八幡の武偵生活   作:NowHunt

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ここの感想欄に好意的な感想には必ずbadつけている人いるけど、あれマジで謎。合わなかったら読むの止めればいいのに。というよりめっちゃ律儀。ここまでくればもう俺のファンじゃね?





終わりと新たな事件

「……比企谷」

「お、遠山か」

 

 ココの襲撃があった翌日の京都駅にて。

 修学旅行も終わり、新幹線に乗りいつもの危なかっしい日常へと帰る予定だ。正直嫌だけどね。叶うならば、安全な日常を過ごし……昨日ココに襲われたし、そういうのはもう無理があるか。イ・ウーの残党に狙われてるもんな……。嫌になってきた。

などと軽い絶望に打ちひしがれながらレキと京都駅を歩いてる。

 

ホームには観光客や社会人、学生などで多くの人で賑わい、それはそれはとても騒がしい中、売店前で遠山と星伽さんと合流した。前もって連絡してなかったが、どうやら帰りの新幹線の時間は同じらしい。

 

「ところで楽しかったか? 始まる前なんかごたついたらしいが」

「まあ、それなりには。途中でトラブルあったけどな」

「遠山もか。俺も同じだ。星伽さんは?」

「私も楽しかったです。キンちゃんと色々周れてその、夜も……はぁ」

 

 星伽さんは手を頬に当ててとても嬉しそうにしている。……それは何よりです。何があったのかは訊く気は起きないが。敢えて突っ込むのは野暮というものだろう。

 

「レキさんはどうでした?」

「はい、私も楽しかったです」

「レキさんたちはどこに行ったのですか?」

「最初に――」

「…………」

 

 レキの即答。そこから星伽さんと会話を続けている。

 対して、珍しそうに遠山はレキをまじまじと見つめながら目を丸くしている。どうしたんだ。そんなに驚くようなことあるか?

 

「どうした?」

「いや……レキがそういうこと言うんだなと。楽しかったとか」

「ああそういう、最近はわりと言うぞ」

「そうなのか……。強襲科で組んだときは、なんつーか……」

「ああ、あの頃はな……ひたすら無表情だったな」

「そうそう」

 

 そこに関しては遠山に同意。任務中だから当たり前かもしれないが、それにしては無表情だったな。

 

「そういや、土産とかどうした? まだ買ってないんだけど」

 

 遠山たちに訊く。

 

「ちょっとした菓子は買った。実家に寄ったときにでも渡そうかなって」

「そういや、遠山って実家どこだっけ?」

「巣鴨」

「都内か」

「私は実家が青森なので、買ってないです。京都にも分社があるので、あまり買う必要性がないと言いますか」

「なるほど。星伽さんはそうだったな。んー、俺も買っておこうかな。京都って言うと……八ツ橋?」

「そこらが無難だよな。俺もそうした」

「あんまり知らないんだけど、硬いのやら柔らかいのやらなかったっけ?」

「比企谷さんが言っているのは、八ツ橋と生八ツ橋ですね。いわゆる、柔らかい八ツ橋が生八ツ橋です。最近はかなり種類も豊富になっていますね。家族へのお土産ならこちらがオススメかと」

 

 と、星伽さんに説明を受けながら生八ツ橋を何セットか購入。家族用と自分の夜食用にと。

 

「あ、ハチハチにキー君!」

「理子、あんたいきなり走らないでよ。……あら、八幡に……き、キンジもいたのね」

 

 そのまた道中で理子と神崎と遭遇。うーん、やっぱ神崎と遠山の距離感が微妙だ。

 2人とも荷物は……あれ? 案外少ない。珍しいな、理子なら性格的に沢山買いそうだと思ったが。

 

「理子ちゃん荷物少ないね。お土産とか買わなかったの? それにアリアも」

「買いすぎちゃったから宅配頼んだんだよねぇ」

「理子と同じく私もよ。ま、そんなにショッピングの時間取れなかったんだけど」

「ああ、確かに……」

 

 ああ、宅配か。それなら特に問題ないのか。それと、神崎たちも何か別の用事あったみたいだな。俺の知る由もないことだろうが、神崎は特にお疲れのようで。

 

「みんな一緒の時間だよね? そろそろ移動しようか」

 

 しばらく固まって話していたが、理子の音頭でホームまで動くことに。

 

「俺はさ、京都とかは充分楽しんだし、さっさと帰ろうと思ったからだけど、お前らはどうしてだ? また昼だし、もうちょい観光とかできそうだが」

 

 新幹線を待っている間に何となく気になったことを問いかける。

 

「あたしのお母さんの裁判の打ち合わせがあるからよ。キンジも白雪も理子もね」

 

