俺の青春がスポコンになるなんて間違っている。   作:nowson

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お久しぶりです。
プライベートで時間の出来たので更新しました。

今回の話は繋ぎ回なので進展もあまりなく期間も長く置いておいた為か、ほんのり腐ってしまったかもしれません。




新たな結束

「よかったのかい?ホイホイついてきて……」

飯山が隣で座っている八幡に声をかける。

 

「良くないから上がるわ!!」

身の危険、特に危険を感じる肛門括約筋に力を入れ八幡は立ち上がる。

 

「あ~!ウソウソ!!冗談だからシットダウンプリ~ズ!!」

「……で、聞きたい事って何?」

本当に冗談だろうな、そう思いながらも八幡は再び座る。

 

「ああ、それはな……」

何でバレー辞めたんだ?言おうとして飯山が言い淀む。

これは興味本位でこのまま聞いていい事なのか?人には触れてほしくない事情は何かしらある。ましてや比企谷はこの前の海浜高校の生徒との絡みを見る限り確実に何かある。

 

ゴツイ見た目に反して割と繊細な彼は悩む、が。

 

「ああ、比企谷は何でバレー辞めたのかなと思って」

「「「「「!!!」」」」」

見た目に反してあまり空気の読めない七沢が突っ込む。

 

 

「別に……部活辞めたから、ついでにバレーも辞めただけだ」

そう、ただそれだけの事。

 

「その部活辞めた経緯が知りたいんだ」

「……」

八幡がバレー部をやめた原因、責任を押し付けられ部活を追われた事、だがどう言えば?なんて説明すれば……頭に浮かぶ感情や思い、それが言葉にできない。

 

 

 

しばしの沈黙、深く息を吸い息を止めゆっくり吐く、サウナのせいか、もしくは考えがまとまらないせいか汗が止まらない。

 

 

(俺は……)

 

 

「突然部活辞めさせられて、周りからも迫害されてバレーから離れざる経なかった!って事か?」

「なっ!」

沈黙を破る七沢の核心をつく言葉に思わず声をあげる。

 

「な、何言ってんだ七沢」

「そりゃ決勝戦でお前のチーム揉めてたし、この前の海浜の子との会話もそうだ、学園祭でのお前に対する悪評みたいな感じで中学時代を過ごしてたとしたら、想像すればそんなもんじゃない?」

 

 

反論することなく八幡は俯き

 

「大体そんな感じだ」

その言葉を肯定する。

 

 

 

「じゃあ比企谷先輩のせいで負けたと難癖つけて、辞めさせたってことですか!?」

「はぁ?何だよそのクズども!!」

「ひどいですね」

「道場に拉致してサンドバックに入れたくなるな……」

部員たちがそれに憤怒する。

 

「誰も止めなかったの?」

「キャプテンだけは止めてくれたが結果は一緒だった、まあおかげで友達いないままバレーから離れてずっと快適なボッチライフを満喫している訳だが」

少し気恥しいのか自分を茶化しつつ言葉をしめる。

 

そんな言葉にある者はクスリと笑い、ある者は俺がいるからお前は一人じゃない!とバシバシ肩を叩きある者は……

 

 

「嘘つくなよ比企谷」

八幡の言葉を否定する。

 

 

「何、稲村?俺をかばう奴なんているわけないだろとか言うわけ?それは流石に落ち込むぞ」

「そうじゃない、ボッチとか嘘つくなって言ってるんだ、このリア充が!」

 

 

「はあ!?」

俺がリア充!?何で!?どうして!?

