八幡の武偵生活   作:NowHunt

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それでも、この結末は俺の――――

 今からどう動く……? 一筋縄ではいかない相手だからな。

 

「っと……」

 

 そういや天気は悪いなぁ。台風は来てないが、一時荒れそうな天気だな。予報で雷も鳴るとかなんとか。いや、それは東京の天気で横浜がどうかは知らないけど。別にそこまで差はないか。あ、台風はあと1週間くらいで来るはずだな。

 

 天気は別にいいか。よし、俺からまず先制攻撃を仕掛けるとして……とりあえず一旦刀は閉まおうか。よし、コートの内側から手榴弾を取り出す。で、距離を取りつつピンを抜き、牽制目的でヒルダの目の前1mで爆発するように投げる。

 

 ドゴオォォン――! と景気良く爆発するが、煙が晴れていなくても分かる。そりゃあからさまな攻撃だし簡単に避けるよな。むしろこの程度直撃したら武偵高では生きていけない。

 っと、姿が見えないな。これはお得意の影に逃げたか。辺りは暗くてどこにいるのか分かりにくいが、明かりがある場所は限られている。そこを注視すれば見分けられるはず。

 

「チッ……」

 

 不味い、電柱からこっちの影に移ってくる。もうかなり距離を詰められた。ヒルダが攻撃するならその手段は――――電気。

 

「くっ――!」

 

 飛翔で数m飛び上がる。と同時に、バリィィッッ! と床が光る。思いきり電気流れたな。

 当たり前だが、電気を目視できる分、俺のスタンバトン(違法改造)よりかなり高い出力だ。危ない危ない。それなりに電気の対策はしてきたとは言え、これはなるべく喰らいたくないな。

 範囲はヒルダを中心におおよそ6m半。その間合いを保てば喰らうことはないか?

 

 影からヒルダが出てくるので、空中からファイブセブンをフルオートにしてマガジン分全弾発射。それこそ頭や心臓といった急所へ。普通の人間なら死ぬくらい弾丸を浴びせた。空中のせいで多少照準がブレたとしても、20発中16発くらいは全身に当たったが…………。

 

「ったく、面倒だな……」

 

 分かっていたが、魔臓のせいですぐに傷は塞がった。久しぶりに魔臓の効果を目にしたよ。ホントこれ嫌になってくるな。アイツにボコボコにされたトラウマが鮮明に蘇る。うわ、もう完治している。傷の治りが早すぎるぞ。

 改めて確認した。やはり吸血鬼相手に通常の弾丸だと効果ないよな。人間相手ならこれでもう武偵法9条なんてとっくに破ってるのに。

 

 それはそうと、ヒルダの着ているドレスにも何ヵ所か撃ったせいで、それなりに破けてしまっている。見てくれは美人だからかぶっちゃけかなり目に悪い。目に毒だ。あ、その高そうなドレス破いちゃってごめんね?

 

「……っ!」

 

 見付けた。ドレスが破けたところから魔臓が確認できる。左右の太ももに2箇所。魔臓を4箇所撃ち抜けばヒルダを倒せる。残り2つはどこにある?

 

 まあ、見付けたところで同時に撃つとか無理なんだよな。神経断裂弾は警戒されているだろうし、そう簡単には撃てない。というより、そもそも残り2箇所が分からないと神経断裂弾は撃てないんだよな。あれは魔臓周りの神経を完全に破壊して回復を少しの間に送らせるものだ。単発で撃っても正直微妙だ。ハァ……困った困った。

 

 ヒルダは着地した俺の目を見て話しかけてくる。優雅な態度で。会話を始めるのか?

 

「まさかお父様がこんなちっぽけな存在に殺られるとは思ってもいなかったわ」

「まあ、俺でも驚きだな。あ、あれ厳密に言うと、最終的に殺したの俺じゃないからな」

「ふぅん。と言っても、お父様がパトラの呪いで暴走する段階まで追い詰めたのは貴方でしょう? ところでお父様の敗因は分かるかしら?」

「あ? んなのただ慢心しただけだろ」

「……そうね。そうなるわね。でも、仕方ないんじゃない? 慢心もしたくなるわ。だって、イレギュラーじゃ私に勝てないからね」

「お前も慢心か? 親子揃って救いようがねぇな。これで俺が勝ったら揃いも揃って恥掻きまくりだぞ」

「吠えるわね。お前から忌まわしい銀の匂いがするということは、それなりに準備してきたんだろうけれど……残念。お父様と違って私は万全だから――お前に負ける道理はないわ。ほら、何か気付くことはないかしら?」

「…………ッ」

 

 ここでヒルダに言われて気付く。マジかよ、これはヤバい。 

 

 ――――俺の体が全く動かない。

 

 何だこれ何だこれ……!?

 口は動くが、体がさっぱり言うことをも聞かない。超能力(ステルス)? 超能力にしても一体何だ?

