その日の三日月おじいちゃんと伊織さんのやりとり。
創作審神者は出ますが、刀さに要素はありません。ほのぼの。
三日月宗近国宝指定記念日、おめでとうございます。
三日月おじいちゃんと伊織さんのやりとり。
刀さに要素は無。
「三日月」
縁側で、庭を眺めて茶を啜っていたら、近くで自分を呼ぶ声がした。
顔だけを其方に向けてみると、そこにいたのは彼の主。右手には綺麗な包みを提げている。
「…主か、いま帰ったのか?」
三日月と呼ばれたその男性―三日月宗近は、持っていた湯呑みをその場に置き、相手に隣に座るよう勧めた。
「ああ。用事は済んだからな。……ほら」
主と呼ばれた者、伊織は、手にあった包みを、壊れ物を扱うような丁寧な所作で三日月に手渡す。三日月が目を丸くしながらそれを受け取り、膝の上に乗せる。
「これは?俺への土産か?」
「ああ、君への贈り物だ。下手したら今日渡せないのではないかと心配だったんだが…」
達成感をほのかに感じさせるその笑みからは、手の中の贈り物が出先でたまたま見かけたから買ってきた、というような物ではなく、自分に贈るためにわざわざ探し出した物なのだということを、彼に感じさせた。
「…ほう。開けても?」
「どうぞ」
しゅる、と包みの結び目を解く。中には高級そうな木箱があった。そうっと開けると、そこには夜空をそのまま切って貼り付けたような、綺麗な蒼の湯呑み。そして、淡い黄色で描かれていたのは、彼の服に書かれているそれと同じ、三日月の紋様。
「――これは…俺の紋か」
「ああ。特注品だ。現世で特注の陶器を作ってくれる店があってな、そこで作ってもらったんだ」
「そうか…しかし何故こんな物を?」
そう伊織に尋ねると、少し面食らったような顔をして、しかしすぐにいつもの微笑みを浮かべる。
「…今日は君が国宝に指定された記念日だと聞いてな」
「………ああ」
そうだったな、と呟く。ついうっかり忘れてしまっていたが、確かに今日は、自分が『国宝』として認められた日だった。別に自分の誕生日でもないし、直接自分が祝われるわけでもない日なので、すっかり意識からは消えてしまっていたのだ。
「国宝指定記念日…だなんて言われても、君達には馴染みがないというか、特別何かを感じることもないのかもしれんが、君達刀には誕生日という概念が無いだろう?…だからせめて、分かる記念日くらいはささやかながら祝いたいと思ったんだ」
困ったように笑いながら、そう言った。
「そうか……」
手元の三日月を見つめる。毎日忙しそうに机に向かうか出陣している主が、自分の為に時間を割いて、しかも特注品の湯呑みを準備してくれた。ただそれだけの事だが、三日月の胸中はそこはかとなく温かみを覚えていた。
「主よ」
「…なんだ?」
「ありがとう、明日は早速この湯呑みで茶を飲むとしよう」
「…はは、どういたしまして。これからも宜しく頼むよ、三日月宗近殿」
す、と差し出される手を、微笑んで握り返す。
国宝指定記念日。―今まで興味もなかった日だが、こういうのは悪くないと思えた。
湯呑みの蒼と三日月の黄色が、陽の光を受けてきらきらと輝くその様は、本当にそこにだけ夜空が広がっているようだった。