まだ微妙にはっきりとしていない意識の中で眩しいと感じる。
「んー…………」
目が覚める。カーテン越しからでも外はもう明るく、朝になったことが分かる。
さて、そろそろ起き上がらないと……ん? あれ? 起き上がる? いやいや、俺座って寝たはずだ。なぜ起き上がらないといけないのか……って。
「おはようございます、八幡さん」
「お、おう。おはよう」
視界にレキの顔が映る。天井もチラッと見える。てか、レキの顔めっちゃ近い。そして、顔から何か柔らかい感触が伝わってくる。それに加えてほんのりと暖かさもある。
ようやく意識がある程度はっきりしてきた。これはあれか……。
「膝枕か」
男子がわりと夢見るシチュエーションの1つ。
「はい」
「俺、寝相悪かったか?」
「いいえ」
「なら、どうして俺はレキに膝枕を?」
「…………何故でしょう。不思議なこともあるものですね」
スッと目を逸らすレキ。あ、うん、察した。つまりは無理矢理かよ。いや別に損はこれっぽっちもしてないし、寧ろ嬉しいんだけど、そっちは動き制限されたりと大変だろうに……。
上体を起こしつつ周りを見渡す。
「セーラは?」
「顔を洗っています」
「そうか」
「あ、起きたの?」
まだ眠そうなセーラがリビングに戻ってきた。
「おう」
「おはよう」
「おはよう」
「ハァ…………」
すると、突然セーラが若干げんなりした様子でため息を吐く。
「え、どうした?」
「どうしたも何も、目が覚めたら八幡が膝枕されてるんだよ? それもレキは少し微笑んでて……朝から甘ったるい空間見せつけないでほしい。今もくっついてるし」
「それは……すまん」
俺が昔告白を断られクラスに言いふらされた時とはまた違う気まずさがある。
「そういうのは私がいないとこでやって」
「だとさ、レキ」
必殺責任転嫁。
「善処します」
「確約して」
善処するとか中々信用できない言葉だぞ……ってこの前、俺が遠山にそう言った覚えがあるような。
「2人に言ってるんだよ」
「はい、ごめんなさい」
「……ごめんなさい」
言葉にそこまで感情が込められてないのにスゴい迫力だ。思わず謝ってしまう。そんな俺に釣られてレキも頭を下げる。
「八幡たちは付き合ってるの?」
「さぁ、よく分からん」
「私もです」
その言葉にセーラは苦虫を噛み潰したような表情になる。
「えぇ……どういうことなの? 私から見れば、ただただのろけてる恋人同士なんだけど」
「俺ら、世間には疎いからその辺りの認識が分かりません!」
「少しは自覚しなよ」
「はい」
ぐうの音も出ない。
「まぁいいや。後で膝枕の写真理子たちに送ろ」
ちょっと無視できないことを言ったぞ。
「待て待て……えっ、何それ?」
「いえーい」
フフンッ、と自慢げに携帯の写真を見せびらかしてくる。レキが俺の頭を撫でてる写真。うわっ、マジで撮られてる。てか、レキも黙認するなよ! お前ならそのくらい気づけるだろ! あ、よく見たらレキカメラ目線じゃないか!
「それ寄越せ――って、うおっ」
携帯を奪おうとセーラに飛びかかった瞬間――いきなり地面に叩きつけられる。
どうやらセーラは風が俺を押し潰すくらいの威力が起こした。うつ伏せの状態から全く動けねぇ。変な角度で膝をぶつけて地味に痛い。
「あまいあまーい」
ギリギリ動く頭でセーラを見上げると……めっちゃドヤ顔で見下げてくる。あぁ! ムカつく!
「くっそが……」
烈風を使おうにもセーラの力が強すぎて集中できない。根本的にセーラの超能力の方が俺より圧倒的に力が強いわけだから、使えたとしても到底太刀打ちできないだろう。銃は今手元にないし。
おい、床がミシミシと軋んでるぞ。お前、どんだけ強くしてんだよ。
……レキはいつの間にか廊下まで逃げてる。めっちゃこっち覗いてるんですけど。そんなとこで危機察知能力発揮するな。せめて助けて。
「レキにはこの写真あげて買収してるから」
そんな事実は聞きたくなかった。まぁ、武偵だもんな、買収するなんてよくあることだ。そんなの武偵にとっては定石だ。そこに文句は言えない。……でも、お前の部屋そろそろヤバいよ? ていうか、逆にそれそんなに欲しいのか?
