色々とお疲れさまです。
転校した週も早くも終わり、土曜日に入る。
最初も最初で進展なんてろくになかったが、始まったばかりだ。前向きにいこうと切り替える。ということで、午前中から久しぶりの千葉をグルグル回ることにした。
土地勘をある程度は戻したいし、レキにも見知らぬ土地に慣れてほしい。いざというときに迷ったりすると任務に支障が出てしまうからな。それと石動組の本拠地近くも彷徨こうかと思う。確か千葉市と船橋の境目辺りだったような。
「では行きましょうか」
というわけで隣にはレキがいますよと。
「おう」
互いに私服。俺は語るべきもない格好だ。主観だが、特別イケてるわけでもなくダサくもなく服。レキはだいぶ前に俺が買った薄い桃色のワンピースに水色のジャケットを着ている。これしか私服がない。途中でやっぱ買おうか。
千葉駅近辺を歩いている最中、のんびり話す。
「そういえば、前にも八幡さんと千葉へと出かけたことがありましたね」
「確かにあったな。春休みだったか。つか、アレお前が付いてきただけだよな?」
「黙秘します」
「答え言ってんじゃねーか。にしても懐かしいな。もう半年前か」
「はい。この半年で随分と事件がありましたね」
「だな。理子から始まり、ウルスへ行って、ブラドにカジノでの一件。修学旅行で新幹線ジャック、戻ってきたらFEWとヒルダ。……列挙すると、マジで濃い半年だな」
化け物と遭遇する頻度高すぎでは?
俺は一般人のはずなのにどうしてこうなったのだろうか……甚だ疑問である。心当たりがなさすぎる。何度も死にかけて、よくもまぁ五体無事でここにいるもんだ。思っている以上に頑丈な自分に驚く。
「これからはいのちだいじにで進もう」
「いえ、ガンガン行きましょう」
断固として断る!
「まぁいいや。どこ行く? 石動組近くは午後調べてみるとして」
「といっても、私はあまり詳しくないのですが。前は船橋にあるららぽーとへ行きましたが、他はさっぱりです」
「それもそうか。午前は千葉駅周辺グルグル歩くか」
「はい」
千葉駅周辺を適当に歩く。その途中、ペリエ千葉での服屋に入って店員に話しかける。正直ユニクロ以外服屋に詳しくないので適当に入ったが、ここどこだ? ローズなんちゃらってとこらしい。なるようになれ。
「すいません、コイツに合う服見繕ってください」
レディースの店らしく男性は全然いないので若干居心地の悪さを感じながらも、若い大学生くらいの女性店員にレキを差し出す。こういうセンスは全くないので得意な人に任せる。
適材適所……なんて素晴らしい言葉なんだろうか。みんな得手不得手があるの当然なんだから、ちゃんと分業をすべきなんだと俺は思う。苦手なままではいずれダメなのは分かるが、だからといってムリヤリ押し付けるのは良くないよね!
