Fate/SAKURA   作:アマデス

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この小説は紛う事なき作者の欲望によって構成されています。

すなわち、間桐桜と百合とSMとエロを隙『が無くとも』ぶちこんでいくという事だ。

という訳で『ガールズラブは念の為』タグは削除よー。


…サブタイと本編の温度差がひでぇ。


12話 うっかりカリバー

「調子はどう?セイバー」

「ええ…もう殆ど復調出来たかと」

 

 日が地平線の向こう側へ落ちて暫く、私は遠坂(自身)屋敷()の、セイバーへ宛がった寝室を訪れていた。

 セイバーは白いネグリジェを纏った上体をベッドから起こし此方に微笑みかけてくれる。

 その笑みからは無理に表面を取り繕った強がり等は見られず───でも召喚時に感じた圧倒的な覇気が若干薄れている様に感じた。

 例えるなら、体調不良ではないけど若干寝不足で頭がフラフラしているみたいな、特に問題は無いけどベストコンディションとは云えない的な状態なのだと思う。

 

「そっか。特に後遺症とかも残ってないみたいだし、ほんと良かったわ」

「凛の治療のお陰です。完全に霊核(心臓)を穿たれたあの状態から一日でここまで回復出来るとは。凛、貴女が私のマスターで良かったと、(つくづく)実感します」

「私だけの手柄じゃないわ。お父様が遺してくれた宝石()と、何よりセイバー自身が諦めず意志を折らなかったからよ」

 

 

 これは紛れもない本心だ、実際私一人ではどうしようも無かったと思う。

 

 ゲイ・ボルク、ランサーのあの魔槍の性能は本当に悪辣だった。

 因果逆転による必中効果、先に攻撃を当てたのはセイバーだというのにダウンさせられたのはこっちなのだから堪ったもんじゃない、ちょっとやそっとの妨害等意にも介さずありとあらゆる軌道で敵の心臓目掛けて(はし)る穂先…遠目に見ただけだけど軽くトラウマものよ。

 更にはどれだけ魔力を注いでも治せなかった()()の傷、恐らくは『治癒阻害』と『体内殲滅』の重複。

 敵を貫いた瞬間穂先が、まるでウニの様に四方八方に棘を生やして破裂し、心臓だけでなく体内のあらゆる臓腑をズタズタにする、おまけに治癒が出来ない様に呪詛を置き土産として残していく。

 正に不死すら殺す、対人において必殺の一突き。

 これに加えてセイバーはアサシンの毒を私を庇った際に喰らってしまった。

 文字通り泣きっ面に蜂、どれだけ耐久性に優れたサーヴァントでも息絶える他無い程に打ちのめされてしまった。

 

 それでもセイバーは生き残った。

 

 遠坂家秘蔵の宝石、私の十年分の魔力に相当し大抵の奇跡なら力業で発動させる事が出来る程の、圧倒的な神秘の結晶。

 聖杯戦争の切り札となるそれを早々にセイバーの治療の為使い捨てる事に迷いは無かった。

 それでも真名解放した宝具の呪詛に対抗出来るかは賭けだったけど、結果として何とか解呪と治療には成功した。

 ほんっとーにギリギリだった、セイバーの頑張りが無ければ失敗していたかもしれないくらいに。

 

 あの最後の一撃、直感でランサーを仕留め切れないと刹那で判断したセイバーは一刀を浴びせた後、直ぐ様全魔力を防御に回したと言っていた。

 結局宝具の一撃の前には焼け石に水だったけど、それでも()()ではなく()()に大量の魔力を回したお陰で心臓を破壊された後でもある程度の持ち堪えに成功。

 そしてこれは完全に幸運だったのだが、槍の穂先から分裂した棘が各内臓を串刺しにせず掠める様に傷付けたものばかりだった事も大きかった。

 直感と魔力放出、Aランク以上の魔力と幸運、セイバーの有するスペックがそれぞれフルに働いてくれたからこその、勝ち。

 

 私とセイバーは死の運命に勝てたんだ。

 それがシンプルに、凄く嬉しかった。

 

「あ~~、もうほんと良かった~~、ありがとうセイバー」

「な、ちょ、凛」

 

 何だか唐突に、目の前の少女が堪らなく愛おしくなってその頭を胸に掻き抱いた。

 頬を赤らめて驚いているセイバーが可愛い──────嗚呼、ほんとに。

 

