基本的に主人公は子供たちなので、語り部は三人称視点または子供たちの誰かの視点となると思いますが、たまに大人たちや、メタい発言も出るかも……?
さらに、これからも自己解釈及びオリ設定などが出てくると思いますが、ご了承願います。お嫌いな方はブラウザバックください。
あとは余談なのですが、ハイトのなのはたちへの呼び方どうしようかと考えて……ドイツ語で母親の呼び方だと『ムッター』か『ムッティー』何ですがなんだかしっくりこなかったのと、フェイトもママの状態でまだ一応誰も結婚してないのでとりあえず暫定的に『ママ』という呼び方の方に決めました(一応根拠の言及は本編中にもありますけれども……あと、ムッタ―をマター/マティーと変えてもよかったのですが、これも無理があるような気がしたのでやめました。もし何かご意見があればお気軽にどうぞ)。
あと結婚云々に関しては、アニメ本編等の方が友情に重点をいていることやなども考え、別にこの位ならば問題ないと思ったので現時点ではこうしました。
まあ、長ったらしい前置きをだらだら続けてしまいましたが……それはともかくとして、『VIVID編』――ついに始まります。
新たな始まり ――セイクリッド&フリューゲル――
『K事件』から三年、『冥王騒動』からは、一年ほどのちの……新暦七十九年の春――。
ぴぴぴっ! ……カチッ。
そんな目覚ましの音共に、もそもそとベッドの上の毛布が動き出す。
しばらくもぞもぞとした後、パサリと毛布が滑り落ち金色のセミロングくらいの長さの髪の少女が現れる。
彼女は可愛らしいあくびを一つつくと、ベッドから降り、部屋を出て洗面所へと向かう。
そこでパシャパシャと顔を洗い、柔らかなタオルで水気をぬぐうと、少女はその鮮やかな紅と翠の鮮やかな瞳をぱっちりと開く。
そこから続けて鏡を見ながらお気に入りの青いリボンで髪をぴょこんとしたツーサイドアップに結わえる。そのぴょこぴょこ揺れる動きは……幼き頃の彼女の母――なのはを彷彿させるものであった。
「……よしっ!」
ばっちり! と少女は鏡を見て満足そうに頷くと、トテトテと洗面所を出て彼女の部屋の隣の部屋をのぞく。その理由は、ここの部屋で目下熟睡中の彼女の『弟』を起こす為である。彼女が部屋に入ると、大変な寝坊助さんである『弟』――フライハイトは、平和な寝息を立てていた。
「あ~あ、ハイト君は今日も御寝坊さんですねぇ~」
そんな風に呟きつつ、ハイトのベッドに近づく少女。
そう、彼女こそ……先の『JS事件』で現代に蘇った『聖王オリヴィエ』の血を引く者、高町ヴィヴィオ(未来の(?)ヴィヴィオ・T・スクライア)である。
「ハー、イー、トー、く~ん? 朝ですよぉ~?」
声を掛け、ベッドに膝をつきながらゆさゆさと揺するものの、少年は未だ夢の中である。それどころか、更におまけとでも言わんばかりに――
「ん~~……っ」
「ふぇ……っ!?」
――自身を揺さぶるヴィヴィオの方へと転がっていき、ヴィヴィオを抱き枕の様に抱え込んでしまった。
「な、ななな……っ!?」
「…………zzz」
焦るヴィヴィオとは対照的に、まったく自覚無しに寝こけ続けるハイト。
こんなほんわかしたコメディっぽい日常が起こるこの時代が、この物語の舞台である。
――魔法少女リリカルなのは、《忘却の皇帝『VIVID編』》、始まります♪
* * *
――――ど、どうしてこうなっちゃったの? 私、ヴィヴィオ・T・スクライア(仮)はなんだか心地よい温かさを感じながら、そう思いました。
冒頭での通り、ハイトくんを起こしに来ただけだというのに……どうしてか私はハイトくんに抱っこされてます。抱き枕か何かだとでも勘違いしているのでしょうか? それにしても、ここ最近背が伸びてきて『姉』としての威厳とかが少し危ういかなと微妙に危機感があったのですが、どうにもこう包まれる感触というのは、パパ(こちらも結構背が伸びており、現在一七六センチ)のともまた違って、体格が近いせいか妙に生々しいような感触が……って、これは寧ろハイトくん側が抱くべき感想なのでは!? そうだよその通りだよ。こういうのは男の子の方が抱くべき感情なんじゃ――って、天然すぎるハイトくんじゃ無理か……。
――フライハイト・スクライア、十歳でも恥ずかしがることなく家族にべったりである。
ううぅ……クラスの子たちだと、そろそろ親に頼るのは恥ずかしい――なんて言う男の子多いけど、どうにもハイトくんは『家族』が大好きすぎるらしいです。最近だと、誰から構わず手当たりしだい抱き枕にするなんて言う事件もあったり……どうしよう、お姉ちゃんは弟君の将来が心配なのです。弟君の天然さの過剰増幅傾向に、何かしらの対策を講じるべきなのでしょうか?
まあ、それを抜きにしても……女たらしさんにならないように、しっかりと見守ってあげなくては――その前に落とされないと良いんだけども――って、それより早く起こさなきゃ!
