Fate/SAKURA   作:アマデス

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エミヤ「おいアラヤ、今すぐ俺を2004年の冬木に送れ。あの小僧には何としてでも天誅を下さねばならん」
アラヤ「貴方この間有休申請出してたじゃないですかヤダー」
エミヤ「ええい!ならばガイア!そっち経由で行く!」
ガイア「では先ずこちらの申請書類一式を出していただいて…」
エミヤ「くそ…普段はうざったいレベルでブラックな癖に…!」
トーサカ「自分に自分の嫁を寝取られるって、ねぇどんな気持ち?」



サブタイこれしか思い付かなかった(笑)。


9話 イチャイチャイチャイチャイチャイチャ 前半

 ────夢を見ている。

 

 

「──投影(トレース)開始(オン)

 

 常にその後ろ姿を見てきた。

 熱く、大きく、逞しく、数多の命と心を背負うその背中に、何時も護られてきた。

 

 

 

 ────夢を見ている。

 

 

「──I am the bone of my sword(体は剣で出来ている)

 

 常にその横顔を見詰めてきた。

 ただ只管に前を向き、全てを救わんと駆け抜けるその正義の味方の隣を、何時も並走していた。

 

 

 

 ────夢を見ている。

 

 

「───■■■」

 

 常にその笑顔と共に在った。

 戦場においてはこの上無く頼りになる癖に、人生を楽しむという点においてはどうしようもなく不器用なその人の手を、何時も引っ張っていた。

 

 

 

 ────夢を見ている。

 

 

 その生涯は常に苦難の連続だった。

 毎日が恐慌であり、何時も自虐に潰され、傷付くのは当たり前、時に懊悩し、時に挫折し、時に我が身を磨り減らし、時に誓いを破らざるを得ない状況に陥り、時に己の信条を曲げてまで進み続け──

 

──それでも力及ばず手から溢れ堕ちていくものを見据え、涙を流し、己の無力さを呪う。

 

 だが、それ等全てを含めて尚幸福な生涯だったと断言出来る。

 退屈は無く、倦怠は訪れず、暮らしは裕かであり、努力を怠たらず、日々が挑戦であり、常に笑顔に囲まれ、自身も笑顔を絶やさず、尊敬する姉と、愛しい息子、娘達と──

 

──何よりも、最愛の人と添い遂げたその生の全てが、今も尚胸の内で輝き続ける、紛れも無い己の財産なのだ。

 

 

 

 

 

          ∵∵∵

 

 

 

 

 

 ─────夢を、見ていた。

 

「──ん…」

 

 目が覚める。

 ぼやけた視界、鈍った聴覚、それらが少しずつ外界からの刺激を吸収して脳味噌を覚醒させる糧と成していく。

 それとは裏腹に、急速に失われていく微睡みの記憶。

 

「………何だったんだ、今の夢」

 

 掠れた喉から吹き出た呟きがそれだった。

 既に半分以上内容が頭から抜け落ちたが、それでも眩しい夢には違いなかった。

 日常があった、修羅場があった、勝鬨があった、暗涙があった、光があった、影があった。

 心と共に、笑顔が在った。

 

 灼熱の地獄と、(つるぎ)のイメージ。

 

 決まって何時も見る夢とは全く違うもの。

 少なくとも自分の記憶ではない。

 十年前のあの日から、俺の人生においてあんな笑顔に囲まれた事なんて一度も──。

 

 

『先輩』

 

 

「───あぁ、バッカだなぁ俺」

 

 なんて的外れな事を考えてしまったんだ、フツー忘れたりしないだろう、日常のサイクルの主軸だというのに。

 ずっと近くに居てくれているじゃないか。

 俺にだって、笑顔が。

 相当に寝ぼけているのか、それとも昨日の騒乱のせいか。

 どちらにしろ、自身の精神に多大な影響が出ているのは確かだろう、何時もとは何かが違う朝だ。

 

「何が馬鹿なんですかマスター?」

 

 

 ───うん、明らかに何時もと違う朝だ。

 直ぐ隣から誰かの声が聞こえた、落ち着いた大人の女性のものだ。

 おかしいぞ、此処は俺の家の俺の自室の筈だ、なんだってそこから異性の声が発生する。

 なんて、ごちゃごちゃ考える前に首を動かせ衛宮士郎、そうすれば答えは直ぐそこにあるだろうに。

 未だに職務怠慢気味の脳細胞がそう結論を促してくるが…何故だろう、それをすると非常に不味い気がするのだ。

 何だかよく分からないがBADENDという文字とその向こう側で手薬煉(てぐすね)引いている虎とブルマ履いたロリっ子のイメージが見える、それもかなりクリアに。

 だがどうする、こうして寝たまま行動を起こさないというのはそれはそれでヤバイよーな感じもする。

 ええぃクソ、何でこんなノーヒントに近い選択肢が序盤から仕掛けられているんだ。

 聖杯戦争はまだ一日目だぞ、もうちょっと気を利かせろよ菌糸類──

 