 

「ありがとう、ありがとうセイバー。生きてくれてありがとう」

 

 それだけだ。

 使った宝石の出費も、優雅とは程遠い無様を晒した事も、今はこれっぽっちも気にならない。

 只々セイバーが目の前で動いて、喋って、息をして、温かくて─────ヤバ、今度は涙腺が緩んできた。

 

「…お礼を言わなければならないのは私の方です。ありがとうございます、凛。繋ぎ止めていただいたこの命、全て貴女に捧げます」

「ちょ、やめてよもう、マスターがサーヴァントを助けるのは当然の事なんだから。変に気張らずにふつーで良いのよふつーで」

「ふふ、そうですね。では主君を護る為に全身全霊を尽くすとしましょう。騎士として至極普通の行いです」

「む……騎士なら主君を残して勝手に死ぬなんて間抜けは起こさないで欲しいんだけど?」

「勿論です。この戦争を終えるまで、必ずや貴女を護り抜きます」

「昨晩死にかけてたのは何処の誰よ、ったく…」

 

 お互いに遠慮があるんだか無いんだか、自分のスタンスを曲げない私達の応酬は妥協点を設けず、でも何だかんだ収まる所に収まった。

 セイバーは真面目で良い娘なんだけど、どうにも度が過ぎている様にも感じる。

 しかもそこに頑固さまでプラスされるとなれば相性の悪い相手とはとことん相性が悪いだろう。

 

 ───セイバーのブリテンが崩壊したのは、この長所と短所がハッキリとし過ぎている性格のせいなのかもしれない。

 

 ふとそんな事を思い──連鎖的に考えてしまった。

 セイバーの願いって何なんだろう。

 いざ思い至ると気になってしまうのが人の(さが)って奴よね、っていうか何で私、今の今まで確認するどころか聞こうという発想さえ思い浮かばなかったのかしら。

 この戦争の性質上、信頼関係を築く為にはパートナーが聖杯に託す願いを把握しておくのが必要不可欠なのに。

 初対面時のコミュニケーションが完璧過ぎたせいねこれは。

 ふむ、別に遠慮する理由も無いし懸念事項はさっさと取っ払っちゃた方が良いわよね。

 よし聞こう、直ぐ聞こう。

 

「ねえセイバー、貴女が聖杯に託す願いって──」

 

 

 ───キ、ィィイイイイイン

 

「っ!」

「!凛」

 

 不意に、頭蓋の中で直接振動する様な、鮮明な刺激が私に届いた。

 

 これは遠坂の屋敷及びその周辺の敷地内に施された侵入者探知の結界による警告だ。

 つまり何者かが、時期的にほぼ間違いなく聖杯戦争の参加者が強襲目的で家にやって来たという事。

 セイバーも敵の気配を察知したらしく、直ぐ様ベッドから降りるとネグリジェ姿から召喚時のバトルドレス姿に変身する。

 

 

「敵ね」

「ええ、しかもこれは…サーヴァントの気配が二体です」

「なんですって?」

 

 セイバーの相槌に付け足された情報に、思わず疑問系で返してしまった。

 自身と自身の使い魔以外は全員敵のバトルロワイヤルで、サーヴァント同士が戦う事無く此方へ向かってくる。

 それはつまりどこぞの陣営が同盟を結んでいるという事だ。

 まだ戦争は始まったばかりだというのに随分と手が早いやり手が居る様だ…いや、或いは戦争の準備期間中に予め盟約を結んでおいたのか。

 昨日のランサー組と云い、今回の聖杯戦争に参加している連中は曲者揃いらしいわね。

 楽観視していた昨日の自分をぶん殴りたくなってくる、逆に燃えてもくる訳だけど。

 

「凛、此方も出ましょう」

「うーん、ちょっと待ってセイバー……ったくタイミングが良いんだか悪いんだか」

 

 只管好戦的なセイバーに私は難色を示してしまう、でもしょうがないじゃない、セイバーはまだ病み上がりなんだから。

 確かにほぼ回復はしているが、まだ若干のダメージを引き摺っている状態のセイバーじゃあサーヴァント二体を相手取るのは厳しいものがあると思う。

 まあとっくに治療を終えているのは不幸中の幸いね、もし昨晩の治療中に襲撃されたら最悪だったけど。

 

