八幡の武偵生活   作:NowHunt

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多分前回と振れ幅が大きいと思う





その選択は、きっと正しくないと分かっていても。

 変装食堂の衣装決めが終わって数日。

 

 特にこれといって何もなかった。何がと言うと、学園島に結界があるから眷属の奴らが攻めてくることはなかった。……いや、別に俺無所属だから狙われるとかあまりないんだが。それでも、眷属の奴らに標的にされてそうなのは事実だ。

 

 というわけで、放課後にて特訓期間だ。

 ここ数日SSRに籠っている。

 

 今日はSSRである星伽さんに超能力のことなど色々教わりながら学んでいる。セーラの説明はわりとアバウトだったが、星伽さんはわりと論理的――超能力に論理的とか置いておいて――分かりやすく、実のところ色金の力を少しずつ扱えるようになってきた。

 璃璃に話しかけてもマジでこれっぽっちも反応ないからな。勝手に俺の意識奪って暴れたくせして俺が求めたらだんまり。困ったもんだ。まるで昔のレキ――――ロボット・レキを見せられているようだ。

 

 そして、ヒルダのこと――いわゆる化け物や魔性の類、吸血鬼諸々についても教わってもらった。アイツはどうやら銀を使った代物に弱い。銀だけで殺せるかどうかと言われたら微妙だし、決め手にはならないかもしれない。しかし、弱体化は叶う。銀を使えば、恐らく魔臓の回復が遅れるだろう。そうすれば、あとはどうにかできる可能性がある。

 だから、星伽さんに頼んで純銀の5.7x28mm弾を購入。20発のマガジンを2つ、純銀がコーティングされている刀を1つ。……刀か。苦手なんだよな。刃渡りが長いモノを扱ったことは授業でしかなくて、蘭豹にめちゃくちゃダメ出しされたな。

 

 ただ――――これは予想だ。というより、ブラドがそうだったという経験、根拠からの予測だ。アイツは基本的にゴリ押し戦法だった。アイツの魔臓の回復力があるからこそできる戦い方。だからだ、だからブラドは近接戦闘が下手。動きはかなり読みやすい部類だった。しかし、他を寄せ付けないほどに強い。魔臓があるだけでブラドは強すぎる。

 それはきっと――――ヒルダも同じだ。多分魔臓頼りの戦闘になる。近接戦闘になったら俺に勝ち目がある。

 

 しかしまあ……。

 

「それだけじゃないんだよなぁ……」

「そうですね。ヒルダは『紫電の魔女』と呼ばれています。電気を操る魔女ですね。私は経験がないですが、彼女は電気を放ち、相手を帯電させるそうです。比企谷さんもよくスタンバトンを使うから分かると思いますが、電気をぶつけられたらしばらくは動けない、または気絶するでしょう」

 

 教師モードの星伽さんの授業。どうやら変装食堂でのくじは教師だったらしく、ここでも練習していると。

 

「じゃあ、それをどうやったら防げる?」

「どうでしょうね……。確か自分で電気を放てるそうですが、発電、自身の中の電池が足りなくなったら、どこからか補給する必要があるとのことです。私は力が足りなくなったら基本そこまですが、ヒルダは私や比企谷さんと違って他から補給できるので、補給さえできれば超能力をすぐに何度でも使えると思います」

 

 それは……ズルいな。俺だって烈風を使いすぎたら、正直全身が重くなって怠くなる。別に戦闘する分には問題ないんだが、超能力を空の状態で使おうとしたら全身が重くなる……みたいな感覚。俺の超能力の源であるMAXコーヒーを飲んでもすぐには使えない。空っぽになったらしばらくはそれまでだ。

 

「その補給って何だろうか。モバイルバッテリー?」

「近いと思いますが……。そこまては詳しくないですね。最悪、理子ちゃんに聞けば分かると思」

「――――それはダメだ。アイツには知られたくない。知られたら意味ないんだ。理子は近くにヒルダがいることを知らない。だから終わらせるんだ。理子が心から幸せに暮らせるように……俺がやらないと意味がない」

 

 これはただの俺のワガママ。理子の依頼の継続を理子が関与しない形で終わらせる。勝手に独りで戦って、勝手に独りで傷付いて、勝手に独りで終わらせても、理子は納得しないかもしれない。それでも、やるんだ。依頼の取りこぼしがあったら誰にもバレないように片付ける。1人の武偵として。

 何も知らなくていい、知ってほしくない。アイツに曇っている顔は似合わない。女の子は笑顔が一番だ。その笑顔をもう一度俺が守る。ヒルダを見て、理子は絶対いい気はしない。心のどこか深い傷の瘡蓋を剥がしてしまう。……誰がそんなの許すか。理子は自由にならなければいけない。

