忘れ去られた、もう一人の王   作:形右

2 / 22
第二話投稿でございます。ユーノの保護したオリキャラの名前発表です。

短めな気もしますが、どうぞお楽しみください。

それでは、どうぞ!




遠い過去に消えた記憶――フライハイト――

 

 とある遺跡より一人の少年を保護したユーノ。

 

 その不思議な少年は、いったい誰なのか? 彼は、一体何者なのか?

 

 その真実は、まだ…………闇の中に――――

 

 

 

 × × ×

 

 

 

 時空管理局本局内・医務施設エリアにて――――

 

「シャマル先生、あの子は大丈夫ですか?」

 ユーノがシャマルにそう尋ねると、シャマルはユーノに笑みを返しながら朗らかに答えた。

「ええ、衰弱はしていたけれど外傷はほとんどないからもうしばらく休めばきっと目を覚ますと思います」

「そうですか…………よかった」

 有難うございます、とユーノはシャマルにお礼を述べる。

 いえいえ、とシャマルもそうにこやかに返すが…………少年の方にもう一度視線を向けると、少し顔を曇らせてこうつぶやく。

「それにしても、この子はいったい…………?」

「……分かりません。僕がこの子を見つけたとき、周りに人はいませんでしたし……かといってこんな小さい子が一人であんなところにいる理由になりそうな代物は、この子の周りにはありませんでしたから…………。多分状況から察するに、たぶんこの子は――その…………」

 ユーノは言葉を詰まらせながら、結論を口にしようとして辛そうに口をつぐむ。

「……やっぱり、捨てられた――ということでしょうか……?」

「…………おそらくは」

 なんとなく予想は出来そうな答えだが、それでもこの例は最悪のケースの一つに過ぎない。もしかしたら、何かの事故での次元漂流者ということもあるかも知れないし……とはいえども、そう都合よく現実が決まるとは思えない事もまた事実であり、端的に言えば……事実は想像がつかない、なんとも言えないというところだろうか。

「酷い話ですね……」

「……全くです」

 置き去りにする、してしまう、されてしまう。そのどれなのかはまだ確信が持てないが、この状況に置かれることを……そして、その状況の後に待っているなんとも言えない焦燥感を、ユーノは〝知っている〟。

 彼もまた、昔そうやってこの世界に生を受けたのだから…………。

 とはいえ、今はそれを語る時ではない。とユーノは一瞬浮かんできた過去の記憶を振り払い、目の前に眠る少年に視線を落とす。

「…………」

 ユーノはその少年の頭に手を乗せると、優しく撫でる。

「すみません、シャマル先生。僕は一旦『無限書庫』の方に顔を出してからもう一度ここに戻りますので、彼をしばらくお願いします」

「はい、分かりました」

「有難うございます」

 そういうと、もう一度少年に視線を落としこういった。

「少しだけ席を外すけど……すぐ戻ってくるから」

 誰ともなしにそう言い、ユーノは一度『無限書庫』に足を運んだ。

 そして現在よせられている急ぎの依頼を早々に切り上げ司書たちに渡し、しばらく書庫を開けると告げた。皆それに関しては不思議がっていたが、例の遺跡関連の事だろうと思ったらしくあっさりと了承した。

 そして、ユーノは再び医療部署に足を運ぶ。

「あ、ユーノ君。早かったですね」

「はい。今きている急ぎの依頼の量は、そんなには有りませんでしたから」

「そうですか。それでも体調には気を配ってくださいね? いっつも無茶するんですから」

「ははは…………それは寧ろなのは、フェイト、はやての大御所の三人に言ってあげた方がいいんじゃないですかね?」

 ユーノはそういうが…………シャマルは速攻でそれを否定する。

「いーえ、私の中で一番心配なのはユーノくんです! なのはちゃんたちは皆ちゃんと体調には気を回しケド、ユーノ君? いつもそう返して、徹夜1ヶ月とかを平気でやるのはこの管理局の本局の職員でも相当に珍しいんですよ?」