 これは金縛り? それとも催眠術? それらをひっくるめて恐らく呪いの類か。多分だけど、さっきの状況を鑑みると、発動条件はヒルダと目を合わせることか。クッソ、しくじった。俺の警戒不足だ。電気だけではなかったのか。

 

「ほほほっ、随分とノロマね。今さら気付くなんて……あなたこそ救いようがなくて? どうやってお前を殺そうかしら。ああっ、その私を睨み付ける姿……フィー・ブッコロス」

 

 ゆっくりと、歩を進めこちらに近付いてくるヒルダ。対する俺は動けない体たらく。

 確かに俺はノロマだな。異変に気付くのにかなり時間がかかった。遅すぎなくらいだ。誰が相手でもこれは圧倒的な隙だ。普通ならここで俺は死ぬ。しかし、頭は動く。考えることはできる。

 

 そして、今まで何度も使ってきたこの感覚は――――失っていない。

 

「おい、ヒルダ。まさか忘れたのか?」

「あら、何を?」

「俺がお前と同じ魔女――――『颱風(かぜ)の魔女』と同じ力を使えることに」

 

 颱風の魔女、セーラ。ロビン・フッドを先祖に持つ少女。俺の超能力の師匠にあたる人物である。彼女は超能力で風を自在に操り、その風で矢を目標まで飛ばす。単純な腕の高さもあり、なんと弓矢の射程はレキに匹敵するほどの腕の持ち主。というより、セーラの射程は限界がない。また風を用いて空を飛んだり、嵐さえも起こすことができる魔女。

 彼女には及ばないが、その力の一端を俺は使える。これは普段は武偵法を守るために抑えているが、回復能力の高いヒルダには遠慮なく使える!

 

「――――鎌鼬!」

 

 俺は風の斬撃をヒルダの顔面に喰らわせる。顔面の中でも――眼に向けて。

 

「きゃっ……!」

 

 諸に当たった。鎌鼬は不可視の斬撃。人程度なら簡単に斬れる威力だ。あ、星伽さんみたいに新幹線を斬るのは無理ですよ? おまけに今は夜。完璧に避けるのはそれこそ難しい。猛妹のときと違って、牽制目的ではなく明確な意思を持っての攻撃だ。

 

 ……よし、動ける。ヒルダの視線からどうにか外れたから体の自由は元に戻った。

 

 それはそうと、どう動く? ヒルダが金縛り関係の能力を持っているとなると、目を開くのは危険だ。ただ、敵を見ずに倒せるとは思えない。俺には回りの位置を測れるセンサーがあるにはあるが、センサーの範囲の半径は4m。加えて、ヒルダの電撃攻撃は6m半。もしかしたらもっと射程のある攻撃が可能な場合があるかもしれない。完全に分が悪い。

 目を瞑って戦おうかと考えたが、それは俺が不利になるだけ。もうちょいヒルダの電撃の範囲が狭ければそれでいこうと思ったんだけどな。ていうか、対策はしているにしても電撃喰らっても動けなくなるよな。加えて魔臓。改めて確認すると、かなりの高スペックな奴だな。

 

 だったら――――

 

「これだな」

 

 改めて純銀がコーティングされている刀を抜く。ファイブセブンのマガジンも純銀製の銃弾に変更する。対ヒルダ用の武装。俺がこれらを持っているのはバレていたが、嫌悪感を示していたことからやはりこれは有効な手段なのだろう。

 一剣一銃。苦手なスタイルだが、ここまで来たらやるしかない。

 

 そして、ヒルダと目を合わせないように立ち回る必要がある。はい、現状確認は終わり。ヒルダも鎌鼬で付けた傷が治っている。攻撃再開だ。

 

 距離が空いているので、走りながら詰めつつその間に牽制で鎌鼬を連発する。眼と足を中心に狙って。ただ走りながらだと集中が散漫になり威力はお粗末だ。さっきほど深く斬れない。ちょっと切り傷をつける程度の威力になる。

 そんなのヒルダにとっては文字通りのかすり傷。いや、かすり傷にすらならないだろう。しかし、それで充分。その間に催眠術と電撃を防ぐことはできたから。

 

 近距離でファイブセブンで3発セミオートで銀弾を放つ。撃ったら飛翔でヒルダの頭上まで飛び上がり刀を振り下ろす。ヒルダの背中に生えている翼の付け根に向かって。

 

 銀の銃弾――法化銀弾(ホーリー)はヒルダの肩、胸、腕に命中する。

 

「アアッ――――!」

 

 ヒルダの甲高い悲鳴と共に、撃ったそばから不自然な程大きく痕が広がっていく。酸で溶かされたかのように。なるほど、銀を喰らうとそういう感じになるのか。確かにこれは弱点だな。

 刀の方は狙いから逸れて右翼の半分くらいしか斬れていない。ただこちらと斬った痕がボロボロ崩れる。そう簡単には回復しないみたいだ。

 

「やっぱ銀が苦手みたいだな。どんどん行くぞ」

「イレギュラー……!」

 

 ヒルダは振り向きざまに影から槍――三叉槍を取り出す。その槍を真上にいる俺に向かって突き出してくるが。

 

「遅い!」

 

