俺の青春がスポコンになるなんて間違っている。 作:nowson
テニスの壁打ち、バレーの壁パス、野球の壁当て等、スポーツにおいて壁を使った練習はよくあり、特に球技においてはかなりの確率で壁を使った練習がある「俺は野球を一人でやった事がある」という八幡にとって壁は練習相手であり、パートナーでもあり友達であった。
そんな彼にとって壁と共にスポーツをするのは必然とも言え、体育の時間にクラスの皆が二人一組でパスをしている中、八幡はマイフレンドである壁とバレーボールを楽しんでいた。
壁打ちと壁パスはおそらく経験者なら誰しも経験したことがあるだろう、特にバレーにおける壁パスができないようであれば試合でラリーを続けるなんて夢のまた夢だ
まずは壁に近づいた状態でトスを続け、簡単なようなら距離をあけレシーブを混ぜた本格的な壁パスをする。
幼い頃から壁とともに歩んできた八幡にとって距離をあけた程度の壁パスなど造作もなく、時に適当な回転を入れクッションの方向を変えたりわざと威力を弱めてレシーブで拾い動きの幅を広げ、さらにはスパイク練習である壁打ちをも取り入れたハードかつ高レベルな壁パス&壁打ちをミスすることなく続けていた。
これが同じクラスの葉山なら「隼人君まじやべーわ!!」となるところだが、そこはステルスヒッキーの通り名を持つ彼だ、もはや背景の一部として溶け込んでいた。
彼のやってるすごさに気づく者は、彼をよく知る人物かそのスポーツの経験者くらいだろう。
現にバレー部の男子や戸塚に葉山は相手とパスをしながら壁とバレーを楽しむ彼に視線が向かう。
(素人の動きじゃない!何者だよあいつ……)
(やっぱり八幡はすごいなぁ!)
(主役になれる力を持っていながら……君ってやつは!)
「はい集合!!!」
体育教師である厚木の掛け声がかかり生徒はパスを中断し出席番号順に整列する。
「今日の体育は、まずチーム決めを行う!とはいえ好きな者同士で組めば戦力がバラバラになり兼ねん、ある程度バラつくなら仕方ないがあからさまだとゲームにならん、そこで基本の直上トスをして長く続いた順番に並んでもらう、そこからわしが振り分ける、とりあえず……七沢!お前バレー部だろ、一回皆に手本を見せてみろ」
「はい!」
七沢と呼ばれた生徒はボールを頭上に放り、両手の指でソフトにあて高くトスを上げる
……1、2、3
綺麗に一定の高さでその場から動かずトスを上げカウントを重ねる。
……8、9、10
10回目を超えたあたりでトスを低く前に出しレシーブし胸元に寄せキャッチする。
終わりと同時に葉山が拍手し、それにつられるように拍手を皆が拍手する、こういうのをさりげなくできるあたりが誰からも好かれる理由なのだろう。
普段注目されることに慣れていない七沢は軽くハニカミ、照れながらボールをいじる。
「じゃあわしの笛が鳴ったら合図じゃ準備はいいか?」
「ヒキタニ君」
出席番号の近い葉山が八幡に声をかける
「なんだよ?」
「君にだけは負けないよ」
「……勝手にしろ」
ピィィィ!!!
笛の音とともに皆一斉に開始する。
「立った場所から動かんようにの!」
「アッ!」 「しまった!」 「やべっ!」
開始して10球もしないうちに半数以上が脱落する。
バレー部の七沢のような直上トスを意識して高く上げた物の当然落下点にうまく入らずミスをしてしまう者がかなり出る。
10球超えた時点で残ったのは七沢、葉山、比企谷の三人のみ。
……20、21、22
脱落した者は順番に並び三人のトスを眺める。
三人ともミスもなく綺麗にトスを上げ続ける。
ざわ……。 ざわ……。
「おい、ヒキタニが残ってるぞ……」
「てかあいつ普通にうまいじゃん」
「ヒキタニ君パネェわ」
「てか俺あいつに負けたのかよ‥‥」
葉山と七沢が残るのは想定内にしても八幡が残るのは誰も予想していなかったのだろう、体育館は異様な空気に包まれていた。
ピィィィ!!!
厚木の笛の合図で3人が止まる。
「残ったのはお前ら3人だけだから、お前らを中心にチーム分けするからな」
厚木はそう言うと脱落組から適当に振り分ける。
比企谷のチームに戸塚に戸部とモブ達
葉山のチームには大岡とモブ達
七沢のチームにはモブばかり
このようなチーム分けになった
「やった!八幡のチームだ!よろしくね!」
戸塚は男じゃなきゃ惚れてしまいそうな笑顔で八幡に近づく。
「おう、よろしくな戸塚(惚れてまうやろー!!)」
「ヒキタニ君ヨロシクゥ!」
「……よろしく」
「何か態度ちがくない!?」
「気のせいだ……。それより残念だったな葉山と組めなくて」
「まあ、そればかりは仕方ないっしょ!」
戸部は葉山のチームに目を向ける。
「それに恋のライバルと同じチームで切磋琢磨も悪くねぇし」
チャラい笑顔を八幡に向ける
「あ、ああ‥‥」
八幡は戸部に対し一種の罪悪感がよみがえった。戸部の海老名に対する想いはチャラいなりに本気だった。
依頼だったとはいえ腹を括って告白しようとした所を邪魔した事は事実だ、戸部は告白を阻止してほしいという依頼を知るはずもなく八幡に先を越された形であることに変わりはない。
間違ってもあれは嘘の告白だから気にするなとは言えない。
「負けないからねヒキタニ君」
「ああ。」
戸部のセリフに対しそう答えるしかなかった。
一応次は葉山チーム対八幡チームを書こうと思います
かなり読みにくい文章になるかもしれませんのでご注意を。
にしても、文章考えたり構成したりするって難しい…