 昨晩のボロボロ状態よりは遥かにマシだが全快ではない、そんな状況で敵が二体…イマイチ判断に困るわね、此処は常勝の騎士王様に判断を仰ぎましょう。

 

「セイバー、いける?」

「…すみません、正直今の私では厳しいかと。ですが一方的な展開にはならない筈です。宝具(切り札)を切れば最低でも撤退には追い込めます」

「そっかぁ~…」

 

 やっぱりセイバーの考えも私と似たり寄ったりみたいね、どう転んでもおかしくないビミョーな状況、ここは生き残る事を第一に考えて戦略的撤退を視野に入れるべきか───

 

 

 いや、それは無いわね。

 確かに逃げる事も戦いだ、不利な状況で突っ込んでいくなんて行いは下の下だろう。

 

 だけど。

 遠坂の屋敷(ここ)を捨てたくは無かった。

 お父様から受け継いだ家、長年管理し、支え、魔術を研鑽してきた私のホームグラウンド。

 

 そして何よりも、(あの娘)との思い出が詰まった実家。

 万が一あの娘が間桐(潰れかけの家)に居られなくなった時、立つ瀬が無くなった時、最後の拠り所になれる様に、何時でも帰ってこれる様に。

 ここだけは、絶対に守り通したい。

 

 

 

「───出ましょうセイバー。遠坂のホームに土足で踏み入る愚を思い知らせてやるわ」

「ええ、行きましょう凛」

「っと、ちょっと待ってセイバー」

 

 私の言葉に力強く頷いて部屋を出ようとするセイバーを止める。

 

 

「───いぃ~こと思い付いちゃったわ」

 

 天恵が降りてきた、一発逆転の策を。

 自然と頬が吊り上がる、私の表情を見たセイバーが若干引いている様に感じた。

 

 

 

 

 

 ほんの1、2分後、私とセイバーは屋敷の地下室にあるとある扉の前に立っていた。

 

「凛、この先には何が…?」

「特に何かがあるって訳じゃないわ。屋敷の敷地内と外に通じる地下通路よ」

 

 扉を開け、電灯等の灯りが一切無い通路を月長石(ムーンストーン)で照らし、歩きながらセイバーに説明する。

 

 

「奇襲を仕掛けるわ。セイバー、通路を抜けて敵の近くに出たらエクスカリバーで纏めて吹き飛ばしちゃって」

 

 そう、これが私の策。

 この地下通路は遠坂の屋敷に昔から施されている、いざという時の非常口みたいなもので、敷地内外のありとあらゆる場所に出口が繋がっている。

 敵の位置を捕捉しつつ、背後に当たる出口から飛び出て不意討ちを喰らわす。

 エクスカリバーなんて最強の聖剣にして究極の一振りを意識外から受けて対処しきれるサーヴァントなんて早々居ない筈。

 これならセイバーの調子が多少悪くても関係無い、相手に行動させる前に倒してしまえばいいんだ。

 

「…成る程、了解しました。ですがよろしいのですか、聖剣を解放する以上、周辺への被害は計り知れないものになりますが…」

「この屋敷は住宅から離れた山の中だし、基本的には大丈夫だと思うわ。まぁそこは上手い事調整してよ」

「肝心な所がアバウトですね…分かりました。威力、角度、諸々に細心の注意を払いましょう」

 

 苦笑しながらも了解の意を示してくれるセイバー。

 …少し意外ね。

 

「なんか、意外ね」

「?何がですか」

 

 おっと、声に出てしまっていたか。

 しょうがない、このまま勢いで聞いちゃえ。

 

「いや、セイバーって騎士道とか、正々堂々みたいな流儀に拘るタイプだと思ってたから。私の策に対して何も文句言わないんだなーって」

「…確かに、出来れば騎士として誠実に、面と向き合って相手との決闘に(のぞ)みたいという気持ちはあります。ですが相手側がそれに合わせてくれるとは限らないでしょう。いや、寧ろそういった此方の誠実さを利用して裏をかいてくる手合いの方が遥かに多い。本当に守りたいものを守る為ならば、その様な心の贅肉は捨てて事に当たるべきだ」

 

 心の贅肉、私もよく使うその言葉。

 成る程、セイバーは騎士として王として、国を守る為にこうやって自分を殺し続けてきたのか。

 ────なんだろう、なんかちょっと──

 