「はい終わり」
それから数秒経ち、セーラのその一言で解放される。
「ハァ……あぁ、いって……」
体をそれこそ巨大な生物にずっと踏み潰されてるような感じだった。改めて、セーラの力の強さの一旦を垣間見た。やろと思えば鎌鼬で俺の首を斬ることもできるわけだし。俺もそろそろ鎌鼬の修得をするべきか……でも、セーラ並の力ないと土台無理だしなぁ。
もうセーラとは戦いたくないわ。てか、イ・ウーの面子とは関わりたくない。マジで疲れた……なんでこんなどうでもいい場面で死にかけないといけないんだ。
「もうこれで奪わないよね?」
「…………おう」
なんかもうしんどい。朝っぱらからすることじゃないな。
「ま、さすがにデータは消しとくよ。想像権? とかで日本で騒ぎ起こすのは嫌だし」
「肖像権な。想像してどうすんだよ」
と、俺の目の前でデータを削除するセーラに一安心する。……あのさ、消してくれるなら完全にこのやり取り無駄だっただろうが。何? そんなに苛めたい? そういうお年頃? サディストなの?
「八幡は朝ごはんどうするの?」
セーラはさっきまであったことをもう気にしてないような口ぶりで質問する。
「俺はもう家で適当に済ませようと思ったが」
「えー、私の分は?」
「ホテルにチェックインするついでに食いに行けば? どっかカフェとかあるだろ。さすがに同居人いる状態の部屋に案内はできん。絶対面倒だからな」
遠山に説明するのに、お前が潰したイ・ウーのメンバーの1人です! とか言えるわけないだろ。神崎やらが押し寄せてくるに決まってる。
そして、時間を確認したらもう9時を過ぎている。このくらいなら寄り道してホテルに着く頃にはチェックインできる時間帯だろう。
……にしても、昨日は遠山がいない時に訪ねてきたのは幸運だったな。ドアが爆破されたから差し引き0だが。
「ま、それもそうだね。あまりレキにも迷惑かけられないし」
荷物をテキパキ纏めだしたセーラに対して、俺はこう口走ってしまう。
「風でここの床思いっきり軋ませたりしたのはノーカンなのか……」
「――斬るよ?」
「すまん」
師匠には頭が上がらない。
「じゃ、お世話になった」
キャリーケースを引いたセーラを玄関まで見送る。
「道分かるか?」
「うん」
「ここは物騒だし気を付けろよ」
どこから流れ弾が飛んでくることがしばしばある。
「大丈夫」
「セーラさん、お元気で」
「うん。レキも泊めてくれてありがと。それと八幡」
黒い帽子を被り、靴を履いたセーラはまるで忠告するように――
「また近いうちに会うかもしれないけど――それまで死なないでね」
それだけ言い残して去っていった。
それからセーラが寝るのに使った布団はお願いしてレキの空き部屋に置かせてもらうことにした。さすがにまた運ぶのはめんどい。
タオルケットを畳んで袋に入れて一旦俺の部屋に戻ることにする。
「いきなり泊まって悪かったな」
「大丈夫です。私は楽しかったですので」
「そっか」
「ところで、八幡さん。忘れてませんよね?」
「……あぁ。また昼にでも」
「はい」
帰宅途中、そろそろ神崎の色金関連について何か手を打たないと考える。
さぁて、どうするかね。先に遠山に色金のこと教えて神崎をどうにかしてもらうか。それとも遠山には黙って神崎の方をどうにかするか。いっそのこと両方か……どれがいいのか分かんないな。
最終的には神崎が遠山から離れてくれれば――というより、必要以上に関与しないでくれれば緋緋神の出現は抑えれると思う。絶対とは言えないが。
以前の風に従ってた頃のレキなら、手っ取り早く神崎を殺すか遠山を監禁ぐらいはしてそうだが……それはアウトすぎるだろう。一応俺も似たようなことを考えたけど。