 

「マスター?」

「   ぅ おどおうわぁあっっ!!!」

 

 

 びっくりした。

 ちょーびっくりした。

 間違いなく今心臓が七転八倒した。

 

 いきなり俺の視界に、神聖さすら感じさせる美術品と見紛うばかりの美貌がひょっこりと入ってきたのだ。

 謎の電波に侵されて起きる気配の無かった俺の顔を覗き込もうとしたのか、身を乗り出してきたその女性に対して、俺は叫びながら4歩程後退りした。

 

「っ、ど、どうかしましたかマスター?えっと、何処か悪いところでも…?」

「いや…いや、悪いところっていうか、予想外の事態というか」

 

 今更、ほんと今更だが、俺の頭は答え合わせを終えた様だ。

 キャスター。

 昨晩、俺が桜に促されるままに、俺自身の意思で召喚、契約───そして……色々と一線を越えた間柄となった女性()だった。

 

「えーっと、キャスター。何で俺の部屋に居るんだ?」

「何でも何もサーヴァントがマスターの近くに控えるのは当然の事ですよ?」

 

 既に手遅れな感が拭えないが、出来る限り冷静にキャスターを問い(ただ)すとそんな何処かズレた応えが返ってきた。

 違う、そうじゃない。

 

「違う、そうじゃない」

 

 思考と口舌が時間差/zeroで働いた。

 

「いやな、キャスター?若い男女が二人っきりで同じ部屋に居るってのは倫理的に色々とあれでだな…俺としても女の人に寝顔を見られて喜ぶ趣味は無いというか…っていうかキャスター、一体何時から俺の部屋に居るんだ?」

「一晩中ずっと居ましたよ?」

「なんでさっ!?」

 

 いや、ほんと、なんでさ。

 つまり俺自身に意識が無かったとはいえ、一晩中異性と同じ部屋で過ごしてしまったという事か。

 しかもキャスターのこの口ぶりからして自分は一睡もせずにずっと俺の事を見ていたっぽいぞ。

 

「キャスター、昨日ちゃんとそれぞれに寝室を(あて)がっただろ?それなのに何で俺の部屋に…っていうかひょっとして一睡もしてないのか?」

「ええ。サーヴァントは霊体ですから食事や睡眠といった生命維持の為の活動を必要としません。マスターのお心遣いは嬉しかったですけど、敵の襲撃があるかもしれないですから。こうしてお側で見守らせていただきました」

 

 

 そう言ってニコリと、小首を傾げながら笑顔を向けてくるキャスターに俺は言葉を詰まらせてしまった。

 くそ、その顔と仕草は反則だろ、改めて見てみると本当に美人だし。

 そうこうしていると、ふと昨夜の記憶が甦ってきてしまった。

 

 ───欲望のままに目の前の女性を貪り、組み敷き、只管己の存在を刻み付けようと蹂躙し、征服し、支配した、最早情事なんて安い言葉では片付かない凌辱の記憶が───

 

 不味い、顔が紅くなっているのが分かる。

 そんな俺の様子を見てキャスターが「それに」と付け加えてくる。

 

「男女の倫理観が云々と仰られましたが、私とマスターは既に一線を越えた間柄ではありませんか。昨晩、私の全ては貴方に暴かれてしまいました。今更一晩共に過ごすくらい問題にはなりませんでしょう?」

 

 そう宣いながら若干の意地の悪さを笑みに含ませて此方に視線を投げてきた。

 明らかにからかわれている、そう分かってはいるのに俺の心身は悉く素直な反応を示してしまって。

 くそぅ、何故だろう、この人に優位を取られるという事がどうにも釈然としない。

 

「と、兎に角だなキャスター──」

「先輩?朝から二回も叫ばれて一体ど、うし、ぃ………?」

 

 

 周囲から音が消える。

 

 何とかキャスターに言い返そうと口を開くや否や、我が家族にして自慢の後輩が襖を開けて顔を出してきた。

 キャスターの存在を認めるにつれて目と口が開いて動きを無くしていく。

 ポカン、という擬音がピッタリと当てはまりそうな表情だ。

 

 嗚呼、今日も一日波乱が続くんだろうな。

 何処か他人事の様に現実逃避気味の頭でそう確信した俺でした。

 

 

          ∵∵∵

 

 

 ──あれ?