 特に、どこかの部署のトップの方とか――と言われると、ユーノはもう何も言えなくなる。というかそんなことしてるのはユーノくらいである。

「すみません…………これからは気を付けます」

「よろしい♪」

 そんなやり取りをして、ユーノは再び少年のもとに歩み寄ると……かつてなのはがヴィヴィオにしてあげたというように少年の枕元にぬいぐるみを置いた。

 ちなみに、ユーノのチョイスしたのは狐のぬいぐるみだった。

「あら? それは…………?」

「ああ、これは前になのはがヴィヴィオにこうして上げたって言うのを聞きまして……それでそれに倣ってみたんです。小さい子なら、やっぱりこういうのが好きじゃないかなぁと思って」

 まぁ、この子は5歳くらいとはいえ男の子であるからあまり可愛らしすぎてもいけない。なので、割と可愛くそしてそれなりに男の子にも好かれそうな動物をということで、狐をチョイスしてみたというわけだ。

「きっと起きたら喜びますね」

「だと、良いんですが…………」

「ふふふ、大丈夫ですよ」

 そうシャマルはユーノに言った。

 

 その会話の後、しばらくの時が経過し――ついに、少年は目を覚ました。

 

 

 

 × × ×

 

 

 

 少年は、目を覚ますと…………どこか虚ろな目で病室を見渡してこう言った。

「だぁれ…………?」

「初めまして、僕はユーノ・スクライア。君の名前を教えてくれるかい?」

 ユーノは少年に名を告げ、彼に名を尋ねる。

「なまえ…………?」

「うん。君の名前」

「…………ない」

「えっ……?」

「分かん、ない…………」

 少年は、そう答える。

「名前、分かん……ない……」

「……記憶が、無いのかい?」

「…………きおく?」

「ええと、覚えていることっていうか……思い出とかのこと、かな?」

「……うん、僕……何も、覚えて……ない」

「そっか…………」

 どうやら、少年は記憶喪失らしい。

 それが何によるものなのかは分からないが、決していいことではないだろう。

「本当に、何も覚えていないかい? 君は遺跡の外で倒れていたんだけど……」

「いせき…………? ううん、わかんない……」

「そっか……じゃあ、ゆっくりと思い出していこう。君が思い出すまで、僕が手伝うよ」

「…………良いの?」

「勿論」

「…………あり、がとう……」

「気にしないで、子供を助けるのが僕ら大人の役目さ」

 そう答えつつも、本能的に少年は恐れている様だった。

 ――人との、かかわりを。

 そんな少年に、少しでも親しんでもらおうとユーノは何かいい方法はないかと考え、少年に再び話しかけようとして「じゃあ、君――」と言いかけて何かおw思いつく。

「――君っていうのも、何だか他人行儀で変だよね。本当の名前が分かるまでの間の名前がないとね」

「僕の、名前?」

「うん。君なんて呼び方は、なんだか繋がりを断ち切っているみたいな感じがするし…………名前っていうのは、誰かを指すだけじゃないんだ。自分が誰かの名前を呼ぶのは、自分が相手のことをしっかりと知っている証だからね」

「証……」

「うん。さて、何ていうのがいいかなぁ……」

 うーん、としばらく考えてから何かを思いついて少年にこういった。

「フライハイト、なんてどうかな?」

「ふらい、ハイト…………?」

「うん。ベルカ語で、『自由』。君のいた遺跡は、古代ベルカ時代のもだったし、君がどんな柵にも囚われずにより自由にいきられますように、なんて……ちょっと偉そうだったかな?」

「ううん、フライハイト……僕、これがいい……」

「そっか、ならよかった」

 そういう少年――フライハイトは、本当に嬉しそうだった。

「じゃあ、フライハイト。愛称でハイトって呼んでもいいかい?」

「うん」

「じゃあ、ハイト。他に怪我をしてないかを診てもらってから、僕の家に行こうか? ハイトの物も色々と買わないといけないしね」

「……みて、もらう?」

「検査、って言っても分からないね。ええと、お医者さんに怪我がないかとか、何か他に病気が無いか確かめてもらうんだよ」

「…………それって、痛い?」

「大丈夫、痛くないさ。仮にもしそんな検査があっても、僕が付いていくから。ちょっと時間がかかるけど、少しだけ我慢してね?」

 そう言いながら、ユーノはフライハイトの頭を優しく撫でる。

 頭に置かれた手の温かさに、少しだけくすぐったそうにしながら、心地よさげにして……彼は無意識の内にこうつぶやいた。

「……ファータ…………」

「えっ?」

「? 何だろう、勝手に……」

「〝ファータ〟――父さん。ってとこかな? ふふ、良いよ。しばらくは僕がハイトの父親代わりだからね」

「うん、ファータ……!」

 フライハイトはそう言うと、ユーノと手をつないで病室を後にした。

 

