「――――
俺の逸る気持ちなどお構い無しに甲冑を着込んでいるジャンヌは淡々と語りかける。
「まずはイ・ウー
しかし、その声はどこか緊張感を漂わせている。張り詰めた空気がこちらにも伝わってくる。
ジャンヌの宣言を聞きながら改めて周りを見渡すが――まず前提として誰が味方かはっきりしない。
遠山は……敵にはならない。そういう奴だ。ジャンヌは多分俺か遠山に気を遣ってくれているから味方の線はある。カナは分からん。完全に敵になることはないと思いたいが、パトラといるとなるとかなり曖昧になる。セーラは――恐らく敵になる可能性が高い。根拠のないただの勘だが、そう感じてしまう雰囲気だ。こちらに目を合わせようともしないし。で、レキは……君は味方だよね?
「初顔の者もいるので、序言しておこう。かつてな我々は諸国の闇に自分達を秘しつつ、各々の武術・知略を伝承し――求める物を巡り、奪い合ってきた。イ・ウーの隆盛と共にその争いは休止されたが……イ・ウーの崩壊と共に、今また、砲火を開こうとしている」
そうこう悩んでいる間にも話は進む。
なるほど、イ・ウーが出来上がる前にも超人は水面下でずっと争いあっていたのか。てことは、この集まり――人選はさすがに何年の単位で変わっているだろうが、一度や二度の話ではないってことになる。
その後、修道女っぽいメーヤとやらと眼帯娘――カツェが言い争い……ていうか、若干戦闘が始まった。そこにブラドの娘であるヒルダも加わり、ちとうるさかったが、なんとか落ち着いたところでジャンヌがまた口を開く。あの修道女……メーヤの武器が大剣を吊り下げていたことに思いきり突っ込みたかったのは置いておく。
「――私も、できれば戦いたくはない」
いつの間にかレキがドラグノフを構えているのを確認しつつ俺も戦闘態勢を整える。
ジャンヌの口上はまだ続く。
「しかし、いつかこの時が来る事は分かりきっていた。シャーロックの薨去と共にイ・ウーが崩壊し、我々が再び乱戦に陥ることはな。だからこの『宣戦会議』の開催も、彼の存命中から取り決めされていた。大使たちよ。我々は戦いを避けられない。我々は――そういう風にできているのだ」
ああ、そういえばイ・ウーはミサイルが搭載されている原潜だったな。つまり――イ・ウーは誰から見ようと危険な、いわゆるジョーカーのような存在ってことになる。それがあったから戦いを止めていたわけで、イ・ウーが今度はなくなったからまた戦おうというわけか。
……傍迷惑な話だ。一般人を巻き込むなと声を大にして言いたい。
「では、古の作法に則り、まず三つの協定を復唱する。86年前の宣戦会議ではフランス語だったそうだが、今回は私が日本語に翻訳したことを容赦頂きたい。
第一項。 いつ何時、誰が誰に挑戦する事も許される。戦いは決闘に準ずるものとするが、不意打ち、闇討ち、密偵、奇術の使用、侮辱も許される。
第二項。 際限無き殺戮を避けるため、決闘に値せぬ雑兵の戦用を禁ずる。これは第一項より優先される」
要するに何でもありの戦いだけど、数がバカ多い総力戦はなしというルールね。……無駄がないのはいいことと思うけど、第一項が形を成してなくない? 本当にいいの? ルールガバガバ過ぎだろ。ちょっとシャーロックに文句言ってやろうか……ってもう死んでるのか。
「そして、第三項。戦いは主に『
それぞれの組織がどちからの連盟に属するかはこの場での宣言によって定めるが、黙秘・無所属も許される。宣言後の鞍替えは禁じないが、誇り高き各位によりそれに応じた扱いをされる事を心得よ。
続けて連盟の宣言を募るが……まず、私たちイ・ウー研鑽派残党は『師団』となる事を宣言させてもらう。バチカンの聖女・メーヤは『師団』。魔女連隊のカツェ=グラッセ、それと
ルールを語ったジャンヌはバカでかい剣を振り回していた聖女メーヤ、眼帯娘のカツェ、吸血鬼のヒルダ――さっきまで暴れていた奴らに問いかける。
ルールはまあ何となく分かった。2つのチームに分かれて戦うってことだろ。単純明快。……ということは、これ無所属だったら戦いに参加しなくていいということになるのだろうか。うーん、それなら有難いが、この雰囲気を見るにそう簡単には事は進まない可能性の方が高いな。
と、俺がそう考えている横で――
「ああ……神様。再び剣を取る私をお赦し下さい――はい。バチカンは元よりこの汚らわしい眷属共を伐つ『師団』。
「ああ。アタシも当然『眷属』だ。メーヤと仲間なんてなれるもんかよ」
「聞くまでもないでしょうジャンヌ。私は生まれながら闇の眷属――『眷属』よ。玉藻、あなたもそうでしょう?」
三者三様、ジャンヌの問いを肯定する。
って、ヒルダが言った言葉……玉藻? みこーん?