 近接戦闘に慣れていなさすぎだ。やはりヒルダは魔臓に頼りきりの戦闘しかしてこなかったのだろう。

 俺はヒルダの持ち手を蹴りつつ飛翔で今度もヒルダの真後ろへ飛ぶ。真上を通り過ぎる瞬間に1発銀弾を撃つ。着地後すぐに刀で右翼の付け根から斬る――――というよりひたすら力任せに千切る。

 その流れで背中を蹴飛ばしながら、ファイブセブンをフルオートにしてマガジンに残っている銀弾全弾ぶち込む。……残り銀弾20発。すぐさまマガジンを交換する。

 

「キャアアア――――!!」

 

 対するヒルダにはダメージ大。ヒルダの体のいたる所に穴が空き、その穴の回復は格段に遅い。見るからに弱っている。

 

 イケる。かなり効いているな。ヒルダは確実に弱体化している。このまま進めば勝てるかもしれない。しかし、問題は最終的にどう仕留めるかだ。時間をかけすぎたらいずれ回復してしまう。銀弾の残りも少ない。やはり魔臓をどうにかしないといけないのか。

 …………いや、恐らくそれは無理だ。ヒルダは両腿の魔臓を隠そうともしない。ブラドは魔臓を隠そうとしたが、アイツは微塵もその動作を見せない。堂々としすぎている。予想だが、魔臓の位置に対してブラフを張っているな。ここまで見せないとなると、魔臓の本当の位置はヒルダも知らないのかもしれない。

 

「――――」

 

 もし俺の予想が本当だとしたら、魔臓なんて正確に狙えるわけがない。外れていることを祈るけど、そもそも残りがまだ見付からないんだよ。

 

 とりあえず追撃をするために距離を詰めるが。

 

「イレギュラー……貴様アアッ!!」

 

 何だ? ヒルダが何かを作成している……電気の球? それも野球ボールほどの大きさからバレーボールほどの大きさに変化している。

 

「喰らいなさい」

「チッ!」

 

 見た目はボロボロになりながらもヒルダはその電気の球を俺に投げつける。咄嗟に横へ回避するが、完全には避けきれず右足に被弾する。

 

「くっ……」

 

 気を付けていたのにヒルダの電撃を喰らってしまった。

 

 これ思っている以上に痺れるぞ。なかなかにヤバい。動きがかなり制限される。ヒルダの電撃の対策として、今はイ・ウーから貰った黒コートの中にインナーをゴム製にして着込んでいる。少しくらいならマシになるかと考えたが、ぶっちゃけあまり効果ないな。いやまあ、帯電状態で気絶するよりまだ動けるだけマシか。

 

「小癪にも避けたわね……」

「まあな。お前もボロボロだろうが。……そうだ、お前って腕や足斬られれば治るのか」

 

 ヒルダも回復のための時間がほしいからか、俺の時間稼ぎの会話に乗ってくる。

 

「さあね。試したことないのだれけど」

「じゃあ……首を飛ばせば死ぬのか?」

 

 別にこの刀では斬れないんだけどね。漫画やアニメでよく首が飛ぶ(物理)のシーンがあるけど、それを実際に再現するのはかなり難しい。人間の首というのは骨がかなり密接している部分でもある。だから少しでも角度が狂えば刃は首の骨に引っ掛かり、綺麗に首を飛ばすなんてできっこない。そう考えれば昔打ち首やら介錯やらあったらしいが、あれ綺麗に斬れる人間ってのはスゴいな。

 

 あ、鎌鼬ならワンチャン斬れるか。でも、使用回数も少ないしさすがに厳しいかな。ただ今はできるだけ超能力の使用は抑えないといけない。とりあえずは飛翔だけに留めないとな。

 

「……そうね。首を斬られるなんて事態はまず起きないけれど、死ぬことはないんじゃない? 斬られてもすぐくっ付くでしょうねぇ」

「期待外れの回答どうも……」

 

 まだ足は微妙に動かない。もうちょい稼がないと。

 

「それにしても……大したものね。私にここまでのダメージを負わせるとは」

「大したこと? よくもまあ、そんなボロボロの姿で……。全然そんなことないな。だって、お前強くないじゃん。お前めちゃくちゃ弱いし、お前と比べるなら神崎たちの方が断然強いな」

「減らず口を何度も喚くわね。――――4世の方が従順で可愛らしいわよ」

「……アイツをその名前で呼ぶんじゃねぇよ」

 

 その言葉に腹が立つ。アイツの名前は峰理子だ。4世などという名前ではない。それを聞くだけでどこか苛立たしさを覚える。

間抜けか。俺が煽られてどうする。怒るな。落ち着け。感情を制御しろ。俺は過去にどす黒い感情に支配され、間違いを犯しそうになったことがある。何回も同じ轍を踏むわけにはいかない。

 まだこの世界に飛び込んでそこまでの時間は経ってないが、それでも俺は1人の武偵だ。ならば平静を保て。

 

 

 ――――そして、目の前の敵に勝って証明しろ。俺は武偵だと。

 