「それに」

「ん?」

「先程の凛も、私と同じ気持ちだと…覚悟を決めた顔をしていました。何か、守りたいものがあるのでしょう?」

「…ええ、そうね」

「ならば是非もありません。マスターにとって大切なものは、私の大切なものでもあります。それを守る為にこの剣を振るう事に、一体何を躊躇う必要があるでしょうか」

 

 真っ直ぐに私を見据えてくれるセイバーに、思考が切り替わった。

 パートナーが此方の気持ちを汲んでくれているんだ、へまは出来ない、改めて覚悟を決める。

 

「ありがとうセイバー───頼んだわよ」

「はい、任せてください」

 

 私は結界とリンクさせた感覚を頼りに、敵の不意を突ける位置取りの出口までセイバーを伴って歩いていった。

 

 

 

 ─────正直この時の私は、自覚無しで結構焦ってたんだと思う。

 せめて使い魔を飛ばして相手の顔を確認するくらいはしとくべきだった。

 ()に恐ろしきは遠坂の血か。

 

 

 

 

 

 

 

          ∵∵∵

 

 

 

 

 

 

 

 進行方向の斜め前方、林の陰から突如巻き上がった神秘の光。

 剰りにも膨大で圧倒的なその気配に、私は五体を硬直させてしまい。

 ライダーとキャスターさんの叫び声、隣で先輩が戦慄する気配、どこか他人事の様に感じるそれらの事象、此方に向かってくる光の壁がスローモーションみたいに遅く見えて───

 

 

 ───私は為す術無くその瀑布に呑まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────……… …   …… … ………

 

 

 瞼が、開かない。

 

 

 ────……………っ ……、…

 

 

 耳も、聴こえない。

 

 

 ──……………っ!……っら!!さ  っ !

 

 

 四肢は、微かに動く。

 よかった、取り敢えず、まだ死んでない。

 

 

 

「サクラっ!!確りしてくださいサクラっ!!」

「───………っ、ライ、ダー…?」

 

 何時の間に意識を失っていたのだろう、覚醒し始めた脳と五感が最初に捉えたのは目の前で必死に叫ぶライダーの存在だった。

 相変わらず両目はバイザーで隠されているけど、それでも必死の形相だと分かる程の悲痛な叫び声、私を抱き抱える腕にも凄く力が入っている。

 

 私が反応を示した事に安心したみたい、目に見えて全体の雰囲気が弛緩する。

 

「サクラっ……!ああ、良かった…!すみません、こんなにもすぐ傍に居たのに……守り切れませんでした」

「一体…何が…」

「敵サーヴァントの宝具による不意討ちです。凄まじい破壊力でした…申し訳ありません、桜を抱えて離脱するのが精一杯で…まともに防御する事も出来ませんでした」

 

 私の質問にもなっていない曖昧な呟きにライダーは簡潔に答えてくれた。

 未だにモヤがかかった頭で漠然と敵に襲撃されたという事を認識する。

 となれば、何時までもお荷物になっている訳にはいかない。

 遮二無二、魔術回路に魔力を流して生命力を循環させると共にその際の疼痛(とうつう)で心身を刺激する。

 私の魔術属性『虚』は『目に見えない不確定を操る』、つまり精神や魂と云った霊的要素に強く作用する、適当に魔力(オド)を体内で廻すだけでも自身の意識を活性化させるくらいは容易い。

 

 

「んんっ、ぐ………!?ゎ、ちょ、きゃっ!?」

「っ、ん…」

 

 ものの数秒で完全に復活した私でしたが、状況を確認するや否やライダーの背中に両手を回してすがり付いてしまいました。

 その際思いっきりライダーの胸元に顔を(うず)めてしまい、ライダーが苦し気に呻いた。

 痛かったかな?

