タイトルにある眷属という単語は本文には出てきませんが、そこは一つ雰囲気ということで一つお願いします。
* 今回オリジナルの武器出てきます。
それでは、どうぞ。
フライハイトと六課のメンバーが顔合わせをしてから数日後のこと――次元世界は、とある危険な魔導師の話題で持ちきりだった。
次元世界全土を震撼させたその人物は、女性魔導師――の筈なのだが、使っている魔法がどうも…………『
使っている武器――デバイスの形状は〝大鎌〟有名どころだと、フェイトのバルディッシュにそっくりだという話もあるが……、この女魔導師の使っている鎌はフェイトのバルディッシュよりも大きく、加えて大鎌の状態がデバイスデフォルトの形態であるらしく、フォームチェンジを見た者はまだいない。
勿論それだけなら、世界を震撼させるような大事にはならない。
だが、その女性が世界を震撼させるにまで至った理由は――その異常性ある。
――その始まりは、ただのケンカだったらしい。
とある次元世界の裏通りを歩いていたその女性は、言い寄って来たチンピラをズタズタにした。ここまでなら、ただのたちの悪いケンカの末路、で済むかもしれないが…………その女魔導師は、ズタズタにした後もかかって来る仲間を〝全て〟返り討ちにした。
地球でいうところのやくざやマフィアと言った系統の人種がこぞってかかって来たのだが、それらを全て血祭りにあげた。
しかも、あまりの異常性についに管理局まで動いたのだが…………その管理局員もすべて返り討ちに。
歯向かうものには『死』を、とでも言わんばかりの暴れっぷり見せつけ……ついに管理局の全支部に指名手配を受けた――
――のだが、その後も向かってくるものは全て返り討ち。
しかも、その戦いの際…………一切相手の問答には答えない。
口に出す言葉は「陛下」、「皇帝」、「静寂」、「無」と言ったまるで訳の分からない言葉ばかり。
しかし、その強さは本物であり――もはや並の局員たちでは相手にならず、ついに本局の一流の魔導師たちを収集する方向で検討する流れになった。
なぜそこまで? となるかもしれないが、この女魔導師の進路上には……第一管理世界『ミッドチルダ』がある。次元世界の中心ともいえるミッドチルダで暴れさせるわけにはいかないという決定が、上層部より下された。
その収集に合わせ、その女魔導師の口にした言葉をもとに……『無限書庫』司書長であるユーノに検索を依頼した。
しかし、先ほどまでの言葉だけでは、はっきり言ってあまり参考になるとは言い難いが…………実は、もう一つあるのだ。
彼女に倒された職員の一人が、偶然薄れゆく意識の中で聞いた……言葉が。
その女魔導師の繰り返していた、他の発言とは明らかに異なり、かつ『検索』にとっての重要性は十分であろう言葉が。
その言葉とは――
フフフ…………陛下ぁ、今参ります。このラスが……『
――『静寂の終焉』、この言葉はおそらく言葉のままではなく……何か〝もの〟を指し示している。
これが恐らく、今回の事件の重要なキーワードになるだろう。この言葉を主軸として情報を集めてもらえるよう、管理局上層部はユーノに検索を依頼した。
事は一刻を争うこの状況…………ユーノは早速、情報との戦いを開始した。
× × ×
ユーノは上層部より依頼された危険な女魔導師に関連する情報をどうにかかき集めるべく、依頼を受けてから三日間……ずっと不眠不休で検索に没頭した。
その間、フライハイトはなのはの家で預かってもらっている。ヴィヴィオと一緒にいられることで、フライハイトが寂しい思いをしないようにとんことだが……それでもやっぱり寂しい思いをさせてしまっているかもしれない、とユーノは少々やるせない気持ちになるし……ユーノ自身もやっぱり寂しい。
それでも、危険すぎるこの魔導師を放っておくわけにはいかない。
それに早く検索を済ませてしまえばフライハイトに早く会える、その気持ちを念頭に置きながらユーノは検索に没頭したのだが…………資料が、
――おかしい、おかしすぎる……。
『無限書庫』は管理世界における最大の超巨大データベース。元々、管理世界に関連する資料を勝手に収集し続けるのだが、ユーノが管理局に入り司書長代理になったころからだんだんと管理〝外〟世界からの徐々に少しずつ収集を始めた。(今のところの管理外世界からの収集は地球からが主だが)
そんな『無限書庫』での検索を行っているのだが、『静寂の終焉』に関連する項目は全く発見されない。