「は、ハイトくん! いい加減に起きないと遅刻しちゃうよっ!」
「ぅ……ん。ふぁ~……っ。あ、お姉ちゃん、おはよぅ…………zzz」
「って、こらー! ハイトくん! 二度寝しちゃダメーッ!!」
こんな日常ですが、ヴィヴィオは楽しく生きています。
この後、姉であるソフィアが部屋に来るまでの間は、しばらく二人のコントは続いたのであった。
* * *
スクライア家の食卓は広い。というか食卓に限った話でもないが、この家はとても広い。
ヴィヴィオやハイト、ソフィアが子供の頃に起こった事件が解決した後、ユーノがなのはとフェイトと暮らし始めた頃からいろんな人が訪れる事が多くなり、そんな需要に応える形で大きい家を購入することになったのだ。
平穏な日常の象徴というか、最近ではこの家がまるでみんなの『第二の実家』と化している。
そして、この家には五人の子供たちがいる。
エリオ、キャロ、ラス、ヴィヴィオ、ハイトの五人である。ただ、現在エリオとキャロは辺境地区自然保護部隊に所属している都合上この家をはなれているが、休みにはちゃんとここへ帰ってくる。本人たち的に言えば、『やっぱり実家は落ち着くから』なんだとか。
また、ここに住んでいるのはいずれも管理局に所属している腕利きの魔導師たちばかりであり、その仕事の都合上……なかなか一同がそろわないのも結構いたいところではある。
しかし、今日はちょっと『特別な日』なので……きっと夜にはみんな帰ってくるのではないだろうか。
さて、そんな事を考えている間にダイニングへトテトテという足音が向かってきている。
コントのようなお寝覚め行動をとった後、ようやく起き出してきた弟を引き連れてきた姉たち――ソフィ、ヴィヴィオ、ハイトの三人である。
「ふぁぁぁ~……おはよー、なのはママ、ファティー」
「ユーノパパ、なのはママ。おはよ~♪」
「おはようございます。お父様、お母様」
そう挨拶をして、子供達が食卓へ向かうと……エプロンをつけた栗色っぽい茶髪の女性と亜麻色に近い金髪の男性が三人を出迎える。
高町なのはとユーノ・スクライア。三人の母と父である。
しかしけったいなことに、二人はまだ正式には結婚していない。未婚の夫婦か、と聞かれれば……それもまた少し違う。互いにそろそろ頃合いかなとは思っているが、いざとなると中々踏ん切りがつかないらしい。……まあ、この問題は二人の間にはとどまらないこともまた、多少問題度を増している原因ともいえるが。
ちなみに、ヴィヴィオは基本的に皆『○○ママ』とよび、ソフィは『○○お母様』と呼び、ハイトはユーノのことを『ファータ/ファティー』と呼び、他のママンズのことを『○○ママ』と呼ぶ(ハイト的母親の呼び方の刷り込みはヴィヴィオ譲りの為こうなった)。
加えて、そこへ更にちょっとした問題も絡んでくるが、まぁこれはここでの言及は避けておこう。
さて、三人とともに朝食をとりながら、今日の予定をいくつか確認する。
「ところで、皆は今日は始業式だけど、帰ってくるのは何時頃になるのかな?」
「初等科も高等科も、今日は始業式だけですから早めに帰ってこれるかと思います。ただ、ヴィヴィオちゃんたちは
ユーノがそう聞くと、ソフィがスラスラと答える。
それを受け、ユーノがそうかと頷き「なら、お祝いモードには支障なさそうだね」というとヴィヴィオとハイトは嬉しそうに顔を見合わせて微笑み合う。
ソフィも上品に微笑みつつも、内心では心踊っている様だ。
「それじゃあ、今日は寄り道なしでお家に集合! だね?」
「ははっ、そうだね。じゃあ子供たちは、安全に気をつけて寄り道しない様にね?」
「「「はーい!/はーい/はいっ♪」」」
さて、そんな訳で……大人たちはそれぞれの職場に。子供たちは学校へと向かう。
『St.ヒルデ魔導学院』初等科・高等科棟へ向かう道中にて――。
「「ヴィヴィオ~、ハイト~、ソフィさ~ん!!」」
ヴィヴィオたち三人へと声を掛けてきたのは、亜麻色の髪の少女と紫っぽい髪の少女――コロナ・ティミルとリオ・ウェズリー。
二人は、三人の仲良しの友達である。
「コロナ、リオ。おはよー!」
「ヴィヴィオ、ハイトくん、ソフィさん。ごきげんよう」
「おはよ~!」
ここ『St.ヒルデ』は次元世界では格式高き、『聖王協会』の系列であり……結構なお嬢様お坊ちゃま学校である。しかし、別に皆が皆お嬢様かというとそうでもなく、
「ごきげんよう、お二人とも」
ソフィやコロナの様に純・お嬢様な子もいれば、
「おはよ~うございます~……、ふぁ~……」
「ハイトくん? はしたないですよ」
ハイトの様にぽわぽわした子や、リオの様にさばさばした子、ヴィヴィオの様にお転婆な子もいる。
「クラス分け、もう見た?」
「ううん、まだだよ」
「ならビックニュースだね! 今年も四人とも同じクラスだよ~!」
「本当! やったぁ~!
「「「イエーイ!」」」
「三人とも、はしたないですよ?」
ソフィが諭すように微笑むと、三人もハッ! と気づき「てへへ」と可愛らしく舌をのぞかせている。ハイトの方は相変わらず天然ぽわぽわ状態である。
「――さて、私は高等科の方へ行きますけど……皆さん、くれぐれもはしゃぎすぎて先生方にご迷惑を掛けないように気を付けてくださいね?」
「「「はぁ~い♪」」」
「……『ハイトくん、お返事は?』……ふぁーい…………」
ここ数年、ハイトの天然度が増加するに伴い、ソフィの姉度というか ブラコン具合がちょっと過保護気味になりつつあるが、家族にべったりのハイトはシスコンブラコンとかファザコンマザコンとかじゃなく、寧ろファミリーコンプレックス(略してファミコン)状態なので、嫌がりもしないし寧ろ甘えるくらいである。
そんなわけで、今日もうららかな日の光を浴びつつ……うたたねをするハイトは姉の肩に頭を乗せ、楽しい楽しい夢の中へ――「ハイトくん、居眠りはだめ」――という訳にもいかないらしい。
朝と違い、するっと肩を外されると倒れるしかないので反射神経や危機察知能力にたけた彼は起きざるを得ない。
ただ、あんまりにもそれが続くと――
「リオ~……」
「ふぇ……!?」
「コロナ……」
「ええッ……!?」
という感じに、とても見境なしに肩を借りてしまう。
ただ、なまじ見た目が(父親同様……いや、寧ろそれ以上だか)女の子なため、それほど問題にならないのが不幸中の幸いだろうか。いや、勿論いいことではないが。
まあ、それはともかく……四人は始業式を終え、教室で記念撮影をすることに。