ヒルダの視線の先――遠山の隣にいる人物…………和服を着ている狐? の少女?
ブラドみたいな妖怪……の類いだろうか。あれは妖怪というよりかはただの化け物か。
「すまんのうヒルダ。儂は今回、『師団』じゃ。未だ仄聞のみじゃが、今日の星伽はキリスト教会と盟約があるそうじゃからの。パトラ、お主もこっちゃ来い」
この狐少女、どうやら星伽さんとも関係があるらしい。そして、ヒルダやパトラと知り合いらしい。何者なんだか。ロリババァというのは理解した。それはもう完全に。……現実でまさかロリババァを拝める日が来るとは……感動ものだな。
で、パトラの反応はと言うと――
「タマモ。かつて先祖が教わった諸々の事、妾は感謝しておるのぅ。イ・ウー研鑽派の優等生どもには私怨がある。今回、イ・ウー
主戦派。そこにはセーラも含まれている。てことはセーラも眷属。
そして、パトラの隣にいた死神のような大鎌を携えているカナは無所属を宣言した。それを聞いたパトラはとても残念がって、カナがそんなパトラをあやしているが……いつの間にそういう関係になったんだ? それにカナって女であり男でありとても訳の分からない人間だと思うのだが――世の中の男女関係は進んでいるなぁ。
その後、リバティー・メイソンなる組織も無所属を、LOOと呼ばれたロボットは黙秘を、ハビと名乗った少女(本人より数倍は大きい斧を持ち上げている)は眷属を宣言した。いや、あのハビとやら2本のツノがうっすらと確認できた。鬼……なのか? もしかしてハビとやらもロリババァなのか?
なんか意味不明な奴らばかりでぶっちゃけ関わりたくねぇな、そう思っていたら――――
「八幡、お前ら『サリフ』はどこを選ぶつもりだ?」
ジャンヌが問いかけてきた。……いきなりでびっくりした。
ん? ジャンヌの奴、俺こと比企谷八幡ではなくサリフ――俺を単体ではなくチーム名で呼んだことは、つまるところ俺の選択はレキの選択となる。このイカれた世界にどう踏みいるか……俺が選ぶのか。
「そもそも俺らなんで呼ばれたんだ? ごくごく平和な一般人だろうが」
「お前は一時期イ・ウーにいただろう。それに理子、ブラド、パトラ、ココたちと関わり、もはや比企谷八幡という人物はこの場とは無関係……という言い訳では済まされない立ち位置にある」
やっばりそうなるのか。気付かない内に随分嫌な立ち位置になってしまったようだ。
「例えば無所属を選んだら別にこの戦いに参加しなくていいって認識でいいか?」
「――いや、そうはならない。師団も眷属もお前とレキを欲しがらなければ不参加になるだろうが、誰かがサリフをこちらの陣営に引き込みたく、交渉、または襲撃を受ける可能性は十二分にある。もし負ければ従わざるを得ない」
まあ、そうなるか。ひたすらに面倒だ。
――――さて、どうする? 師団か眷属か無所属か。どれが危険だ? てかどれも危険か。師団はジャンヌなど慣れ親しんだ面子がいる。流れ的には多分遠山たちも師団になる。だって、眷属なんてパトラやヒルダといった明らか敵ですよ! みたいな絵面しかない。というより、ジャンヌの説明だと、別に無所属でも俺らを狙う奴がいないとある程度平和に過ごせるか。
「……レキ、無所属でいいか?」
「はい。八幡さんの選択なら」
一応はサリフのリーダーは俺になっている。だからこの2人の最終的な決定権は俺にある。じゃんけんで負けたからリーダーになったに過ぎないが。今まで似たようなことしてきたからいいかと納得はしている。
「じゃあ、俺らは無所属で」
――――ただ、無所属だからと言って何もしないわけでもない。周りに火の粉が降りかかるようなら遠慮なく介入させてもらう。ハイジャックやカジノ、新幹線ジャックのときみたいにな。これでも俺は武偵だ。
本音を言うならココにいる犯罪者どもを捕まえれたらいいが、それは無理。不可能に近い。そもそもイ・ウーにただいただけで罪に問われるのかどうか俺は知らない。だから、誰を捕まえればいいのか判断つかない。
「それと、私個人はウルスともう関係を切りましたが、この場に置いて代理を任されました。ウルスは『師団』に付きます。――ですが、私自身は比企谷八幡と同じチームですので無所属となります」