それならば、と「皇帝」や「無」、「静寂」もからめて調べていくのだが…………発見されないというか、出来ない。
(今までこんなことなかったのに……)
ユーノはそうぼやく。まぁ、ユーノが司書長になるまでは、『物置』などと揶揄する者もいるほど、『無限書庫』の機動率は低かった。しかし、そんな『無限書庫』の稼働事情を変えたのがユーノである。
〝スクライア〟の出身であるユーノの調査能力、そして司書としての検索能力の高さがこの『物置』を『データベース』へと変えたのである。かつての『闇の書』事件の際、ユーノが口にした「探せばちゃんと出てくる」という言葉を一般に定着させるに至ったユーノですら、今回の資料検索は難航している。
「どうすれば……」
最近は資料整理もなかなかに進んできたこともあり、徹夜の習慣が少し抜け始めていたユーノは少しこの状況に思考力が低下しだした頭は、――どうすれば資料を見つけ出せるか――についての妙案をひねり出せずにいた。
そんな彼の下に、二つの来訪者が訪れる。
「ファータ」
「えっ!? フライハイト?」
「うん」
「な、なんでここに? 今なのは達の家にいるはずじゃあ…………?」
「なのはさんに連れてきてもらった。ヴィヴィオも一緒に」
「どうも♪」
そう言って、ひょこっ、とフライハイトの後ろから顔を出すヴィヴィオ。
「ヴィヴィオまで……」
そう言ってちょっと呆れたような、でも嬉しいような声をだしたとき、二人を連れてきたこの本局のエース・オブ・エースこと、高町なのはがユーノにこういってきた。
「みんな、ユーノ君が心配なんだよ」
「なのは……。……皆、有難う」
そう言われたユーノは、温かい気持ちがあふれてくるような感覚で胸がいっぱいになった…………。
「あっ、そうだ。ユーノ君、はいコレ!」
「ん?」
「私達で作ったんだよ」
そう言って渡されたのは、三人が作ってくれたらしいお弁当だった。
「おぉ~…、有難う!」
「ユーノ君どうせ検索の最中はまともにごはん食べないからってことで、作ることにしたんだよ?」
「うっ……、面目ないです」
「反省してる?」
「とっても」
「よろしい♪」
このやり取りは、初めてではないためどうにもユーノは頭が上がらない。
そもそも、ユーノのこの悪癖は中々直らないため……なのはだけではなく、フェイトやはやて…………果てはティアナやスバル、ヴィヴィオにすら心配される始末である。(ちなみに、エリオも割と無頓着なところがあるが、よく食べる彼は怒られることは無い。というか寧ろユーノをよく食事に誘っていたりする。男性陣で生活習慣で怒られるのは最近はユーノの専売特許になりつつある。ちなみにクロノは、彼のお嫁さん(つまりエイミィ)に強制的に矯正されている)
まぁ、それはともかくとして……せっかく皆が作ってくれたお弁当、早速ユーノは中身に手を付けていく。
お弁当箱に入っていたのは、無限書庫の中でも食べやすいようにと考えられた野菜たっぷりのサンドイッチやおにぎりがそれぞれ二個ずつと、サンドイッチの付け合わせにアスパラのベーコン巻きやウィンナー(タコさん)、ブロッコリー。おにぎりの方の付け合わせには、空揚げやだし巻き卵、漬け物など結構ボリュームもあるラインナップであった。
そんな美味しそうな料理の数々を口に運んでいく。ここ数日ずっとカロリーブロックやエナジーゼリーにスタミナドリンクと、間食の延長な食事をとっていたユーノはパクパクとまともな食事を忙しく口に運んでいった。
そして意外とあっさり弁当箱の中身はユーノのおなかに消えてしまい、食後のお茶を皆と一緒に楽しんだ。
「いやー、美味しかったよ、皆有難う」
「ねぇねぇ、ユーノくん。どれが一番おいしかった?」
「えっ、どれって……」
みんな、と答えようとしたユーノだったが――それはなのはの一言によって遮られる。
「あっ、それ私も気になるなぁ~」
「えぇ……なのはまで」
「ファータ、どれが一番おいしかった?」
これはどうやら、答えなくてはならない流れになってしまったようである。
はてさて、そんな訳でちょっと先ほどのお弁当の中身について考えてみる。
ユーノが真っ先に思い浮かんだのは、おにぎりとサンドイッチだろうか? もちろん他のも美味しかったが、ここ最近主食を口にしていなかったユーノはそちらの方が美味しいと感じた。
しかし、二つ言っていいのだろうか? どちらも主食とはいえ――なんてそんなに深く考えるようなこともないだろう。ただ一番そう思ったものを上げれば良いだけなのだから、主食二つが美味しかった、と答えるだけでいいかと思い……ユーノは、ともかく、その二つが美味しかったと答えた。
