俺の青春がスポコンになるなんて間違っている。 作:nowson
そのため俺ガイルキャラは出ません。
本当は本編終了後に投稿しようとしていた話でしたが、ここでくわえた方が後の展開に使いやすいと判断し投稿しました。
スポコンとしてありきたりな話&オリキャラの話ですので苦手な方はスルーお願いします。
あと今回はそんな腐ってませんのでご安心ください。
今から数年と数か月前
千葉にあるとある中学の体育館。
「1年C組七沢宗です!よろしくおねがいします!!」パチパチパチ
自己紹介する一人の少年、150代の身長から見て取れる姿に、まだ二次成長が始まっておらず、ついこの前まで小学生だったあどけなさが残る。
「これで全員だな、じゃあさっそくだが練習を始める!!2、3年は1人ひとりコンビ組んでやってアップから一通り教えてやれ」
「ハイ!!!!」
顧問の指示により先輩部員が散り一年につく。
ちょうど同じ人数だったため誰につくか?や人があぶれる事無くコンビを組む。
「よろしく!七沢君!!」
身長は175・6センチほどだろうか、二年生としては比較的身長も高くそれによりやや大人びた顔立ちに見えるその姿、身長がコンプレックスではじめた七沢にとって憧れとして脳裏に焼き付く。
「よろしくお願いします!!清川先輩!!」
中学、高校と長くチームを組む二人が出会った瞬間であった。
七沢にとってバレー人生において清川が与えた影響は計り知れない。
レシーブ、トス、サーブ、スパイク、チームプレイなどバレーにおける基礎、これらはすべて清川から教わった
。
また清川はチームの時期キャプテンとしての実力があり、人望の厚い彼に七沢のみならず一年は尊敬し憧れた
先輩のようなプレイヤーになりたい!!いつしか彼の目標は清川になり、成長期でさらに前へと進んでいく彼の背中を必至に追いかけた。
七沢たちが入部して3ヶ月、運動部において脱落者が出始める頃。
バレー部においても例外ではなかった。
競技としては比較的運動強度が少ないバレーボールだが、練習までそうとは限らない。
競技者としてのレベルを高める場合、その目標に比例するかのように練習の運動強度が恐ろしく上がる、地区大会優勝を目指すチームにとってその運動量はかなりのものとなる。
また季節も春から梅雨、夏へと近づきそれらは熱となり容赦なく体力と気力を削っていく。
つらくなっていく練習、思ったほど強くならない焦り
理想と現実のギャップから一人が辞めると皆もつられるように辞めだす……。
14人いた新入部員が一斉に辞めだし、残ったのは5人だった。
そんな中彼、七沢は残った。
そんな彼に清川も信頼を起き、持てる技術を全て叩き込む。
すると七沢もそれに答え、さらに結果をだす。
二人はいつしか師弟であり、仲の良い兄弟であり最高の仲間となっていた。
清川が3年に上がる頃には七沢も去年の清川並の体になり、いつしか技術も肩を並べるようになる。
そんな二人に周りも引っ張られ、その年の夏。
チームは念願の地区大会優勝を果たした。
そして3年が引退した後の事。
「キヨ先輩はやっぱり海浜に行くんですか?」
海浜は偏差値が低い為か、スポーツに力を入れる傾向がある、その地区で有望な選手は海浜に声がかかり、大抵の選手はそこに行く。
そんな海浜を中心にかなりの高校が彼をスカウトしていた。
「いや、俺は総武高に行くよ」
清川が口にしたのは予想だにしないことだった。
総武高校といえば県下有数の進学高、野球やサッカーなど人気のあるスポーツにおいては強いものの、バレーに関しては万年1回戦レベル、スカウトされるような選手が行くようなところじゃない。
「……バレー、続けないんですか?」
七沢は不安の色を隠せない。
「違う、バレーは続ける」
「確かに、海浜や他のチームに行けば設備も立派だし、いい選手もいっぱい集まる……けどそれだけだ。優秀なプレイヤー同士で切磋琢磨も悪くないが、そんなのその高校が強いだけだ。自分の力を試したい、そして弱いといわれるチームが成長して、目標に向かって強くなるのを見たい」
「まあ、そんな青臭い理由かな」
清川は自分の発言が少々気障ったらしいと思ったのか、薄らテレを浮かべ頬を掻く。
