過去よりつながる現代の、〝これから〟の始まりと行く末をつないでいきます。
それでは、どうぞ!
現代にて明かされた、《皇帝》の過去。
しかし、それは……歪められた、過去。
長い年月を経る間に、混ざり合う……人格と、感情。
しかし、彼女自身……気づかない事実。
だから、彼女の暴走は……止まらない。
彼女自身が、忘れてしまっているのだ。
忘れさせられてしまっているのだ。
だから、それは歪んだ法則のままに……「シュティレ」の、導きのままに……事は、進んでいく。
そして、ついに……時は現代――『無限書庫』での動乱へと、舞台を戻すことになる。
× × ×
時空管理局・本局の超巨大データベース、『無限書庫』にて。
「――こうして、時は満ち……現世にて、陛下は蘇った、というわけですわ」
「じゃあ……フライハイトは、〝アブソルート〟は……実際に存在した――『王』の一人!?」
「そう。この方こそ……〝この世を統べる〟御方です……!」
そう言いながら、ラスは恍惚とした表情でユーノにそう告げる。
しかしユーノは納得がいかない……というよりも、納得がいかない。
これは、何というか直感の類なのだが……なんだか、少しだけ――彼女の語った『歴史』に違和感というか、矛盾のようなものがあるような感じがしたのだ。
もちろんユーノ自身はその光景を見たわけでも知っているわけでもない。『無限書庫』にだって、そんな〝歴史〟を示してはくれなかった。
ただ、何かおかしい。
――ところどころが、抜けている。
例えば、《皇帝》と二人の王の最後の邂逅。
《皇帝》の力を恐れた二人の王に力を奪われたと言った。
しかし、彼女は言った。
《皇帝》は、戦乱を『静寂』による終結へと導こうとしたと。
だが、それをできるほどの【冷徹】さを、その『志』とせんとしていた《皇帝》をどうやって、〝止めた〟のだろうか?
彼女の語る《皇帝》は、完全無欠の無敵の王。だが、その《皇帝》を止めて力を奪ったのだろうか?
さらに言うと……、そもそも奪われた『力』は、どこへ行ったのだろう。
少なくとも、彼女が《皇帝》を〝癒していた〟という三百年の間に……『聖王』や『覇王』が残してきた足跡は、確かにここに――「世界の歴史の眠る本棚」にも、この世界のいたるところでも、語り続けられている。
そう言った足跡の中に、《皇帝》の名はひとかけらもない。
確かに、忘れさせたとはいった。
だが、だったら何故構成において《皇帝》の記憶まで消すのか?
それが仮に〝奪われた力〟を使わせないものだったとしたら、そもそも、取り戻すことは出来なかったのか?
出来ただろうに、『無敵』で『絶対』なのだから。
それに……彼は世界から〝消えた〟――だからと言って、何故……彼自身がそれを〝知らない〟のか?
また、彼女はこうも言った――〝精神汚染〟と。だが、その『汚染』とやらはいったいなんなのだろうか?
世界を『静寂』の家に沈め、静めようとした彼女の語る《皇帝》のどこにその『汚染』があったのか?