「うーん……、しいて上げるならおにぎりとサンドイッチかなぁ? 最近主食を口にしてなかったからね、この二つかな」
「ふぅ~ん……」
そういって、少し不機嫌になるなのはだが、ヴィヴィオとフライハイトはそんななのはの様子に気づかず「私達が作ったんだよ~」と嬉しそうに言ってくる。
それを聞いてユーノは、なんとなくなのはの不機嫌な理由が分かったような気がした。まだ子供な二人にはそれぞれの付け合わせのおかずなどは作れないだろうから、なのははきっと二人におにぎりやサンドイッチの方を任せたのだろう。
なのでユーノは、なのはにこう付け加えた。
「もちろん、おかずのほうも凄く美味しかったよ。有難う、なのは」
「よく分かったね、おかずは私が作ったって……」
「まぁ、ね……?」
そりゃあそんなに不機嫌そうな顔をしていれば分かってしまう、と言いそうになったが、子供たちの前なので……その言葉は胸の内にしまうことにした。
それにしても子供たちと張り合うことないのに……意外と負けず嫌いなんだよなぁ、とユーノは苦笑した。
勿論なのはの不機嫌の理由はそこだけではないのだが、この司書長…………色々あって『お友達』期間が長くなってしまったため、かなりの鈍感になってしまった。
(…………まぁ、おかず作ったことには気づいてくれたから、いっか……)
なのはも、とりあえずそう納得して、それ以上は追及はしない。その代わり、ユーノに検索の状況を尋ねる。どの程度まですんでいるのか? と。まだかかるなら、休憩くらいはとらせないと、ユーノの性格上また徹夜で作業を続けかねない。
「ユーノ君、そういえば検索の方は順調? まだかかりそう?」
「…………それが、見つからないんだ」
「……そっか」
今回の検索は難航しているのだということが分かったが、ユーノの様子から何かいつもとは違う雰囲気を感じた。その理由は、ユーノが続けた言葉で分かった。
「今回の検索対象は、なんだか変なんだ。見つからない、見つからないだけなんだけど…………なんだかこれまでとどこか違うんだ」
検索を掛けているというのに、なんだかおかしい。対象に迫れない、まさにそんな感じである。
「今までこんなこと、無かったんだけど……管理世界の情報の筈なのに、この書庫にないなんてことあるはずないんだけど……」
『無限書庫』は、〝世界の記憶の眠る場所〟、〝世界の叡智集いし本棚〟と称されるほどの場所なのに、世界の記憶を収めるここにないなんてことあるのだろうか? もちろん、あの女魔導師が管理外世界から来たのだというのなら、それで納得がいく。しかし、あの女魔導師の使っている魔法は『古代ベルカ式』。かなり珍しい上に、もう大分使用者が少なくなっている魔法だ。
管理外世界でそれを学んで、管理世界でそれを使い暴れるなんてこと、するだろうか? いや、不自然だ。
なら、やはり管理世界の人間であろうということはほぼ間違いないといっていい。
なのに見つからないのだ。そう、それはまるで…………。
「まるで――世界がその記憶〝だけ〟を――『〝忘れ去ってしまった〟……みたいな?』――ッ!? 誰です!?」
ユーノの言葉にかぶせる様にして、同じようなことを口走る人物がいた。
その人物は、逆さまにユーノの後ろから声を掛けてきた。
思わず「誰だ!?」と叫んだでしまったユーノだが、その女性はユーノの怒鳴るような声など気にも止めずにユーノたちを少し上の方から見下ろしていた。
それに加え、彼女はバインドでユーノたちを拘束してしまう。
「……バインドっ!?」
「ファータ!」
「な、何これ…………!?」
「なんで…………!?」
「動かれると面倒なので、ちょっと拘束させて頂きますが――それにしても、「誰だ」なんて失礼ですわねぇ……。レディに名を尋ねるなら、先に名乗るのが殿方の嗜みではなくて?」
ひょうひょうとそう言い返してくるその女魔導師に対し、ユーノは警戒を緩めずに名を名乗りながら問いかけを続行する。
「……ここ『無限書庫』の司書長をしている、ユーノ・スクライアです。それで、貴女は一体誰何です? いきなり入って来たかと思えば、急に……」
「そうですわねぇ…………まぁいいですわ、教えてあげましょう。貴方が今躍起になって探している、『静寂の終焉』についても、そして…………そこでお待ちになっている、私の愛しい皇帝陛下についても」
そう言って、唯一拘束しなかったフライハイトに視線を向けながらそういう。