「はーい。わっ、お人形さんみたいですねぇ」
正社員かアルバイトかは分からない店員は楽しそうにニコニコと笑顔で応対してくれる。さすが接客業の人だ。日々様々な客と接している人たちは、俺らみたいな無愛想な奴にも常に笑顔で面構えが違う。作り笑顔などではなくなかなかに自然な笑顔だ。こういうところは今後、俺も磨かないといけないな。
そう内心考えていると。
「予算はどれくらいにしますか?」
「そうですね……」
財布の中身を確認する。
「3万以内でお願いします」
「はぁい。季節はどうします? 冬物にしますか?」
「あー、春や秋辺りに着れるもので」
「分かりました。……彼氏さんが彼女さんの服選んでるんですか?」
物色している間にも世間話は止めないらしく、どんどん話しかけてくる。ちょっとつらい。レキは黙ってついてきてるし。
「これの持ってる服、ぶっちゃけ私服含めて制服しかないくらい無頓着なんで」
「えっ、そうなんですか。珍しいですねぇ。ちなみに、今着ているのも?」
「あぁはい、だいぶ前に俺が買いました」
あれまだ1年も経ってないのに、もう4年くらい経っていそうなだな。随分と懐かしい。
「……」
そして、チラッとかかっている服の値札を見たが、どれも1つで1万近い値段のものが多い。恐ろしい! 世の中の女性は服1つを買うのにここまでお金をかけるのか。これ1万使ってユニクロで買おうと思えば、かなりの数揃えることできるぞ。もちろん、何にお金を使うなんて人それぞれであり、そこにケチをつけるとかは当然できはしないが、これを日常的に使うのは憚られるな……。
「なるほどなるほど。良いですね。さて、この辺りに……あ、せっかくなのでブーツも試してみますか、お客様?」
「それ予算的に大丈夫ですかね。つか、商魂逞しいですね」
「商売ですので。とは言いますが、私も色々と彼女さんをコーディネートしてみたいと言いますか。とりあえず色々見てみますね」
確かにレキが履いているのは武偵高でも使っているごくごく普通の革製のシューズだけど。うーん、こんなさらっと稼ごうとするとは、プロとは恐ろしいものだと再確認する。というより、レキも喋って? なんで全部俺に任せてるの? そろそろ俺1人で間繋ぐのキツい。コミュ力のない人間の性だ。
地味に予算に関しての部分を答えない店員の後をついていく。この人ホントに商売逞しいと思う。気付いたら大量の品を買わされそうな予感に陥り、財布の中身大丈夫かと不安になる。一応は多めに5万は入れているが……。いざとなったらレキに頼ろう。情けない気がするが、そもそもこれレキのためなんだよなぁ。というよりレキの財布って見たことないなぁ。
一抹の不安に襲われながらも、レキのファッションショーは行われた。俺ら以外のあまり客はいなく、いつの間にか他の店員数名も参加していた。店員たちがあれやこれやとレキを着せ替えして楽しんでいる。そんな中、レキは黙って着て脱いでをひたすら繰り返す。
まぁ、見た目美人だから余程のものじゃない限り、変な感じにはならないのだが、この店にはなかなかいいものが揃っている……と思う。断言はできない。だって人間だもの。はちまん。
「おぉー、これどうです?」
「いいっすね……」
試着室から現れたレキは、若干ベージュに近い白スカートを膝下まで履いており、クリーム色のトップを着ている。その上には膝辺りまで長さのあるブルーのコートを羽織っている。で、茶色のブーツをちゃっかり履いている。
「八幡さん、似合ってますか?」
「おう、似合ってるぞー」
レキはスカートを摘まんでクルクルと回る。どこで覚えたのか知りたいくらいの可愛らしい仕草だ。
今まで色々と試着したレキだが、個人的にはこの服が一番似合うと感じた。あまり派手な色より、このような落ち着いた雰囲気の方がレキには合っていると勝手に思う。
「あのコート……冬場のじゃないんですか?」
「んー、生地は薄いので涼しいときにも問題ないと思います」
「なるほど。……それで、値段の方は?」
「全部合わせると48000です!」
「たっっっか!」
思わず叫ぶ。
え、なに、こんなに高いの? 一瞬で財布消し飛ぶぞ。
「ブーツ除けば4万には抑えられますよっ!」
「いやそれでも予算オーバー……まぁいいや。これセットで買います」
後で金卸そう。
「お買い上げありがとうございます!」