 

「どういう事だい比企谷君?君はこっち側の住民だと思ってたんだけどな」

飯山はニコニコしながらも威圧感を八幡に向ける。

 

※補足

腐ってると勘違いされやすいSSの為、補足説明。

こっち側の住民というのは恋人のいない非リア充側という意味です!断じておホモで不純同性交遊な意味合いはございません。

 

「いや!俺はボッチだから!!彼女なんていないから!!」

「えっ?お前由比ヶ浜さんと付き合ってるんじゃないの?」

否定してる八幡に爆弾を投げつける七沢。

 

「はあ!?」

「キサマ!この前の美女に続き由比ヶ浜さんまで!!」

飯山が猛る。

 

「違う!同じ部活なだけだ!!」

「嘘つけ!昨日下駄箱の前で『ヒッキー知らない?』って聞かれたぞ、あの時間まで待ってくれるような子が同じ部活なだけはありえん!!」

そう、あれは恋する乙女の目だ!彼の目にはそう見えたようだ。

 

(あいつ……見ず知らずの人にまでヒッキーって言ってんのかよ!)

なにやってんのよあの子は……地味にため息を吐く。

 

(どうする?こう敵意を向けられていれば何を言っても……いや待てよ!)

何も反論することだけが道じゃない、こっちに向かった敵意なら逸らせばいい。

 

(俺に爆弾投げた罰だ七沢!)

八幡に敵意を向けている二人は恐らく、異性と二人でいるだけで付き合ってると勘違いするタイプ、ならそれを逆手にとればいい。

 

「俺は別に付き合ってないが、七沢は付き合ってる奴いるだろ?あの女子バレー部のキャプテンと練習後に仲良く帰ってたし」

八幡は爆弾を投げ返す。

 

 

「「なんだとぉぉ!?」」

飯山と稲村が狙い通りに爆発する。

 

「はわわ!はわわ!」

顔を真っ赤にしながら狼狽する七沢。

 

(えっ?この反応はまさか……)

もしかして?八幡の直感は一つの可能性を導き出す。

 

「お前、まさかマジで付き合ってんの?」

 

「……」コクン

目を閉じ顔を真っ赤にしながら頷く。

 

 

「「「「「な、なんだってーーー!!!???」」」」」

 

「七沢!それは本当なのか!?」

「その、インハイ予選の後にお互いを慰めたり励ましたりしてるうちに……良い関係になってその……」ごにょごにょ

「ちなみにどこまで?」

「……Cまで」

「「ざけんな、この裏切者が!誓いを忘れたのか?」」

二年の二人が七沢に詰め寄る。

 

「ち、誓いってなんだよ?」

何かどうでもいい予感がする……が八幡が問う。

 

「俺たち3人は去年あるグループを作った。そのグループの名はチェリーズ、童貞という結束の元集った仲間、七沢はそのリーダーだったんだ」

「だが、こいつはその結束を破った!許される事ではない!」

まして相手は美人系の丹沢だから怒り倍増、モテない野郎の僻みは伊達じゃない。

 

 

(((ど、どうでもいい……)))

八幡と一年の心が一つになる。

 

 

「まあ、なんだいろいろ大変だな」

下らねぇ~、その言葉を飲み込みフォローする八幡。

 

 

「ふん!貴様には分かるまい、モテない男の苦労と悩みが!」

 

 

「……バカだなお前ら」

「「なんだと!!」」

突如みせた八幡の否定に反応する童貞二人。

 

「俺はお前らとは違い、非モテ三原則の元に行動している。そんな結束なくても平気なんだよ」

「何だよ?その非モテ三原則って」

稲村が聞き返す。

 

「期待を持たず、作らず、持ち込ませず……それが非モテ三原則だ!」

「「!!!」」

非モテ三原則、その言葉が二人の胸に深く突き刺さる。

 

「なあ飯山!」

「言うな、多分俺も同じ気持ちだ!」

 

 

 

「比企谷!!新しいチェリーズのリーダーはお前しかいない!!」

「ついていくぜリーダー!!」

二人は八幡の元へ詰め寄る。

 

 

「や、やめろ……」

 

 

 

「ギャーーー!!」

 

 

 

((それでも僕たちは先輩を尊敬しています……バレーでは))

 

 

 

 

 

 

―数分後―

 

「ひどい目にあった……」ヨロヨロ

八幡はサウナから水風呂に入りクールダウンし、一人露天風呂へと向かう。

 

「お疲れ!」

先に入っていたのか七沢が近寄り声をかける。

 

「お前のせいでひどい目にあったんだけど」

「すまん、すまん」

あまり悪びれ無い様子。

 

 

「ところでさ比企谷」

「何だ?」

さっきのこと以外で聞きたいことがあるのか?八幡は聞き返す。

 

「やっぱ依頼引き受けてくれたのってバレーしたかったからか?」

「はぁ?仕事だからに決まってんだろ」

以前にも同じ質問をうけて同じに答えた筈、なのに何故?