今度はレキがそう宣言する。ウルスも参加するのか。……確かにここにはウルスの人たちはいない。
「了解した。――遠山、お前たち『バスカービル』はどちらに付くのだ?」
バスカービル。遠山たちのチーム名だ。名前の由来は確かどこかの地名だったような。
遠山は遠山でいきなりの状況でめちゃめちゃに焦っていたが、流れからしてやはり『師団』になった。まあ、ヒルダがグチグチ言っただけだがな。俺にも飛び火したし……。
で、今度は諸葛――藍幇が眷属に入ると宣言した。
……危ねぇ。下手すりゃ猛妹と同じチームになるとこだった。いやまあ、そんなすぐにここには参加できないはずだが。留置場の中だし。コイツらとは色々と恨み買ってそうだし因縁つけられそうだな。お願いだから音沙汰なしにしてくれ。
「――――」
最後に残ったGⅢと呼ばれた男は「ここには強い奴なんていねぇ、くそつまんねぇ、帰る(意訳)」と言い残して文字通り消えていった。文字通りっていうのは、ホントに透明人間になったかのように姿を消した。正体は分からないが、超能力というより――何かを被ったように見えたからもしかして科学か? まあ、俺らと同じ無所属になった。
にしてもアイツ、終始怒ってたな。カルシウム足りてないんじゃない? それに、あのGⅢとやら――なんか雰囲気に既視感あるんだよな。誰かに似ているような。……蘭豹? 常にイライラしているし。
「――下賤な男。吠えつく子犬のようだわ。殺す気も失せる」
と、ヒルダからため息交じりのコメント。辛口ですね。
ん? 待てよ? これで全員の宣言が終わったということは――――
「でも、これで全員済んだみたいね。そうよね、ジャンヌ?」
「……その通りだ。最後に、この闘争は……宣戦会議の地域名を元に名付ける習慣に従い、『
「じゃあ、いいのね?」
少し焦りを見せていたジャンヌの説明を聞き終えたヒルダは矢継ぎ早にジャンヌの言葉を遮る。
ほら、やっぱり! ここで始める気だ!
「遠山!」
不穏な空気を流すヒルダに嫌な予感がしたので、急いで遠山に呼びかける。
ここにいる――特に眷属の奴らはイ・ウーを破壊した遠山にかなりの恨みを持っているみたいだ。この中で一番に狙われるのは遠山になる。
「ボートのとこに行くぞ!」
「あ、ああ……」
遠山は何が何だか分からないといった表情だ。無理もない。今までこの化け物らと渡り合った遠山と今の遠山は完全に別人。ヒルダが動き出す前になんとか逃げ切らない……と…………?
「――――?」
全員どこを見ている? 玉藻も、ハビも――――一体どこを? 学園島?
俺もそこに注視する。すると、ドルルルル……と何かが聞こえる。エンジン音。モーターボート? 俺や遠山が乗っていたと同種の。
誰か……来る?
ここまでよじ登ってきた人物は。
「SSRに網を張らせといて正解だったわ! あたしの目の届くところに出てくるとはね。その勇気だけは認めてあげるッ! そこにいるんでしょ!? パトラ! ヒルダ! イ・ウーの残党、セットで逮捕よ!」
神崎いいいいい!!!! お前なんで今ここに来るんだよ!!!! 間が悪すぎだろうが!!!!
いきなりの神崎の登場に膝をつきたくなるが、そんなのお構いなしに神崎は2丁のガバで錆びている風車を撃ってロボット? のLOOを押し潰す。えっ、何アイツ……やっぱりスゴい。戦闘センスずば抜けているな。
それを合図にメーヤとカツェもまた争いを始める。メーヤが大剣を振り回し、カツェは水の……超能力? を用いて応戦する。と思ったらカナが2人の間に割って入り、大鎌も使って2人にしりもちをつかせる。……え、カナもスゴい。
カナは2人に撤退を促し、自身もこの濃い霧の奥へと消えていく。……ん? けっこうな奴らがもう撤退しているぞ。
「…………ッ」
ヤバいヤバいヤバい。忘れていた。俺はイ・ウーに少しの間いたから知っている。パトラやヒルダのいる主戦派は色金の記述がある緋色の研究を盗んでいることがあった。データでは残しており、俺はそれを見たが、元本はどうやら盗まれていたみたいだ。
で、盗まれたからには色金のアレコレを知っている。ただでさえ神崎は恨みを買っている。なら主戦派はどうしたい? 神崎を緋緋神へ? 緋緋神にするにはどうする? つまり――――殻金?