「キヨ先輩……」
「じゃあ俺も総武高目指します!」
清川はあっけにとられ、きょとんとした顔になり
「宗、お前頭良かったっけ?」
「一応クラスで3~5位なんで頑張ればなんとか」
「じゃあ頑張れ!お前と一緒なら俺も嬉しい」
「でもまずは、キヨ先輩が先に合格してくださいね、あんだけカッコつけたのに、試験落ちて結局海浜でしたじゃ恥ずかしいですよ」
「おう、任せろ」
その年、清川は合格を果たし、翌年は七沢も合格を果たし……
「1年F組七沢です!!よろしくおねがいします!!」
二人は再び同じチームになる。
七沢が2年、清川が3年
清川にとって最後の夏。
総武高校は過去最高のチームとなっていた。
清川、七沢のダブルエースを中心に清川と3年間チームを組んできた3年生。
総武高に入学するレベルなのだから頭が悪いわけじゃない、勉学以前に基本的に地頭の良い人間はコツをつかむのが上手い。
生きた教材として清川のプレイを見て学ぶ。
最初こそ素人だった彼らだったが基礎を覚えたあたりから急激な成長を遂げた。
さらに七沢が入学し、清川との年期の入った高いレベルのプレーを日ごろから見ることによって自らも高みに押し上げた。
そして1年、2年もそれにつられ活気に満ち、中学の最後の夏のようにチームが一丸となった。
そして挑んだ最後の大会。
チームは快進撃をおこす。
準々決勝まで進み、総武高校始まって以来のベスト8。
後3つ勝てば優勝とまで来ていた。
対戦相手は昨年の優勝校にして今回の優勝候補でもある海浜高校。
総武高校VS海浜高校
これに勝てば優勝も夢ではなかった。
お互いストレートで勝ち上がってきたものの、下馬評では総合力のある海浜がやや有利、総武高校のダブルエースの活躍が試合のカギを握るという状況。
実力が拮抗したこのレベルの試合では、わずかなミスで流れを失い、相手に流れを与え命取りになる。
事実、試合はお互いに譲らないシーソーゲームとなった。
1セット目
28-26
Wエースにより、どのローテーションでも点数がとれる総武高校がデュースを制し1セット目を先取。
2セット目
23-21の総武高リードの場面
流れが行きかけた時、海浜のタイムアウトにより流れを止め、落ち着きを取り戻し監督の指示により作戦変更、サーブを得意とする一芸に秀でた切り札をピンチサーバー(野球でいう代打)で投入、総武がサービスエースを取られ、流れを掴んだ海浜が逆転2セット目を23-25で取り返す。
全体を見渡せる人間、流れを変える切り札の有無。
強豪チームとそうでないチームの差がここで出てしまう。
そして最終セット
23-24
Wエースに頼った攻めに対し、海浜はクイックや平行トス、俗にいう時間差トリックの使用率を増やし、メンバーを変えながら展開の早い攻めに切り変え、相手のリズムで戦わせない作戦できていた。
絶対に決めなくてはいけない場面。
次のサーバーは七沢、極めて重要な場面で彼に回る。
これを決めれば勝ちが見え、外せば一瞬ですべてが終わる。
サーブを打つ瞬間、会場が静まりその一瞬に注目が集まる。
だが、七沢は上がっていた……。
中高プレーしたとはいえ、このような場面で回ってくることは公式戦において滅多にない。
これがちゃんとしたの監督なら七沢の精神状態を察しサーブ前にタイムアウトで落ち着かせるところだが、総武高の監督は素人、プレイングマネージャーとして清川が指示を出していた。
いくら清川とはいえキャプテン、エース、監督の3足の草鞋はキツイ。
熱が入ったコート内で冷静かつ全体を見渡し監督をするのは無理があった。
バンバンバン、と床にリズムよくボールを打ち付けルーティンをとる。
(いつものリズムとは違う気がする……)
笛が鳴りルーティンをやめる。
そしてその動揺が残ったままトスを上げジャンピングサーブを打つ。
(しまった!!)
手に伝わるいつもと違う感覚。
ボールを上げた時の僅かなズレ、それはジャンピングサーブの打点をずらしサーブの軌道が本来の軌道とは違うものになる。
バシッ!!!
ネットにあたったボールはそのまま超すことなく、自コートに落ちる。
ピィィィィィ!!!!!