少しずつレキと相談して、最終的な判断は俺に任すって言ってくれたが、俺がこんなに優柔不断だったら意味ないな。下手すれば、遠山や神崎と親しい人も死ぬかもしれないし、関係のない大勢の人が死ぬかもしれない。それだけの力が色金にはある……らしい。イマイチ実感ねぇけど。
レキには夏休みが終わるまでには一度アクションを起こしてみようと言われた。それは俺も賛成だ。あまり先伸ばしにはできない問題だからな。
――ただ、人の恋路を邪魔するのは気が進まない。
「どうにかしないとなー」
と、呟いてるうちにもう部屋に着いた。
「……そんなに唸ってどうした?」
帰ってきて早々、ソファーで腕を組んで悩んでる様子の遠山に言う。
「おう、比企谷。案外帰ってくるの早かったな。……いや、その、昨日のサッカーの試合で勝ったはいいんだが、オフサイドやらが後で分かって、単位全部貰えなかったんだよ。それで、進級に必要な単位が足りない」
あー、レキが言ってたな
「残りは?」
「0,1だ」
まーた微妙な数字。そのくらいなら何とかなるかもしれんが、問題は今日が8/30ということ。
「教師どもに頭下げたら何かお情けの依頼貰えるかもしれんぞ?」
「もうしてきた」
「お早いことで。内容は?」
「探偵科の棟の掃除」
「あれ全部をか? けっこう広いだろ。1人じゃキツくねぇか?」
大学の講義棟くらいの広さはあるぞ。武偵高はやけに土地あるからな。ある意味一種の訓練施設だし。
「だから困ってんだよ。武藤も不知火も用事あるから断られて。神崎たちにも頼んでみたが、返事来なくて……なぁ比企谷、明日時間あるか?」
「まぁ、大丈夫だ。手伝える。途中で抜けるかもしれんが」
「聞いといてなんだが、ホントにいいのか? 夏休み最後の日なのに。お前のことだから盛大にだらけたいんじゃないのか?」
……それは否定できない。
「カジノに関しちゃ俺の不手際があったわけだし、そのくらいなら特に問題ない」
「マジで助かる。また何か奢るよ」
「別に気にすんなって。何時からだ?」
「9時から」
「分かった。とりあえず話はまた後で。腹減った。朝飯にするわ」
「おう」
そして、朝飯を食べ終え俺は学校に行く。
「よう、待たせたか?」
「大丈夫」
「私たちも今来たとこですし」
留美と一色と待ち合わせをしていた。場所は火薬が香る体育館だが。ロマンもへったくれもない。壁や床のところどころ凹んでるし。
目的はただの訓練。この夏休み、週2回程度で訓練に付き合っている。一色は俺のアミカ……弟子であり、留美も前の弟子だ。まぁ、そういう理由もあるが、もちろん俺の練習にもなる。というか、コイツらがいなかったら、俺の訓練に付き合ってくれる奴がそこまでいないまでもある。
「じゃ、今日は何する? 何か希望あるか?」
軽く準備運動しながら尋ねる。
「どうしましょうかね。最近、武器なしの徒手空拳ばかりですし」
と、一色。次に留美が。
「後は銃で的撃ってるだけだし……そうだ、アル=カタは?」
アル=カタとは、ナイフや銃による演舞……主にアドシアードの言葉だが、こういう場面ではナイフや銃を使った近接格闘として使われる。
武偵同士の戦いになると基本的に銃は打撃武器になる。頭狙えなかったり、防弾服を着てたりと銃は一撃必殺の武器には成り得ないわけだ。もちろん撃たれたら車に轢かれた並の衝撃があるが、もう武偵高――特に強襲科の奴らは大概慣れてる。
「んー……アル=カタねぇ」
「苦手なの?」
意外そうに聞いてくる留美に対して。
「まぁ、ぶっちゃけな。授業で最低限習ったが、使う機会がほとんどなかったからな。俺の当たる事件で銃を持つ同士と戦うってのが少なかったし、銃を持ってたとしてもほとんどが素人だったから。……ほら、留美と前に解決した事件もそうだろ?」
あの立て籠り事件。
「確かに」
うんうん、と納得する留美。