 

 目が覚めて、ほんの一瞬だけ頭を(よぎ)るクエスチョンマーク。

 知らない天井、だけど見慣れた部屋の雰囲気、矛盾した感覚を抱くがそれを把握する前に昨夜の記憶が答えを示してくれていた。

 

(そういえば先輩のお家に泊まらせて貰ったんですっけ)

 

 そう、昨夜は色々とイベントをこなしている内に何時の間にか日付が変わってしまっていて、もう随分と遅い時間だし今から帰るのは危ない、ひょっとしたら他の聖杯戦争参加者とエンカウントしてしまうかもしれない、という事でそのまま先輩の家で一夜を過ごさせて貰う事になったのでした。

 

 昨晩は色んな意味で緊張しました。

 まず第一に、三年前からほぼ毎日先輩の家に通っていますが、実はお泊まりしたのはこれが初めてだったりしまして…好きな人と同じ屋根の下で一夜を過ごすという事で緊張したり。

 それとお風呂にも入れて貰ったのですが、先輩(とキャスターさん)が入った後という事を意識してしまって更に緊張したり。

 

 ですが、一番緊張したのは着替えに関する事でした。

 普段寝泊まりしていないという事は自分用の着替えなんかも置いてある筈が無く、来客用の寝巻きもとい藤村先生のお古を先輩が引っ張り出して来て宛がって貰いました。

 制服のまま寝てしまうと皺が酷い事になってしまうのでそこは助かったのですが…着替えが無い、という事は下着の替えも無いという事と同義でして…。

 仕方が無いので先輩が寝静まった後、直ぐ様下着を洗ってその場で魔術で乾かして再び着用しました。

 私の属性は虚なので物理法則に干渉する魔術はあまり得意ではないのですが、水だけはその限りではありません。

 元々間桐の魔術属性は水なので、それに合わせて体質調整を施された私は、他より多少マシというレベルですが水に関する魔術も扱えるのです。

 なので洗った下着の『水分』を『吸収』する事で強制的に乾燥させたのですが…お風呂から上がった後、さっきまで着ていた下着をまた着る気にはなれず、結局先輩が寝てくださるまでノーブラノーパンで居る事になってしまって。

 もしバレたらどうしようと緊張し、何とかバレずに就寝となった後も洗濯の途中で先輩が起きてきてしまったらどうしようとドキドキしながらの作業になりました。

 まぁ最終的に何事も無く無事に全て終わったのですが、こうもあっさりと片付いてしまうとそれはそれで物足りなく感じてしまうのも人間の我儘なところでして。

 少しはラブコメ的展開があっても良かったんじゃないかなーなんて思っちゃったり。

 

「馬鹿ですか全く…」

 

 もし本当にそんなハプニングが起きたら一も二も無く逃げ出してしまうに決まっているのに。

 流石に想い人にそんな瞬間を見られたら乙女として色々死んでしまう。

 益の無い思考を早々にシャットダウンして起床する為に上体を起こす。

 

「何が馬鹿なのですかサクラ?」

 

 すると直ぐ近くから声が掛けられた。

 少し驚いたけど幸い表にそれを出す事はなかった。

 パスで気配を感じていたので近くに居る事は分かっていましたし、なによりその声は頼もしい庇護者のものなのだから。

 

「おはよう、ライダー」

「おはようございますサクラ」

「ごめんね、ちょっと意味の無い考え事してて…あれ?ライダーは何で私の部屋に?」

「無論警護の為ですよ?」

 

 何故そんな分かり切った事を?と言わんばかりに怪訝な表情をするライダー。

 え?何?どういう事?昨夜は先輩の指示の下、四人全員に寝室が与えられた筈なのに…え、ライダーじゃなくて私がおかしいの?

 どちらかと云えば朝には強い方だ、既に覚醒している頭を回転させる。

 サーヴァントは霊体だから睡眠や食事を必要としない、今は聖杯戦争の真っ最中…態々(わざわざ)考えるまでもない事でしたね。

 

「そっか、一晩中見守っててくれたのね」

「ええ、睡眠中の奇襲というのは戦時下において最も警戒しなければならないものの一つですから」

「うん、ありがとうライダー」

 

 ほんと、私には勿体無いくらいの従者にお礼と労いの言葉を掛ける。

 それに応じてライダーも微笑んでくれる。

 うん、実に爽やかで気持ちのいい朝です。

 今日は良い一日になりそうだと思いました。

 

「でもあまり無理はしないでねライダー。肉体的に問題が無くても精神的に休むっていうのは絶対に大切な事だから」

「ご心配無く、これでも元女神ですから。メンタル面でのタフさには自信がありますし…それに、どちらかと言えば睡眠を取るよりサクラの愛らしい寝顔を観察している方がよっぽど癒されますよ」

 

 少しからかい気味にそんな事を宣ってきたライダー。

 その一挙手一投足だけで人の本能を戦慄(わなな)かせる、埒外な色香を漂わせる女神、その妖艶を乗せて歪められた唇に思わず視線が釘付けになる───でも、甘いわよライダー。

 常日頃先輩(天然ジゴロ野郎)との激闘を潜り抜けてきている百戦錬磨の私にその程度のからかいが通用するとでも?