「ソフィお姉ちゃんも一緒がよかったんだけどなぁー」
「高等科はもう少しかかるみたいだからねぇ〜」
ミッドでは、初等科は五年――つまり十一歳までで、そこから中等科、高等科へと進み……より高度な魔法を勉強することになる。そんな訳で、中等科や高等科の科目や授業の説明は初等科より幾分長めになっている。
そんなことを話しながら教室でハイトを真ん中にして記念撮影をした。
そしてヴィヴィオは、その写真をお世話になったたくさんの人たちへと送る。
――――今日も元気で、笑顔で、とっても幸せに過ごしてます! ……という気持ちを込めて。
それは、いろいろなところへと飛んでいく。
そしてみんながこう思うだろう。
楽しそう何よりだ、と。
ただ、
「そろそろなのはも身を固めて欲しいんだけどねぇ……」
「ユーノ優良物件だからねぇ〜……私も貰って貰おうかな」
「うーむ、美由希かなのはか……。四人目の孫は誰の子だろうな、桃子」
「うーん、どうかしら。あなた的には誰が良いの?」
「やはり美由希だが……娘たちの義息子の取り合いとなるとな」
「うふふ、我が家の息子たちは良い子ですものねぇ〜」
「恭ちゃんもそーとーモテるもんねぇ……忍さん以外にも」
「ま、悪いことじゃないわよ。それに、二人ともそういうことに関しては誠実だから大丈夫よ」
「しかし、結局は前途多難だな」
「だねぇ」
「あ、それはそうと今度みんなで遊びにいらっしゃいって変事しとくわね。まだまだ、お婆ちゃん魂が満足してないもの♪」
「…………いや、その見た目で言われても説得力ないよ、かーさん」
「ははは、妻が美人で私も花が高いな!」
「んもぅ、あなたったらぁ〜〜〜!」
「――――もう嫌!! 兄も妹どころか、両親までバカップルして!! 私も出会い欲し〜〜〜いぃぃぃっっっ!!!!!!」
そんな会話もあったというのは内緒だ。
***
遠い世界で悲痛な叫びをあげた叔母のことも知らず、子供たちは図書館で本を選んでいた。
「それにしても、ヴィヴィオもハイトもパパがあの総合司書長なのに、学校の図書館でも借りたりするんだね〜」
「うん。パパのところでも結構借りるんだけど……パパのところで借りると、どんなに分からないのでも直ぐに分かりやすく教えてもらえるからついつい頼りきりになっちゃいますというか……甘えん坊症が出できてしまうというか(主に弟、時々姉)」
小さい頃の読み聞かせの記憶がどうにも頭から離れなくて、心地よ過ぎるので最近は敬遠しがちである(パパ的には寂しい)。
年齢もやっと二桁になり、そらそろ大人振りたいヴィヴィオにとって……二人の愛情は甘えん坊将軍が目覚めかねない非常に危険な代物なのである。
さて、そんなヴィヴィオであるが……本日はこの後ヴィヴィオとハイト、そしてコロナの師匠であるノーヴェとのスパーリング練習があるのである。
中央第四区の公民館に着くと、入り口でノーヴェが待っていてヴィヴィオたちを見つけると手を振って出迎えてくれた。
「ノーヴェ〜!」とヴィヴィオが声をかけると、ノーヴェも「おっす、ヴィヴィオ」と言ってにこやかに微笑みかけてきた。そしてぽわぼわと眠そうにしているハイトを見ると「相変わらずだなぁ〜……」と言って苦笑する。
三人がそんないつものやりとりをしていると、リオがノーヴェに「初めまして」と挨拶をした。彼女は今日がノーヴェとの初対面なのだ。
そんな彼女は、ヴィヴィオとハイトの「先生」であり「師匠」のノーヴェをキラキラとした尊敬の目で見る。その眼差しにノーヴェは恥ずかしそうに頰をかき、まずは着替えて来いと四人にいった。
四人とも素直に更衣室へと向かった。しかし、女子の方ではリオのデバイスを見たヴィヴィオとコロナが良いなぁという微笑ましげな掛け合いをしていたのだが、その頃男子更衣室では……チョットしたざわめきが起こっていた。
――ざわざわ……。
「ふぁ〜……」
のそのそと朝の起床の時と同様に着替えているハイトは、どうにもその……なんというか、色っぽくみえる。
彼のところの家族は皆ロングヘアなこともあってか、彼も男にしてはそれなりに髪が長い。強いて言えば、子供の頃のユーノより全体的に長めで、イクスの様に肩に後ろがかかる感じである(ハイトは左肩にのみ後ろの方から流す感じにかかっている)。
そんな訳で、思春期な周りの男の子たちは、男の娘なハイトを見て何だかちょっぴりイケナイものを見てる様な気になり少々落ち着かないことになっていたのは、密かに漏れるさざめき以外は彼らの胸の内にのみ残ることに――――。
しかし、こののち……元から美少女が割と多いという事で噂されていた、ここ中央第四区公民館の男性利用者がさらに増加したのは余談である。
――――さて、そんなこんなで着替え終わった一同は、早速ノーヴェに相手をしてもらうことに……「その前に準備運動!」……その前に、早速身体をほぐしにかかるヴィヴィオ達。
四人のやっているのは、ここ『ミッドチルダ』で最も競技人口の多い格闘競技――『ストライクアーツ』、通称SAである(ただ、
バッ! スダッ! ドッ! ふわっ……という軽快な風切り音を発しながら四人は準備運動を進める。
「ハイトの奴、まだ寝ぼけてやがんのかぁ……?」
「みたいっスねぇ~……」
いつの間にかノーヴェの隣に立っていた彼女と同じ赤髪の女性はウェンディ・ナカジマ。ノーヴェの姉である。今日は今はちょっと席を外しているもう二人の姉と一緒に、妹とその教え子たちの様子を見に来たという次第である。しかし、若干一人まだ本調子を出していない……ギアの入ってない者がいるのを見て苦笑している。
「ったく……」
それを見かねたノーヴェ、ハイトの傍によりちょっとだけお灸を据えようとしたその時……。
「いつまで寝ぼけてんだハイト、そろそろ起きろ……って…………おわぁぁぁっ!?」
思ったより女の子っぽい悲鳴を上げて宙を舞うノーヴェ。一体彼女に何があったのだろうか? ことの顛末は、以下の通りである。
ノーヴェがハイトを軽めに小突こうとしたとき、ハイトはそれをここぞとばかりに敏感に察知してそれをしゃがみ込んで回避。そのまま地面に円を描くようにノーヴェに足払いを掛け、浮き上がったノーヴェをふわっと逆立ちするようにして蹴り上げてしまったのだ。