その場を制圧するためのスピード勝負となると、アル=カタとかする暇ない。あれは基本は武偵同士の戦闘なわけだし。
「でも、やっといて損はないですよね」
「そうなんだよな。選択肢が多いに越したことはないし」
一色の意見には同意。
「じゃあ、それすっか」
それから学校の購買部に売ってあったゴム弾をある程度買って、実弾のマガジンと交換する。しかしまぁ、ゴム弾って言ってもこれで撃たれてもそれなりに痛いんだよなぁ。
「まずは私からいいですか?」
一色が意気揚々と手を挙げる。
「おう。……つーか、なんかやる気だな」
「先輩が苦手って言ってたのでアル=カタなら勝てるかもしれないので、そう思うとやる気出てきました!」
「そうかい。ただ、そう簡単に後輩に負けるわけにはいかないな」
んー……どう攻めるかね。一色も強襲科になってから早数ヵ月。地道に実力をつけている。烈風を使えば、体勢を崩しながら攻撃できるかもだが、密着状態だと俺も巻き込むかもしれない。
いや、そもそもの話、自分の重要な情報は秘匿しないと。武偵やってると、些細なことでも情報が洩れる可能性があるからな。できる限り手札は伏せとくのに越したことはない。…………衛星からがっつり見られてる映像が存在するのはこの際置いておく。
俺は右手にファイブセブン、左手は素手で腰を落としながら構える。ナイフを持つと両手が制限されるから動きにくい。神崎みたいな両利きだったら話は別なんだがな。てか、ガバメントを両手で扱えるアイツが化け物なんだよなぁ。
一色も俺と似たような感じ。銃を片手に構えている。アイツの持ち銃はFNブローニングM1910だ。小型の銃。地味に俺のファイブセブンと同じFN社である。弾のサイズが分からないからな……最大で7発か8発のどちらか。
「よし、行くぞ」
「はい!」
一色が返事をしたその瞬間、足下に一発撃つ。ゴム弾だから跳ねるけど、離れた留美にも当たらないような位置を狙って。
それにほんの少し怯んだ隙に一気に近付き、ヤクザキックの要領で思いきり蹴る。……が、一色は蹴りの勢いを利用して後ろに跳びつつ――パァン! と、俺の腹に弾を放つ。
「……ッ」
跳んだとこの着地を狙おうとしたが、撃たれた衝撃で後ずさってそれは失敗。ていうか、容赦なく当ててきたな。俺だって少しは遠慮してるのに。
今度は一色がダッシュで間合いを詰めてきた。打撃や蹴りを避けながら一色が銃を俺の肩辺りに向けて構えたところで、銃を持ってる手首を掴む。それから軽く捻り安易に撃てないようにする。例え撃てたとしても狙い通りには撃てまい。
「きゃっ!」
そのまま手首を掴んでる状態で俺の方に引っ張り――
「フッ!」
ファイブセブンを上に放り、体勢が崩れながら俺に近付いた一色の顎に向けて掌底をぶちかます。
「あっ……!」
引っ張った勢いが足された掌底で、一色は頭をガクンと揺らし倒れていく――――が
「うおっ……危なっ」
「ちっ」
この子、生意気にも倒れながら股間を蹴ってきやがった。咄嗟に手を放してギリギリかわしたけど。下がりながらファイブセブンもキャッチてきた。あとマジもんの舌打ちは止めなさい。
「ハァ~……つまんない先輩ですね。そこは私の蹴りがクリティカルヒットするとこですよ」
ぶーぶーと文句言う一色。
「そんな芸人魂発揮したくないわ。……で、続けるか? そこそこいいの入ったと思うが」
人間、顎って弱い。思いきり殴られたらかなり頭グラグラするしな。
「まだまだ大丈夫です」
「ならいいが、無理はするなよ」
「はい」
戦闘再開。
お互い50cmほどの距離。お返しにと今度は俺が一色の腹に向けて撃つ。しかし、一色の裏拳によって俺の手首を殴られ、射線を逸らされる。弾は場違いな方向に飛ぶが、イチイチ気にしてられない。このくらい当たり前だし。
次に一色が撃とうとするが、ブローニングの銃身を掴み、それを阻止。俺も撃つけど、一色も負けじと避ける。……このような展開がしばらく続く。