その音は、サーブが失敗した事を、総武高校が敗れたことを、そして清川達3年の高校バレーが終わったことを意味した。
清川はボールを拾い軽く会釈をし審判にわたす。
そして、立ち尽くす七沢に近づき頭に手を置き。
「並べ!整列だ!まだ礼が残ってる」
そのまま彼を無理矢理隣に並ばせる。
「「「「「ありがとうございましたー!!!!」」」」」
パチパチパチと両者の検討を称える拍手が会場に鳴り響く。
そこには一人に責任を擦り付けるような事はない、全力で試合した両者にのみ贈られる拍手。
続いて応援に来てくれた生徒やOB、先生が応援する場所へと向かい。
「「「「「ありがとうございましたー!!!!」」」」」
今度はここまで足を運んで自分たちを応援してくれた人たちに対する礼。
「こっちこそありがとう!!!」
「いい試合だったぞ!!!」
「また応援に来るからな!!!」
拍手と共に向けられる温かい言葉。
七沢にはそれが悔しかった。
自分のせいで負けた。清川の3年生たちの最後の大会だったのに。
もちろん彼のせいではない、彼の活躍があってここまでこれた。
そしてバレー部の為に一番頑張ったのも彼だった。
そんな彼を責める人間はこの場において、自分自身しかいなかった。
控室にもどる総武高校
大会が終わり監督の3年生に向ける挨拶が終わり、続いて清川の挨拶だ。
「この場を借りて皆に礼を言いたい、まずは3年!」
3年のメンバーをそれぞれ見渡し。
「今まで一緒に頑張ってくれてありがとう!!高校でバレー始めたお前らが成長してくれたおかげでチームはここまで来れた、この中の誰かが欠けてもここまで来れなかったと思う」
「普段こんなこと言えないから言わせてもらう、総武高校に入って良かった、お前らとバレーできて良かった、今までありがとう!!」
3年に向け礼をする。
「それはお互い様だ!」「こっちこそありがとう!」といった言葉が行きかう。
次に後輩に向かい。
「これからはお前らの番だ!俺の力不足で部員確保ができなかった、すまなかった!正直これから大変だと思う、だけどお前らならそんな苦難も乗り越えてくれると信じてる」
「こんなキャプテンについてきてありがとう!頑張ってくれ!!」
「「「「はい!!」」」」
そんな中、七沢はずっと俯き口を閉じる。
「……宗、顔上げろ」
「でも……俺のせいで」
「お前がいたから、3セットまで行けたんじゃないか」
「でも!!!」
「頼むから顔あげてくれ、最後まで面倒見させんな」
最後という言葉に終わりという現実が近づく事をそれぞれが実感する。
七沢は涙が出そうな状態をこらえ目をギッとしめ、顔をあげる。
「お前とは、一番長い付き合いだったな」
「はい……」
「ありがとうな、宗」
(俺なんかに優しい言葉を掛けないください……)
「始めはこのくらいの身長だったよな」
手を当時の身長くらいに構える。
「それが今やこんなだ」
自分と同じ高さになった後輩の頭に手を置く。
「俺のバレー人生において、間違いなくお前と一緒にいた時間が一番長い……」
清川は昔の事を思い出すように目を閉じる
「何にもできないような奴が、気付いたらだんだん大きくなって、プレーもマシになってきて気が付いたら俺と同じプレイまでするようになって、肩並べだして」
今まで一緒にすごした日々が次々頭に浮かぶ。
「いつの間にか俺よりすごいプレーしたりして、負けられないって俺も頑張ったり」
かわいい弟分であり、仲間であり、いつの間にかライバルとして二人は歩んできた。
いつか、来る終わり
ずっと歩んできた二人だからずっと続くような感覚。
だけど終わりはやってきて。
「お前に、は……」
清川の体が震えだす
「お、前には……いっぱい、言いたい、こと、あったんだ……けど」
目を深く閉じ必死に声を押し上げる
「バレーを、選んくれてありがとう……」
無理矢理声を押し出す
「お前がいたから俺は……頑張ってここまで来れた!」
「そして、そんなお前のプレーで終わることができた、悔しいわけないだろ!!お前のプレーで終われるなら、最高の終わり方だ!!!!」
「だから、ありがとう!!」
その言葉が七沢の耳に入り、心に響く。
七沢の目から涙がこぼれだし、今までの我慢していたものが決壊し俯き、声を上げて泣き出す。
それをきっかけに清川、部員全体に広がる。
「宗、これからのバレー部を頼むぞ、お前だから、おれは安心して終われるんだ」
落ち着いた頃、清川は七沢にバレー部を託す事を伝える。
「ハイ!!!!」
真剣な目を清川に向け答える。
その声はその場に大きく響いた。
それは総武高校バレー部の新キャプテンが誕生した瞬間だった。
七沢過去編は終わり、次こそ奉仕部。
とりあえず次回、男と女は衝突します。