この手際の良さには皆呆然とし、ポカンと口を開けたまま固まっており……微妙な浮遊感と共に咄嗟の判断ができず落下してくるノーヴェ以外は妙な沈黙がその場に漂った。ちなみに、落下してきたノーヴェはハイトがお姫様抱っこで受け止め、ノーヴェを赤面させ今度こそキツめのお灸をすえられ本格的な打ち合い練習が再開することになったのだが、先程のハイトの咄嗟の奇襲にちょ~っと怒ったノーヴェがハイト相手に割と本気なスパーリングを始めたので、ヴィヴィオ達は三人でそれが終わるまで観戦しつつも練習という事に。
三人は互いに撃ち合いながら、
「それにしてもすごいね~。ヴィヴィオもハイトもコロナも、みんな勉強も運動も何でもできて凄いよね~!」
「ぜーんぜん。ハイトくん、あんな感じだけど頭凄く良いし……コロナもいっつもテスト百点くらいだし、私なんてまだまだだよ」
「でも、ヴィヴィオの方がSAはずぅっと上手だよ~。私はまだ初心者レベルだもん」
「そうかなー? コロナも結構強いと思うけど」
コロナとリオがそういっていると、ヴィヴィオはさらにこういった。
「でも、やっぱり私はまだ何が一番やりたいのかよくわからないし……今はこうして、コロナとリオとハイトくんやノーヴェたちと一緒に、もっといろんなことをたくさんできたらうれしいかなって……そう思ってるんだ」
「いいね!」
「うん。みんなでもっと一緒に、いろんなことやってみよう?」
「うん!」
そんな微笑ましいほのぼの時空が展開されていたのだが、その傍らではようやくスイッチの入って来たハイトがまだ顔を赤くして怒っているノーヴェに滅茶苦茶撃ち込まれている姿があるのもまた事実で、結果二人とも今日は互いに結局決着がつかず……結局勝負というか、先ほどまでの一方的なノーヴェの乙女心が追った羞恥心からくる怒りの矛先は、最終的に行方不明として不問になってしまうのでしたとさ。
そんなわけで、肩で息しているハイトを見守りつつ……二人がわが家へと帰宅した頃には、すっかり空も暗くなってしまっていた。
「ただいま~」
「た、ただいま……」
「おかえりー……って、ハイトどうしたの!? すっごい疲れてるみたいだけど……そんなにハードな練習だったの?」
早速、出迎えてくれたなのはにビックリされたハイト。それを見てヴィヴィオは「たはは……」と苦笑いで応答する。
二人がリビングに入ると、
「おかえり」
「おかえり、二人とも」
そういってユーノとフェイトが二人を出迎えた。
「フェイトママ~! あれ、でもお船のお仕事は?」
「うん、フェイトは明日の午後まで整備でお休みなんだって」
「そうなんだ。それに二人とも? 今日は二人のお祝いに――」
「「???」」
そういってフェイトは後ろの方へと視線を向ける。
するとそこには、
「やぁ、久しぶり!」
「久しぶりだねぇ~、ヴィヴィオ、ハイト」
「エリオお兄ちゃん、キャロお姉ちゃん! 来てくれたんだ~!」
「お久しぶり、お兄ちゃんたち……(パァァ)」
エリオとキャロ。フェイトが昔保護した子供たちであり、今では辺境の自然保護部隊で竜騎士・召喚士として名をはせている元機動六課のフォワード陣、『ライトニング』だった二人であるが……ハイトとヴィヴィオにとってはお兄ちゃん、お姉ちゃんなイメージが強い。割と幼少期の頃からここへ遊びに来てくれるので、二人にとってはとっても嬉しい来訪者である。今回も、二人の進級のことを考えて休みを合わせたのである。
「途中でルーちゃんのところにもよってきてね? ルーちゃんも、二人に進級おめでとうって言ってたよ」
「本当はルーも一緒に連れてきたかったんだけど、まだ保護観察期間が解けてなくてね……」
ルーちゃん、とは『ルーテシア・アルピーノ』という少女で、ここにいる四人の友達である。彼女は、ヴィヴィオの方が大きく根幹にあった『JS事件』にて、彼女の母親であるメガーヌの為に犯罪者側に手を貸してしまったことから、未だ辺境惑星での観察処分期間なので……母親共々こちらへ来られなかったのである。
「そっか……」
「……残念」
落ち込む二人だが、
「ふふ、なら今度行ってあげればいいんじゃないですか? ルーちゃんのところへ」
台所の方からソフィがやってきて、二人にそういった。
「そうだね、今度行ってみよっか? ルーテシアのところに」
そんなソフィの意見にフェイトが賛同すると、二人はまた嬉しそうに微笑む。
「うん、いいんじゃないかな。こんどの休み……そうだな、ヴィヴィオ達の試験休みにでも行ってみようか?」
「いいね、たのしそう!」
「春の大自然ツアーだね」
そういって笑いあう大人たち、するとエリオとキャロも『いいですね』と口をそろえて乗ってきた。
「そういえば……ルーったらまたホテル改造してましたよ」
「だね~、温泉とか練習施設とか……また一段と豪華になってたもん!」
「相変わらず凝り性のようですね、ルーちゃんは」
そんな風にエリオとキャロがルーテシアのしたその改造とやらをソフィに告げると、ソフィはそういってルーテシアの凝り性を思い出して微笑した。
そういって和やかなやり取りを一通り終えた後、全員が食卓に着いたところで夕食が始まった。談笑交じりに夕食をとる皆は、最近のことなども報告し合いながらとても楽しいひと時を過ごした。
そして、皆のお腹に夕食がすっぽりと収まった(エリオ的にはがっつりがっぽりかも知れないが)ところで――大人たちが、ヴィヴィオとハイトにちょっとうれしいお知らせを告げる。
「ヴィヴィオ、ハイトちょっといいかな?」
「? なーに、パパ」
「?」
「二人とも、もう四年生になったよね?」
「はい、そーですが……?」
「???」
ヴィヴィオとハイトはユーノの発言に不思議そうに首をかしげる。
「そんな訳で、そろそろ自分のデバイスを持ってもいいじゃないかと思ってね?」
「えぇっ! 本当!?」
そう告げられると
二人は凄く嬉しそうに顔を笑顔で明るくした。
「うん、ホントだよ♪」
「そんなわけで、今日私がマリーさんから受け取ってきました!」
「おぉ~! (キラキラ)」
「いいの……! (わくわく)」
早くもそわそわしている二人にフェイトは二つの箱を手渡す。
「開けてみて?」
そうなのはが促すと、二人はそっと箱を開ける。
するとそこには、
「ウサギ……?」
「……キツネ?」
兎と狐のぬいぐるみが入っていた。
二つとも、二人が子供の頃……ヴィヴィオがなのはに、ハイトがユーノにそれぞれもらった物と似たぬいぐるみである。
「へぇぇ……可愛いですね~!」
「二人にぴったりだね。ねぇ、ソフィ」
「そうですね……可愛らしい二人にはうってつけ――ですが、これはどういう?」
