今日の晩飯何にするかね……」

 

 一旦買い物には行かないと。冷蔵庫何もないし。それくらいなら許してもらえるよな……な?

 

「じゃ、とりあえず買い物行ってくるわ」

 

「そのことですが、八幡さん」

 

「どした?」

 

「外へ食べに行きませんか?」

 

「外?」

 

「はい。もし今日買った食材が余っても私は食べないと思うので」

 

「それならそれで俺が持って帰るが、確かにせっかくだしな。セーラはそれでいいか?」

 

「八幡の奢りなら」

 

「この中だと、俺が一番金ねぇぞ。そんな俺にたかるのか」

 

 普段から高額で雇わないといけないセーラとSランクのレキと比べるとか止めて。

 

「私、女の子」

 

「俺は男女平等主義なんだよ」

 

「えー」

 

「……上限700円な」

 

 俺チョロすぎ。

 

「わーい」

 

「もうちょっと嬉しそうに言ってくれない?」

 

 

 

 

 はい、というわけであれからのんびりしてたら6時になり、俺らは武偵御用達――いつものお台場に来たわけだが…………。

 

「うへぇ……人多い」

 

 夏休み終盤なこともあって、わんさか人がいる。しかも暑い。もう6時だぞ。

 

「日本って暑い」

 

「分かる」 

 

 セーラの意見に同意しつつ、小走りで屋内に入る。涼しい。やっぱりエアコンはいいな。文明の利器。

 

「レキやセーラは食べたいもん、何か希望あるか?」

 

「特にありません」

 

「うーん……ここに何があるの?」

 

「ある程度はあると思うぞ。それにフードコートがあるからいざとなれば、変わった料理以外なら何でもあるだろうな」

 

「ふーん。オススメは?」

 

「ラーメン」

 

 俺、即答。

 

「八幡さんはかなりのラーメン好きです。材木座さんや遠山さん、それに平塚先生ともよく食べ歩きしてますよね」

 

「主に先生がな……けっこう紹介してくれるし。気になるじゃん。アイツらもラーメン好きだからな」

 

 そして、婚活に対しての愚痴をしてくる。俺らは苦笑いで話を合わせるしかない。機嫌がただでさえ悪い上に更に悪くすると、大概俺が殴られる。たまに遠山と材木座も犠牲に遭う。早く相手見つけて!!

 

「私ラーメン食べたことない。美味しいの?」

 

「そりゃもちろん美味いけど……そこは人の好みだから断言はできないな」

 

 油っこいとかにんにくが無理とかそういう人はいるにはいる。

 

「なら私も挑戦してみようかな」

 

「レキもそれでいいか?」

 

「はい」

 

 俺は2人を案内し、他と比べて特に味が尖ってないであろうせたが屋へと入る。

 

 全員、無難に醤油ラーメンを注文して待ってる間、レキが唐突に口を開く。

 

「そういえば八幡さん」

 

「何だ?」

 

「前にも私とお台場に来ましたね」

 

「前? あぁ……あの時か」

 

 あったあった。俺がイ・ウーに拉致られる前のことだな。あの時も色々と見て回ったものだ。それ以降からあまりにも怒涛の人生送ったからな……俺よく生きてるな。何回か死にかけたけど。

 

「へー、そんなこともあったんだ」

 

「まぁな」

 

 なお、しばらく経った後(イ・ウーから帰ってきた時)に狙撃された模様。

 

「あの頃は感情がまだはっきりと分かっていませんでしたが、楽しかったと思います」

 

「それは何より」

 

「八幡嬉しそう」

 

「え、そう?」

 

「うん、にやけてる。気持ち悪いよ」

 

「最後の一言いる? 俺だって傷付くよ?」

 

 この場でみっともなく泣くぞコラ。

 

「客観的な意見。他の客から見えない位置で良かったね。評判がた落ち」

 

「落ちる評判は元からないから安心しろ」

 

「胸を張って言わないでください」

 

 はい、ごめんなさい。

 

 レキに釘を刺され、思わず黙ってしまう。自分で言ってても悲しい。

 

 と、そうこうしていると、ラーメンが届く。うん、美味しそう。

 

「「いただきます」」

 

 2人が口を揃え食べ始めてから俺も言う。

 

「いただきます。……そういや、セーラは箸使えるのか?」

 

「大丈夫。練習した。……あつっ」

 

 ぎこちないにしろ、普通に食べているのでどうにかなるだろう。流石にラーメン店にフォークはないだろうしな。

 

「……え」

 