最悪の想像を巡らせていると、あることに気付いた。くそっ、ヒルダはどこへ行った? 遠山に呼びかけなからこっそりとセンサーで反応できる距離まで近付いていたのに。いつの間にか消えている。
何秒ヒルダを見失った? 30秒? これは不味いぞ。アイツさっき影づたいに行動していた。てことはどこにいるのかすぐに判別つかない。神崎までの距離――――およそ150m。猛ダッシュだ、間に合え……!
「――――ッ!!」
神崎の背後にヒルダが現れた。クッソが! こうなったら――――
「烈風!」
烈風で最大限の追い風を起こし、その勢いに乗る。急げ急げ急げ急げ。
そして、かなりのスピードで近付いてくる俺に気付いたヒルダは多少の焦りは見せつつも微笑みながら神崎の首を軽く噛むと――――ぼんやりと、神崎の体が紅く輝き始める。紅……より緋色。これは絶対ヤバい。
どう救助する? ろくに準備ができてない今吸血鬼であるヒルダを倒すことは不可能。なら――――
「なっ――!?」
「うっ――――ら!!」
レキがヒルダの顔面を狙撃したその瞬間、神崎をヒルダから強奪!
神崎を思い切りひったくり、俺は飛翔で学園島まで飛び上がろうとする。ヒルダには烈風をお見舞いし、かなりの距離まで吹っ飛ばす。頭を狙撃されたからすぐには俺の烈風に対処できなかったようだ。最高だ、レキ。完璧なタイミングでのナイス援護! 愛してる!!
飛べ、飛べ。できるだけ速く、高く。そして、逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ。ていうか神崎軽っ。なんでこの軽さであんなにパワー出るんだよ。
……とりあえず空中へ逃走は成功したか? 後ろからは攻撃はないな…………ん? なんか神崎から緋色の球体が出て、いくつかの形に分かれて……不味い、これが殻金か!?
「くそっ!」
それらが四方八方に飛び散ろうとするので、咄嗟にそれらを掴むが――――ああもう、やらかした。7つのうち4つしか掴めなかった。
残りどこへ飛んだ? 残りは空き地島へ向かったが……ダメだ、どこまで行ったか確認できない。殻金を掴んでからその一瞬で飛びすぎたな。あんな小さい物がとごまで行ったか分からない。できれば遠山たちと同じ師団の奴らが確保してくれていればそれがベストなんだが。
「…………」
空中にいる間に、どうやら神崎の光が収まりつつ元に戻ったか。お、もう学園島が見えてきた。これでも多分平均で時速60kmは出ていたからな。
飛翔は風のクッションを作り、それを爆発させる勢いで飛ぶ技だ。だから爆発した瞬間が一番速さが出る。簡単に言うなら美遊の飛び方やワートリのグラスホッパーや『弾』印に近い感じだ。
ちなみに神崎を担がなかったら、俺1人で時速80kmは出したことある。……まあ、その後バランスが取れずに落っこちたので、普段はそんなにスピードは出さないようにしているが、今回に限っては緊急だった。思いの外上手くいったな。アドレナリンめちゃくちゃ出ていただろうからか、これ平常時にやれとか言われたら無理だな。
とりあえず学園島にある高いビルの屋上に降り立つ。で、神崎をゆっくり降ろすが……。
「どうするかな……」
神崎は意識がないだけで無事。俺の手元にある殻金は5枚。あるにはあるが、これを元通りにする技術は俺にはない。あの玉藻とやらはできそうな雰囲気を漂わせているが、俺は無所属。味方になってくれるかどうか……。遠山にさっさと神崎含めて渡すか。
「あっ」
1人いるじゃん。色金のエキスパート。
急いで連絡しよう。出るかな……勝手なイメージだが10時には寝てそうな性格だが。
「……比企谷さん…………?」
星伽さん出てくれた……。助かった……。眠そうな声ですね、ごめんなさい。
「あー、もしもし。ちょっと時間いいか?」
「はい。こんな夜中に……どうかしましたか?」
「えー、あー、単刀直入に言いますと、その、神崎の殻金が外された。俺の手元にあるのは4枚だ。残り3枚は不明」
「………………えぇ!?」
さっきまでの眠そうな声とは一転、俺の言葉で覚醒したのかとても驚愕している。
「あ、もしかして戦役が関係を?」
「あれ、星伽さん知っていたんだ。なら話が早い。とりあえず俺らの部屋に今から行けるか?」