 神崎の母親。そういえば、イ・ウーに懲役100年超えの罪を擦り付けられていたな。あのはた迷惑な組織も1ヶ月ほど前に瓦解したから、冤罪を晴らすために本腰を入れるというわけか。色金の秘密握ってたくらいでそんなに牢屋にぶち込まれることなのだろうか。首にかけてる漓漓を覗くが、とてもそういう風には思えない。

 

「理子はまあ、アイツらの一員だったから分かるとして、遠山や星伽さんも裁判に関係あるのか?」

 

 理子はそもそも武偵殺しだったからな。

 

「実質俺とアリアであそこを壊したわけだし、白雪は――」

「私は金一さんとキンちゃんと協力してパトラを捕まえましたから」

「なるほど。……それだと、ブラドやらと戦った俺には何かないのか?」

「八幡、あんた別に逮捕してないでしょ。勢い余って殺しただけじゃない」

「待て。それは俺じゃない」

 

 やったのは色金の方だ。

 

「同じことよ。ていうか、その前に殺ってたでしょ。あのよく分からない弾丸使って」

 

 ……言われてみれば。パトラ曰くあれで実質死んでたらしいし。

 

「それに白雪は直接乗り込んではいないけど、間接的にイ・ウーを破壊する手伝いはしたからね。その辺りが関係してるのよ」

「ああ、そういう」

 

 納得。何か協力できないかと思ったが、特にはいらないみたいだ。もし俺が必要とされるときがきたらそのときはきちんと協力しよう。無関係ではないことだ。それに神崎の話も訊いたことがあって、それなりには心情も理解している……つもりだからな。

 断言できない辺りが実に俺らしい。周りの人の考えなんて全て理解できるなんて烏滸がましいもいいところだ。そんな甘ったれた思考が通用するとはとてもじゃないが、思うことなどできない。自分で物事を考えるとどうしても主観が入る。そのような状態で客観的に相手を視ることはできもしないだろう。

 

 それでも、分かろうとする気持ちは決して無駄ではないと思うがな。なんでこんなこと考えるかと言うと、神崎と遠山が未だにギクシャクしている。原因はやはり俺にあるしどうにかしてやりたいが、当人たちの問題だからな。立ち位置も俺とレキ、それに星伽さんを挟んでいてかなり離れている。目を合わせないようにしているし……困ったもんだな。

 

「ハチハチ〜」

「…………どうした?」

 

 俺の長ったらしい無駄な思考は理子の声で中断された。

 

「これ持って」

「何だこの袋……うわっ…………」

 

 中には20個を超えるイチゴ牛乳のパックが。MAXコーヒーが好きな甘党の俺でもこれは無理。気持ち悪っ、糖尿病になりそう。つーか、吐きそう。

 

「これ飲むのか?」

「うん、乗っている間は暇だしねー」

「……何もこんなに飲まなくても。腹壊すぞ」

「いいのいいの。私のお腹はそんなことでは壊れない!」

「お前がいいなら、別にもう止めないけど」

 

 せめて味変えればいいのに。

 

 と、新幹線が京都駅に来たので全員乗り込む。運がいいのか全員同じ車内。不知火と武藤、それに材木座もいた。戸塚がいないのはとても……とても残念だ。

 

「八幡、お主も修学旅行は楽しめたか?」

 

 新幹線が動き出してから30分ほどが経つ。少しの間うつらうつらしていると、通路を挟んで隣にいる材木座が話しかけてきた。

 

 まだ暑いのに茶色のコートを着飾る姿には感心するよ。いくらそのコートの裏地に色々工具を仕込んでいるとはいえ。今は新幹線内でエアコン効いているがな。

 

「まあ、それなりに。材木座はお土産に木刀を買うタイプだと勝手に思ったが、買わなかったんだな」

「うむ。実のところかなりの悩みどころであった。やはり修学旅行と言えば木刀。これは外せない。そういう固定観念もあり、無論欲しかったが、持って帰る手間や我のごちゃっとした部屋に置くスペースを鑑みると……残念ながら断念した」

「持って帰る手間か……それなら郵送したらいいのに」

「はっ……!? その手がったか! ……しかし、八幡。木刀を配達員に頼むのは恥ずかしくないか?」

「……確かに。恥ずかしすぎる」

「であろう? もし洞爺湖の木刀であれば迷いなく購入していた」

 

 洞爺湖って北海道の湖だよな? なんでまた……ああ、銀さんか。あれわざわざ買う人いるのかな。

 

「とりあえず我は眠いので東京まで寝ることにする。着いたら起こしてくれ」

 

 材木座はさっきまで使っていたであろうアイマスクを装着した。なんで常備しているんだ。

 