 

 

 この日、少年・フライハイトは……ユーノが差し出した手をとり、物語は始まりを告げたのだった。

 

 

 

 

 

 × × ×

 

 

 

 その後、フライハイトはもう少しだけ検査を受けてほかに怪我をしていないかどうかを確かめられたのち、退院の許可が出た。

「はい、これで検査は終了です。お疲れさま」

「はい、シャマルせんせー」

「ふふ、良い子でしたね」

 そう言って、よしよしとフライハイトの頭を撫でるシャマル。

「あー可愛いわぁ~」

「せんせー、くるしい……」

 いつの間にかシャマルはハイトを抱きしめていたので、ハイトは苦しそうにそう告げる。

「あ、ごめんなさい! 気づかなかったわ」

「はははっ、よかったねハイト。先生にかわいがってもらえて」

「むぅ……」

 その光景は、客観的に見れば完全に家族である。シャマル、ユーノ、フライハイト、三人とも金髪であることも手伝っている。

(違う点を探すとするなら、瞳の色だろうか。ユーノは翠、シャマルは紫、ハイトは緑と蒼ということだろうか。目が覚めて初めて分かったのだが……彼も、ヴィヴィオと同じように虹彩異色――いわゆるオッドアイであった)

 そんな微笑ましい光景が繰り広げられたあと、ユーノとフライハイトはミッドチルダの中央都市・クラナガンの道を歩いていた。

「ファータ……助けてくれなかった」

「はは、まだ気にしてるの?」

「むぅ」

 どうやらフライハイトは、シャマルに可愛がられて苦しがっていたときにユーノが助けてくれなかった事がご不満らしい。

 頬を膨らませて起こっている姿は、まだ覚めたばかりの時の少々虚ろげで感情が薄いように見えたことなど忘れさせるほどに子供らしい――つまりは可愛らしい反応をしている。

 そんな微笑ましい姿にユーノは怒られているのに、笑みがこぼれてしまう。

「ファータぁ……」

「ふふ、ごめんごめん。でもねハイト、人から好かれることはとってもいい事なんだよ?」

「…………そーなの?」

「うん、もちろん」

「ファータは、僕の事……好き?」

「うん。好きだよ」

「へへへっ……なら、良い…かな……」

 そう言ってユーノの手をしっかりと握り返したフライハイト。そんな微笑ましい反応を見ながらユーノはフライハイトと共に、日が傾き始めているクラナガンの街を歩いていった。

 この後、早速フライハイトの日用品を買わねばならない。生憎とユーノの部屋は一人暮らしなうえに、ユーノ自身それほど家に帰らないため生活感があるとは言い難い。

 掃除自体はしっかりとしているので、お客が来ても困ることは無いが…………さすがに同居というケースは初だ。

 ハイト用の寝具とか着替えを買わないとなぁ……とユーノは思いつつ、大型のショッピングモールにフライハイトと二人で入っていく。

 買う量は多いが、支払いにはそれほど困らない。

 何せ『無限書庫』の司書長の待遇は提督クラスと無駄に高く(ユーノ談)、給料も相当に高い。あまり物欲がないというか……金遣いが荒いわけでもない独り身の男性であるユーノは、貯金ばかり増えるという他人から見れば大分羨ましいご身分である為こういう機会は寧ろ歓迎である。

 加えて地球でいうところのクレジットカード的システムがあるため、簡単に支払いが済ませられることもあってユーノは一気にフライハイト用の日用品をごっそりとそろえた(ここ最近家に帰っていなかったため、切れかけ――というか既に切れているであろう食料品も含めて)。

 そんな大荷物、などという言葉はこのミッドチルダでは通用しない。

 結界魔導師であるユーノは転送魔法も得意である。

 かつて、親友フェイトの使い魔であるアルフと共にあの『ナハトヴァール』をコアの状態とはいえ……転送した経験がある彼にとって、この程度の大荷物など取るに足らないのである。

 そんな訳で、非常にサクサクと買い物は進み…………一通りの買い物が済んだ二人はゆったりとユーノの家へと続く家路を歩いていった。

 

 

 

 × × ×

 