途中、一色の呼吸が乱れ、一気に息を吸い込んだ時に、俺はタイミングを見計らって銃のグリップで殴り、その衝撃でブローニングを吹っ飛ばす。と思ったら一色はすぐに腰にあるナイフを逆手持ちで抜刀。
――――逆手持ちか。
逆手持ちは、基本下から斜めへの攻撃が多く、振るわれる攻撃は死角からの攻めで、視界で捉えることはなかなか難しい。達人のレベルになれば反応なんてできない。だから、扱えるには難易度がかなり高いと個人的に思う。上から斬りつける方が力入るしな。
そんな意識があったから不意を突かれた。
ただ、今回に限っては――
「ふぅ……練習が必要だな」
まだ逆手持ちに慣れてない一色が相手。センサーで大体の位置は分かる上に、まだまだスピードも正確さも足りない。おまけに下から振るう攻撃は力が乗りにくい。
なので、対処もまぁ、何とか間に合った。防弾、防刃の性能がある制服で直接受けた。これ間に合わなかったら首危なかったかもな。武偵法の縛りでそこまでヤバいことはしないだろうが。
それから、俺はグリップでナイフの刃を上から叩く。若干、前のめりに攻撃した一色は前に倒れかけるが、必死に踏ん張る。だけど、それは俺にとってはただの隙でしかない。
「おりゃ」
「ふべっ!」
がら空きの背中を軽く殴ると、そのまま呻き声と共に顔から倒れた。ちょっと痛そう。
「俺の勝ちだな」
「ちぇー、途中惜しかったとこもあったのに。先輩ひどーい」
頭を抑えて涙をウルウルさせながら立ち上がる一色。あざとい。
「これ勝負だから……。まぁ、確かに、股間蹴られかけたりしたところはびっくりはしたがな」
「あそこ、私からしたらなかなか上手く攻撃できたと思うんですけどね」
「いやいや、その前に攻撃喰らったろ。そこで意識飛んだら終わりじゃねぇか」
「一応は後ろにちょっと跳んで衝撃軽減はしましたよ。先輩に手を握られてたから効果はそこまででしたけど。……まだ微妙に頭少し痛いですし」
「冷やしとくか?」
「そうしまーす。留美ちゃん、氷ちょうだい」
「この時期だと溶ける。はい、冷えピタ。その前に汗拭く」
「どうもー」
なんか留美が一色の汗を拭いてる様子を見ると……留美がオカンで、一色が子どもみたいだ。
あの後、何回か一色と留美とアル=カタの練習をし、2人の反省点を色々と教えたりとしていた。ある程度済んでから時間を確認する。
「もう昼過ぎか。お前ら、これからどうする?」
「午後からはあかりちゃん達と訓練です」
間宮……あやねるコンビの1人か。あの特殊性癖軍団のトップ。本人は自覚なさそう。特に佐々木が怖い。何回か間宮と訓練したことあるけど、その度に睨んでくる。アイツ確か探偵科なのによく強襲科にいるから余計に。
「元気なことで。留美は?」
「実習が2時からある」
「なら今日は終わりだな。お疲れ様」
「八幡はこれからどうするの?」
「適当にだらけて過ごす」
今日は他にやることあるんだけど。まぁ、どうせすぐに済むことだと思うから。
「ふーん」
「何?」
「や、別に。八幡らしいなって」
「そこでもっと訓練に励むって言わない辺り先輩ですよね」
「ほぼ毎日必要最低限は動いてるからいいんだよ。休める時には休む。ただただ疲れるだけの訓練なんて意味ないからな。重要なのはいかに短時間で効率良くこなせるかだ」
「無駄に説得力ありますね……」
呆れ顔の一色に頷きながら同意した留美は付け加える。
「でも、八幡。効率的って言うけど、筋トレは長時間して筋肉を疲弊させて筋繊維千切れないと強くならないらしい」
「それもそうだが、俺はあまり必要以上に筋肉つけないようにしてるからな。下手に筋肉つけると動き狂うことあるし。体重は一定にしている」
って何? 留美はムキムキにでもなりたいの?