 でも今の私にライダーを気遣う余裕は無い。

 

「た、高いよライダー…」

 

 そう、今私とライダーは、ライダーの使い魔であるペガサスに乗って遥か上空を旋回していた。

 先程のライダーの説明からして、敵サーヴァントの宝具(攻撃)を回避する為に私ごとペガサスに騎乗して地上から離脱した、という事なのでしょうが…。

 普段なら、重力操作の魔術を用いればこれくらいの高度、安全に降下出来るので別に恐くない…筈なのですが、気が付いたらいきなり空中というのは流石にビビってしまった。

 

 というか今更ですが、体のあちこちからヒリヒリジリジリとした痛みが伝わってきた。

 守り切れなかったというライダーの言は事実らしい、決して命に関わる様な重傷ではないですが、酷く火傷してしまっている箇所が多々ある。

 認識した途端そちらに注意が逸れてしまうのが人間の脳もとい神経の厄介な所で、加速度的に増していく痛みに私は短く声を漏らして顔を顰めてしまった。

 私の様子に気付いたライダーが心底申し訳無さそうに項垂れる。

 

「…本当に、申し訳ありませんサクラ。ペガサス(この子)は護りに関しては竜種に匹敵する程なのですが…先の光の一撃は対城宝具クラスの規模でした。防御態勢を維持しながらの迅速な離脱は困難で………私とこの子を犠牲にしてでも貴女を守り切るつもりだったと云うのに…結局は貴女に多大な苦痛を──」

「やめてライダー」

「!」

 

 

 聞くに堪えなくて私はライダーの言葉を強引に中断させた。

 多大な苦痛?剰りにも滑稽だ。

 ライダーも、そしてよく見るとペガサスも、私なんかよりよっぽど酷い傷を負っているというのに。

 至近距離でバイザー越しに隠された双眼を見詰める。

 

「さ、サクラ…?」

「過保護が過ぎるわ。それは貴女の長所でもあり短所よ。今回の事は敵が(うま)かった、そして私が油断し過ぎてた、それだけです」

「そ、それは違います!」

「違わないわ。周囲への警戒を貴女に任せっきりにして注意すらしなかった私が馬鹿だったの。監視の使い魔を放つくらいは幾らでも出来たのに。確かに貴女のペガサスの性能がもっと高ければ無傷で凌げたかもしれない。でもそんなたられば全く意味はないわ。貴女はあの状況で自分に出来る最善を発揮した。そのお陰で私達はちゃんと五体満足で生き残れたの───だから、謝らないでライダー。護ってくれてありがとう。それで……ごめんなさい、私はマスター失格です」

 

 言いたい事を一気に言って、頭を下げた。

 ライダーに抱えられ半ば密着しているので首だけでの謝意になってしまったが、本当なら今すぐ土下座して顔面で地面を陥没させたい、なんならライダーの靴の裏を舐めたい。

 ほんとに、もぅ、やだ。

 自己嫌悪が止まらない、自分が情けなくって死にたくなってくる。

 

「やめ、やめてくださいサクラ!頭を上げてください!」

「いや、やめない。頭も上げない。ねぇ、早く下に降りて。じゃないと土下座が出来ないわ」

「支離滅裂ですかっ!今下には敵が居るんです、降りるのは危険ですよ!」

「下に……下に…?」

 

 

 

 下には敵が居る。

 ライダーの言葉を聞いて、思い出した。

 いや、寧ろ何故今まで忘れていたの?

 

 下には敵。

 なら、先輩は、何処?

 

 私は尾を踏まれた猫の様に、総身を跳び起こして周囲を見渡した。

 無論、空中に何らかの物体が浮いている筈が無い、周囲には何も無い、先輩もキャスターさんも居ない。

 

 一気に血の気が引く。

 嘘だ、嘘だと、子供の様に心の中で只々否定の言葉を唱える事しか出来ない。

 私はライダーに(すが)りついて震える声で訊いた。

 

「…ぁ、ライダー…先輩は、何処?」

「………」

「ねぇ…どうしたの?ライダーってば。お願い、何か、何か言って」

 

 僅かに顔を逸らして私の問いを黙殺するライダー。

 くそっ、心臓がうるさい。

 やめて、違うってば、そんな、そんな事がある訳───。

 

 

「──シロウとキャスターは、光の波に呑まれて姿を消しました。恐らく、生きてはいないかと」

 

 

 

 

 

 ───────心臓が、数秒止まっていた。

 世界から、音が消えて、色も失せて────。

 

 

 

 

 

 私はライダーを突き飛ばす様にして、私を抱えていた腕を振り(ほど)いた。

 そのまま宙に身を投げ出そうとして、泡を食ったライダーに再び捕まった。

 