 

 俺の足も少しは回復したのでもう一度ヒルダを斬りにかかる。まだヒルダは銀が効いているのか回復しきれてない。本当にゆっくりとしたスピードだ。

 ヒルダはまたさっきと同じ電気の球を繰り出そうとするが、そこから斬るのを中止して一旦距離を取る。下がりながら1発銀弾を魔臓のある左腿に撃ち、ヒルダの集中を乱しバランスが崩れたのを見てからまた頭上を飛ぶ。

 

「う……らっ!」

 

 空中で姿勢を制御して、烈風を用いてできる限り勢いをつけたかかと落としをヒルダの脳天へ直撃させる。どんな外傷は一瞬で治せても衝撃は残ったままだろう。

 

 今度はかかと落としをしてからすぐにヒルダの目の前に立ち、刀を上に放り投げ構えを取る。

 狙うは人間の横隔膜に当たる位置。心臓を無理やり掌底で止めてしまう殺人技――――羅刹を喰らわせる。

 

 だがあれは殺人技。人に使えば効果がある。吸血鬼と人間では内蔵の位置も当然違う。だから心臓を止めることなどできない。ただ今のヒルダは散々銀の攻撃をしたおかげで弱っている。だからこその追撃だ。少しでもアイツに恐怖を与えてやるよ。

 

 ――――俺には勝てないと、そう思わせる。

 

 落ちてきた刀を手に取りひたすら斬りつける。

 

 超能力を使うには少しでも集中する時間が必要だ。あの公式チートみたいなシャーロックだって使うのにほんの一瞬の溜めは存在するんだ。

 そして、ヒルダの超能力は強力すぎる。あの電撃をマトモに喰らえば俺なんて一瞬でダウンだな。そんなの普通に考えれば無理ゲーすぎる。だからこそ、使わせてはいけない。弱点である銀の刀で斬りつけることによって、ヒルダの集中力をどうにか削ぎ、できるだけ超能力を使わせないようにする。必殺技は使わせないに限るな。

 

 ……手足くらい斬ろうかと思ったが、俺の技術では手足をスパッと斬ることはできない。今まで刀とか使ってこなかったからな。せいぜい切り傷を深くつくれる程度の腕前しかない。しかし、ゴリ押しが効く部分もある。

 

「アアアッ――――!!」

 

 ヒルダの左翼を斬りながらムリヤリ引きちぎる。

 近接戦闘が苦手であり、ここまで弱らせたヒルダの動きはとても直線的で読みやすい。今の状態なら一色や留美ですら捌けるだろう。

 攻撃の手は止めない。もっともっと追いつめる。

 

「おら、どうした? 羽根がないコウモリはただのネズミみたいだな! 地を這う薄汚いネズミ風情だ!」

「こんの……っ!」

 

 ヒルダの腹を蹴り、バックステップしながら巻き込まれないように残1発の手榴弾を顔に投げつけると、またもや綺麗に爆発する。着弾と同時に銀弾を爆煙で見えないが、ヒルダの目に当たる部分を予想付けて撃つ。

 …………ダメだな。一応は当たったけど、目には当たってない。恐らく頬辺りを掠っただけだ。ミスったな。わざわざ貴重な弾を無駄にしてしまった。どうせなら足を狙えば良かったな。

 

 手榴弾はもうなし。銀弾は残り10数発。今回持ってきた他の武装は煙幕や閃光を複数と妨害ばかり。刀はあるが、ダメージを与えるには心許なくなってきたな。

 

 まあいい。次は煙幕だ。煙幕の入っている筒を投げつけ辺りを煙で満たす。特に有害な物質はなく、視界が遮られる程度のものだ。幸いにも今は無風だから丁度いい。若干天気も弱まっている。俺も烈風は使わずにセンサーでヒルダの位置を図る。

できれば刀で刺したいところだけど、感電の可能性があるから斬る程度で抑えている。

 攻撃が来ないようにヒット&アウェイで離れて攻撃している。近付けば刀で斬り、離れれば弾を撃ち、煙幕を巻いてからそれらの行動を繰り返している。煙が張れればまた煙筒を投げ姿をくらます。足音と気配を消しながらまた何度も攻撃をする。

 

「――――」

 

 風が強くなり煙幕も張れ、煙筒も銀弾も使い果たしたら――――最後の仕上げだ。

 

 油の入っているビンを投げつけ、普通の銃弾でビンを割り、ヒルダにの体全体に油をかける。

 

「この匂い……油?」

 

 服も体も何もかもがボロボロのヒルダが満身創痍の状態でそう呟くと同時にライターをヒルダに放り投げる。

 

「……燃えろ」

 

 ……こんなにも斬って撃って一般人なら余裕で10回は死んでそうな攻撃を与えたのにどうしてまだ生きているんだ。吸血鬼の生命力はマジで化け物だな……。正直こっちも今まで動きまくってかなりしんどいんだぞ。

 

 で、ライターはヒルダにぶつかり――――ゴオォォォォッ!! と油を纏っているヒルダは盛大に燃え上がった。材木座と話しつつ思い付いたこの戦法……通じるかどうか。これでミスったらわりとそろそろ万策尽きるんだがな。

 ここまで弱らせたからには魔臓の回復も遅れると考え、ここで一気に燃やし尽くせば倒せるかもしれないと思った。どこにあるか分からない魔臓もこの炎で同時に全て燃やせたら俺の勝ちだ。

 

 頼むからこれで決まってく…………れ…………ん? なんだ? この違和感……?

