「博麗日常劇場」   作:太平のタペ

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※第一話『夏の日』は、東方二次創作サークルのAnother Eastが例大祭で販売した
【幻想青跡蓮 SOUNDTRACK vol1~飛ぶ現~】にて書かせて頂いた読み切り小説です。
純粋に小説を見に来た人達には申し訳ないですが、宣伝だけでも。
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普通に読んでいただく文には見なくても問題ありませんので。
それでは本編をどうぞ……。


夏の日

 

――それは、とある真夏の出来事。

 

一人の少女が、とある神社の縁側で休んでいた。

灯籠に立て掛けられた竹箒とその横へ僅かに集められたゴミ、縁側へ乱雑に脱ぎ捨てられた靴、汗で髪が若干湿っている黒髪の少女は湯呑みを手に姿勢を崩している。

前日の大雨で地面にぬかるみが残っているせいか、容赦なく照りつける太陽の熱気と地面から来る湿気が容赦無く彼女に襲い掛かっていた。

彼女は縁側の日陰から湿った地面を恨めしげに睨みつけると、手に持っていた湯呑みに口をつける。湯呑みのお茶は既に温かったようで、彼女は顔をしかめると、気を紛らわすため横に置かれていた煎餅の袋に手を伸ばした。

 

 

――葉月の三。天候は快晴。

 

彼女が神社の掃除を放棄してから十数分後のこと。

空から神社へ一人の少女が訪問に来た。

少女の額と半袖の端が汗で濡れているのも、この暑さではよくあることだろう。

三角帽子と半袖にエプロンとロングスカートという真夏では目立つ服装の彼女は、ここに来るまでに使っていた箒を縁側に立て掛け、さも当然かのように縁側に上がり込んだ。

依然として休憩という名の掃除サボリを続行する彼女はそれを黙認し、それを良く思ったのか帽子を外して少女は金髪を顕にすると、意気揚々と煎餅に手を伸ばした。

黒髪の少女は金髪の少女の行動に溜め息をつきつつも、何時の間にか用意していた新しい湯呑みに急須でお茶を注ぐ。

未だに鳴り止まない蝉の声は、彼女達にまだまだ夏が終わらないことを告げているかのようだ。

金髪の少女が湯呑みに口をつける。急須の中のお茶は、やはり温かった。

 

 

――先勝、送り火前日。

 

日陰から入道雲が見えたが、生憎と太陽の位置に被ることはなさそうだ。

金髪の少女が来てから一刻は経っただろうが、相変わらず暑さは和らがないし、日も高く上がったままである。

風の一つでも吹けば幾らかはましになるだろうが、彼女達の思惑とは裏腹に風は彼女達を嘲笑うかのように静かだった。

そして、それに比例するように蝉の音ばかり強さを増していき、遂に息を合わせて鳴き始めた。

静かな縁側に響く蝉の大合唱は、見る者からすれば中々に風情があるものだろうが、生憎と少女達がそれを気にする様子はない。

身体は涼しさを求めているが、家には一つの団扇しかないのだ。

暑さに遂に我慢出来ず黒髪の少女はおもむろに立ち上がると、居間の机に置かれていた新聞を乱雑に掴んでそれを団扇替わりにして扇ぎ始めた。

元々あった団扇は、先程のジャンケンで既に金髪の少女の手に渡ってしまっている。

地面はとっくに乾いていたが、ジメジメとした暑さはまだ引いてはくれないらしい。

団扇を扇ぎ、手の動きで余計に身体が暑くなり、新聞紙が手の汗で滲み、手に熱が篭る。そんなまるで意味を持たない行動を繰り返すのも、やはり夏の風情であり、醍醐味だと感じさせられるものだった。

 

 

――馬の刻、二十三度。

 

夏の暑さに勝てず縁側で横になっていたら、何時の間にか日は沈みかけていた。

あれだけ憎たらしかった太陽も、今では山に隠れてしまっている。空は若干明るいが、この茜色の空間もすぐに終わりを告げることだろう。

金髪の少女は、目を擦りながら箒を掴んでフラフラと宙に浮く。黒髪の少女に手を振ると、黒髪の少女は若干呆れた表情を見せながらも律儀に手を振り返した。

少し赤と黒が混ざり合う空へ消えて行く少女を、見えなくなるまで何となく見届ける。

空は、星と月明かりを残してすっかり暗くなっていた。

黒髪の少女は、灯籠に立て掛けておいた箒を仕舞うのも忘れて土間へと歩き始める。

昼の暑さもすっかり引いて、大合唱を奏でていた蝉の声も息を潜めていた。

相変わらず風は吹かないが、この涼しさなら蒸し暑さで眠れないなんて事態は避けられそうだ。

……だが、昼寝のせいで今日も寝つきが悪いのだろう。微妙に残る寝起きのだるさと無駄な目の冴えようにまた一つ、深い溜め息をついた。

 

 

ああ、今日も一日が終わる。

何時も騒がしく、話題と徒労の尽きない日々が続いていたし、たまにはこんな一日もいいだろう。

たまにはこんな多忙な仕事も煩い宴会もない、何事もなく平凡で、ゆったりとした時間もまた格別なものだと考えさせられる。

夕餉の支度もそろそろ終わる。一人分の小鉢と茶碗を用意しながら、彼女は小さく欠伸をした。

 

 

 

さて、夕餉を始めよう。

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