「っ!!な、にを!しているのですかサクラっ!!?」

「ぅう、あ、あああっ!!!離してライダー!離して!ねぇ離してってば!離せっ!!!」

「この高さから落ちたら死にますよ!貴女はサーヴァント(英霊)ではなくマスター(人間)です!」

「重力制御の魔術くらい使えるわ!!」

「それでもです!今言ったばかりでしょう!?下には敵が居るんです、降りてはいけない!」

「何で!?何で降りちゃいけないの!?だって先輩が、先輩が危ない…先輩が死んだとは、限らないじゃない!私みたいに、いや、私より酷い怪我して、動けなくなってるかも…は、早く、早く見付けて、治して、護って…私が!私が行かなきゃいけないのっ!!!」

「っ…!…無駄です、あの完全に不意を突かれたタイミングから無傷での回避はまず不可能。ペガサス(この子)ですら防げない一撃を凌ぐ手段は──」

 

 

 埒が明かない、私は左手に宿る魔力に指向性を持たせた。

 

「令呪を以て命ずる!!」

「!?」

「ライダー、私が地上に着くまでうご──」

 

 ビュッ      ゴ ォ!!!

 

「───っ!!ぎ…」

 

 舌を噛んだ。

 いきなり急降下したペガサスの動きによる慣性と風圧に下顎がカチ挙げられ、思いっきり舌を挟んでしまった。

 鉄の味が口腔に広がる。

 

 私が痛みに悶えている間にライダーが鎖を使って私を拘束した。

 生半可な制止では埒が明かないと向こうも判断したのか、後ろ手に捻り上げた腕から揃えた脚まで、上から下まで鎖一本でグルグル巻きの簀巻きにされてしまった。

 獲物に巻き付く蛇の如き早業、更には相手の体を無駄に痛めない様に、体の一部分だけに体重や絞まりがかからない様に、全体的に分散された縛り。

 でもそれ故に頑丈な拘束、ご丁寧に猿轡の如く口にも鎖を咬まされた、これでは呪文の詠唱も行えない。

 一瞬で、完全に物理的な抵抗を封じられてしまった。

 

「落ち着いてください、マスター」

「っ!えぅ……んん!」

 

 でもこんなんじゃ気勢は欠片も()がれなくて。

 ライダーの足と足の間に座らされ後ろから抱き締められる様に捕まえられながらも身を捻り続けた。

 

 こんな、こんな事してる場合じゃないのに!ライダーの馬鹿!こんな……こんな、不様な私なんてもう放っておけばいいのに。

 あれだけ偉そうに知識を披露しておきながら、先輩を守れなかった。

 こんな醜態を曝して令呪(マスターの権限)で無理矢理言う事聞かせようとして、ライダーにも失望された。

 

 あんな、あんな……!

 色事に(かま)けて、先輩の誠実さに、ライダーの頼もしさに甘えて…!何がゆっくり心を構えてくださいよ、私の方がよっぽど──

 

 

 

「マスター」

「─────っ!?」

 

 

 ゾルリ、と。

 肩と腰が跳ねた。

 突然の、意識外から冷水を浴びせられた様な予想外の刺激、それによって心が忘我に似た形で沈静化していく。

 

 ライダーに撫でられた。

 

 どの箇所かは判らない。

 でも確かに、肌を直接撫でられた感触だった。

 私、服着てるのに…?

 

 

「どうやら言葉で大人しくさせるのは、今は無理な様ですね」

「ふ、ぁ…?」

 

 左耳のすぐ近くでライダーの声がする。

 大人特有の低さと女性特有の甘さで織り成された美しい響き。

 体の芯に染み渡ってくるかの様なその声に五感が絡め取られる。

 再びライダーの手が動いた。

 

「っっ!?!?」

「ふふ、どうしました?急にしおらしくなった様ですが」

「───ぁ、~~っ!い、あ…」

 

 

 ヅクンヅクンと。

 ライダーの掌が、指が私を這うごとに、心臓の音みたいな、激しい痙攣みたいな感覚が私を苛んでくる。

 ()()は、既知のものだ。

 生涯の殆どを通じて慣れ親しんだもの、心身を(ひた)してきたもの。

 快感という、下手な毒よりよっぽど抗いがたく、人の尊厳を犯し尽くす毒。

 

 ああ、しまった、そういう事か。

 何故厚着をしている私の肌にライダーが直接触れるのか、何て事はない、もう既に服が無いからだ。

 たぶん敵の宝具を受けた時でしょう、身に付けていた上着が焦げ落ちてその面積の殆どを喪失している。

 幸い一番上のコート以外にはあまり被害が無い、下着もギリギリ見えないくらいのラインです…が、無遠慮に(まさぐ)られたら直ぐその下を露にされるくらいにはボロボロでした。