 セーラがレキを見て声を出す。

 

 そうセーラと話している間にもレキはいつもの1本ずつ吸う食べ方でどんどん食べている。綺麗な姿勢でかなりのハイペースなので、初見では驚くだろうな。俺も驚いた。

 

 そして、食べている最中にふと気になったことが。世間話ついでに問いかける。

 

「なぁ、セーラ」

 

「何?」

 

「日本での用事って何だ?」

 

「内緒……ただ、八幡とレキさんも関係あるかもね」

 

「何だそれ」

 

「時が来れば分かるよ」

 

 はぐらかされるな。

 

「私は何か分かりました」

 

 もう食べ終わったレキが告げる。 

「マジで?」

 

「はい。ですが、八幡さんの場合まだ可能性の段階ですので」

 

「分かった分かった。詳しくは聞かねぇよ」

 

 2人の口調からしてなんかヤバい雰囲気しかない話ってのは理解した。あぁ……嫌な予感しかない。

 

「ところで八幡」

 

「今度は何だ?」

 

「色金の力使えてる?」

 

「…………ぼちぼち」

 

 あ、知ってたのね。まぁ、金一さんが衛星で確認してる時点で情報が漏れてることくらい予想はできた。でもさ、

 

「あんまこういう場所で話す話題じゃないだろ」

 

 小声で話す。ラーメン店はけっこううるさいから周りには聞こえないとは思うが。

 

「それもそうだね。残り食べるよ」

 

「そうしてくれ」

 

 ……色金なぁ。一応はパトラの事件から色金の超能力を使おうとしている。まずはレーザービームを目標に練習しているが、あの時みたいに上手くいかない。何かきっかけが必要なのか。

 

 超能力はコツさえ掴めば、そこからは吸収するように使える。問題はそのコツ。あの時俺はなぜ使えたのだろうか? 色金――璃璃神が話しかけたからだろうか? まだ分からない。   

 

 俺が初めて超能力――烈風を使うために最初にしたことはイメトレなんだが、烈風に関してはセーラが手本見せてくれたこともあってか時間はかなりかかったが、こうしててきるようになった。

 

 だけど、レーザーってどうイメージすればいいのか……。衛星の映像は上からしか見えないからよく分からないし。1回だけできそうなことがあったけど……失敗した。

 

 しかし、あれから変化したこともある。単純に言うと、俺の超能力の上限が上がった。烈風を長く使えるようになっただけで、烈風の最大威力、範囲は変わらない。それでも、俺からしたらかなりの変化だ。

 

 もちろん、日によって使える頻度は違うから烈風だけをアテにするわけにもいかないわけだが。

 

 …………っと、ラーメン伸びてしまう。早く食べよう。

 

 

 

 

「ふー……なかなか多かった」

 

 全員ラーメンを食べ終わり、今はベンチに座っている。

 

「美味しかったか?」

 

「うん」

 

 セーラは満足そうに頷く。

 

「ごちそうさまでした」

 

「ごちそうさま」

 

「おう。……それで、今から何か買い物とかあるか? まだ7時ちょいだし時間あるぞ」

 

 2人はしばらく考えてる様子をとり、

 

「特にないかな」

 

「私もです。八幡さんは?」

 

 ……MAXコーヒーは東京にはないし、基本宅配頼んでるからな。

 

「ないな」

 

「なら帰る?」

 

「明日の朝飯は……どうにかなるか」

 

 まだ冷蔵庫にいくらか肉やら野菜やらあるな。

 

「よし、帰るか」

 

 

 

 帰りに1/1ガンダムを見てから帰った。暗いときの発光はやはり素晴らしい。

 

 汚職やらで一時期問題になったけど、あれ年代的にファーストの方が展示されてる時だからな! 悪いのはA・Eじゃなくて、いつもの隠蔽大好きな連邦だからな!! ユニコーンへの風評被害は止めてもらおうか。

 

 あ、NT面白かったな。予想以上にサイコフレームがヤバい代物だったし、バナージカッコ良すぎな。バナージはグリプス時のアムロみたいに監禁はされてないのな。バナージの今の立ち位置はよく分からんな。

 

 NTガンダムの武装で今さら有線かって思ったけど、有線だからこそのあの出力なのだろう。他には、ゾルタン様の3分の宇宙世紀の動画のやつが面白かった。ロングランヒットしちゃうんだな、これがぁ!! それとフェネクスのカッコ良さよ。なかなかにチート性能だったな。……私、生まれ変わったら専業主夫になりたい。