不明瞭、不鮮明、はっきりとしない「矛盾」が……ところどころが『欠落した記憶』、『偽りの過去』を語っている――いや、語らせられている様な気がしてならない。
だから、ユーノは納得できない。
この
――ユーノの〝歴史を追う者〟としての血が、本能が、告げているのだ……『隠されたる真実』の可能性を。
だが、その考えを一度取りやめなくてはならなくなってしまう。
というより、その〝可能性〟は……もっと早く気づかなくてはならなかった。
何故なら……ここには、目の前の半ば〝狂信者〟じみている――『女騎士』で『魔女』の様な人物がいて、半ば嫉妬で歴史を動かしたような輩の感情を煽ってしまう定めを背負ってしまっている〝少女〟が、いたのだから…………。
「――っ!?」
そして、それに気づくのは……遅すぎた。
「ひっ!」
「……聖、王…………ッ!? 馬鹿な、奴は……子をなさなかったはずだ。それはこの時代に目覚めたときから確認しておいたはず――」
彼女は半信半疑で……少女に近づき少女に残る、《皇帝》の力の片鱗を探す。
「――まさか、陛下と同じ……構成体……?」
そして、怯える少女の胸の内に眠る、魔導士の命足る『リンカーコア』が眠る幼子の胸を……その手で、貫いたのだ……。
そしてそれに伴い、書庫に響き渡る少女の悲鳴。
「うあぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああァァァぁぁぁっっっ!!!!!!!!!???????」
「「ヴィヴィオぉぉぉっ!!」」
そして、それに伴い……少女の名を呼ぶ、彼女の『母』とその『友』の声――否、それはもはや……心の叫びだった。
「……なるほど、どうやったのかは知りませんが……まさか、ここに『盾』を奪った狼藉者がいるとは思っていなかったですわ。しかし、《皇》の復活の供物とするには、うってつけですわね……。それに『盾』をえぐりとった後で、じっくりと――」
――三百年分の恨みと共に……殺して差し上げますわ。笑いながらそう告げたが、少女にはそんなことは聞こえていない。
胸を貫かれる――なんて経験は普通はそうそうしない。
おまけに、彼女はまだ五~六歳の子供であり、尚且つその胸を貫いている人物は、彼女の過去に既存する存在にただならぬ憎悪を向けており……少女が怯えることすらお構いなしに虹色に輝くリンカーコアを凝視して、危険な笑みを浮かべ続ける彼女にその場にいた誰もが恐怖した。
そして、皆が恐怖に駆られている間に彼女は転送の準備を始める。二人の子供を、この場から連れ去るために。
――しかし、それを……我が子が、苦しめられているその光景を……ただ黙って見ているほど、彼と彼女の親心は希薄なものではない。
一人は翡翠の魔法陣を展開させ、彼の長所であるマルチタスクを利用して、今現在体にしがみついている拘束魔法――バインドを強制的に解除する。
もう一人は、彼からもらった『
そして、二人は我が子らを守るために……かつて共に戦っていた日々を、まるで昨日のことのように感じながら……瞬時にアイコンタクトを取り、互いの役割を実行する。
「チェーンバインド!」
翡翠の鎖が〝敵〟を捕らえ、少女から引き離す。少女は気を失い、『無限書庫』の無重力に浮く。しかし、それは直ぐに破られるだろうことなど、重々承知の上だ。もとより、彼が仕掛けんとしていた本命はこちらではない。
「ケージングサークルッ!」
翡翠のリング状の拘束魔法陣が敵である彼女を捕らえる。かつて、『闇の書の闇』――『ナハトヴァール』さえも封じ込めた、高位の結界魔法。
しかし、向こうには『時を操る』という武器がある。だとすれば、このまま放置はただ取り逃がすだけだ。
それを理解している彼は、さらなる追撃。拘束魔法の重ね掛けを実行する。勿論、こういう時に使うべき魔法はしかと心得ている。
「ストラグルバインド!」
相手に対する拘束力は弱いものの、それを補って余る『ケージングサークル』が展開されている。重ねて掛けたこちらの目的とする効果は、相手の魔法を封じる事にある。
高位の結界魔法に、魔力封じの拘束。
この二重の拘束を受ければ、いかにSSランク相当らしい彼女でもそう簡単には抜け出せはしない。
そして、その時間があれば……否、作り出されたこの時間は、もとから彼女の〝これ〟のために有るもの。分かっている。ここからの本分は、空戦魔導師であり……砲撃を得意とする彼女の為の布石。
ガシャン、ガシャンッ!! と、リロード音が響き……桜色の魔力光が、彼女の杖の矛先に集まっていく。
「ディバイーン……バスタァ――ッ!!」
「…………中々です、ですが――まだ、これでは及第点は与えられませんね」
少しだけ、〝彼女〟の声色が変わった。