 

 

「しょ、しょゆ、ぅ……そういう口説き文句は時と場合と相手を考えてください。からかい半分で言われたって不快になるだけです」

 

 もろに噛んでしまった。

 何が百戦錬磨ですか、思いっきり動揺しちゃってるじゃない私。

 いけない、顔が熱い、紅くなった頬を見られたくなくて思わずそっぽを向いてしまった。

 そんな私の有り様を見てライダーはクスクスと笑いを噛み殺している。

 相手の機嫌を損ねずに済んだ事に安堵する一方、増々羞恥で顔が熱くなっていく。

 奇しくもライダーを召喚した一昨日の夜と似た様な状況になっていた。

 

「では、からかうではなく本気だったら問題ないという事ですか?」

「………ライダーって、バイなの?」

「そうだと言ったらどうします?」

 

 バイザーで隠された目が細められた気がした。

 何処と無く空気が変わる、と同時に僅かな危機感を覚えた。

 体が強張り、視線をライダーから外せなくなる。

 何だろう、これは。

 ライダーの魔眼が解放されたという訳でも無いのに、文字通り蛇に睨まれた蛙、捕食者の気配を漂わせ始めたメドゥーサに、優しく、柔らかく、抗い難い誘惑を伴って魂すら巻き取られたかのようで。

 これは、まさか───

 

 

「──本気、なの?」

「まさか」

 

 けろりと。

 一瞬で淫靡さと剣呑さを引っ込めたライダーに、私は最初から最後まで弄られ倒されたのだと悟った。

 

「~~~っっ!!」

「ふふふ、昨日から薄々感じていましたが…サクラは随分と感受性が高いのですね。まぁそれを補って余りある程に我慢強い様なので戦闘に関しては心配していませんが…これ程までに弄り甲斐のある人材は希少ですよ」

 

 ライダーからの全く嬉しくない評価に、なんか色々と燃え滾って爆発してじっとしていられなくて。

 肩叩きパンチでポコポコと、主に頭を攻め立てるがサーヴァントにそんなへなちょこ物理攻撃が効く訳もなく。

 かといって魔力を込めたらそれこそ怪我をさせてしまうかもしれないのでそれも出来ず。

 せめて少しでも痛がるふりとかしてくれれば溜飲(りゅういん)が下がるのに、ライダーは本気で怒れない此方の気遣いとかそーいうのも全部引っ括めて笑っていて…。

 

 堪忍袋の緒が切れるのは割りと早かった。

 

 

「…………」

「…?…サクラ?」

 

 急に大人しくなった私を怪しむ様にライダーが声をかけてくる。

 私は黙って左手を掲げた。

 

「令呪を以て命ずる」

「え」

「ライダー、今後一切私の事をからかうのは禁s」

「待ってください待ってください待ってください。駄目ですサクラそんな事で貴重な令呪を消費してしまうのは今後必ず後悔する羽目になりますっていうかほんとすいませんでしたごめんなさい申し訳ありませんどうか考え直してはいただけないでしょうか」

「もう、しょうがないですねー、ライダーがそこまでいうなら今回は止めておきます」

 

 私の左手に縋り付いて必死に畳み掛けてくるライダーに私はニッコリと口角を上げて応える。

 若干ライダーとの信頼関係に(ひび)が入った、というか引かれた感がするけれど構うもんか。

 私が常に()()という誤った認識は断固として正さねばならないのだから。

 そもそも私は自分が正しくない、納得出来ないと思った事に対しては徹底的に反抗する(たち)なのですから。

 

「ふっふーん。ライダー、確かに私は我慢強いタイプの人間かもしれないけど、我慢すべき事柄かどうか判断するのは私なんですからね」

「いや…ちょっと、本気で焦りましたよ…サクラは意外と、その…怖いですね」

「今更何言ってるんですか、私は魔術師(基本碌でなし)ですよ?」

「それはあまり関係無いでしょう。どちらかと云えばサクラ個人の本質というか性根というか」

「ゴルゴンの怪物に言われたくないですよ~だ」

 

 態とらしく語尾を伸ばしてライダーの頬をプニプニと突付く。

 私の物言いにムッときたのか、仕返しとばかりにライダーが此方に覆い被さってきて全身を(くすぐ)ってきた。

 二人して布団の上に倒れ込んで揉みくちゃにされる。

 脇とか足の裏とか背中とか首筋とか太股とか胸とかお尻とか、なんかどんどん危ない所にライダーの手が這ってきて。

 

「やっぱりバイじゃない!」

「ふふ、今更気付かれても手遅れですよ」

 

 そうやってより一層ライダーの手の動きが激しく大胆になってきて、私も必死に四肢をばたつかせ、腰を跳ね上げ、首を振り乱し。

 互いに激しい運動と興奮で頬が上気して、息も必死で絶え絶えになって、笑いが止まらなくって───楽しい。

 

 久し振りに、童心に返りました。

 なんだか姉妹のじゃれあいの様で、まだ自分が遠坂の性を名乗っていた頃の事を思い出しました。

 姉さん、今は何してるのかな。

 サーヴァントはとっくに召喚している筈。

 あの好戦的な性格の姉の事だ、ひょっとしたら既に他の参加者を一組降してしまっているかも。

 そう思ったら何だか全身に活力が湧いてきた。

 居ても立ってもいられないとは、こういう心情の事を云うのでしょうか。

 私は上体を起こすと未だ布団に転がっているライダーの手に自分の手を重ねた。

 

「頑張りましょうね、ライダー」

「はぁ…ふぅ…ふふ、ええ、勿論です」

 

 ライダーは息を整えながら返事をしてくれた。

 さて、それではすっかり目も覚めてしまいましたし活動を始めなくては。

 顔を洗って歯を磨いて髪を解かして服を着替えて…女子の朝というものは忙しい。

 おまけに今日は先輩が何時起きてくるか分からない。

 早々に身嗜みを整えなければみっともない姿を見られてしまうやも──

 

「   ぅ おどおうわぁあっっ!!!」

「っ、……?」

 

 

 今のは、先輩の声?