 

 最後に、劇場で聞くLiSAさんのnarrativeが何より最高でした。

 

 

 …………なんかすいません。

 

 

 

 

 

 

 

 帰った頃にはもう8時を回っており、夏といえどかなり暗い。

 

 特に何もない部屋でくつろぎながら、俺らは順番にシャワーを浴びてく。レキ、セーラとシャワーを終え、タオルを借りて俺もシャワーを浴びる。

 

 レキは奥の寝室で日課……というより習慣のドラグノフやらの点検をしている。

 

「ほら、魚肉ソーセージだぞ」

 

 その間、俺はハイマキにエサを与えて戯れている。セーラは隣でボーッとしている。

 

 コイツに気に入られてるのかよく分からんな。エサを見せたら素直にこっち来るけど、それがないと、俺が触れても吠えも唸りもせずただジッとしている。

 

 ……犬(狼)にはどう接すればいいのか詳しくないからな。比企谷家が飼ってるのは猫だし。

 

「八幡」

 

「ん?」

 

「その子って犬じゃないよね?」 

 

「狼だな。あれだ、ブラドの部下だった奴。レキが手懐けた」

 

「手懐けたってスゴい」

 

「それな。レキが飼い主だからかけっこう強いぞ。甲冑着てるコイツを使って跳弾させて狙撃することもできるらしいしな」

 

「へー……」

 

 けっきょく、それはレキがスゴいのでは? という話だが、撃たれても全く動じないハイマキの精神もなかなかのもんだからな。

 

 自分で言ってて思ったけど、レキはそろそろ英霊として呼ばれてもおかしくはなさそう。クラスはアーチャーだな。神崎と星伽さんは絶対バーサーカー。人の話聞かないところとか、近接戦闘能力が化け物レベルのところとか。理子は……アサシンかな。変装技術が優れてるとこや逃げるのが得意なとこが何となくのイメージだがアサシンっぽい。

 

 なんてどうでもいいことを考えてると、レキがこちらの部屋に入ってくる。

 

「私の寝室で3人寝るのは少し狭いかもしれないので、今日はここで寝ましょうか」

 

「何で一緒の部屋で寝る前提? 俺だけ別の部屋でお前ら寝室行けよ」

 

 寝室といってもベッドないけど。

 

「家主命令です」

 

 加えてセーラが。

 

「それに一緒に寝ないと八幡がいる意味ない」

 

「あ、そっか。俺ストッパー的役割だったな」

 

 普通に忘れてた。

 

 と、セーラがごそごそと荷物から何か取り出す……ってそれ。

 

「俺の枕じゃん」

 

「一晩借りるね。せめて枕はほしい」

 

 セーラは俺の部屋から持ってきた敷き布団に寝転がりタオルケットにくるまる。

 

「お休み」

 

 飛行機の時差で疲れたのか、わりとすぐに寝息が聞こえる。こうして見ると、年相応の女の子だな。セーラまつ毛長っ。

 

 ……てか、その敷き布団、神崎から逃げるようにレキの部屋に泊まった後に買ったやつ。次レキの部屋に泊まる時に使おうと思ってた。こうなるなら、レキの部屋に敷き布団くらい常備させときゃ良かった、と少し後悔している。

 

「レキはもう寝るのか?」

 

「はい。ドラグノフの整備も済んだのでそろそろ就寝しようかと」

 

 と、レキはドラグノフをケースに閉まっている。

 

「あれ? お前ドラグノフ抱えて寝るのが基本スタイルだろ?」

 

 これは璃璃神に従っていた頃から変わりなく続けていることだ。もう生活の一部になっているのだろう。

 

「いつもならそうですが、今日違います」

 

 俺が貸したもう1枚のタオルケットを俺に向ける。

 

「一緒に寝ましょう」

 

 ……………………………うん?

 

「えーっと……どゆこと?」

 

 脳の処理がちょっと追い付かない。

 

「何か掛けないと寒いでしょう」 

 

「今は夏なんですがそれは」

 

 1日適当に寝たくらいでは風邪引くくらい体弱くないぞ。1年のころ強襲科で山に放り投げられて野宿したこともある。あれはとにかく虫が鬱陶しかった。

 

 レキは俺の顔を覗き込む。

 

「嫌です「そんなことはない」……か? ……そうですか」 

 

 俺の食い付き具合に若干引いてる。なんかごめん。

 

「では、寝ましょうか」

 

「おう」

 