「皇帝…………?」
「……やはり、後世には残らなかったのですね。まったく、あの忌々しい二人の邪魔者さえいなければ……陛下は……。まったく、本当に忌々しい…………」
「その『皇帝』とかいうのとフライハイトと何の関係があるというんですか?」
「〝フライハイト〟? なんですのそれ、このお方をそんな低俗な名で呼ばないでいただけます? 虫唾が走りますわ」
ユーノにそう苦々しく吐き捨てた彼女はフライハイトを嘗め回すような目で見ながら、崇拝と呼ぶには行き過ぎていると思えるほど盲信した表情で、こういった。
「このお方は、かつてベルカを収めるはずだった本物の〝王〟。諸王など問題にならないほどの力と知恵を持って生まれた、世界を……そして諸王を統べるものとして生まれた《皇帝》アブソルート』」
「アブソルート…………? それが、フライハイトの本当の、名前……?」
「ええ。このお方は、かつてベルカを完全に治めるほどの才覚を持って生まれ、ベルカを必ず手中に……いえ、そんな俗なことはこのお方は望んでおりませんでした。ただ、あの戦乱という〝雑音〟を消去り、とこしえの静寂をもたらそうとしていた。無意味な戦乱も、必要のない王たちも――全て一つにしてしまえば、と」
「消し去るのに、一つ……?」
矛盾している、としか言えないその言葉にユーノは思わず聞き返していた。しかし、
「フフフ、やはり理解などできませんわよねぇ……。ですが、それが〝できる〟からこそ、この方は絶対の名を与えられた皇帝なのですよ」
ニタニタと笑うその
出来ることを、疑っていない――というより……過去に『それ』が実際に〝あった〟……とでもいうのか?
いや、だが――
――そんなことがあったなら、なぜ『皇帝』は消えた? そもそも、今伝わっている歴史上にて戦乱を止めるための終止符を打ったのは『ゆりかごの聖王・オリヴィエ』の筈だ。
そもそも、そんな風なことがあったなら今ミッドに住んでいるベルカからの移民の子孫はどうなる? 説明がつかない。
何かがおかしい、その疑問について……ユーノは目の前の女性に聞き返していた。
「…………戦乱を止めたのは、聖王オリヴィエである。というのが、この時代における史実なのですが? 仮にそんなことができる皇帝がいたのなら、どうしてこうなっているのですか?」
その聞き返しに、先ほどよりもさらに顔を歪めながら……その女性はこう吐き捨てた。
「――ええ。確かに、皇帝はそれを成す前に〝自ら〟消えてしまわれました。あの二人の邪魔者が、私の陛下をたぶらかして……忘却の彼方へと葬ったのですよ」
「邪魔、者……?」
「ええ、あの忌々しい……『聖王』と『覇王』の二人によって…………」
「なっ!?」
「えっ……?」
「どういうことですかっ!?」
「聖、王…………? うっ……ぅぅっ!?」
その言葉に、ユーノは驚愕し、ヴィヴィオは呆然として、なのははどいうことかと聞き返し、フライハイトは何かがフラッシュバックするような感覚に襲われ……頭を押さえ始める。
その
「陛下? ああ、御労しい。あの聖王女達に〝騙された〟記憶が蘇ったのですね? 大丈夫ですよ……このラスがいますから。時間はかかりましたが、もう一度……今度はこの世界全てを、静寂に染めましょう」
「静、寂…………?」
「ええ、貴方様の武器――『静寂の終焉』と『
また新たな武器の名前が出てきた。本当に何だというのか? というか、輪廻の槍? 静寂の終焉なんてものの時点で意味が分からないっていうのに、この上『輪廻』ときた。
「本当に、貴方は何がしたいんです!? 静寂とか、終焉とか、輪廻とか。貴方はフライハイトに何をさせるつもりですか!?」
「させる……? 違いますわね、私は陛下の望むままに動くだけですの。あの時、貴方方からすれば三百年前でしたか? あの時代に、聖王と覇王に邪魔された…………陛下の宿願を、果たすために」
「邪魔って、聖王と覇王が何をしたっていうんですか……?」
「……、良いでしょう。時間は押しいですが、少しだけ……昔話をしましょうか」
それは、かつて出会った宿命を背負った『王たち』の出会いと戯れの物語と、それに仕える者の嫉妬や愛憎の物語。
今となっては遠い過去となった、因縁の……始まり。
いかがだったでしょうか? かなり安易に決めた部分もあるので、拙いかもしれませんが、頑張って書いたつもりではあります。
いよいよ次回より、過去編を書いて行こうと思います。
次回以降も、なるべくうまくかける様に頑張りますので、柔らかく見て頂ければ幸いです。