 

 もう二度と理子を四世とは呼ばせない。

 

「――――」

 

 ……なんて唯我独尊、なんて醜いエゴイズムだろうか。だか、それでいい。

 

「だから、黙っておいてくれ。……悪いな。もしバレても責められないようなこれは俺の依頼ってことにしてくれたらいい。俺と星伽さんは共犯じゃない。まあ、報酬は……後で考える。何か希望があったら教えてくれたら、その、助かる」

「……分かりました。無理はしないでくださいね」

「俺が無理をすると思うか? 基本出不精の、口を開けば専業主夫になりたいって言っている俺だぞ?」

 

 伏し目がちに小さい声で忠告される。笑顔なのが余計に……。わざとふざけた口調で答えるが……嫌でも心配されているのが分かる。

 

 遠山じゃなくて、俺も心配されるくらいにはこの人と関係を築けていると自惚れていいのだろうか。ならば、こんな俺に帰りを待つ人が少しでもいるのだと――――どこまでも自惚れよう。

 そうやって、馬鹿みたいに自惚れることができるなら――――――――俺はきっと死なない。

 

 

 

「…………はぁ」

 

 その後、しばらく星伽さんと話してからSSR棟を離れることにした。ここは黒魔術とかあって恐ろしいな。あまり近寄りたくないな。どこか呪われそうだ。

 

「…………」

 

 帰路に着く途中、歩きながら思考を巡らせる。

  

 不安はある。

 

 情報は仕入れた。

 準備もした。

 体調も回復した。

 鈍った体を叩き起こした。

 ブラドと戦ったときより万全以上だ。

 

 ――――それでも、足りない気がしてならない。本当に勝機はあるのか。どこか足りない。当たり前だ。本当にこれで全部か? 俺は相手を完全に理解できたか? それは否だ。相手を全て知ることはできない。できたら何も苦労などしない。俺だって俺の全てを理解できているとは限らない。しかし、俺に見えない部分は、きっと誰かが視ている。

 

 だからこそだ。誰だって、自分を全て理解できない。俺もヒルダも。だからこそ、ヒルダの見えていない部分はきっと俺が戦えば見付けることができる。だが、所詮それはその人の表面しか見ていない、ただの分かった振りだ。ならば、俺は分かった振りを押し通して――――俺は勝つ。

 

 

 

「おお、お帰り」

「ただいま」

 

 部屋に戻ってら遠山がいた。先に帰ってたか。って、どこかに出かけるみたいだな。

 

「俺今日、武藤たちと飯食いに行くんだが、お前も来るか?」

「お前……ここから出る気か?」

「学園島の中でだよ。さすがに俺も状況くらい分かっている。眷属の奴らに狙われたくないからな。どうする?」

「いや、俺はいいよ。家でダラダラしておく」

「分かった。そろそろ行くから」

「……おう、早く帰れよ。寝坊しても起こさないぞ」

「はいはい」

 

 苦笑したまま遠山は部屋から出ていった。時刻は夕方の6時。戦うなら夜がいい。

 

 武装するか。残念ながらヴァイス……ニュー棍棒は今日はお預けだな。ぶっつけ本番ではまだ使いこなせない上に、今回は他にも武器が多い。ヴァイスも含めるなら重量オーバーだ。スタンバトンもいらないな。ヒルダには効果が薄いだろう。

 

「…………」

 

 さてここで問題です。俺はヒルダの居場所を知りません。だとすると、俺はどうやってヒルダをおびき寄せるでしょうか?

 答えは簡単。ただそこにいるだけでいい。ああいう人間じゃない奴らには誰がどこにいるか感知できる力がある。玉藻もできた。ならヒルダもできる。それに、俺はアイツの恨みを沢山買っているんでな。

 

 ヒルダは今ここには入れない。ゲームで例えると恐らくかなりのデバフがかかってしまう。いわゆるアウェーすぎる空間だ。あんな傲慢な性格の奴はそんなところで動かない。

 だから、俺が囮になるしかない。俺が自らアウェーに飛び込んだら、ヒルダはそれに反応する。アイツはそれを受け入れる。復讐するまたとない機会を逃さないはずだ。ほんの少ししか話していないが、アイツはそういう存在だろう。

 

 腹八分目で抑え、MAXコーヒーをたくさん飲み、ベッドでジッと時が流れるのを待つ。

 

 1時間、2時間……3時間……4時間…………5時間。

 

「――――……行くか」

 

 誰に伝えるでもなく、俺の呟きは触れられることなく消える。

 