 俺とレキは体育座りで一緒のタオルケットにくるまる。レキは普段この体勢で寝てるわけだが、俺は絶対途中で起きそう。ま、いっか。その時はその時だ。

 

 眠くなるまで、ボーッとしている。そこでチラッとレキを見る。レキも目は瞑っているが、さすがにまだ寝てない。ハイマキはゆっくり動きレキの隣で寝転ぶ。

 

「なぁ、レキ」

 

「何ですか?」

 

「そういや、サッカーどうなったの?」

 

 サッカーど素人の武偵対かなり強いサッカーチームとの対決だったらしい。

 

「一応勝ちはしましたが、最後にどうやらオフサイドをしていたらしいです。後になって分かりました」

 

「オフサイドかー。俺も理屈は分かるが、イマイチピンとこないルールなんだよな」

 

 別にそのくらい良くね? って思う。 

 

「それだと遠山の単位どうなるんだ? 無効?」

 

 無効だと流石にヤバいぞ。

 

「そこは知りません。恐らくですが、その依頼の単位の7割か8割くらいを取得という形になるかと」

 

「あー……そんな感じね」

 

 大丈夫か、遠山の奴。何かあったら手伝おう。カジノの事件は俺の不手際で迷惑かけたし。

 

「話は変わるが、この夏休みでウルスには帰ったのか?」

 

「はい。八幡さんが風の力を使ったから相談したいというのもありましたが、何より私が帰りたかったので」

 

 帰りたかった、か。……そう思えるようで良かった。

 

「それで、ボルテさんたち元気だったか?」

 

「はい。……八幡さん、報告いいですか?」

 

「ん? いいぞ」

 

「この前のカジノでのことを相談したのですが、恐らくあの時風の力を使えたわけは、徐々に風が八幡さんの体に馴染んできているからだろう……と」

 

「馴染むって、俺はブラドの時……あれは乗っ取られただけだが璃璃の力を1回使ってたぞ。なんかそれはおかしくないか?」

 

「ボルテさんが言うには、その頃は半分ほど馴染んでおり、もう今は8割以上は馴染んでいるかと。……あの後体に変化はありますか?」 

 

「まぁ……一応は」

 

 超能力の上限増えたな。長時間使えるようになった。

 

「それが証拠です。八幡さんは風と繋がるスピードが早すぎます」

 

 レキは生まれてから一緒にいて、神崎は緋緋色金を撃ち込まれてから4年か。俺はまだ良くて3ヶ月。確かに早い。

 

 レキは俺の瞳をジッと見つめて宣言する。

 

「だから、時が来れば、貴方はいずれ――超々能力者(ハイパーステルス)になるでしょう。ウルスからは以上です」 

 

「…………そうか。わざわざありがとな」

 

「はい。ただ、私は心配です」

 

「何が?」 

 

「セーラさんが知っていたようにもう八幡さんが超々能力者になる可能性があることが知られています」

 

「そりゃあ……衛星の映像買えば分かるよな。俺が戦ったときなんて特に曇ってはなかったから。屋内でもなかったしな」

 

「だからこそ、世界でまだ3人もいない超々能力者である貴重な人材として狙われることがあると思います」

 

「俺をか……」

 

 物好きもいるもんだな。

 

「――予測不能(イレギュラー)。もうこの名前が浸透していますから」

 

「マジで? そんなに?」

 

 レキも知ってたのか?

 

「はい」

 

「うーっわ……」

 

 頭を抱える。ブラドに続いてパトラとも戦ったからか。

 

「武偵の二つ名は名誉なことですよ?」

 

「いや、ただ単に恥ずかしいわ。小学生かっての。……大丈夫大丈夫。まだ神崎みたいに正式な二つ名ってわけじゃない。大丈夫だ、大丈夫…………」

 

 自分に言い聞かせるように呟く。  

 

 思考を切り替える。

 

「で、その狙われるかもしれないって話だが……何とかなるだろ」

 

「そうでしょうか」

 

「俺はレキのパートナーだ。これからも。だから何とかなる。ないかもしれんが、もし誰かに……それこそどっかの組織とかに引き抜かれてしまいそうな時はレキも連れてくよ。一緒にだ」

 

 その言葉を聞き、レキは目を丸くさせて。

 

「フフッ……ですね。私も八幡さんと一緒がいいです」

 

 口元を緩ませて、そう笑う。

 

「スッキリしました。では、そろそろ寝ましょう」

 

「おう。お休み」

 

「お休みなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




もうすぐLiSAさんのライブ!!楽しみ!!!!!


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