 

「サクラ、今のは…」

「うん、先輩の声だけど…どうしたんだろう?」

 

 先輩の寝室と私が宛がわれた部屋は結構距離が離れている。

 その事にちょっとだけ不服を覚えますが、まぁ年頃の男女が一つ屋根の下で一夜を明かすのですから常識的な配慮でしょう。

 だというのにハッキリと言葉が聞き取れる程の音量で叫ぶなんて、一体朝からどうしたというのでしょうか。

 まさか──

 

「屋敷内及び屋敷の周辺、半径100メートル以内にサーヴァントの気配はありませんね。無論キャスターのものを除いてですが」

 

 ──私が疑問を口にする前に、ライダーが先回りで敵の有無を教えてくれた。

 全く(もっ)て頼もしい限りです。

 

「ですが、もしかしたらアサシンのサーヴァントかもしれません。サクラ、気を抜かないでください」

 

 暗殺者(アサシン)

 高度な気配遮断のクラススキルを有する、マスターの天敵とされるサーヴァント。

 それが私と先輩の寝首を掻きにやって来たというのか。

 御三家のマスターである私は兎も角、昨夜サーヴァントを召喚したばかりの先輩まで居場所が割れてしまっていたなんて。

 いや、でも、よくよく考えると当然かもしれない。

 圧倒的な気配と威圧感を放つ大英雄ヘラクレスさんの戦闘、雷鳴の如き轟音を発する弓矢を最大で秒間9発、おまけにヘラクレスさんを仕留める為に放たれたキャスターさんの宝具(極太レーザー)

 あれだけ派手な戦闘を行っていたんだ、他の参加者の一人や二人に一部始終を見られていても全く不思議では無い。

 密偵や諜報に長けたアサシンのサーヴァントなら尚更──

 

「先輩の部屋に向かいます。ライダー、霊体化して気配を隠して」

「了解しました」

 

 嫌な可能性に思い至った私は直ぐ様ライダーに指示を下して先輩の部屋へと赴く事にした。

 もし本当にそうなら急がないと。

 キャスターさんという強力なボディガードが付いている以上、そう簡単に先輩が殺される様な事は無いと思うが、キャスターさんがライダーの様にマスターの直ぐ近くで護衛をしているとは限らない。

 それにアサシンの気配遮断は同じサーヴァントでもまず見破れない程に凶悪な性能を誇る。

 不意を突かれたらどんな状況だろうと結果は同じだ、楽観視は出来ない。

 

「なんでさっ!?」

 

 部屋を出ると再び先輩の叫び声が聞こえた。

 やはり何かしらの異常が起きているのか、先輩の身に危険が迫っているかもと考えると、焦燥が加速度的に積み上がっていく。

 だが焦ってはならない、態々ライダーを霊体化させたのは逆に此方が相手の不意を突く為だ。

 サーヴァントも連れずのこのことやって来た獲物と思わせ、敵が食い付いた瞬間カウンターで此方が相手を釣り上げてやる。

 出来るだけ早足で、足音が激しくならないギリギリの上限を意識しながら廊下を進む。

 暫くして先輩の部屋の前に辿り着いた。

 逸る気持ちを抑えながら、部屋の中で何が起こっているのかまるで察していない風を装って襖を開いた。

 

「先輩?朝から二回も叫ばれて一体ど、うし、ぃ………?」

 

 

 室内の光景に私は言葉を失ってしまった。

 

 結論から述べると先輩は無事でした。

 怪我の一つどころか服の乱れ等、荒事を行った様な形跡は一切無い。

 周囲にも、少なくとも目視で確認出来る範囲に敵サーヴァントの様な危険な存在は認められません。

 

 ですが…別の意味で危険な状況だったらしい。

 キャスターさんが居た。

 私の寝室にライダーが居た様に、サーヴァントがマスターの側に控えているのは別におかしい事では無い筈なのですが、とてもそうには思えない光景でした。

 先輩は寝間着のままで、まるで慌てて後退(あとずさ)ったかの様に座ったまま背後の壁に背を付けている。

 キャスターさんはそんな先輩と距離こそ離れていましたが、()()()()()()()()横座りになり、まるで男性に媚を売る女の様に表情だけで先輩に迫っていた。

 

 これ、は─────

 