確かに可愛い子供の二人にはピッタリである。これを抱いているところを激写したいのはやまやまだが、ソフィはなんでぬいぐるみなのかがよくわからず、ユーノたちの方へと視線を向ける。
「あ、それは外装っていうかアクセサリーでね?」
「中身は普通のクリスタルタイプなんだよ?」
しかし、フェイトが二人にそういったところで、
「「……(ふわり)」」
「「あ……」」
ピシッ!「「(どもっ)」」
二体は箱から浮かび、空中で制止し……自身のマスターであるヴィヴィオとハイトの前でピシッ! と右手を前に差し出して「どうも」とでもいうかのようにあいさつをする。
「と、飛んだよっ!? 動いたよっっ!?」
「…………可愛い……」
二者二様な反応であるが、二人はそれなりに方向は違えども驚いた。
そんな二人に大人たちが、
「うん、飛ぶし動くよ?」
「機能の一部なんだって」
「マリーさんお茶目だから」
といって半分納得させるようなことを言うと、二人はふわふわと寄って来たその子たちを、早速腕に抱いてみる。
とても柔らかく、ふわふわで心地よい。ハイトは勿論、ヴィヴィオも先ほどの驚き分を差し引いてもメロメロになってしまうそうだ。
「ハイトとヴィヴィオの二人のデータに合わせた最新式だけど……まだ、中身はまっさらなんだ。だから、二人でその子たちに名前を付けてあげてくれるかい?」
「……そうなんだ」
「えへへっ。実は……名前も愛称も決めてあったりして」
そういってはにかむ様に笑うヴィヴィオを見て微笑んだ一同は、二人の初セットアップの為に庭へ移動した。
その途中「ねぇなのはママ、私たちに合わせてくれたってことは、〝アレ〟できるの? 〝アレ〟!」とヴィヴィオがなのはに聞くと「もちろん! ちゃんとできるよー」となのはが答える。事情を知っているらしいユーノとソフィ以外は『……? (あれって何だろう?)』と思っていたが、すぐに庭についたためそれほど気に留めなかった。
庭に出ると、ハイトとヴィヴィオがそれぞれ自分の足元に魔法陣を広げ、デバイスたちの前に立つ。二人の魔力光である虹色と蒼と翠のカラフルなまでの煌きが庭を照らしながら、認証が進んでいく。
『マスター認証』
二人の声がそろい、そこか各自決めていた愛称をこれからの愛機となるデバイスたちに告げるべく、個人認証部分をいくつか音声認証していく。
「高町ヴィヴィオ」
「フライハイト・スクライア」
二人は自身の名を名乗る。
「術式はベルカ主体の、ミッド混合ハイブリッド」
「術式はベルカ主体ミッドとの混合ハイブリッド」
続いて、使用術式を登録。
そして――ここからがメインイベント。
『私/僕の
「
「
『正式名称――』
「〝
「〝
二人がそうデバイスに名を付ける。
ヴィヴィオのつけた名を聞き、なのはは微笑み……フェイトやエリオたちはヴィヴィオがなのはを凄く慕っていることを再確認したようで、微笑ましく見守り、ユーノはハイトのつけた名に『翼』の意味を込められているのを聞いて……普段はユーノの中にユニゾンに近い融合で過ごしている『シュティレ』と微笑みを交わす。
『翼』はある意味でハイト自身やユーノ、シュティレやソフィにもかかわり深く……時には呪いの様に《皇帝》の中に繋がっていたが、彼ならばきっとそれに縛られずに自由にその『翼』を存分に空へと羽ばたかせることができるだろうと信じながら、ハイトの……そしてヴィヴィオの……その翼の『飛翔』の始まりをしっかりと見守ろうと二人にしっかりと視線を合わせる。
「行くよ、クリス」
「行くよ……リー」
二人は、デバイスたち……クリスとリーと共に光に包まれていく。
「セイクリッド・ハート!」
「フリューゲル・バンデ!」
『セェ――――ット・ア――――――ップ!!』
二人の身体が眩く輝き、デバイスたちと融合していく。
「へぇ……融合タイプですか」
「うん。二人とも最近はSAの方でいっぱい練習しているからね。大会とかに出るなら、融合タイプの方が都合がいいからね」
エリオとユーノがそんなことを話している間にも、二人の『セットアップ』は続いていく。
クリスとヴィヴィオのリンカーコアが融合していき……ヴィヴィオのツーサイドアップにしているリボンがほどると、左側に一まとめの再度テールとなる。それと共に虹色の羽の様になった魔力が迸るようにしてバリアジャケットが展開されていく。
ハイトのリンカーコアとリーが融合し、ハイトの上着を蒼と緑の羽へと変えながらその魔力を迸らせながら吹き飛ばし……バリアジャケットに変わっていく。
しかし二人のそれは……、それは単なる『セットアップ』ではないらしく――――二人の身体そのものが、バリアジャケットの展開と共に変わっていく。
ヴィヴィオの方は、まだ発展途上な胸は豊かに盛り上がっていき……未熟な背丈もすらっと高くなる。
ハイトの方もまた、すらっと身長が伸びるのと同時に……華奢な体格もしっかりとした男性のものとなる。
そして、紫がかった黒いインナーと、なのはの物とよく似た上着がかぶさったバリアジャケットを装着する。
ハイトの方も、蒼いインナーと短めの翠のジャケットのようなものの上に、ユーノのそれとよく似たマントが装備される。
二人の瞳の輝きと鼓動するようにして、二人の周囲にセットアップ完了を告げる魔力の咆哮のようなものが迸って、二人が文字取り『変身』を遂げたことを示した。
二人は顔を見合わせると『うん!』といって頷き合う。
「やったー、ママありがと~!」とヴィヴィオが万歳して上げて喜ぶ。ハイトの方も「有難うファータ、ママたちも」と嬉しそうに笑うのだが……しかし、驚きに固まっているエリオとキャロと――涙目になりぺたんと腰を抜かすフェイトの姿が……。
「ふぇ、フェイト?」
「ゆ、ユーノ! なのは! ヴ、ヴィヴィオが『
「お、落ち着いてフェイトちゃん。こ、これはね? その――」
なぜここまでフェイトが狼狽えるのか、それはヴィヴィオの変身が、嘗ての『JS事件』の際、当時管理局と敵対した『ナンバーズ』のクアットロに――ひいてはその親玉であったスカリエッティに――操られなのはと戦った時の姿である『聖王』としての姿であったからであり……また、非常に親バカかつ子煩悩である彼女からすれば(いまだにフェイトは半ば独り立ちしているエリオやキャロにすら今でもかなり過保護である)まだまだかわいい盛りの二人がいきなりなんだか成長過程すっ飛ばして大人になちゃってと、色々と許容範囲を越えているのでオロオロと驚愕の連鎖が止まらないのである。
