全てを平等に視る人と全てを平等にする人ののんびりラブコメ
ラスボスとかもさらっと倒しちゃうかもしれない

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 朝、目が覚めるとそこは見たことのない茶の間でした。

 

●安心しなよ、安心院さんだけに

 

 意識がハッキリしだした頃、後ろから魅力的過ぎる綺麗で透き通った声の持ち主に声をかけられた。

 

「やあ、調子はどうだい?」

「絶賛戸惑ってますけど……」

「そりゃあ良かった」

「なにも良くないんですけど、それは」

 

 テンプレートな質問からのよくある返答。目は俺を見ていない。見ていないと言ったら語弊を生むか。俺を見ているけど俺を見ていない。例えるならまるでつまらない漫画を見ている様な目か。

 それでもあまり不快さを感じない辺り美人は得をするってことなんだろうね、きっと。

 

「ここはどこなんです?」

「そうだね、ここは僕の世界だ……と言って君は納得するかい?」

「厨ニもいい加減にしろ……って返答したいところですけど」

「ところがどっこい非常に残念なことながら僕の世界である訳だ。僕の世界と言うべきか僕の造った世界と言うべきか。それとも僕の住み着いてる世界って言うべきなのかは迷ったところではあったけどね」

「面倒臭い言い回しですね」

「僕は(安心院なじみ)だからね」

「さいですか」

 

 茶の間には炬燵とみかん。他にも和室にありそうって思う物は基本あるんだけど、不思議なことに生活感が在るといえば在るけど無いといえば無い。

 まるで見えてるものがモノクロに感じる辺りが恐らくそういうことなんだろう。彼女の世界。彼女の造った世界。彼女の中身はきっと白黒でのっぺりとした、まさしく漫画の世界なのだろう。

 そう考えてみると彼女の世界なんだなと確信してしまう。と、同時に何故ここに居るのかという疑問が頭に浮かんだ。

 

「ところで名前は?」

「君は他人に名前を聞くときはまず自分からって言うよくあるばっかみてぇなセリフを知らないのかい?」

「いや、ありますけども。あー。えっと鬼灯光一です。適当にコーイチとでも呼んでください」

「とは言え、名乗られて名乗るとは一言も言ってないんだけどね」

「うわ、そのドヤ顔イラッとしますね」

「名乗らないとも言ってないし、仕方ないからこの僕が名乗ってあげよう。耳の穴かっぽじって聞くといい」

 

 たった数分しか話していないのに、大体のこの人の人となりがなんとなく解ってきてしまった。

 

「僕は安心院なじみ」

「平等なだけの人外だよ」

「親しみを込めて安心院さんと呼びなさい」

 

 傍若無人で人を人として見ていない。世界を現実を虚構としてか見ていない。

 安心院なじみはつまるところ至極単純に中二病を拗らせた馬鹿なんだろう。

 

「で、安心院さん」

「なんだい、コーイチくん。あと質問するときは手を上げろよ」

「えっとどうやったら元の自分の部屋に戻れるんです?」

「いい質問だね、コーイチくん。それが何故か戻すことができないんだよ。つまりお手上げさ」

 

 なにこの人、寒い。言ったら怒られるだろうから言わないけど。

 でも可愛いから許せちゃう。やっぱり可愛いってずるい。

 

「さっきから君を殺そうと色々スキルを使ってみているんだけど、どうにもうまく行かなくてね」

「わぁい、物騒極まりねぇな」

「大丈夫だよ。この僕の1京2858兆519億6763万3865のスキルがあれば五体満足に復活できる筈だから」

「なにその頭可笑しい数」

「とはいえ、全部君に効果がない。心を読むにしても、視界を視るにしても、傷つけるにしても、殺すにしても効果がない。1京2858兆519億6763万3865のスキルすべてが君に対して効果がないんだよ」

「てか、持ってるスキルが色々ほんとに物騒」

「まあ、安心しなよ、安心院さんだけに。最悪適当にどうにかしてやるさ」

 

 まあ、女の子だしパーソナルスペースに入ってきたら邪魔ですもんね。俺だったら絶対嫌だし。

 

 

●その幻想をぶち殺す!

 

 安心院さんの世界に来て三日目。未だに進歩のないこの状況から逃避するために安心院さんに話しかけることにした。

 

「安心院さん、安心院さん」

「なんだい、コーイチくん」

「なんで季節的に夏であろうこの時期に炬燵があるので?」

「ん?今は春だよ?」

「……あるぇ?」

「ふむ、君は別の世界から来たようだね。もしかしてあれかい?君は二次創作でよくある使い古された転生者だったりするのかい?なんか神様に気に入られて無限の剣○や王の○宝とか貰うやつ」

「なんで型○限定なのかはわかりませんけど、そんな神様とかに会ってませんよ」

 

 使い古されたとか言っちゃダメなやつ。いろんな方面に怒られちゃうよ。使い古されてるってことはつまり王道なんだから、大事。王道大事。

 にしても炬燵にみかんだけかぁ。

 

「安心院さん、キッチン使って大丈夫ですか?」

「構わないけど、あまり荒らしたりしないでおくれよ?まあ僕のように可憐な乙女の部屋だから気になるかもしれないけど」

「可憐な乙女(笑)」

 

 あ、やめて!脛ニコニコしながら蹴らないで!結構痛い!