 どこに行くのかだが、戦うにはおあつらえ向きの場所があるんでな。バイクに股がり発進させる。

 深夜は車が少なく、走りやすい。スピードを出しすぎないように走る。そうやってしばらくしたら目的地に着いた。

 

「……まだ折れてやがるな」

 

 綺麗に折れ曲がった電柱を見て、思わず呟く。

 

 ここは横浜ランドマークタワーの屋上――――ブラドが死んだ場所だ。

 

 わざわざ直すの面倒なのか、直すための費用がないのか数ヵ月前に戦った跡が残っている。随分とまあ、懐かしいな。ここで俺は死にかけて、でも勝って……それでも負けてしまった複雑な場所だ。色金がいなかったらあのまま俺の命は散っていただろう。

もうそんな奇跡には頼らない。今度こそ実力で俺は帰る。

 

「……それに加えて」

 

 ヒルダと戦うにはここほどピッタリな場所はないだろう。

 俺にとっては父娘共々屠る場所。ヒルダにとっては自身の復讐を果たせる場所。良いロケーションだ。風情は……あるかどうかは神のみぞ知るって感じだが、俺は良いと思うな。

 

 こういうの、最高に気分が上がる。……新幹線のときも感じたが、大分この世界に染まってきたな。去年の、中学の頃の俺と今の武偵の俺――――本当に同一人物か? 疑いたくなってしまう。

 

「――――」

 

 10分ほどその場に立ち、屋上から街をひたすら眺める。人の行き来はもう深夜もいいとこ、日も変わる時間帯だ。当然少ない。それに誰が誰だとか判断つかないくらい高い場所に俺はいる。

 

 そして――――そのときがやって来る。

 

「――――ッ」

 

 ジジジッ……と電灯が不自然に点滅する。

 

 同時に――――ここに誰かがいる。センサーには反応がない。でも、分かる。何度か経験してきた異質な空気。それが肌に直に刺さる。

 

 そう思ったら、近くの電柱の影が蠢く。それは影そのモノがただただ生きているかのように。

 

「待っていたぞ、ヒルダ」

 

 電柱を見上げる。

 

「イレギュラー、まさかのこのこと無様に現れるとはね。驚きだわ。その浅はかな偉そうな台詞、私こそが言うべきではなくて?」

 

 宣戦会議と同じゴスロリをモチーフとしたドレスを身に纏い、俺をゴミのように、虫けらかの如く見下ろすヒルダが佇んでいた。

 

「まさか。そんな訳ないだろ。何せ、俺の方が超偉いからな。お前程度よりか遥かに」

 

 鼻で笑う。

 

 見下されながらも内心俺も見下す。見下されるのには慣れてるが、ここは俺も盛大に見下すとするよ。見上げている形だが。だって、俺の方が断然偉いからな。人を見下すことしかできない奴なんかよりかは……圧倒的にな。

 

「減らず口を。後悔しないようにしなさいな」

 

 同じく鼻で笑われる。

 

「安心しとけ、そんなくっっっだらないことする時間があるくらいなら、わいわい楽しくゲームするから。…………1人だけど」

「何その悲しい台詞は。友達くらい作りなさいな」

「ゲームは1人の方がそりゃ圧倒的に効率良いからな。自分のペースで進められるし。俺は一生ソロプレイヤーだ」

「へぇ……。そうかそうか。イレギュラー、それはつまり――――この場に置いても?」

「察しが良くて助かるよ」

 

 刀を抜き、銃を抜く。

 対するヒルダはフリフリッとした傘を肩にかけつつ微笑を浮かべたまま。

 

「一族を貶めた輩を赦すつもりなど私にはなくてよ。お父様の仇――――獲らせてもらうわ」

 

 ただただ俺に横柄な、傲慢な態度を見せ、俺を低い存在としか思っていなく俺程度そこいらの蟻にしか視てないだろう。ハッ、お前は象のつもりか?

 

 その悪魔の如き笑顔――――完璧に崩してやるよ。

 

「残業……開始だ」

 

 

 

 





え、これいいの? ワトソンまだ出てきてないんだけど!?
まあ、なるようになれ精神です。次回戦闘シーンなのでまた期間が空くと思われます。大学の授業も始まりましたので



それはそうと、自分にはわりと昔から疑問があります。あ、とてもどうでもいい話なのでスルーして大丈夫です。
で、その疑問なんですが、戸塚やアストルフォ、渚といった男の娘キャラ(公式)っているじゃないですか。どうして総じてcvが女性声優なのでしょうか。
そろそろcv杉田智和さんや子安武人さん、内田雄馬さんといった男の娘キャラがいてもいいと思うんです。だって、性別は男なんですから。ねえ?
以上、わりとマジでどうでもいい疑問でした。一度言ってみたかっただけですのでお気になさらず。
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