 

「…………ッ!?」

 

 さっきまで銀の攻撃で悲鳴を頻繁にあげていたヒルダは黙っている? まさかそんな簡単に死んだわけではあるまい。どういうことだ?

 

「――――ッ」

 

 全身が燃えており、表情は分からないが確実にこちらを笑い歩きながら――――ヒルダは落ちている三叉槍を拾い上げる。今さらそれで抵抗するつもりなのか?

 

「まさか私がここまで追いつめられるとはね。本当に驚き。そうね、貴方にはそれに免じて特別な私を見せてあげる」

 

 三叉槍を天に掲げ避雷針にした彼女は――――

 

 ガガァ――――――――ンッッッッ!!

 

 激しい雷を呼び寄せる。

 

「うっ……」

 

 あまりの眩しさに咄嗟に目を瞑り、再び目を開けると。

 

「……傷が、治っている?」

 

 翼も生え、傷は跡形もなく修復されている。

 銀の攻撃を喰らって、全身を燃やされていたのに、どうして回復している?

 

「生まれて3度目だわ。第3態(テルツア)になるのは」

 

 ヒルダは心地よさそうに嗤う。……こちらを見下しながら嗤う。

 彼女の全身を覆う電光は青白く、激しく、もし触れてしまったら瞬時に焼かれ焦がされるだろう。俺がボロボロにした服はもうほぼ残っていない。恐らく耐電仕様の下着とハイヒール、蜘蛛の巣柄のタイツは残っている。彼女がくくっていたリボンは燃えて無くなり――――長い巻き毛の金髪は強風で暴れている。

 

「お父様はパトラに呪われ、第3態になる機会もない間に、お前程度に殺された。私は体が醜く膨れる第2態(セコンデイ)は嫌いだから、それを飛ばして第3態にならせてもらったわ。さぁ――――一緒に遊びましょ?」

 

 ブラドのあの獣のような姿よりもう1つ上の姿があったのか。そういや、パトラもそんなこと言っていたような覚えがあるような……ないような。

 

 帯電しているヒルダは槍や体のあちこちからバチバチと蒼いイナズマを踊らせる。

 三叉槍を振り回し、周りにあった電柱を力任せに折る。……おいおい、なんて馬鹿力なんだ。この姿は筋力も上がるのか。適当に振り回してもこの威力……近付くは厳しいな。ていうか、今帯電しているヒルダに近接戦闘を仕掛けるのは無理だな。こっちがやられる。

 

「くっそ……」

 

 やらかした。どうやら姿を変えてムリヤリ回復したらしい。炎だけでは表面にしかダメージを与えることしかできやかったってことか。マジでしくじった。ここまで追いつめたのにな。

 

「この姿は帯電能力と魔臓による無限回復力を以て為す、私たち一族の奇跡。ここまで私を痛め付けたお前をゆっくりと……ゆっくりと殺そうとしたけど、ごめんなさいね? 今お前に触れると一瞬で焦がしてしまうからできないの。それにお前、もう忌まわしき銀弾はないのでしょ? あとはその刀だけ。それで私に勝てるわけない。命乞いでもしてみたら私の気が変わるかもしれないわよ」

 

 ヒルダの言う通りもう銀の武器は刀しかない。銀も今のコイツに通じるか怪しいところだ。万事休すってところか。このままいくと為す術もなくヒルダに殺されるだろう。命乞いしたところでこんな性格の奴が俺を見逃すとは思えない。このままいけば俺は死ぬ。

 

 ――――俺が普通の人間なら。

 

「ヒルダ、魔女の……お前への対策がこれだけかと思ったか?」

「あらあら、まだ何かあるというの?」

「まあな、ありがたく思えよ。とっておきがあるぜ。できれば最後まで隠しておきたいが……ここまで来たら仕方ない」

 

 それだけ言うと――――俺の周辺には一辺30cmほどの大きさである立方体が10個突如として現れる。それは深い深い黒色。まるで何にも染まることのない影かのように真っ黒な物体。

 

「……ッ。それはまさか――」

 

 神崎の殻金を外したヒルダはこれを知っているらしく、その顔には先ほどの余裕の笑みと違い驚愕の色を見せる。

 

「それは……色金の力!?」

「ご名答。名前は何だっけな……そうそう、次次元六面(テトラデイメンシオ)だったか。星伽さんに教えてもらったな」

 