 一昨日昨日と今日で3日一緒に居るわけで、色々話を聞いた。

 この世界には凡人、異常、過負荷、悪平等、安心院さんの5タイプがあるらしい。安心院さんで一つである辺りさすがとしか言えないよね。更に細分化するとモブ、主人公、ラスボスらしい。

 本当に漫画の世界みたいだからびっくり仰天。

 あとついでに安心院さんはもはやおばあちゃんを通り越したおばあちゃん。超おばあちゃんであるこt……いってぇ!

 

「言っておくけど、スキルが効かないからといってそういう失礼なこと考えたら判るんだからね?」

「ご、ごめんなさい」

 

 ニッコリ(イイ笑顔)でそう告げられたら震えが止まらない。女性はこわい(確信)

 あの時折見せる第六感的鋭さは一体全体なんなんだろうね。元いたところでもその乳、牛みてぇだなぁって思った瞬間に殴り飛ばされたし。

 そういえば、メダカちゃん?ってのを観察しているらしいんだけど楽しいのかね。

 ちなみにお茶はしっかり拘って淹れる派なので、ゆっくりと待ってます。待ち遠しいなぁ。

 

「そういえば、安心院さん」

「どうしたんだい、コーイチくん」

「巫女服に螺子ってそれお洒落?」

「そう見えるかい?」

「もしそうなら変態だなぁって……ごめんなさい、痛いんで抓らないでください。ちょっと触ってみても?」

「別に構いはしないけど、乱暴にはしないでくれよ?」

「やめて、冤罪、ダメ、絶対」

 

 そういって安心院さんの螺子を触ってみた。

 

ー……ピキィイイイイン!

 

「「え?」」

 

 

●ラッキースケベは主人公の風格

 

「え、えっと……?」

「き、きゃあああああああ!」

 

 服が何故か破けて、全裸状態になった安心院さんがそこに。

 ええ、安心院さんの体はすごく綺麗でした。白く綺麗な肌でおっp

 

 

●炬燵とみかんと温い緑茶

 

「そろそろ頭を上げていいよ」

「本っ当にごめんなさい!」

 

 日本に古来から伝わる土下座。プライドなんかかなぐり捨てて土下座に専念。

 てか、女の人の裸見て鼻血だすとかいう典型的なイベントもこなしちゃって泣きそう。安心院さんに看病してもらって本末転倒だったり。

 

「まさか僕があんな声を出すとはねぇ。予想外だったし仕方ないといえば仕方ないのかもしれないけれど……」

「いや、本当にごめんなさい」

「もういいさ、終わったことだ。君も役得だっただろう?」

「すっごい綺麗でした(キメ顔)」

「そんなにまっすぐにキメ顔しながらいうことではないよね。ちょっと、恥ずかしいから忘れよう、うん」

 

 若干ぷいっと逸らしながら赤らめた顔がとっても可愛くてどうにかなりそう。もうちょっとそんな安心院さんを見ていたいという欲望を抑えて気になっていることを聞くことにする。

 ……かわいい。

 因みにキメ顔はキメ顔なんだが鼻にティッシュが詰まっているんだよね。やだ、どう足掻いてもブサイク。

 

「え、えっと、さっきのが俺のスキルなんですかね?」

「かも、しれないね。封印も解けちゃってるし、一瞬だけ死なないスキル『死延足(デッドロック)』が解除されたのも感じた」

「て、ことはつまり……」

「そう、君は幻想○しだね!」

「それ以上はいけない」

「冗談抜きで言うと僕のスキルを無効化にするスキル『無効頸(ライフゼロ)』を強化したようなものなんだろうね」

 

 不幸ではないから幻○殺しさんではない。絶対にな!

 でも、スキルを無効化にするっていうのだとどこか違和感を感じる。

 

「納得いっていないみたいだね」

「無効化ってのがいまいちしっくり来てないんですよね」

「ふむ。まあ、またあとで考えることにしよう」

「ですね、お茶淹れてきますんで待ってて下さい」

「君のお茶は美味しいから楽しみだよ」

 

 

●『どう足掻いても普通(タイプノーマル)

 

「ああ、そういうことか!」

「どうしたんだい?ドン○コスとド○ペを両手に急に立ち上がったりしてさ」

 

 4月1日になった。あれから約1ヶ月経ったんだが、のんびりとしてたらNT的にピキィインと何かが来た。もしくは種が割れた。運命は許さない。

 あれ以来なじみがひっついてくるようになった。暖かいし役得ではあるんだけど、多分責任取れよ(ニッコリ)ってことかね。もしそうなら年の差婚だな。ついでに敬語を止めさせられた。慣れてないから有り難かったけど。

 

「俺のスキルって俺の中の普通を相手に押し付けるんじゃないかな」

「あぁ、なるほどね」

「つまり俺がここから戻れるのが普通と考えたらかえr」

 

 るんじゃと続けようとした瞬間、なじみの顔がドアップになった。

 いや、分かってる。キスだ。

 

「ぷはっ。僕と同じ土俵に登れるやつ、僕と同等になれるやつを今まで孤独だった僕が好きにならないと思ったか?残念だったね、僕は君を離さないよ。君は僕のもので、僕は君のものだ。喜べよ、こんな美少女を自分の女に出来るんだぜ?」

「……ふぇ?」

「鈍いな、どこにも行くなって言ってるんだよ。言わせんな恥ずかしい」

 

 どうやらこの世界で俺は攻略対象になったみたいです。

 ついでに今のズキュウウウンって音のつきそうな情熱的なディープなキスにわたくし落とされちゃいました。お互いチョロインかよ。



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