 

 脇腹、お腹、背中の腰部分、腿……そして、それらの()()、その()

 今朝のじゃれ合いなんて目じゃない、明確に私を堕とそうという嗜虐の意思がライダーの(たく)みな指先一つ一つの動きに宿っている。

 抵抗の手段は既に封じられている、後はもう奴隷として屈服させられるのを待つだけの無力な小娘が今の私。

 

 嫌だ、これ…ライダーやめて。

 今は、今はそんな気分じゃない、そんな状況でも空気でもなかった、感じたくない、これ以上されたら私───

 

「い、やぁ…!」

「マスター」

 

 ライダーが濡れた左手で、猿轡と唇の隙間から溢れ出た涎を拭いながら私の両目を塞ぐ。

 それと同時に私の首筋に歯を突き立てた。

 

「っっっ!!!──────は、ぁぁ…~~~っ!」

「申し訳ありません、暫く眠っていてください」

 

 

 ───ライダーのその言葉を聞き届けたと同時に、私の意識は暗黒に堕ちた。

 

 

 

 

          ∵∵∵

 

 

 

 

 自己封印・暗黒神殿(ブレーカー・ゴルゴーン)

 普段はバイザーとして自身の魔眼(キュベレイ)を封じる為に使用している対人宝具。

 対象に悪夢を見せて意識と能力を結界内に封印、外界への干渉を完全に遮断する。

 これを桜に浴びせて一時的に意識を奪った。

 ですが膨大な本数の魔術回路を有し、魔術師としての力量も高い桜、おまけに虚数という概念的干渉を得手とする彼女に、只闇雲に魔力を浴びせても直ぐ様結界を看破される可能性があった。

 なので先ずは肉体的接触で感情を昂らせて魔術を行使する余裕を奪い、とどめに吸血でより直接的に私の魔力を流し込んだ。

 結果は見ての通り、先程までの気炎を上げんばかりのヒステリック少女はもう居ない、これなら確実に一時間は効果を持たせられるだろう。

 

 無惨なボロ布と化した衣服が殆どその意義を為さない程に乱れ、後ろ手の拘束と押し込まれた猿轡が服従を強制させる。

 無理矢理抉じ開けられた口腔から垂れ落ちる唾液が、後悔、焦燥、悲哀、憤怒、羞恥、様々な感情で歪み切った面貌を濡らし、背徳的な欲求を私の内に募らせ、グジュグジュと煮え腐らせる。

 

 ええ、役得ですとも。

 

 

「等と巫山戯ている場合ではありませんね…」

 

 こうして上空に待機している間に考えを纏めた。

 

 桜を抱えて回避する刹那、確かにその真名と(きら)めく刀身、人間達の願いと希望が集約された幻想の一刀を見聞きした。

 エクスカリバー、彼の高名なブリテンの騎士(アーサー)王が振るったとされる、聖剣の頂点。

 となると今回の聖杯戦争におけるセイバーのクラスはアーサー王、そしてセイバーを召喚したのは自身の姉だと桜は確信していた。

 

 ───つまり、先の奇襲は桜の姉とそのサーヴァントによるものだと云う事。

 ───桜の姉は、自身の妹だろうと容赦無く排除しようとする魔術師だと云う事。

 

 

『遠坂凛姉さん、私が世界で一番尊敬してる人』

『あの人ならきっと、最後の瞬間まで私の事を見てくれるから』

 

 

 総身が強張っていく、沸々と沸き上がってくるのは紛れもない憎悪。

 昼間に聞かされた姉への暖かな親愛、全幅の信頼、限り無い憧れ。

 魔術師とは思えない程に人格者である桜の姉、それだけでも私の中での遠坂凛に対する心象は好かった、加えて桜本人の御墨付き、何だかんだ言いつつ上手く同盟は組めるのだろうと楽観していた。

 その結果が、これなのか。

 万能の願望器を手に入れる為なら、所詮姉妹の情等切って捨てられる様なものなのか。

 桜の、この娘の純粋な想いを、踏みにじってまで…!