 かつて璃璃がブラドに対し使用した色金の力の一種。

 その特性はこの黒い立方体が削った箇所はなくならない。――つまり次次元六面の中にある物体は存在し続ける。

 例えばこの立方体に向けて銃弾を放ったとしよう。銃弾はこの立方体に吸い込まれるが、その中では銃弾は動いているままだ。そして、その中にある銃弾を外に出し攻撃することもできる。

 

 使えるようになったのは最近だがな。実のところレーザービームも使えるが……あれは燃費が悪すぎる。1回使ってしまったらもうその日は超能力を使えない。実際問題、カジノでレーザービームを使ったときは気絶したしな。今の俺では到底使える代物ではないのが現状だ。そもそも直径数mmの攻撃では魔臓の持つヒルダには効果薄いしな。

 

「まさか色金の力をもう使えるとはね。あなたを切り刻んで研究でもしたいわ」

「曲がりなりにも俺の体が使ったからな。コツを掴むのにけっこうな時間を要したが、だいぶ慣れてきた」

 

 ブラドのときも、パトラのときも、俺の意識がどうであれ使ったのは俺の体。その感覚をどうやら覚えていたらしく、星伽さんとの特訓で使い方も分かってきたところだ。今使えるのはこれとレーザービームだけですがね。

 

「ま、確かに驚きはしたけど、まだ完全に使えるわけではないでしょ? なら私が勝つんじゃないかしらねぇ」

 

 その言葉と共に俺に向けて雷を一直線に放ってくるが――――次次元六面の影がそれを飲み込む。

 

「ふぅん。直線上の攻撃は分が悪いと……なら」

「……ッ」

 

 また嫌な予感がしたので飛翔で斜め上に飛び上がる。

 

 最初と同じ……いや、それ以上の電撃が地面を走る。前までと比べて威力が違いすぎている。末恐ろしい……。これ喰らったら気絶どころか普通に死ぬな。ヒルダの焦がす発言に嘘偽りはないってところか。

 

 空中でファイブセブンを撃つが……まあ、一瞬で治るよな。八幡知ってた。この状態のヒルダに神経断裂弾撃っても似たような感じになるだろう。ブラドのときとはわけが違うってわけか。

 

 とりあえず高く飛んでいるからヒルダは範囲の広い電撃を使うことはせずに直線上に電撃を放っているが、次次元六面でそれらは吸い込む。

 

 ……これ動かすの大変だな。頭を並列に動かさないと。銃を撃つときにそちらに意識がいきすぎて動かせなかったら意味がない。ちゃんと動かさないと。しかも10個。

 これは実戦で使うのは……うん、なかなかにムズい。アムロやシャア、ハマーン様といったファンネルを使っていた奴らスゴすぎないか? この頭めちゃくちゃ動かす作業を平然としていたのね。えっぐ。逆シャアのファンネル戦すこ。

 

「さてと……」

 

 空中にいながら少し考える。……飛翔しながらなので若干めんどいがな。

 

 ここからどう動くべきだが……そうだな、あの日ブラドにやったように次次元六面でヒルダの体を削るか。確かあれを映像で見たが、どうやら削っても存在しているから魔臓による回復はしなかったはず。

 …………いちいち次次元六面って呼ぶの長いな。贅沢な名だね。よしっ、今日からお前は影だよ。……ごめん、千と千尋の神隠しマトモに見たことないんだわ。だからパロも適当。いやね、3歳くらいのときにちょっとは見たんだけど、よく分からない豚のところが怖くてトラウマです。ええ、かなり歳を取った今でも未だに見れないんですよ。恥ずかしながら。

 

 っと、そんなくっそどうでもいい話はあとにして、5個は俺を守るために周囲に留まらせておくか。残りの5個を用いて――――ヒルダを襲撃する。

 

「くっ……」

 

 ヒルダは後退しながら電撃で影らを追撃するが、影たちはそれらを全部飲み込む。

 

 もちろん影にも許容量というのもあるから永遠に飲み込めるわけではない。だから俺の周りに漂わせている影から排出する。別にすぐに影の上限が来ると言えば否だが、まあ、出せるときに出そうか。ていうか俺も把握しきてれいない。

 

 俺は高く飛んでヒルダの電撃の射程範囲外にとりあえず飛ぶが……アイツ飛べないよな? 小さい翼も持っているのに飛んでいる姿は見たことない。ヒルダの奴は影(この影は次次元六面ではなく普通の影です)を媒介にして移動できるはず。今はしないのか? 多分影の中にいればさすかに影(こっちは次次元六面のこと。……ややこしい!)では狙えないが――――なぜ影(もう言うのが面倒だ)に逃げない? 俺でも思い付くのにな。

 

 理由は分からない。分からない。ならば、ただただ分からない振りをしておこう。

 

 しかし、逃げないなら都合がいい。――――お前の体を容赦なく削ってやるよ。

 

「おい、みすぼらしく影の中に逃げないのか?」

「……チッ。この姿になってまで逃げれるわけないでしょう」

 

 空中から問いかけるが……要するに逃げない理由ってのは貴族のプライドってやつか。

 