レキは今試着している服のタグを切ってもらい、今日はこの格好で行くと言っていた。店の近くで配送サービスもやっているらしく、さっきまで着ている服を送るためにか、ついでに他にも着ていた服をいくつか購入した。なんか、チラッとレジで黒いカードが見えたんですがそれは。
「では行きましょうか」
「おう」
店を出た俺とレキは案内図を見てどこへ行こうか確認している。
「ん?」
「どうしました?」
「あぁ、いや……」
隣に立っているレキにどこか違和感を覚えた。それが何なのか探っていると。
「そういうことか」
「……何でしょうか?」
違和感の正体に気付いて1人で納得する俺をレキは見逃してくれずに問い詰めてくる。
「いや、お前のブーツだよ」
「ブーツ?」
「いつもよりちょっと厚底だろ。それで目線がいつもより高いなって思っただけ」
「なるほど。確かにいつもの感覚と違い、歩きにくいです」
「おう、まるで小鹿だぞ」
若干だがぎこちない歩き方だ。
小鹿と言った俺をレキはギロッと一瞥してからコホンと咳払いをする。
「これがオシャレというものですか。もし敵が現れたら対応できません」
「お前今武器持ってないだろ。俺が戦うって」
ファイブセブンはお留守番だが、棍棒のヴァイスは持ってきている。折り畳める武器は便利だな。仮にもヤクザの本拠地の近くへ行くんだ。少しは装備するってば。
まぁ、戦闘にならないことを願いたい。別に今日は喧嘩売りに行くわけじゃないし、本気で危なくなれば、レキ抱えて飛ぶがな。
「今何時?」
「11:30です」
「もうちょいで昼か。移動するぞ」
「どこへ?」
「石動組の本拠地が見える場所まで」
千葉駅から電車で移動して幕張に着いた。
ここは個人的にはわりと好きな場所だ。特撮の聖地が多いことから何度か足を運んだことがある。と、それは関係なく、石動組の本拠地の住居を詳しく調べてみたら、幕張から歩くのが手っ取り早い。
とはいえ、近づきすぎると怪しまれるので、当然警戒して離れはする。そこで見つけたのが本拠地から500mほど離れたビルにあるレストランだ。高層ビルの中間よりちょっと上辺りに位置しており、監視もできる位置にある。今回はそこで食べることにする。
しかしまぁ、ヤクザが近くいる場所とか治安悪そうな気がするのは気のせいだろうか。別に近くに武偵事務所もあるし、そもそもかなり規模が小さいヤクザだしで大丈夫なのだろうが、それでも危ないだろう。ただまぁ、幕張という場所は色々と盛んな土地でもあるから人の行き来もそれなりにある。さすがにこんな場所で目立つような事件は起こさないか。
レストランに入り、窓際のカウンター席にレキと並んで座る。店員にメニューを告げてから、景色を眺める。
「あれ、見えるか? あの武家屋敷っぽい日本家屋」
「はい」
「あれが石動組の本拠地だ」
小声でレキと話す。ここからじゃ、他と建物と相まって少ししか見えない。
いくら規模が小さいヤクザとはいえ、本拠地はさすがに大きい。坂田さんが送ってきてくれた資料によると、およそ500坪は越えるらしい。今は縮小しているが、昔から活動しているヤクザの家は大きいなぁ。
で、石動組には35歳ほどの組長と6人の幹部とさらにその下……みたいな感じで構成されている。ここ数年は表だった事件は起こしていなく、現在の活動内容の詳細な部分は分かっていない。しかし、武器を集めていることから、何か抗争を引き起こすのではないかと懸念されている。
さっさと乗り込んで全員しょっぴけばいいのにと思うけど、証拠がないのではそれも難しい。だから、俺たちが捜査しているわけで。
「それでだ、何か見えるか? ここで双眼鏡とか使うわけにもいかないし、眼が良いレキに見てほしいんだが」
「……そうは言いますが、これといって動きはありません。車の出入りは元より、人の出入りもありません」
「まぁ、休日だしヤクザだって休みたいか。そもそも今昼だしな。来る時間間違えたか」
こればかりはミスったな。何時間もここで張り込みするわけにもいかない。確かもうちょい上いけば展望台みたいなのがあったが、そこで何時間もいるのも怪しまれるだろう。展望台で何時間もいる男女二人組ってそれどうなのよ。それに上にいけばいくほど、俺役立たずになるからな。
その後、調査を中断してから互いにハンバーグを食べてる最中。
「美味しいですね」
「だな。……お前、美味しいって思う感情あるのか」
「失礼ですね」