「わ、分かりました。と、と、とっ、ところで、キンちゃんはどうしてます?」
「あー、どうだろ。ちょっと待ってて。遠山に連絡する」
「はい。折り返し残り連絡待ってます」
星伽さんの通話を終了して遠山へとかける。
「比企谷!? アリアは!?」
「皆まで言うなら。最初に言っておくが神崎は無事だ。ただまあ……ややこしいことになってな。お前今どこだ?」
2号ライダーのセリフてんこ盛りだ。2号ライダーなら俺はゼロノスと橘さん……ダメだ、剣の2号ライダー設定はややこしすぎる! 公式は橘さんにしているが、この辺りは特撮オタクの見解が別々になることが多いので触れないことにしよう。
「もうアイツらはいなくなったから、玉藻とメーヤ、レキと一緒にいる」
「ジャンヌは?」
「眷属の奴らを追っていったよ」
「一旦ソイツら連れて部屋に集合で。あ、あと玉藻とやらに殻金を4枚あると伝えてくれ」
で、言いたいことだけ言ってからもっかい星伽さんに通話する。
「星伽さん?」
「は、はい。どうでした?」
「遠山は無事だ。そこは安心してくれ。……星伽さん。玉藻、メーヤこの2人のこと知っているか?」
「玉藻様が!? メーヤさん……は知りませんが、玉藻様ならご存知です」
「おう、なら、えっと、さっきも言ったように一旦部屋に来てくれないか?」
「分かりました。ところでキンちゃんがいたということは……バスカービルはどこに所属を?」
「師団だ。玉藻もな」
「では比企谷さんも?」
「俺とレキは無所属だ。まあ、成り行きで神崎助けたから師団よりになったのか?」
それは置いといて、俺はただただ神崎を緋緋神にはさせないように動いているだけだが。
「事情は把握しました。今から行きますっ!」
「いきなり悪いな……」
「いえ、こうなることは占いで分かっていたので。殻金が外されるのは予想外でしたが……。キンちゃん待っててねえええええぇぇぇぇぇ!!!」
と、通話を切ろうとしたら星伽さんの大声が聞こえたので何も聞かなかったことにした。
よし、また神崎担ぐか。ゆっくり安全運転で飛ぼう。
「比企谷!」
3分で寮まで着いた。やっぱ空はいいね。障害物とか何もない。明かりが空にない分、ちょっと夜の移動は大変だが、そこ街を見ながら飛べばいい話だ。……それはそれとして、ああ、超能力使い果たしたぁ……! 疲れた!
で、寮の前の道路にはちょうど遠山ご一行様がいた。狐少女の玉藻とシスターっぽいメーヤ。で、レキも静かにしている。
「お互い無事で何より。……ほい、神崎受け取れ」
「あ、ああ。助かった」
神崎を遠山に手渡して……玉藻とメーヤの方へ向く。
「初めまして。比企谷八幡だ」
「バチカンのメーヤです。この度は本当に助かりました」
「玉藻じゃ。たしかイレギュラーとも言ったかの。ヒルダもごねておったわ。イレギュラーが毎度毎度邪魔をするなど。しかしまあ、今回は助かったのぉ」
「それで、残りの殻金は?」
「お主がそこまで知っているのに驚きだが……残念ながら眷属の手に渡ってしまった」
目を伏して申し訳なさそうに告げる玉藻。
……面倒なことになったな。
「とりあえず、これ渡しとく。お前なら殻金どうにかできるんだよな?」
「ふむ、可能じゃ。感謝するぞ、イレギュラーの。これでまだ最悪にはならないか……」
これで一先ずはどうにかなるか?
「遠山」
「どうした?」
「しばらくしたらここに星伽さんも来る。なんか諸々の事情は知ってたみたいだ。あとは任せた」
「白雪が?」
「おお、星伽の娘も来るのか! お主なかなか手際がいいの。……どうじゃ、無所属と言っていたが、師団に入る気はないかの?」
「それは断る。あんな化け物ともう戦いたくないんでね。今回に限っては成り行きだ。というわけで、俺がこれからの師団の作戦会議に参加するのもどうかと思うんで……悪いがレキ、今夜泊めてくれ」
「分かりました」
――――と、ようやく、かなり騒がしかった夜は終わりを告げた。さっさと寝よう!
基本原作から外れたくないけど、原作と同じような道筋辿るならそれもう原作でよくない?ってなるし、原作の台詞引用しているときとかこれ面白いのかってなるし、どうすればいいのか分からなくなる