そんな訳で狼狽えてしまったフェイトに今度はヴィヴィオが驚く番である。
「え、なのはママ……フェイトママに説明してなかったの!? パパまで?」
「えっと……ついうっかり」
「ゴメン、僕も忘れてたんだ……」
「うっかりってぇーッ!? っていうかそれはどうかと思うよパパ!?」
管理局で一番情報の根幹で働いている知識の申し子のようなユーノが忘れるとはどういうことなのだろうか、とヴィヴィオはそう思ったが……ユーノだって人間だもの。うっかり忘れることだってあるだろう。
そんな訳で、この日スクライア家にはちょっとばかり嵐が訪れたのであったとさ。
さて、どうにかこうにかフェイトをなだめ……エリオたちにも先ほどの変身――ヴィヴィオたちの『大人モード』についての説明を終えたのであった。
「――いうわけでね? 別に大人変化自体は聖王モードとは何の関係もないんだ。魔法やSAの練習はこっちの方が都合がいいからってことで、二人がきちんと変身できるように練習に付き合ってたんだ」
と、ユーノが説明するが、フェイトはやはりまだ納得がいかないようで――。
「そ、そうなんだろうけど……でも」
とくい下がる。
するとヴィヴィオがフェイトに、
「フェイトママ、この姿はこっちの方が便利だからってことでなのはママとユーノパパ、それにソフィお姉ちゃんにも見てもらってるから大丈夫だよ」
といったのだが、ヴィヴィオがそう説明してもフェイトは未だ心配そうな表情である。
「…………(むぅ)」
そんな彼女にエリオたちは皆そろって苦笑しているが、当のフェイトはそんなみんなの反応に不満そうである。
それを見て、ハイトはリーにコマンドを言い渡すと、ヴィヴィオもその意を察し、それに習う。
「……リー、
「クリスも、お願い」
「「「???」」」
二人が唐突に『大人モード』を解除したので、一同は疑問符を浮かべる。
「大丈夫だよ、フェイトママ。変身してたって、ママたちより背が高くなったって、僕らは僕らのままだもん」
「そうそう! もう『レリック』も『ゆりかご』も、『城』もないんだもん。ヴィヴィオたちは大丈夫! クリスとリーも、ちゃーんとサポートしてくれるって」
ヴィヴィオが視線を向けると、クリスもリーも「「(コクコク)」」と頷くと「任せろ」と言わんばかりにピシッと手を挙げて了解の合図の仕草をする。
そこまで言われて、ようやく納得したようにフェイトは「うん……」と微笑む。そんな彼女の様子に、なのはは苦笑し、ユーノは「相変わらず親ばかだね、フェイトは」と少しおかしそうにくすくすと朗らかに笑う。
だが、そんなユーノの態度が気にくわないのかフェイトはむぅと頬を膨らませるとユーノに詰め寄り「ユーノだって人のこと言えないでしょ!」と文句を言うが、ユーノはひょうひょうとしたもので「じゃあ僕らは差し詰め、『似たもの夫婦』ってとこかな?」なんていってしまうので、フェイトは「あわわわッ!?」と赤面し、そんな二人をなのはは面白くなさそうに口をとがらせ、ヴィヴィオは「パパママラブラブ~」といって、ハイトはちゃっかりソフィの膝の上に収まってなでなでされつつ……エリオもキャロもそんなフェイトの姿を微笑まし気に見るが、いつか自分たちもあんなふうになれたらな……と心の中では似たようなことを考えていたりもした。
そんな空気の中で、ヴィヴィオが「心配押してくれるのは嬉しいけど、でもママたちも私たちぐらいの頃かなりやんちゃして立っておばあちゃんたちから聞いたよ~?」と言ったところ、それを引き合いに出されると流石に弱いのか、なのはもフェイトも苦笑いを浮かべる。
そんな彼女らを見て、ユーノも感慨深そうにあの頃を思い出す。
「そーだね、あの頃の二人の方がヴィヴィオとハイトよりやんちゃだったかもね?」
「ゆ、ユーノくん!」
「もう、ユーノってば!」
二人がその発言に焦ってユーノを止めようとするが、ユーノはあの頃の二人のことを子供たちに語りだしあげくのはてには「あの頃から二人はすっごく強かったんだよ。パパなんか足下に及ばないくらいに、ね?」なんて言い出したものだから二人はいよいよ焦りだす。このままではなんだかまずい気がすると思い、なら何か引き合いに出せることを……と思い、探してみたところ、なんとも丁度良い引き合いの種を見つけた……というより、これが三人の――ひいては、リンディやクロノ、はやてたちとの――出会いのトリガーでもあるのだからカウンターとしてはぴったりだと思い、二人はそちらについて言及を始める。
「そ、それを言うなら、ユーノくんの方がよっぽどやんちゃだと思う!」
「そうだよ!」
「? そう言われても……なんかしてたっけ、僕」
そう言われても、本人には知らぬ空である。
なので二人はこれを好機とばかりに語りだす。目の前の青年がハイトと同じくらいの少年だった頃、彼が運んだすべての『絆』の始まりの話を。
「ユーノくんだって、ジュエルシード回収に地球に独断専行して回収作業したりしてたじゃない!」
「えっと……だってあれは僕が見つけたものだし、僕が探さないといけないと思って……」
「その危険なロストロギアを九歳でも見つけて、それの散らばった〝自分の知らない世界〟に、一人……それも九歳なのに、一人訪れて現地の人たちに被害を出さないようにって、魔力不適合でボロボロなのに一人で頑張ったりして無茶してたじゃない」
そうなのはが言えば、
「そうそう! そのくせ、結局魔力不適合の所為でフェレットモードになっちゃってもアルフの攻撃防いだり暴走したジュエルシードバインドで抑え込んだり、傀儡兵を一人で拘束しちゃうし、挙句の果てにはヴィータとカトーリッジなしとはいえ転送魔法となのはに回復魔法掛けながら結界破る作業しながら無傷で済ますし、『闇の書』の攻撃も私たちはユーノとアルフの二重防御だったのに、ユーノだけ結局自前の防御だけで防いじゃうし、『無限書庫』稼働させちゃうし、闇の書の闇を拘束するときの『ケージングサークル』も私がザンバーだすまで壊れないし、その闇の書の闇を挙句シャマル先生たちと一緒に軌道上まで転送しちゃうし……」
とフェイトが言う。
それにしても……聞いているだけだと、どえらい話である。
そんな風に散々いわれ、「えぇー……」と一同は言葉を失う。なのはたちも相当だが、ユーノもユーノで相当である。前半の無茶と後半の無限書庫稼働、そもそものロストロギアを九歳で発見するとか……ますます「えぇ……」である。
「なんていうか、ママもパパもやんちゃだったんだね?」