「……これ、ハイマキ殿。我の足は肉ではないぞ」

 

 しばらくしていると、寝ようとしている材木座の足にかぶりつくハイマキが現れた。美味しそうな肉かと思っているのか。材木座は太っている体型たし、否定はしないが。

 

「おいハイマキ、大人しくしとけ。ソイツは見た目からして栄養ありそうだが、かなりバッチいぞ」

「それは酷くないか!?」

「反論できるか?」

「勿論、できないがな!」

「言っといてなんだが、自信満々に言うなよ」

 

 と、俺たちが言い合っていると――

 

「ハイマキ、止めなさい。――――汚いですよ」

「ぐふっ!!」

 

 レキの一言により材木座は致命傷を負った。傷は深いぞ! がっかりしろ!

 

「…………」

 

 それはさて置いて、俺は一応冗談で言っているし、ニュアンスからして材木座もそれを分かっていただろう。ぶっちゃけ、この程度ならいつも行っている会話だ。

 

 しかし…………なまじレキは滅多に嘘をつかない上に基本無表情。それが余計に材木座の心を抉った。いくらレキが美少女とはいえ、もしくは美少女だからこその言葉の破壊力。豪速球ストレートど真ん中すぎる。ど真ん中っていうかデッドボール? うーん、これはエゲツない。

 たまに作業の息抜きで材木座が持ってくるラノベの原稿を俺が批評しているときよりもダメージを負っている。しばらくは再起不能かな。……南無、材木座。葬式代500円くらいなら出してやる。

 

 そっとしておこう。ごめん、材木座。あとでラーメン奢る。黙祷。

 

「レキ、言い方ちょっとは考えろ」

 

 さすがに注意しておこう。

 

「言い方、ですか……?」

 

 あらやだこの子分かってない。めっちゃキョトンとしているよ。最も苦手そうな分野だもんね! 是非もないよね! 

 

「普通に止めなさいだけで良かったと思うぞ。汚いはいらなかっただろ」

「そうですか」

「狙撃するときに相手の心理は華麗に読めるくせに、日常生活だとどうしてそこまでポンコツになるのか」

「失礼ですね」

「これが失礼って分かるなら、もうちょい言葉選ぼうな? な?」

「どうして八幡さん以外のことを考えないといけないのですか?」

 

 呆気なく言い放つレキ。それが当然であるかのように。

これはどう反応すればいいのやら……。嬉しい言葉ではあるけど、状況が状況だけに素直に喜べない。材木座に追加ダメージ入ったし。「我も彼女欲しい……」と泣いている材木座は一旦放っておこう。

 

「まあ、なんだ、その辺りはゆっくり学んでいこう。そうしよう」

「お前それ自分に言い聞かせてねぇか?」

「……武藤か」

 

 割って入ってきたのは車輌科の武藤。立っているってことはトイレでも行っていたのか。にしても、相も変わらずゴツい体だな。材木座とは別の意味で暑苦しい奴だ。

 

「話一応訊いていたが、あれは材木座だとしばらく立ち直れねぇな。俺でも無理だ。……想像しただけで泣きそうになるぜ」

「全くだ……」

「レキも1年のときに比べりゃ、多少は人間関係良くなってたと思ったが、まだま……って、ん?」

 

 姿勢を崩しつつ不自然に言葉を切る武藤。何かおかしなところでもあったか? いや、おかしなところしかない気はするが。

 

「おい比企谷。やけに新幹線速くないか?」

「え? ……こんなもんじゃないか」

 

 あまり乗ったことないか分からないけど。ずっと速いからそこまで気にして……? おいおい、これはどういうことだ?

 

「何だぁ? トラブルか? 名古屋を通過したぞ」

 

 武藤が俺の疑問を口にした。

 

『――――お客様に、お知らせいたします』

 

 アナウンスが流れ始める。

 

『当列車は名古屋に到着する予定でしだが、不慮の事故により停車いたしません』

 

 アナウンスのタイミングがあまりにも不自然であり、何より不穏なアナウンス。

 そのアナウンスと共にどんどん速くなる新幹線。

 

「…………」

 

 これは……どうしてだろうか。とても嫌な予感がする。

 そして、その予感は見事に的中する。

 

 それは世にも珍しい――――新幹線ジャックの始まりだった。

 




実は洞爺湖の木刀持ってます!特に意識してなくて改めて思い返せばめちゃくちゃ自虐ネタになってた

最近給付金でノートpc買いまして、APEXっていうゲーム始めたんだけど、開始1分ですぐにやられる。まあ、まだルール完全に理解してない俺が悪いんだけど、何もかもが分からない。FPSって難しい。今までロック機能のあるゲームばかりやっていたから当たり前かな

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