その瞬間、先程のまでの『過去』の話の中に散々登場した『槍』を使ってくるのかとばかり思っていた二人は、先程〝彼女〟が語らなかった……〝彼女〟の中にいる〝もう一つの意志〟が作り出す『それ』を目の当たりにする。
「まだまだ、ですね……」
〝彼女〟の口角が、上がった……。
そして、出現する。『闇の書の闇』の触手と同じような禍々しい『翼』……いや、寧ろ『手』が出現する。その影の手、悪魔の翼のようなそれは……自信を封じ込める拘束を引きちぎり、迫りくる砲撃を――受け止め、〝投げ返した〟。
「なっ……!?」
その有りえない光景に、自分たちの知りえなかった戦い方……あるいは知っていても使ってくるとは思っていなかったそれに、二人は驚愕した。
更に、彼女は追撃を仕掛けてくる。
「これもおまけ、ですわ……!」
そう言って、背に宿る『影の手』が斬撃を放つ。空を切り裂く黒き爪痕の如き斬撃が、先程砲撃を放った彼女に迫る。
それらから彼女を守るために、彼は彼女の前に割って入り……盾を高速で構成してそれの威力を削ぎ、彼女を守る。だが、それも所詮は付け焼刃の様なもの。時間が足りない。〝普通なら〟そもそも『術式』を走らせることすら不可能だ。偶々彼だから、〝多少防ぐことのできる盾〟を『創る』ことができた。
しかし、
「くッ……!」
当たり前のことだが――勿論、完全になど……防ぐことなど、出来はしない…………。
彼女を守ることは出来た。威力はそぐことは出来た。
だが、彼はダメージを受けてしまう。
「うぁぁ……ッ……!!」
そのまま墜ちるかと思われた彼の、ユーノを、彼女――ラスの背に宿る『手』がつかむ。
「貴方……中々に〝普通〟ではありませんね……本気ではないとはいえ、あのわずかな刹那にあれだけの盾を作り出すとは」
「ぅぅ……」
文字通り握られたユーノは、多少呻く。
「まぁ、最初に凡庸だと貶したことについては謝りましょう。ですが……、そこそこ端麗なその容姿もまだ中途半端ですわね……。向こうの砲撃魔導師の方も、なかなかに美しいですが……お二人とも……まだ、私の心を揺さぶるには足りませんわね」
「ユーノくんを、放しなさい!」
「……なの、は…………駄目だ、こっちに来たら……っ!」
「もう少し、楽しみたかったのですが……さすがにこれ以上無意味に転がし続けるのは美しくありませんし、あなた方には少し大人しくしていてもらいましょうか」
そう言ってユーノをなのはにめがけて放り投げると、……彼女自身は覚えていないが……かつて《皇帝》を地に叩き伏せ、尚且つ動くことすら許さなかった魔法を使う。そしてその魔法の圧倒的威力のままに、二人を手直にあった梁に叩き付けた。
「
その圧殺されるような重さをその身に受けながら、なのはとユーノは動けない状態でもどうにか首をもたげ、二人の子供を連れてここを去らんとするラスを行かせまいとこの魔法に抗おうとする。
だが、はやてと同等のランクの上に、制限など何も強いられていない天然の力の本流に二人は何も成すことが、出来ない。
「……待っ、て…………!!」
「待……てぇ…………ッ!!」
「では、ごきげんよう……」
そのまま、気を失ったヴィヴィオと頭を抱えてずっと苦痛に顔を歪めているフライハイト――アブソルートの二人を連れて、去りゆくその背に投げかけた、二人の必死の制止の声は……届くこともなく、ただ空間に漂うのみだった…………。
現代でも動き出した『終焉』への破滅の時。
その破滅を乗り越えるための手段はないのだろうか?
『世界の記憶が眠りし本棚』が、それまでとこれからをつないできたことを示している世界の記憶は、本当に静寂の波に飲み込まれてしまうのだろうか?
これは決して、乗り越えられない厄災なのだろうか?
囚われた定めの流れを断ち切り、自由を獲得するための……戦いが始まり、親子の絆が今再び試される。
世界の運命を決めるのは、『想い』か『愛憎』か『怨念』か、……それとも、『自由』なのか。
その答えは、まだ……記憶の渦に、世界の
過去編から現代編に戻って、少々ぎこちなくなっていたかもしれませんが、これからも頑張って書いていくのでどうぞよろしくお願いいたします。
後最近、vivid編の構想を考え始めたりしていまして、早くアインハルトとかリオ、コロナ。そしてミウラとか勿論ジークとかクロも出したいなぁと思ってます。
でも、GOD編入れようかとも思ってまして、どう動かしていこうか少し迷っています。
このsts~vividのあいだの空白、つまり今の本編のラストまでの構想は出来ているのですが、それを実際に小説に書き起こすのは大変ですね。考えているだけで自動で文字としてインプットされるようなパソコンとかがあればいいんですけどねぇ……。
それはともかくとして、次回以降も頑張って書いていきます。あと、質問や感想とがありましたらお気軽にお寄せください。
それではまた次回お会いしましょう。