 

「あ、と、その…お邪魔、でしたか?」

「いやいやいや違うぞ桜!いや雰囲気的にそう思われても仕方無いし前科もあるから信じて貰えないかもしれないけど!寧ろ俺としては来てくれて助かったというか!」

 

 先輩は慌てて私の()()を否定に掛かった。

 何だか昨日から先輩はこうやって慌ててばかりな気がする。

 内容は状況の説明というか弁明というか言い訳というか言い逃れというか…いや、何事にも誠実な先輩の言う事ですからきっと私の勘違いなのでしょうが、どうにも喋り口が妻に浮気現場を見つかって無様に捲し立てる夫の様で。

 あ、いや、別に私と先輩が夫婦みたいとかそういう身の程知らずな事を考えている訳ではなくて──

 

「どうやら全員起床なされたようですね。では、朝の支度をしましょう。マスター、私達は出ていきますので、早く着替えて居間に来てくださいね」

「へ?あ、ぉ、おう…」

「ささ、桜さん。何時までも此処に居るとマスターが恥ずかしがられてしまいますよ」

「わわ、ちょ」

 

 先輩の弁明が終わる前に、キャスターさんが立ち上がってそれぞれに短く指示を飛ばした。

 キャスターさんに背を押されながら私は部屋を出る。

 少々強引な形で私は先輩と引き離されてしまった。

 

「あ、あの、キャスターさん?」

「うふふ、ごめんなさい。()()()()()あまり良くないって分かってるんですけど…何分(なにぶん)懐かしかったもので。マスターの反応も初々しくて可愛かったから、つい。」

 

 先輩の部屋から少々離れた所でキャスターさんは私にそう話し掛けてきた。

 大人の余裕の中に茶目っ気も多分に含まれた、その綺麗さと可愛らしさのハイブリッドされた姿は、正しく女性の理想像の一つで。

 (はな)から怒り等湧いていなかったのですが、それ以上に先程までの緊張感や毒気まで抜かれてしまった。

 

「い、いえ。私は別に怒ってないですよ?」

「あら、そうですか?なるほど、桜さんはとても懐の深い方なんですね。その寛容さと我慢強さは私も見習わなくては」

 

 そう微笑みながら此方を敬ってくれるキャスターさんに対して、私はこそばゆい気分になる。

 自然体のままで相手の戦意どころか敵意をも削ぐ。

 ライダーやヘラクレスさんとはまた違った()()

 何度でも再確認させられる、やっぱりキャスターさんも英霊の称号に恥じない、一廉(ひとかど)の人物なんだ。

 この柔和さの前では誰だって(ほだ)されてしまうだろう。

 

「でも、それは少々控え目過ぎですよ?片想いの男性が異性に迫られている場面に遭遇してそんな薄い反応では」

「ふ、うぅえぇっ!?な、何故それを…!?」

「それくらい見てれば分かりますよ。私生前は確り天寿を全うしましたから。人生経験豊富ですからね~、これくらいの人の心の機微を見抜けなくてどうしますか……いや、っていうかあれは誰が見ても5秒で察するレベルですよウン」

「は、はわわ…」

 

 呆れ気味な視線を投げてくるキャスターさんと私は顔を合わせる事が出来ない。

 ()だり紅くなった頬を隠す為に添えた(てのひら)も熱を持っていた。

 キャスターさんは未だ私の背に当てていた手を肩に持ってくると、耳元で囁き始めた。

 

「いいですか?意中の男性を振り向かせたいのでしたら、時には癇癪でも起こすくらいのアピールと云いますか演出と云いますか…そういう注意を引く事態が無いと中々相手の意識に常駐は出来ません。大人し過ぎる()なんて殿方にとっては家政婦(お母さん)と同義ですからね。もっと酷いと日用品、或いは空気扱いです。もっと我儘にならないと『妹みたいな後輩』から『気になるあいつ』にはランクアップ出来ないんですっ!」

 

 やたら一言一句に力を込めて、キャスターさんは私にアドバイスを送ってくれる。

 恐らくですが実体験を伴っているのでしょう、物理的な圧力すら生じている気がするキャスターさんの話に私は口を挟めず、黙って聞きに徹する。

 

「消極的過ぎては駄目、積極的過ぎても駄目、()()()()()って難しいですよね。でもね、それで音を挙げる様じゃ、きっとそれは一時の熱()で終わってしまうものなんです。手間隙(てまひま)かけてちゃんと育ててあげないと、不治の病()にはなってくれないんです」

 

 病気を育むっていうのもおかしな話ですけどね、と(おど)けながらキャスターさんは笑った。

 その心の底から満ち足りていると云わんばかりの朗らかな笑顔が、キャスターさんの生前がどれ程に幸せなものだったのかを雄弁に語っている様で。

 どこまでも眩しかった。

 自然と目頭が熱くなってしまうけど、逸らせない、逸らすにはあまりに惜しい暖かさ。

 