ヴィヴィオがそういうと、大人たちは苦笑するしかなくなりそこでどっちが無茶か論議はお開きとなった。
「さてと、今日も魔法の練習しに行こーっと」
「いつもの公園?」
「うん、ハイトくんも行くでしょ?」
「うん」
そういって二人が立つと、
「じゃあ今夜は二人とデバイスたちの門出を祝う意味も込めて……皆で行こっか?」
「「「賛成〜!」」」
本日も、スクライア家(仮)は平和です。
いつもの公園へ行く途中にて――――。
「でも本当に驚きましたよ、ヴィヴィオの『大人モード』には……」
「びっくりですよね〜」
そうエリオとキャロが言うと、
「えへへ! でも、まだ中身は私たちまだまだ子供なのでゆっくり大きくなっていけるように、これからも一つ一つ、いろんなことを重ねて行こうと思います」「うん……そう思ってる」
そう二人が言うと、ユーノが二人に言った。
「『大人モード』は二人の魔法で、どう使うかを決めるのは自分で決めることだけど……いくつか、二人に約束してほしいんだ」
「……うん」
「……約束?」
「大人モードは魔法や武術の練習、或いは実践の為だけに使う事。いたずらや遊びで使わない事――約束、出来るかい?」
「……うん」
「……遊びで使ったりは、絶対にしません」
そういうハイトとヴィヴィオの頭をそっと撫でると、ユーノは「じゃあ約束だね」といって小指を二人へ差し出す。
「約束……」
「約束します」
そういって二人とユーノは指切りしながら、
「天に誓って?」
と聞いてみたところ、二人は顔を見合わせ……なのはとフェイトの方にも指を差しながら――。
「「天と、翡翠と、星と雷に誓って!」」
と元気よく言った。
その答えに、三人は微笑み合い、指切りを交わした。その様子をエリオたちは微笑ましく見守る。
指切りを終えると、ヴィヴィオは「それにね?」と続ける。
「魔法で身長がママたちよりもおっきくなっても、心まで大人になるわけじゃないもん」
「僕たち、まだ子供だから……さっきも言ったけど、一つ一つ順番を重ねて大人になっていくよ」
『――――いつか普通に成長して、本当にこの姿になったとき……生まれてきたことに、ファータ(パパ)やママたちの娘だってことに…………しっかりと胸を張れるように』
そういった二人に、なのはが「ちょっと生意気」と言って抱き着いて、フェイトもそれに続き……ユーノはそんな四人を優しく見守り、エリオたちもユーノに習い見守り続ける。
そして一同は公園へ――。
せっかく来たという事で、ハイトとヴィヴィオとエリオとソフィが相手をすることに。とはいえまだクリスもリーも慣らしが必要なため、全開という訳にもいかないので本気でという訳でもないのだが。
そうやって技を出したりしている合間に、ヴィヴィオは思った。
――帰ったら、リオやコロナにメールを送ろう。
――ノーヴェにも、明日もいっぱい練習しようねて伝えよう。
それから、もう一つ……。
――――また、あの子に会いに行こう……。私たちの
* * * 『行間 一 〝覇王〟の噂』
ヴィヴィオが公園で魔法の練習をしていた頃、『ナカジマ家』では『とある事件』について話が上がっていた。
「――――連続傷害事件?」
『まだ、正確には〝事件〟ではないんだけどね……』
それは、ナカジマ姉妹の長女で現在『陸士108隊隊舎』にいるギンガ・ナカジマから妹達へ向けた物であった。
「どーゆうこと?」
そうノーヴェが聞き返すと、
『今のところ、その襲われた相手方……主に格闘系の実力者なんだけど、そういう人に〝街灯試合〟を申し込んでいる何者かがいるっていう事なんだけど……』
「結果、フルボッコって訳?」
『そうなの……』
そのギンガの報告に、妹であるウェンディが興奮したように――。
「あたしそーゆーの知ってるっス! 喧嘩師! ストリートファイター!!」
「ウェンディ、うるさい」
そんな風に興奮したウェンディを窘める姉のディエチ。そんな二人に苦笑しつつ、ギンガは報告を続ける。
『まあ、ウェンディの言う通りなんだけど……そういう人たちの間ですごい噂になってるの。とはいっても、被害届は出てないから事件扱いではないんだけど、ある程度有名な〝実力者を狙っている〟そうだから、皆も注意してね?』
そういうと、ノーヴェなどは「むしろ、来たら逆ボッコだぜ」と言って笑うが……ギンガがその犯人らしい人物の写真を妹達へと送信すると、少しその写真の方に注意を向ける。
「これが、今回の犯人の写真か……」
そうつぶやくのはチンク・ナカジマ。背は低いが、これでもディエチとウェンディ、それにノーヴェ……それと聖王協会の方にいるセインやオットーやディードの姉であり、スバルやギンガの妹である。
『ええ。自称――――「覇王」イングヴァルト……』
「え、それって…………」
『そう、古代ベルカの……〝聖王戦争時代〟の――「諸王」の一人』
それを聞くと、皆その写真に食い入るように注目する。
――新たな始まりと出会いの火種は、すぐそこまで迫っている。
* * * 『行間 二 眠りし〝冥王〟と穏やかな時間』
様々な始まりの鐘が響き始めた夜が明け、物語の胎動が始まった次の日の事。
聖王協会本部のとある病室にて、ヴィヴィオとハイトは一人の少女の前にやってきていた。
純粋な金というよりは、どちらかというと炎のような橙がかった金色の髪をした少女の手を握り、ヴィヴィオはいくつも話をする。家族の事、新しくできたパートナーの事、友達のこと、学校の事、たくさんたくさん話す。
ヴィヴィオの話しかけている少女の名は、嘗てベルカに存在した『王』だった少女――冥府の炎王イクスヴェリア。
一年ほど前、長い長い眠りから覚めた彼女は自身の力を制御できず、『マリアージュ事件』を引き起こしてしまうのだが……スバルやヴィヴィオ、ハイトたちの尽力により事件は解決。彼女は意識こそあれども、体は深い眠りに陥ってしまった。
なので、ヴィヴィオ達は時折彼女の下を訪れ、彼女が目覚めたくなるように話をしに来るのだ。
今日も、そんな仇やかなお話をしに来た……何気ない日常。
いくつもの思い出や出来事を話し、イクスに語り掛けるヴィヴィオ達。彼女と、この世界を……もう一度つながれるように願って、友達に帰ってきてくれるように願い、話をするのだ。
「それでね、イクス。こんなことがあって――――」
そんな穏やかな時が流れていた頃……騎士カリムの執務室では、チンクが例の連続傷害事件のことについて話をしていた。
