女勇者ロトのゾーマ討伐後のお話です。
男賢者と女勇者とのカップリング要素があります。
この作品はピクシブにも投稿中です。

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勇者ロトの行方

 伝説の勇者ロト……。

 闇に包まれしアレフガルドを大魔王ゾーマの手から救った救世主。

 

 だが、その後勇者ロトの姿を見た者は誰もいない。

 

 

 

 

「わあ! このワンピース可愛い……買っちゃおうかなあ?」

 

 アリアハンのとある洋品店。

 黒髪ショートヘアのボーイッシュな美少女は、民族衣装風のワンピースが並ぶこの店で青い瞳を輝かせながら、かれこれ数十分買い物を楽しんでいる。

 付き添いの若い男は、荷物持ちを自ら買って出ているようだ。

 2人は仲の良い兄妹のようにも見えるし、恋人のようにも見える。

 

 少女にはある秘密があり、今まで女の子らしいファッションを楽しんだことなど一度もなかった。

 

 彼女の実家にある洋服ダンスには女性らしいスカートやワンピース、チュニックなどは一枚も収められていない。

 あるのは冒険用の旅人の服や性別を隠すためのマントなど……さらに、部屋の奥には重厚な鎧や剣技に優れた者にしか使いこなせないような魔力を秘めた剣などが並ぶ。

 

 彼女は伝説の勇者になるべく、幼い頃から男の子として育てられてきた。

 地上世界の魔王バラモスを倒し、地下世界アレフガルドで大魔王ゾーマとの死闘の末、世界に平和を取り戻す。

 

 地下世界アレフガルドの住人達に祝福されラダトームの城下町を凱旋した後、彼女はもう勇者を辞めたいと言った。

 

 驚いたことに彼女には本当に伝説の勇者ロトの称号が与えられてしまう。

 まるで彼女が彼女でなくなってしまったかのようだ。

 

「勇者様……」

「勇者ロト様……」

 

 みんな彼女のことを勇者ロトとしか呼ばなくなった。

 勇者ロトという虚像に押しつぶされていく少女の姿を見るに耐えなくなった賢者の男が、彼女の手を取りこう告げる。

 

「これから、勇者ロトの姿を見たものは誰もいなくなるよ」

 

 仲間である賢者に連れられ、姿を消した勇者ロト。

 勇者ロトは伝説の人物なんだから、伝説の通り姿を消してもいいのだという。

 そういえば、この賢者の若者の職業は元遊び人だったっけ……。

 流石、こういう時は機転がきく。

 

 役目を果たした彼女は重い枷を外すように、何処にでもいる普通の少女へと戻ることにした。

 

 だから王者の剣もブルーメタルの鎧も全て、地下世界アレフガルドに置いてきたのだ……伝説の勇者ロトの称号とともに。

 

 アリアハン伝統の民族衣装に身を包んだ少女を誰も勇者様とは呼ばない。

 ひらひらと、フリルのついたワンピースは以前のように魔物相手に戦闘するには不向きだ。

 

 だが、少女が再び剣を取り魔物と闘うことは2度とないだろう。

 

 魔王の支配から解放されたスライムや大ガラスがアリアハンの住民を襲うことも無くなり、世界は平和そのもの。

 

 だから、勇者ロトはもう何処にもいない。

 

 今日の午後の予定は、湖畔でピクニック。

 冒険の初期に探索したナジミの塔は今では観光地だ。

 湖畔を描きに来た画家や散歩好きなひとり客、家族客やカップル達の姿もチラホラ見られる。

 

 少女と若者もそんな観光客の1組だ。

 

 やがて、吟遊詩人がやってきて自慢の唄を披露し始めた。

どうやら新曲のようだ。

 

『闇に包まれし地下世界、伝説の勇者ロトは自らの武器防具を残し、その地を去る……』

 

 アリアハンの湖畔で、吟遊詩人が唄う勇者ロトの伝説を語り継ぐ詩をまるで他人のことのようにぼんやりと聞きながら、少女は自分を連れ出してくれた元賢者の若者の手を握り返した。

 

 

『そして伝説へ…』

 


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