「…キャスターさんは…どうして私にそんな話を?」

「あら、恋する乙女を応援するのに理由が必要ですか?」

 

 最初から大して気を使ってなんていませんでしたが、駆け引きも何も無しの、本心からの素朴な疑問を思ったままに口から零れさせる。

 そしてやはりそれに、ニコニコと無邪気な笑顔で応じてくれるキャスターさん。

 聖杯を手にする事が出来るのは絶対の原則として一組のみ、それは同盟を結んでいたとしても変わりはしない。

 潜在的には敵対者であるキャスターさんに、私は何故こんなにも安心して触れ合う事が出来るのか。

 何故キャスターさんは欠片程の害意も見せる事が無いのか。

 何故キャスターさんの言動に嘘偽りが無いと()()()()()()()のか。

 

 

(あれ?)

 

 一度気にすると途端に違和感が湧いてきた。

 此方を見て微笑んでいるキャスターさんの様子は、昨日と何も変わらない。

 色素が完璧な迄に抜け落ちた白髪、両腕を覆う紅い線が入ったフード付きの黒い射籠手、白い着物と桜色のスカートというチグハグだがバランスの取れている矛盾した印象の服装。

 うん、キャスターさんだ。

 昨日召還した時から全く変わらないその姿。

 でも何故でしょう、今のキャスターさんを見ていると…何か、こう、これじゃない感というか、違和感が拭えない。

 あれ?キャスターさんって本当にこういう人だったっけ?

 じわりじわりと疑念が鎌首を(もた)げる。

 何かが違うのに、何かを指摘したいのに、それが定まらない。

 こんなに静かでしたっけ…?もっと、ほら、割りとアグレッシブだっというか────あ。

 

 

「昨日みたいにワチャワチャしてない…」

「は?え、何のこt…!っあ、あの、ちょ、昨日のあの醜態は忘れていただけると嬉しいと云いますか…っていうか昨日のあれは魔力不足でおいそれと魔術を使えなかったが故の苦肉の策で、でも最終的に宝具でヘラクレスさんは倒せたんですからノーカンにしてくださっても、あ、いや、倒せてなかった…えと、その…」

 

 

 ポロリと、思わず口から漏れてしまった私の言葉にキャスターさんは矢鱈と過剰な反応を示した。

 そんな慌てふためく様子が先輩のものとダブって見えて図らずも笑いそうになる。

 ああ、うん、そうですそうです。

 キャスターさんはこういう人だった。

 ヘラクレスさんとの闘いの最中に見せた、あのドジっ子を超越した謎テンションぶっ飛びバーサークファイター。

 いや、先程までの落ち着き払った大人の女性といった雰囲気が上辺だけの偽りと云う訳ではないでしょうが、絶対にこっち()素だ。

 ──嗚呼、そっか。

 

 

「キャスターさんって、私に似てるんですね」

「え?」

 

 そう、これは昨日の、ヘラクレスさんとの戦闘中にも抱いていたものだ。

 上手く言葉に出来ないけれど、キャスターさんを見ていると自分の中の何かが常にざわついていた。

 痒いところに手が届かない、忘れていた名詞が喉まで出かかっているのに出てこない時の様な、単純な不快感とは違う、意識の底に常に張り付いてくる興味というか。

 昨日も一度感じたっけ。

 これは既視感というやつだ。

 

「昨日から何故かキャスターさんの事が気になっていたんですけど、漸くその理由が分かりました。自分で言うのもなんですけど…いやほんとあれなんですけど、所々でうっかりが(ほとばし)ってますよね」

「うぐぅ……はっきり指摘されると辛いものがありますね…面目無いです」

 

 しょんぼりと意気消沈するキャスターさん。

 やっぱり何処か自分と似ている、その既視感が親しみに昇華されて私の舌の滑りを滑らかにしてくれる。

 

「いえ、私はキャスターさんがこういう人で良かったと思えます。英霊(サーヴァント)さんって、私みたいな凡人とは力も価値観も背負ってる()()の次元も、何もかも違うんだって召喚する前は考えていました。実際ヘラクレスさんみたいに凄い人も居ましたけど…ライダーやキャスターさんみたいに、親しみやすい人も居るんだって分かって…人見知りで臆病な私にとっては、それがとても嬉しくて安心出来たんです。きっと先輩も、四六時中ガチガチな雰囲気を纏ってる英雄さんより、キャスターさんみたいな人の方が一緒に居て楽だと思ってますよ」

「…いや、それ誉めてるようで割りとボロクソに貶してますよね」

 

 キャスターさんの目が据わった、声も若干低くなった。

 あ、あれ?おかしいな、そんなに気に障ったのかな?