 実に下らないと吐き捨てたいところだが、思っている以上にヒルダの体を削れない。影で削ろうとしているのに大部分がヒルダの纏っている電気に吸われてしまう。

 あれは電気の鎧にもなるってわけだな。厄介だ。さすがは吸血鬼。長年生きてきた……あれ、ブラドは長生きって聞くけど、ヒルダの歳はどうなんだ? まあ、見た目からして……17から20? 別に今はいいか。

 

「どんどん行くぞ」

 

 余計な思考は置いといて、影たちは襲いかかりヒルダを追いつめにかかる。

 

「――――」

 

 その間、空中で影を動かしながらヒルダの倒し方について改めて考える。

 

 1つは単純明快。魔臓を全て撃ち抜く。ブラドには神経断裂弾を使って擬似的にこれは成功した。しかし、これは難しい。ヒルダの魔臓の位置は不明だし、そもそもヒルダ自身知らない可能性がある。

 2つ目は全体攻撃を仕掛ける。何かヒルダ全身を覆う攻撃ができれば全ての魔臓を不能にできるかもしれない。

 

 効果がありそうなのは後者。だから、俺はヒルダに銀を用いて徹底的に弱らせ、炎の全体攻撃を行った。しかし、それは失敗に終わった。ヒルダの隠していたもう1つの姿のせいで一気に回復されたからな。

 それはそれとして、このアプローチ自体は間違ってはいないと思う。有効な手段だが、炎は失敗。ならば、次のアプローチを試すまで。

 ヒルダには俺の本命が影による削りだと思わせる。もちろん、成功してくれたら嬉しいが、実戦でここまで影を使うのは初めてだ。ぶっちゃけなかなか上手くいかない。影を操るのは難しすぎる。ヒルダの動きを完璧に捉えることはできない。

 

「頼むぜ、材木座……」

 

 それだけ呟き、地面に降りる。

 

 確か15mだったな。距離を取りつつマガジンを交換。少しでもヒルダの動きを止めるべく、影5つで足を集中攻撃をする。

 

「こんのっ……!」

 

 どうにかあの厄介な電気の鎧を掻い潜り、ヒルダの左腿――――魔臓の1つを呑み込んだ。影は全てこちらに戻る。ヒルダの近くに寄らせるわけにもいかない。

 

「回復……しないですって!?」

 

 ヒルダの逃げ場はもうない。これ以上下がればビルから落ちるだけ。落ちれば影に退避することも恐らく敵わない。そして、ヒルダは自身の傷が回復しないことに驚いている。アイツは次次元六面の特性を知っていたが、知ると実際に体験するでは話がまるで違う。

 

 

 この隙に――――撃つ。もう終わりにしよう。

 

 

 ――――パァン! パァン! パァン!

 

 いつものファイブセブンとは違う銃声。ちょっと空中に気持ちよく響かない銃声だ。あの弾の材質のせいか。

 

 それらはヒルダの頭、体、足を狙い目標を撃ち抜くべく真っ直ぐ飛ぶ――――その直前に弾ける。

 

 材木座お手製の武偵弾である散弾。まさかファイブセブンで散弾を再現するとはな。材木座は不発の可能性を示唆していたが、3発どれも成功だ。50×3の極小の鉄球がヒルダの全身目掛けて覆い被さる。

 材質の関係上いつものような亜音速には届かないが、それでも避けることのできない勢いの充分ある鉄球がヒルダを撃ち抜く。

 

 ヒルダからの超能力攻撃が来ない隙、影に逃げないこの瞬間、そしてこの距離。

 

 この全てが揃ったタイミングこそ――――必中不可避!

 

「ダメ押しだ!」

 

 材木座から貰った神経断裂弾を間髪入れず全て撃つ。ほんの少しでも回復を遅らせてやる。

 

 銀でヒルダを攻撃していたときに使おうとはしたが、ヒルダはあのボロボロの状態でも超能力を使用してきた。だったらもっと確実なタイミングを作るために色金の力を使用した。と、一応の言い訳だ。これでも考えているんですよ? ええ、本当に。

 

 これで魔臓がどこにあろうか残り3つお構いなしに撃てたはずだ。その証拠に――

 

「キャアアアアアアアッ――――!」

 

 今まで一番甲高い悲鳴を上げ、さっきと似たような炎がヒルダを包んでいるから。ヒルダが操っていた高圧電流……これによってな。そして、魔臓による無限回復が途切れているからこの炎に対処する術がない。

 

「違う……違うのよ、これは……これは、悪夢……こんな奴に。どうして……この私が…………アアッ!」

 

 ヒルダは燃えながら右往左往している。自分でもどうなっているか分かっていない状態だ。

 

 …………敗因か。そりゃ、俺を舐めてくれた……いや、違うな。俺はヒルダのある程度の情報を知っていた。第3態とか知らないことはあったが、それでも情報は集めた。だから対策がそれなりに打てた。