 

 

 ――ところ変わって、ユーノ宅にて。

 

 運び込まれた荷物は、これまた魔法でフライハイト用にと模様替えした部屋に運び込まれた(ベットだけはユーノの隣がいいというハイトの意見を取り入れ、ユーノの寝室に置かれた。というか、ベットすらあっさりと即決で買ってしまう司書長…………恐るべし提督待遇。《正確に言うと、替えが聞かないポジションの為これでもまだ低いという声もあるがユーノはそれを知らないというか、気づいていないのであるから始末に負えないのだが……》)。

 まぁ、それはともかくとして、生活のための準備は既に整った。あとは食事とお風呂、就寝くらいである。

「じゃあ、ハイト少し待っててくれるかい? ご飯作っちゃうからさ」

「はーい」

 テレビでも見といて、とユーノが言うとフライハイトは最近ミッドではやっているヒーローものが気に入ったらしく、大変熱心に見ている。

 フライハイトがテレビを見ている間に、ユーノはてきぱきと夕食の準備を済ませる。(余談だが、彼のエプロン姿はそこら辺の女性よりも女性らしいく見えてしまったとここに記そう)

 元来放浪の一族〝スクライア〟の出である彼は、基本的に料理上手である。

 本日の献立は、子供が好みそうな献立を考えてみたらしく定番のハンバーグに甘めのソースを絡めたものを作った。付け合わせはポテトとニンジン、そしてブロッコリー。

 後はごはんとサラダ、地球で食べたミネストローネ風のスープとテーブルの上に並べていく。

「良し、こんなところかな。ハイトー、ごはん出来たよ」

「はーい」

 テレビを消し、トテトテとテーブルに歩み寄るハイトを椅子に座らせると、ユーノはフライハイトに食事の前後の挨拶を教え二人で「頂きます」と言って食事を始める。

「ファータ、これ美味しい」

「ならよかった、たくさん食べてね」

 空腹だったらしいハイトは病院でシャマルに念のための体調改善魔法をかけてもらっていたので、胃腸系も問題なし。よってすごい勢いで食べている。その様子に、やっぱり男の子だなぁとユーノは改めてそう思った。

 フライハイトは、子供の頃のユーノと同じか……あるいはそれ以上に男の娘然としており、かなり幼いゆえにたぶん普通に女の子で通る気がする。

「?」

 自分も、かなりだがフライハイトも相当であるな……と、なんだか男としてはちょっぴり悲しいベクトルで親近感がわいたユーノだった。

 

 まぁ、夕食は滞りなく進み二人で「ごちそうさまでした」を言って楽しい夕食は一旦幕引きになった。

 そのあとユーノは皿をパパッと洗い、お風呂の用意をする。

 湯船が出来上がったところで、ユーノはフライハイトと一緒に入浴を済ませた(割とおとなしいフライハイトであるが、頭を洗う時だけは結構嫌がり暴れるとまではいかないがユーノはちょっと苦労した。まぁ、ユーノが優しく洗ってあげたため、フライハイトもおとなしくしてくれたという)。

 

 後は、そのまま湯冷めしない内に布団に入り、ユーノもやりかけの仕事などもないため、久々にのんびりと床に就くことができた。

「それじゃあ、おやすみハイト」

「うん…………ふぁー……タ…… 」

 やはり疲れていたんだろう。床に入るや否や、フライハイトは直ぐに眠りに落ちてしまった。

(幸せな夢を、フライハイト)

 そういってユーノは、部屋の電気を完全に消した。

 

 その日のユーノは、久々に感じる人のぬくもりを感じながら……安らかな気分で眠りについたのだった。

 

 

 

 

 




どうでしたでしょうか? 今回キャラがほとんど出ていませんが、次回以降からどしどし出していくのでお楽しみにしていただければ幸いです。

フライハイトは、まんまドイツ語で自由ですね。新巨人のopにもなってますし、割かし有名ですが、まあネーミングはシンプルな方がいいかなぁと思いこうしてみました。

では次回の予告というか、予定を少しばかり。

新たな生活を始めたユーノとハイトの二人は、ユーノの仕事場である無限書庫を訪れる。そんな二人のもとに現れたのは、虹の輝きを秘めし少女だった。

なんて、あんまりうまくないですが次回予告してみました。

それではまた次回お会いしましょう。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。