 

「だって最初は依頼断っただろ?」

「まあ」

「正直さ、その後奉仕部行って雪ノ下さんに断られた時ダメかなと思ったんだ。お前面倒で疲れるの嫌だって言うような印象だったし、クラスでも目立たないようにしてる感じじゃん……だから、そのまま却下の流れに乗るんじゃないか?って」

「だけど違った」

 

 

 

『バレー部の依頼は断ったはずですが』

『お前が一方的にだろうが、正直今までの依頼の中でも理由はしっかりした内容だ。断る理由はないだろ』

八幡が雪乃を否定した時の言葉は実際そうだった。もし本当に依頼を受けたくなかったらあのまま雪乃に乗っかればいい、なのに八幡はしなかった。同意して自分からバレー部に参加したようなものだ。

 

 

「これは俺の推測だけど、何だかんだで自分からバレー部に参加したことといい、バレーやってる時のアクティブな言動といい、らしくない行動の数々、お前はバレーしたかったんじゃないか?」

 

「どうだろうな……」

そんなの八幡には既に答えは出ていた。

 

久しぶりのバレーは楽しかった。サーブで打つと手に響く衝撃、強い打球を受けるレシーブの感覚、ボールを操り自分のトスをスパイカーに持っていくトスの放物線の眺め、ボールが滑らないように手にかいた汗を無意識にシャツで拭った癖、全てが懐かしく、だけど新鮮で、心が躍った。

 

(俺はバレーが好きだ)

掌を不意に見つめる。

 

 

「まあ、バレーシューズも捨てずにとっておくあたり相当したかったんだろうなって思うけど」

七沢がクスリと笑う。

 

八幡は頭を軽く掻きながら何とも言えない顔になる。

 

 

「なあ比企谷」

「何だ?」

「バレー楽しいよな?」

「……まあな」

八幡の返答にクスリと笑うと立ち上がり

 

「俺大浴場行ってくるわ」

「おう」

七沢は掌をヒラヒラさせ屋内の大浴場へと向かう。

 

 

(らしくない行動……か)

八幡は何かを考えるようにボーっとし、しばし温泉に身をゆだねた。

 

 

 

 

十数分後

 

八幡は丁寧に体を拭いて脱衣所に入り、鏡の前で全裸のままポージングしている某バレー部員を他人の振りしてスルーし自分の着替えをしょうとした時だった。

 

 

「あれ?八幡も来てたんだ?奇遇だね」

男風呂には似合わない聴き慣れた綺麗な声、振り向く先にはタオルで大事な所を隠した戸塚彩加の姿。

 

「と、戸塚!!」

 

「僕これからなんだ、もう少し早く来てたら一緒に入れたのに残念だなぁ……今度一緒に入ろう!!」

残念そうにしていた顔を八幡に向けて笑顔に変え伝えると、またねと手を振り浴場内へと入っていく。

 

 

「……俺、もう一回入るわ」

そんな戸塚の姿に思わずもう一度入ろうとする八幡。

 

「やめろ比企谷!!お前の気持ちは痛いほど分かるが落ち着け!!」

さっきまでポージングをしていた飯山が八幡を羽交い絞めにする。

 

※気持ち分かってはいけません。

 

 

「や、やめろ!せめてパンツ履いてからにしてくれ!!」ジタバタ

「おう、スマンスマン!」

戸塚と出会わなければ厄日だ。

 

落ち込みつつも着替えを済ませ八幡は脱衣所を後にし

 

 

 

(それでもマッカンは俺に癒しを与えてくれる)

冷たいマッカンで温泉を締めくくった。

 




次回の更新は早くて来週、遅くて再来週になります。

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