「へー」
「留美から聞いたわりには無関心な受け答えだな」
「先輩も似たような感じですよ」
「え、マジ?」
「そうです。私が近況報告……と言ってもあかりちゃん達と何をしたー、みたいな内容が多いですけど、その時の先輩の返事けっこう棒読みですよ」
確かに休憩の合間よく話してくれるけど。
「そこまでか? ちゃんと話は聞いてるが」
「それは分かってるんですけどねー。無愛想って言うか何て言うか……」
「そんなに女子との会話に慣れてない?」
「そうそう、留美ちゃん。そんな感じ!」
…………痛いとこ突かれたような。つか、さっきから失礼だな。
「レキ先輩とはそこまで会話必要なさそうだもんね」
「いや、普通に話すぞ?」
「そう言えば、レキ先輩と泊まったって本当ですか? 女子寮から先輩っぽい姿をうっすらと見たという目撃情報がありますけど」
留美の問いを無難に受け流したと思ったら次は一色か。……って、見られてた。布団とか運んだからやっぱ目立ったかぁ。
「気にするな。それよりもお前ら、まだ予定あるんだろ。さっさと飯休憩でもしろ。時間なくなるぞ」
「うっ、もうこんな時間。今日は見逃してあげます。また後日聞きに行きますからね!」
「ご遠慮願います」
「大丈夫、一色さん。私が直接レキ先輩に聞くから」
「さっすが!」
「止めろ!」
そうだ、留美の奴……レキのメル友みたいな感じだった。
「八幡、じゃーねー」
「さようなら~」
で、そのまま逃げられた。こういう時の逃げ足は速いんだから。普段からそのスピードを発揮してくれ。
まぁ、うん、大丈夫だよな? さすがのレキもそこまで話さないだろう。……別に話さないよな? 不安になってきた。
とりあえずレキには後で口止めするよう言っておくとして、今は昼飯にしよう。学食に行くか。
そして、昼飯を食べ終えて人いないのを確認して廊下に移動する。そろそろ神崎に1度連絡するか。メールの方が良さそうだが、できるだけ返事早めに欲しいし電話にしよう。
「神崎か?」
『あら、八幡。あなたから掛けてくるなんて珍しいわね』
繋がった。いつものアニメ声だ。
「おう、いきなり悪いな。ちょっと話あって。今大丈夫か?」
『えぇ。何かしら?』
「えーっとだな、お前の体に埋まってる物について話したいことが」
その台詞に驚いたのか神崎の息を吸い込む音が聞こえた。
『…………アンタ、知っているのね?』
さっきまでの明るい口調から警戒しているような口調に変わった。いや、実際警戒しているのだろう。
「まぁな」
『そう言えば……この前八幡、あそこに居たことがあるって言ってたわね』
あそこ……イ・ウーね。あぁ、そういやブラドの時に言ったな。
「そういうこと。で、話の続きをしたいが……電話越しも何だし、どこかで会えるか?」
『……今からアタシの部屋に来てちょうだい』
あの超ゴージャスな部屋か。
「分かった」
通話を切る。目的地は決まった。さて、これが吉と出るか凶と出るか。
なかなか話進まないなぁ。原作に追いつく日は果たして来るのだろうか…………
ところで、話は全く関係ないのですが、皆さんはアニメや漫画の実写化はどう思いますか?
自分は映画がどんな出来であろうと、その原作に興味を持ってくれたらオッケーな人種ですし。嫌なら見ないし。
なんかようつべやTwitterで実写化反対! って無駄に騒ぐ人が多い方が正直鬱陶しい。そうやって騒ぐ人のせいで余計に2次元の選択を狭めてる気がします。そもそもの話、これをアニメ化する!? ってのもあります。もっと別の需要があるでしょ。ほら、緋弾のアリア2期とか。アニメで動くリサが見たい。
あ、3月辺りに緋弾のアリアファンブックが発売されますよ。新作のドラマCDありますよ!