「いやなに、いつもカロリーメイトばかり食ってるしな。お前味覚あんの?」
「ありますよ」
「マジで?」
「人間ですから。五感はあります」
「それもそうか」
「さっきから失礼ですね」
「すまん」
「大丈夫です」
何なんだこの会話。
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特に成果なく過ごした休日を過ごし、また月曜日がやって来た。
あれからちょっとは粘ってみたが、何もなかったという。ただ出かけただけの結果となった。まぁ、たまには気を抜くのもいいかと思おう。学校にいるときは変に気を遣うしな。
朝、レキは美術部に行くと早く出ていき、俺は1人であくびをしながらのんびりと登校する。
さて、ここから2週目か。とりあえずこの週まで大人しくしておく必要がある。とはいえ、少しは捜査を進めないといざというときに困る。なので、先週と同じく見回り程度はしておこう。
そう決めて、始業10分前に教室に着く。着いたからには教室に入るのたが――――
「…………ん?」
やたら視線を感じる。まだ揃っていないクラスにいる奴らの8割ほどの視線が俺に集まっている。ひそひそ話は中学のころよくされていたが、あれとはどこか違う雰囲気だ。侮蔑……というより、これはどちらかと言うと好奇心の類か。
先週のうちに気付かないうちに何かしたのだろうか? 不味いな、これでは任務に支障が出てしまう。先週まで特に目立ったつもりはないが……。
いや、転校生だから多少は目立つかもしれない。それでも、クラス全員からの興味は次第に薄れていたのは確かだ。話しかけてくれたのは、由比ヶ浜と葉山辺りのいわゆるクラスの中心人物といった人たち。最初を除けば今までこんなにも注目を浴びることはなかったと思うが。
「ヒキタニくーん」
ヘアバンドをつけた茶髪の戸部がノリノリで声をかけてきた。
「どうした?」
「同じ転校生のレキさんとデートしてたってホント?」
…………そういうことかと全てが合点といった。思わず頭を抱えそうになる。
あー、これ見られていたのか。別に俺たちどちらも気配は消してないし、レキはぶっちゃけ目立つ。普段見られない水色の髪色も加えてまぁ、端的に言って美人だからな。そうか、そうだよな。こういう人たちってゴシップ好きだもんな。俺だって知り合いのそういう話は多少の興味はある。
遠山は別として。あれの周りはただただ地獄なだけだ。端から見てもだ。
「千葉駅で君ら見たって話あるじゃん? 2人とも一緒に転校してきたことあったし? 付き合ってるのかなって?」
「……興味あるの?」
「そりゃあもう! 同じ時期に転校してきたってだけで噂されてたのにデート現場目撃したらねぇ?」
「俺は興味ないね」
「えー、そこを何とかー」
うーん、戸部さんチャラいと思ったら全然下がらないんですね。
「――――」
ここまで来て1つ思い当たることがある。
もしかして雪ノ下がいるクラスでもレキは同じ目に遇っているのか? ということだ。レキは誤魔化すということが選択肢にあるようには思えない。絶対、そのままありのまま告げる。最悪の事態として、レキが同棲(笑)を言うことだが、そこは任務として秘匿にしてくれると信じたい。レキだってプロだ。そこは割り切っている……はずだ。しかし、それ以外ならレキは物事を隠そうともしない。だとしたら、ここで適当に俺が誤魔化しても……いずれ訪れる結果は同じということになる。
俺にクラスのほぼ全員が視線を向けるなかどう言うのが効果的か考え、きっかり3秒。
「お前らの想像に任せる。多分、そんな変わらない」
それだけ言って席についた。
その後、クラスが騒がしく担任の七条先生がHRで「お前らうるさい!」と怒るまで続いていた。
――――放課後、HRを終えると七条先生が。
「比企谷、ちょっといいか?」
「何です?」
「ノート運ぶの手伝ってほしいんだが、大丈夫か?」
「いいですよ」
まぁ、先生は俺が部活に入っていないって知ってるもんな。そりゃ声かけるか。
「そういや先生は何か部活の顧問とかしてんですか?」
職員室から教室に向けて歩いているときに何となく雑談を振ってみる。情報収集……みたいな。探偵科じゃないから、こういう手順がよく分からない。
「ん? 俺は調理部だな」
「へー、なんか意外ですね。どこで活動してるんですか?」
