俺の青春がスポコンになるなんて間違っている。   作:nowson

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今回は話を進める為の繋ぎの回となりますので短く進展はそこまでありません。





そして舞台は次へと向かう

総武高校体育館

 

バレー部内で行われた3対3はAチームの勝利で終わる。

 

 

「あ~クソ、負けた!!」

飯山が軽く頭をワシャワシャかく。

 

 

「勝った事より、三年ぶりでも比企谷の腕が落ちていないようで良かったよ」

七沢は八幡を見ながら笑顔を向ける。

 

 

「いや、あきらかに落ちた」

自分の手のひらを見つめ八幡はつぶやく。

 

 

「「「「あれで腕落ちたの!?」」」」

七沢、清川を除く部員が驚愕する。

 

 

「正確には技術云々じゃなく身体的な意味で、正直かなり体に来てるわ」

やはりブランクは伊達じゃない、そうつぶやき右手で軽く拳を握り太ももをトントンと叩く。

 

 

ブランクで一番衰える危険がある物、それは技術以上に身体能力。

 

八幡は高校生という事もあり適度な体育と自転車通学で体はある程度動かす物の、部活動のそれと比べ運動量は明らかに落ちる、先ほどの試合で八幡が感じたのはそこだった。

 

 

バレーの試合はバスケやハンドボール等の競技と比べ心肺機能や筋持久力など俗に言う有酸素運動等の動きはそこまで要しないものの、ボールを自コートに落としてはいけないと言う競技の性質上、ある意味心身ともに極限状態にある。

 その中でレシーブやトス、スパイク、ブロックなど瞬発力が必要なプレーが連続で続く、ラリーが続けば続くほど瞬間的なパフォーマンス、無酸素運動の連続が生じ、それらは疲労として蓄積される。

 

 

さらに、スポーツの上で重要なスキルの練習、それをこなす為には一定以上の身体能力を必要とし、その身体能力を得るにはかなりのトレーニングが必要となる。

 

 

先ほどの試合、崩れたカットをダッシュし無理な体勢で咄嗟に拾うトスや、フルジャンプでのブロック、試合の中盤あたりで脚に感じた違和感。

 

 

 

身体能力の衰え、八幡はそれを確かに感じていた。

 

 

 

「ブランクという事は、やはりあの時のセッターだったのか」

清川が八幡に声をかける。

 

 

 

「正直、聞きたいところはたくさんあるけど……一つだけ」

いままで何を?バレー部に入ってくれないか?いろいろな事が頭に浮かぶ。

 

 

 

 

 

「バレー……楽しいよな?」

引退しバレーから離れた身だからこそわかる事がある、今の清川が八幡に聞きたかった事はそれだけ。

 

 

 

 

八幡はうなだれる、自分の手と自分のバレシューが目に入る

 

 

 

(そう言えば、このバレシューは小町が親父に強請って二人で買いに行ったんだよな……)

喧嘩をしてしまい、家でもお互い滅多に口を開かない妹と買いに行った時の事を思い出す。

 

 

 

『お兄ちゃんに似合うシューズは私が選ぶ!』

シューズは履ければそれでいい、そんな適当な兄に対し色々なシューズを履かせ吟味し。

 

 

 

『うん!このシューズが似合う!!』

兄の意見などそっちのけでシューズを決める。

 

 

 

『今度の試合、これ履いて頑張ってね!お兄ちゃん!!』

 

 

 

 

そして八幡がバレーを辞めるきっかけになった決勝戦。

 

 

ベンチに下げられ、コートに戻る事も許されない八幡は椅子に座り俯く。

 

 

目に入る真新しいシューズ、顔を上げ応援席を見る、見上げた先は涙目で、その涙を唇を噛みしめながらこらえ、こちらをみる小町の姿。

 

 

コートに戻りたい、自分の為に、応援してくれる妹の為に。

 

 

だけど戻る事は出来ない、彼はチームが負ける姿を目の前で眺めるしかなかった。

 

 

 

(結局このバレシュー履いたのはあの時以来か)

 

 

 

(あれ以来小町は家でバレーの話をしなくなったな)

 

 

 

八幡は続けて手のひらを見る、さっきの試合の感触がジンジンと手のひらに残っている。

 

 

 

(もうコートに戻る事はないと思っていたけど……)

顔を上げコートを見る、思い出されるのは先ほどの試合

 

 

 

手に残る感触が彼にさっきまでの試合、そしてその感触が今までバレーで経験した事を思い出させる。

 

 

 

(やっぱり俺はバレーが……)

 

 

 

色々なことが思い出される中八幡は口を開く。

 

 

 

「そ、その」

 

八幡に注目が集まる中、彼が発した言葉は。

 

 

 

「わ、悪くはないと思います」

頭を掻き照れながら、それでいて彼らしく捻くれていて、分かりやすい言葉だった。

 

 

 

その言葉にある部員はクスリと笑い、ある部員は素直じゃないなとつぶやき。

 

 

 

「もっと他に言う事あるだろ比企谷~」

ある部員はニヤニヤしながらその逞しい上腕二頭筋と大胸筋で八幡を挟み締める。

 

 

「や、やめろ!!」

先ほどの試合でエキサイトしていた飯山の体は熱い、そして筋肉は厚い、そんな彼にヘッドロックを喰らうのは相当キツイ。

 

 

かつて静から受けたヘッドロックは、美人に抱き寄せられ豊満なバスツを押し付けられる「八幡、今すぐ代われや」という状況だったが、今は大男により汗と熱にまみれた筋肉に挟まれる状況、一部の腐った人のみが見るだけ限定で喜ぶくらいだろう。

 

 

 

「ギャーー!!!」

 

 

 

「離しなさい、飯山」

清川が苦笑いながら命令、体育会系特有のセンパイ命令発動でしぶしぶ離す。

 

 

 

「た、助かった……」

 

 

 

「なんか変な空気になったけど……」

清川は八幡を見据え。

 

 

「バレーが嫌いじゃないなら、練習試合までの間こいつらの事頼む」

清川は頭を下げる。

 

 

 

「仕事なんでちゃんとやりますよ」

紳士に接された事のない八幡は戸惑いながらもその言葉を受け入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒッキー大丈夫そうだね」

そんな彼らを見ながら結衣はつぶやく。

 

 

「そうね」

雪乃もそれに同意する。

 

 

「というか先輩、また腐った目に戻ってる……」

せっかくのイケメンがと残念そうに呟く。

 

 

 

「残念がってる場合じゃないわよ一色さん」

これから奉仕部でもう一つの依頼が待っている。

 

 

「じゃあ、奉仕部に戻ろう」

「ハイ」

結衣といろはが奉仕部に向けて歩き出す。

 

 

 

 

「……」

雪乃はコートにいる八幡を何とも言えない表情で眺め。

 

 

 

 

 

二人の後を追い奉仕部へと戻った。

 

 

 




次回からは閑話を入れつつ奉仕部、バレー部を考えていた構想につなげていこうと思います。


が、なんか書いてるうちにまた脱線しそうです。

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