 

「え?あれ?わ、私としては今のは正真正銘の本音で、明確な好意の表現だったのですけど…」

「うふふふふふ、桜さん?恋愛において日頃の言動というものは要注意事項の一つですよ。本人に悪気が無くても相手は少しずつ少しずつフラストレーションが溜まっていってしまうものなんです。それによって生じる亀裂はいずれ修復不可能のマリアナ海溝にまでなってしまうんですよ」

 

 キャスターさんの笑みの質が段々と変わっていく。

 ニコニコと明るかった朗笑(ろうしょう)がニッタリとした酷薄な冷笑に。

 ヤバイ、めっちゃ怖い。

 ほんのちょっとした声の高さや目元口元の角度の違いのみでここまで笑顔の温度というものが変わるなんて。

 

「悪気は無かった、なんて何の免罪符にもならないんですよ~。その周囲に害を撒き散らす天然の毒っ気、やっぱり今の内に矯正しておくべきでしょうか」

 

 キャスターさんの両腕が私の体の前に回され、ロックされる。

 肩に顎が乗せられ、超至近距離から此方を()め付ける瞳と視線が絡み合ってヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイコワイヤバイシヌコロサレル───

 

 

「ご、ごめんなさっ──!!!」

「そこまでですキャスター」

「──っと」

 

 ヒュンッ、と。

 子供の吐息を連想する程に軽い音を響かせながらキャスターさんの眉間に向かって短剣が突き出された。

 無論、霊体化を解いたライダーの攻撃です。

 キャスターさんは私に対する両腕での拘束を解くと素早く後ろに下がった。

 数瞬呆けていた私は慌ててライダーの背中に隠れる。

 

「いくら同盟関係とはいえ、今の狼藉は許せません。やはり此方を油断させて隙を突くのが目的でしたか」

「まさか。私には昨日話した以上の考えなんてありませんよ。今のは其方のマスターさんの将来を案じたが故の教育的指導というものです」

「教育が必要なのは其方でしょう。先程桜の寛容さを見習うと言っておいて、舌の根も乾かぬ内にこの為体(ていたらく)ですか。薄っぺらい本性が透けて見える様ですよ魔術師」

「薄っぺらくて結構です。所詮私は貴女と違って格の低い英霊なんですから。ですが酸いも甘いも噛み締めた先人だからこそ、大事にしなきゃいけないものを子供に教えてあげなくては」

「余計なお世話ですよ、桜にとってはそんなもの。この娘は自らの精神と肉体のみで逆境に立ち向かえる力があります。放っておいても確りと晩成する事でしょう。仮に倒れてしまいそうになっても、その時に支えるのは桜のサーヴァントである私の役目です。断じて貴女ではありません」

「…なんだ。要するに単なる嫉妬じゃないですか」

 

 肩を竦めてしょうがない子だなぁ、と云わんばかりに苦笑するキャスターさん。

 そんな半ば挑発とも取れる言動にライダーの雰囲気がより剣呑さを増す。

 でも同時に悔しさとかたじろぎとか羞恥とかも混ざっている様に見えて。

 何だか図星を突かれて憤慨する子供みたいに見えた。

 場違いにもライダー可愛いなんて思ってしまう。

 

「…何の事か解りませんね。私はただ事実を述べただけです」

「もう、誤魔化すことないじゃないですか。微笑ましくて良いと思いますよ、とっても」

「ぐ……そういう貴女こそ、人の事を言えないのでは?あのマスターの少年に対して随分とお熱な様ですが」

 

 ライダーの露骨な切り返しに、キャスターさんではなく自分がギョッとしてしまう。

 それは、ちょっと、あまりにも藪蛇というか、答えを聞くのが怖い──

 

「はい、そうですよ。私、マスターの事大好きですから」

 

 さらりとニコリと、何に憚る事なくキャスターさんは先輩への好意を表明した。

 それを聞いたライダーは今更ながら自分がまずい質問をしてしまったと思い至ったようで、私の機嫌を伺う様に僅かに顔を此方へ向ける。

 当の私はと云うと、存外そこまで心は乱れていなかった。

 いきなりだったので少し面食らったが、そんなに動揺は無く、寧ろ安心している自分がいる。

 何で?と考える事、僅か3秒。

 先程と大して答えは変わらない、きっとこれはシンパシー、理解者(同類)を見付けた時の安堵感の様なもの。

 まだちょっぴり怖いけど、さっきよりは全然マシになった。

 キャスターさんと話す為に、私はライダーの斜め前に歩み出る。

 

 

「あの、キャスターさん、本当にごめんなさい。あの、あれ、違うんですよ!さっきのは、英雄としての超人的な面だけじゃなくて、普通の一般人みたいな気安く接する事の出来る面もあるって意味で!例えるなら、ほら…そう!近所のお姉ちゃんみたいな感じです!」

「え、何?桜ちゃん私の事呼んだ?」

 

 

 え、と声をあげたのは誰だったか。

 振り返るとそこには我が母校のハイエンド(あらゆる意味で)教師、藤村大河先生がいらっしゃった。




オチ?ねぇよ。

話は進まないっ!更新ペースも上がらないっ!ふざけるなっ!ふざけるな馬鹿野郎!!

という事で苦しいですが前編とさせていただきました。騎術同盟のイチャイチャ回という事でどうかorz

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