ヒーローというものが職業になってから、ほとんどの荒事はヒーローの仕事だ。
資格を持っていない人が勝手に個性を使うのは禁止されている。だから、ヴィランが出た場合も手を出さずにヒーローが来るのを待つのが世の常だった。
「助けて!」
「はっはっはっ!それ以上来たらこの子供がどうなるかわならねぇぞ!!」
だから、昼間、往来の場でヴィランが子供を盾にとって立てこもり、その子供が助けを求めていても、ほとんどの人は素通りしていくか、野次馬とかすかのどれかだ。
通報をしたからすぐにヒーローがやって来る。そしたらすぐに解決する。
そう思って、助けを求めている子供のことは可哀想だと思いながらも誰も行動しない。
けれどそのとき。人混みから一つの影が飛び出てくる。
「なんだ……!?」
その影はヴィランが何か行動をするよりも早く懐に入り込むと、手に持っていた刀を鞘に納めた状態で下から思いきりその顎に叩き込む。
「ぐっ!!?」
ぐらついたことによって腕の力が弱まったその瞬間に子供の手を引き、その腕に抱えると素早く距離をとる。
「あ、ありがとう!」
「危険だから下がってろ」
子供を適当な位置に連れていくと、感謝の言葉を言うが、それを無視して静かに言うとヴィランに向かう。
「なんだこのガキ!!」
体勢を立て直していたヴィランはその影に怒りの矛先を向けると、自身の個性で己の手を刃物に変える。そして影に振るおうとするが、それよりも早くヴィランの懐に再び入り、右手を左手に携えている刀の柄にかける。
そして被っているフードの隙間から鋭い眼でヴィランを射抜くと、親指で鍔を押し上げ、一息で抜ききると目にも止まらない速さでヴィランを切りつける。
身体中から血を吹き出し、倒れて動かないヴィランをしっかりと確認すると、刀を納める。
その瞬間周りから爆発的な歓声が沸き起こった。
「すっげー!!」
「新人ヒーローか!?」
「今何が起こったの!?見えなかった!!」
みんな、一瞬の間に起こった出来事に興奮さめない様子でいた。
そして、その様子を冷めた目付きで見つめる影。否。刀を片手にもつ少女は、ヒーローが来るのを遠目に見つけると、自分にかけられる声をすべて無視してその場をあとにした。
この事件が撮られた動画は瞬く間に世界中に広がり、少女がヒーローではないということが分かってからは少女の行動についての議論が多く繰り広げられるようになる。
そして、ヒーローが間に合わないときや苦戦しているときに、刀を持った少女が現れヴィランを倒し、何も言わずに去っていくという事例が多く起こるようにもなった。