「特別棟の2階だよ。あそこに家庭科の実習室あるからな」
「そうなんすか。……俺、ここ来てから学校案内されましたけど、特に活動している様子ありませんでしたね」
「そりゃあそうだろ。あの部活、週に多くて2回活動するかしないかくらいだもんな。部活だから予算あってその中でやりくりしてるからよ。そもそも4人しかいねぇし。そういや、案内されたって言ってたな。どうだ? 友人できたか?」
「まぁ、話する程度には」
「ハハッ、今朝もお前の話題で盛り上がってたもんなぁ」
「……ですね。疲れました。ああも注目されると」
「何だかんだでうちの奴らも非日常を求めてるからなぁ。そういや、誰が案内してくれたんだ?」
「由比ヶ浜です。部活の活動とやらで案内してくれました」
「あぁ、たしか由比ヶ浜の部活は……何だっけか。お悩み相談的なのだったっけ。平塚先生が面倒見てるとこの」
「そうですね」
なんて雑談をしながら、せっせとノートを運ぶ。別に全然重くないけど。
「おーおー、疲れた疲れた。助かったわ、比企谷。これ1人で運ぶのキツいしな」
「いえ、このくらいなら平気ですよ。では失礼します。さようなら」
「おー、気を付けて帰れよー」
先生に挨拶して、退室する。
「ふう……」
夜に近付く時間帯になり、どこか冷える廊下の中で先生と話しているときに感じたことをまとめる。
まず先生と接触したところ、これといって怪しい部分はなかった。銃を日常的に使っている者の特有な匂いはしなかった。体つきや筋肉、もっと言うなら手の筋肉、どれを取っても銃は触れたことのないように思える。
これだけで決めつけるなら、先生は今回の事件とは無関係だろう。もっとも、脅されていたり、戦闘員でないのなら話は別だが。細かい可能性言い出したらキリがないな。少なくとも、戦うとなったら普通に勝てる相手だ。そこは確かだろう。
しかし――――家庭科の実習室か。チラッと覗いただけで中に何があるかどうかは知らない。もしかしたら、取引された銃やヤクが……いや、ないな。前にレキと結論付けた。ここに取引されているブツは断定できないがないと。
「あー……」
それだったら、まずここにいる教師陣と石動組が関わりあるかどうか調べる方が手っ取り早くないか? 俺1人ではキツいから坂田さん辺りに協力してもらって、過去の経歴やら洗ってもらうとか。また頼んでみるか。
大丈夫だ、まだ焦るような時ではない。まだ余裕はある。大丈夫だ。…………そう思っていると期日がいつの間にか近付いているんだよなぁ、と心底思う。例えば夏休みの宿題とか。
なんか時間中途半端だし、駅前の本屋でも寄るか。ついでに何か軽食でも。
レキに連絡してから駅前に向かう。ここの本屋は東京に引っ越すまでよく利用していたくらい広く品物が充実している。時間潰しにもちょうどいい。
半ばルンルンと高揚しつつ歩き、しばらくしていたら目的地が近付いてきた。駅前だからサラリーマンの帰宅時や主婦の買い物などの人混みが凄まじいが、まぁセンサーもあるしぶつかりはしないだろう。目の前は今誰もいないし、そもそもセンサーあるし近くならどこに何があるのか分か――――
「失礼、ちょっといいかな?」
る……し…………な…………――って、えっ、は? 誰だコイツ、気さくに話しかけてきたぞ。目の前にいきなり現れた? さっきまではいなかった。センサーに反応しないくらい一瞬で? 何者だ、何が目的だ?
「――――っ」
いきなりの事態に頭が混乱するが、この声には聞き覚えがある。いつだったか――それは今年の3学期。俺がある場所へと拐われたとき。
それにその格好、古びた黒いスーツを着こなし、ステッキをクルクルと回している。そして、顔。いや、眼。その全てを見通す眼をした人物。そんなの俺が知る限り、1人しかいない。
世界最高峰の探偵。どうしてここにいる、お前死んだはずだろ、何しに来た、ちょっと迷惑なんで帰ってくれない? ――――と、この場にいるにおいて、わりとマジで疑問しかないが、ソイツの人物の名は――――
「……シャーロック・ホームズ」
「やぁ、久しぶりだね。一緒にティーブレイクでもどうだい?」
この話を書くにあたって、初めてインスタで色んな服屋のアカウント見ました。ファッションについて何も知らなかったのでこういう話を書くのはとても苦労します。……とても、苦労するんです
そして、どうして最後にこの人出してしまったんだろうね?