「――この襲撃犯が、覇王イングバルトを自称していることから……一応念のためにイクスヴェリア陛下の安全確認を含めて」
「そうですね……」
「時代は異なりはしますが……『聖王女オリヴィエ』、ガレアの『冥王イクスヴェリア』、シュトゥラの『覇王イングヴァルト』――いずれも優れた『王』達でしたから。それと、くだんの《皇帝》の件も含めて……無論、当時の『王』たちと今の彼女らは別人ではあるのですが……『王』たちの何かしらの繋がりを追ってやってくる可能性もなくはないかと思いまして」
「ですね……では、シャッハ。イクスの護衛強化を、そうね……セインに任せましょうか?」
「はい。ですが、覇王イングヴァルトと言えば、物語に現れる英傑……単なる喧嘩好きが気分で名乗っているという可能性も大きいかも知れませんよ?」
「そうですね……だといいのですが」
「――まあ、この件が解決すまではイクスたちのことは気を付けるという事にしましょう。ヴィヴィオとハイトについては……」
「それは、私と妹達の方でそれとなく確認しておきます。まあ、母君と父君があの高町一尉と、ハラオウン執務官やスクライア司書長な時点で、我々の出番はそれほどないかとは思いますが……」
「かもしれないですね……あの二人は、本当に支えてくれる方々に恵まれていますから……」
カリムはそう感慨深そうに頷く。
「それにしても、ユーノももう父親ですか……」
「? 騎士カリムは、スクライア司書長と親しいのですか?」
「いえ、弟のヴェロサと仲がいいのと……昔あの子が飛び級していった学校が聖王教会系列なもので、記憶に残っておりまして。ホント、ヴェロサとお友達になっていると聞いたときはびっくりしました。それにしても、相変わらず可愛いらしい顔をしていらっしゃいますよね~」
はやてやハラオウン提督の方からも時々お話を伺っていますし、とカリムが言うとチンクはユーノの知り合い半端ないなと思った。というか、ヴィヴィオやハイトの父親役をやっている上にあのなのはやフェイトやはやてとも仲が良く、スバルやティアナとも親しいというのは中々すごいといえるし、彼本来の人脈を広げる要素が強いのとも関連するともいえる。
さて、そんなこんなでカリムたちの会話が終わったころ、ヴィヴィオとハイトはオットーとディードから動物型のビスケットと受け取ったり、相変わらずの二人の『陛下』呼びに苦笑していたりしながら、ノーヴェと一緒にいつものごとくSAの練習へと向かって行った。
昨日と同じ公民館で、ヴィヴィオたちの『大人モード』初お披露目といつもの組手をやっていたのだが……またしてもハイトとノーヴェが(今度は組み手に熱が入って)熱くなり、昨日の今日でまた再びハイトがノーヴェを張り倒してしまい、ハイトが彼女を家まで送っていくことになってしまう。
「ゴメンね、ノーヴェ……」
「いいって、熱くなったのはあたしもいっしょだからさ」
そんな会話をしながら割かし暗くなってきた道をあるいていた。
「それにしてもハイトよぉ……お前あれで完全より力落ちてんのかよ?」
「僕自身は、記憶的には曖昧なんだ……自分が《皇帝》だとかなんとかなんて、よく覚えていないし。ソフィお姉ちゃんとシュティレが教えてくれたことだったり、〝消しきれなかった大切な思い出〟が僕の記憶の中に沁みついているくらいで、僕は力の使い方も自分の力も出し切れてないよ」
そう……実はハイトは《皇帝》として復活はしたものの、その力は不完全であり『
資質こそ高いものの、それでも『シュティレ』に言わせれば『潜在能力』からして大幅ダウン何だそうで、嘗ての力はほとんど使えない。
けれでも、彼の中に時々――――〝どうやっても消しきれなかった〟らしい『思い出』や『知識』が浮かぶ時がある。
それは、友人たちとの記憶であったり、今の姉であるソフィとの『過去の記憶』であったり、魔法の使い方や戦い方であったりもする。
しかし、そう都合よく思い出そうと思って思い出せるものではなく……時折ふとしたことで蘇るのだ。
…………彼のこの状態に関して『シュティレ』の考察した限りでは、皆が知らない〝ユーノ〟と〝ハイト〟の繋がりが力を拡散させ、どうやっても消せない程『
加えてユーノは、
『力は、無いと困るし一番必要な時に大切なを支えられないけれど……それも、あの子たちはまだ支えられる側なんだ。僕たちが守って、そしてあの子たちが一歩一歩進む手伝いをする。そうやって〝強く〟なって欲しいんだ』
と言った。
――――――そんな訳で、ハイトはその浮かぶ記憶なども参考にしつつ今を楽しく生きているのだが…………まだ、彼や彼女ら以外にも〝
「ストライクアーツ有段者、ノーヴェ・ナカジマさんとお見受けします……」
街灯の上に立ち、月光を背負う一人の女性。ハイトは彼女を見たとき、その月明かりに映える碧みがかったその銀髪をみて……ふとある人物とその女性がかぶった気がした。
「そして――《皇帝・アブソルート》」
「…………クラ、ウス……?」
彼と彼女の呟きが重なり合い……夜の空へと舞ったとき、この物語がさらに加速していく――――。
「貴女方にいくつか伺いたいことと、確かめさせていただきたいことが……」
過去との因縁は、まだ終わっていなかった。
かつて、守りたかった者と……それを守った者……そして、
次回、『アインハルト・ストラトス ――「覇王」――』
いかがだったでしょうか? 今回結構詰め込み気味でしたが、ともかく完成させました。
それなりに『VIVID』時空を書けたかなとは思ってますが……ですがここからもっと頑張って書いて行こうと思います。
ただ、リアルの方での大学受験等が色々追い込みに入って来たので(国公立…いけるといいんですけど……やっぱり難しいですよね……)全体的に投稿は遅くなると思います。
ですが……サイクルを決めてこの後で書き溜めた分を順々に投稿していこうかと思います。具体的にはこの後、書きあがった分にもよりますが、12月後半から1月初めからはたぶんほかの作品も同様にそれぞれ一ヶ月一本……多くて二本くらいかと思います。
こんな状態ですが、ご感想ご意見等はお待ちしておりますので、お気軽にどうぞ。
結果がどうであれ、どのみちここにはもどってくるので……きっとこの後もお付き合いいただけたらなとおもいます。もう小説書くのはやめられませんから、来年もこちらで書かせて頂こうと思いますのでよろしくお願いします。
それではまた次回お会いしましょう、長々としたあとがきにお付き合いくださり、重ね重ね有難うございました。