 逆にヒルダは俺のことを知らなさすぎた。少しは衛星とかから情報を集めていたようだが、それ以外のことは見ようともしなかった。

 そのせいでヒルダは俺の行動に対して何度も対応が後手後手になった。差があるならそれだけだ。純粋な実力ならヒルダの方が断然上。俺はそれを埋めるべく必死に動いた。何が言いたいかって言うと……まあ、なんだ、情報って大事だなって話。材木座の散弾だってなかったらなかったでショットガンでも担ぐ予定だったし。

 

 まとめると、現代最強の武器は情報ってことだ。

 

「……ヒルダ」

 

 もう手のつけようもないくらい燃え、踞っているヒルダに近付き語りかける。

 

「もう抵抗はしないと約束できるならお前を助けてやる。お前だって死にたくはないだろ。……どうだ?」

「分かった! もうイレギュラーにも4せ……理子にも手を出さない。最後の吸血鬼として約束する! 抵抗しない……だから助けて! ……早く助けて!」

「分かった」

 

 俺としてもこれ以上武偵法を破るのは不味いしな。ただでさえブラドに対してグレーなところに踏み込んでいる。

 

 で、俺は影を1つ呼び出してそれをヒルダの足に近付ける。

 ヒルダの腿の欠けている部分には本来存在しているはずの魔臓の1つがある。そして、それは色金の力である影の中にある。それをヒルダの体に戻しさえすれば――――

 

「ああ…………火が…………」

 

 成功した。ヒルダの無限回復は復活し、無事に火は消えるっていう寸法…………ダメだ、服も下着もほとんど焼けている、その、めっちゃ裸なんですけど。夜だから全部は見えないけど、電灯がヒルダを照らして……えっと、目のやり場に困るな。

 

 と、とりあえず、超能力者用の手錠をヒルダに嵌める。これでコイツは超能力が使えない。魔臓はコイツの臓器だから問題ないだろうが、超能力さえ封じ込めば、ヒルダに攻撃の手段はない。

 

「ヒルダ、お前を逮捕する。……っと、これかけとく。銀の匂いがするだろうがムチャ言うなよ」

 

 行きに比べてかなり軽くなった黒コートをヒルダにかける。

 

「あ……ありがと」

 

 なんか殊勝な態度になったヒルダの反応にちょっと困るが……あとは。

 

「……レキ」

『はい。警察を呼んでおきます』

 

 携帯で1km向こうのビルに待機していたレキに連絡する。

 俺が死んだときのためにレキだけは待機させておいた。まあ、レキなら俺が死ぬ前に介入するだろう。俺がいくら手を出すなと言ってもレキは納得しない奴だからな。

 

『ご無事で何よりです……八幡さん』

「おう。話は戻ってからゆっくり話すからあとは頼む」

『了解しました』

 

 それとレキには事後処理を頼んでおいた。俺よりかはずっと裏の世界にいるレキの方が融通の利く場合があるからな。警察にも俺が連絡するよりかは説明しやすい。ていうか、今俺には全部説明できる気力は残っていない。

 

 ……事後処理はレキに任せて、ふと今までのことを思い返す。

 

「――――――――」

 

 俺はかつてブラドと戦った。勝つには勝ったが、ブラドを瀕死に追いつめたところでパトラの呪いで暴走したブラドには成す術なくやられた。色金がいなかったら死んでいただろう。

 

「――――――――」

 

 次にパトラ。カジノでは神崎が拐われそうになり救出しようとパトラの目の前に立ち、攻撃を仕掛けたが、砂礫の魔女であるパトラには届かなかった。そこから俺は訳も分からず色金のレーザービームを使い、力を使い果たした俺は気絶した。

 

「――――――――」

 

 そして、ココ姉妹。戦ったのは猛妹だけだがな。アイツとはそれなりに互角に戦えたと思う。ただ途中で新幹線から猛妹が落ちそうになり、死にかけた猛妹を俺は助けた。

 つまり遠山たちが戦っている最中に俺は戦線離脱をしただけだ。そのあと、爆弾は平賀さんたちが解除したし、敵の狙撃手はレキが狙撃して確保した。俺が猛妹に勝って、新幹線ジャックを解決したとはとてもじゃないが言えない。

 

「――――――――」

 

 しかし、今回。ヒルダとの戦闘。もちろん戦闘に入るまで多くの人の手助けはあった。でも、やっと……やっと!

 

「ふふっ……」

 

 俺1人で勝つことができた! 俺1人でヒルダを無力化して、逮捕することができた! 大きな怪我もない、気絶して離脱することもない!

 

 この戦闘においての課題は当然ある。それでも……それでも!

 

「……やったぞ」

 

 

 

 ――――俺の完全勝利!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




だからまだワトソンがいないっていうね。どう辻褄合わせるんでしょうか……?まあ、それは未来の自分に託します。多分いい感じにするでしょう(願望)

というかこれ恐らく過去最長の長さだね。14450文字ですって。長くてすみません。途中で区切ろうとするとそれはそれで中途半端になりそうだったもんで……

それはそうと……ヒルダ、あなた強すぎですよ。色々頭捻りましたよ。どう勝とうか。なるべく原作と被らないようにしようとか……色々考えた結果、やっぱり散弾が最適解でした



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