「博麗日常劇場」   作:太平のタペ

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なんか続きました。瑞鶴の誕生日を祝ってから何となく続きを書いてみることにしました。継続って大事。
布団でぬぼーっとしてるので更新おっそいです。
本編でなんか場面のリクエストがあれば書いてみます。そこ、感想乞食とか言わない。


冬の日

 

 

 

――襖を開けると、縁側の向こう側には雪景色が広がっていた――。

 

雪の向こうまで続く白の情景。未だにしんしんと降り続く様は、自然に囲まれた境内もあり幻想を見ているかのように錯覚させる。

だが、これを見ている彼女はその光景を見て感嘆することもなく、白い息を一つ吐いた後に襖を閉じた。これを初めて見た時ならともかく、この光景は彼女にとって見慣れたものなのだ。

 

 

 

 

 

 この神社の主である彼女は、冬が苦手なのだろうか。朝食の準備をする為に土間へと向かうが、その姿は寝間着の上に半纏を着て料理用の手袋であるミトンをはめており、首には赤い襟巻を巻き付けて、真冬に対して完全装備である。

 傍から見たら本来の彼女より一回り大きく見えるようなほど着込む彼女は、準備した残りものの朝食をもそもそと口に運びながら、大きく溜息を吐いた。

 外はまるで、世界が動きを停止したかのように静けさを保っている。しかし目を向ければ、雪は未だに降り積もり続けているのだ。

 当然、この雪は勝手に溶ける訳では無い。屋根に積もり続ければ、いずれこの年季の入った神社は雪に押し潰されてしまうだろう。

 

――早く春が来ればいいのに――

 

 面倒事が嫌いな彼女にとって、未だに雪が止まない中での降雪作業は苦痛以外の何者でもないのだ。

 

 

 

 

 

 淡々と雪を降ろすだけの単純な作業に変化が起きたのは、正午を少し過ぎた頃だった。

 屋根の上でコウ鋤を手に雪かきをする彼女は、遠くの石段から誰かが登ってくるのに気付く。勿論、こんな日に一般的な参拝者が来るような事態は万が一でも起こるはずがない。神社の評判は他でもない、彼女自身が身を以って知っているのだ。

 ……そんなことを考えてる間に訪問者は石段を登り切り、彼女からその姿がはっきりと見えてくる。

 髪は朝と比べてかなり大人しくなった雪と同じく真っ白のボブカットに黒のリボンを付けている。

 深緑のベストの上には白い外套を羽織って、スカートはふくらはぎを覆い隠す程度には何時もより長めのものになっており、スカート下の肌は白のオーバーニーソックスで冬の寒気から身を守っている。

 そして何よりも特徴的なのは、腰から伸びる二振りの剣と、身体の周りをぐるぐると回る半透明のモヤのような物体。

 神社の彼女より若干背の低い白い少女は、屋根の上の彼女を見つけて破顔すると、大きな声で叫んだ。

 

――みんなで、花見をしませんか――

 

 

 

 

 

 結局彼女は花見の誘惑に勝てず、雪かきを放り出して冥界の奥に存在する屋敷へと足を運んだ。

 仕方のないことなのだ。どうせあのまま雪かきを続けても、雪は止んでいたに違いない。仮に振り続けたとしたら、その時はまた明日やればいいのだ。それにいざとなれば、他の訪問者に何かと理由をつけて手伝わせればいい。白と黒の友人ならきっと嫌々ながらも手伝ってくれるに違いない。だから、今日くらいはサボっても問題ない。いや、サボりではないのだが。

 屋敷についてから自分に言い聞かせること数分。頭の中でなんとか自分を説得させた彼女は、白の少女が連れてきた屋敷の主と共に、庭が一望できる縁側へと足を運ばせるのだった。みんなと言っていた割には知り合いにみんな断られ、結局この三人だけになってしまったことは神社の雪かきと比べても些細な問題なのである。

 

 

 

――綺麗――

 

 

 

 縁側から見える庭は、とても美しい空間を生み出していた。

 冥界にあるこの屋敷でも、どういう仕組みかわからないが雪は降る。ここに来るまでの通路では全く降っていなかったのにも関わらず、だ。しかし降る雪は、どんな手品か地面をすり抜けるかのように消えていくのだ。

そして、正面に見えるのは真冬だということは知らないとばかりに咲き誇る大きな墨染桜の花弁がゆるやかに舞っている。

 例えるなら、絵本や物語の中の楽園。それも決して完全な妄想や幻想の中だけにあるものではなく、歴史と和の文化を極限にまで突き詰めたような空間、とでも言うべきなのだろうか。

 雪と桜が鮮やかに舞う貴重な経験をした彼女は、特に何かを言うこともなく静かに縁側へ座りこんだ。

 この場面を他の人が見たら、恐らく彼女の事を反応の薄い人間だと思うだろう。だが、他でもないこの屋敷の住人達は顔を見あって微笑むと、両隣で花見を始めるべくお茶の準備を始めるのだ。

 

 

 

 そう。彼女は、この光景に反応しなかった訳では無い。むしろ、幻想の地でもそうそうお目にかかれない美しさに感動すら覚えていたのだろう。

 彼女の、無言でただただ桜を眺めるという行動。これがきっと「魅入る」という行為なのだろう。桜色の屋敷の主は、気を良さそうに口角を上げた。

 

――花見は、静かに幕を開ける――

 

 

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