 

 己の魔性が反応する、今すぐ我が宝具を解放して地に蔓延っている畜生共を塵に還してやりたい衝動に駆られる───が、意識を奪った桜を伴った今の状況で(はや)ってはならない、先ずは桜を安全な場所に退避させなければ。

 ─────報いを与えるのはその後だ。

 

 私はペガサスに指示を出して遠坂邸から離れる。

 もう二度と、何人たりともマスターは傷付けさせない。

 決意を新たに桜を抱く腕に力を込めた。

 

 

          ∵∵∵

 

 

 ライダー達が飛び去ったその場に、タッチの差で羽虫達がやって来た事に憤るライダーが気付く事はなかった。

 

 

          ∵∵∵

 

 

「ああ~…間に合いませんでしたか」

「っ!?」

 

 直ぐ近くの林の中から聞こえた声に私は驚愕する──も、直ぐ様剣を構えて振り返った。

 戦場では一瞬の猶予、油断が勝機となり、また命取りとなるのだから、呆けている場合ではない。

 

「すみませんマスター。使い魔を翔ばして此方の無事を伝え様としたのですが…タッチの差で擦れ違ってしまった様です」

「そうか…でもライダーが健在って事はマスターの桜も無事な筈だ。取り敢えず良かった」

 

 林の陰から歩み出て来たのは純白の長髪を優美に流した女性のサーヴァントと、そのマスターらしき赤毛の少年だ。

 サーヴァントの服装は肌が殆ど露出していない生地が多目のゆったりとしたもの、お世辞にも近接戦闘を行う騎士の装いには見えない。

 アサシンがこんなにも堂々と喋りながら敵の目の前に出てくる等あり得ない、だがマスターと確り会話を成立させている様子からしてバーサーカーでもない、となるとアーチャーかキャスターか。

 

 まぁどちらにせよ問題の無い話だ。

 セイバーは自分、ランサーは昨夜刃を交えた男、クー・フーリン、クラスの重複が起こり得ない聖杯戦争のシステム下において、この時点で目の前のこのサーヴァントが白兵戦最強の二騎の内のどちらかである可能性は皆無。

 であるならば、相手がアーチャーだろうとキャスターだろうとそれ以外のクラスだろうと、この至近距離では私の敵足り得ない、魔力放出を用いて突貫、一刀の下に斬り捨てればそれで片が付く。

 

 だが私は動かなかった。

 彼我の距離が数メートル程しか離れていないと云うのに、目の前で会話をしている二人が欠片も此方を警戒していないのだ。

 どことなくその和んだ雰囲気に気後れするというのもあるが…真の問題は、私の()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という点だ。

 確かに周囲へ無闇に被害を出さない為に、又昨夜心臓を破壊された影響で魔力がまだ完全に回復していなかった為、威力はかなり抑えた。

 それでも真名解放した対城宝具(エクスカリバー)の一撃だ、大抵のサーヴァントならこれを受けて無事でいられる道理は無い。

 ましてや如何なる防御措置も取らせない程に完璧なタイミングでの奇襲だったのだ、無防備に等しい状態でそれを受けて消滅しないどころか無傷なんて事が──

 

 

「あの、すみません。お話、よろしいですか?」

「っ!?」

 

 サーヴァントが、此方に歩み寄りながら話し掛けて来た。

 剰りにも無防備なその様子が逆に不気味に映る、まるで私の剣等恐れるに足りないと云わんばかりに。

 

「…っ!」

「……ぁ~、っと」

 

 警戒心から自然と手に力が籠っていたらしい、カチャリと小さく鳴った剣を前にして、漸く白のサーヴァントは歩みを止めた。

 言葉を選ぶ間を稼ぐ様に、視線を泳がせ手を持て余す。

 

「初めましてセイバーさん。いえ、アーサー王と呼んだ方が良いでしょうか?」

「……セイバーで構いません。何処に敵の目があるか分からない以上、あまり真名を明け透けにされたくはありません」

「そうですか、ではセイバーさん、と」

 

 そう言ってニコリと笑う目の前の女性からは、やはり毛ほども()()を感じない。

 殺意や殺気を隠す事に長けた者は生前数多く見てきたが、敵意まで隠せる者はそう居なかった。

 人間とは日常生活を送る上ですら周囲に対して大なり小なり何かしらの警戒心を抱いているものだ、それが戦場なら尚の事。

 だと云うのにこのサーヴァントにはそれがない。

 何度でも云う、逆に不気味だ、一体何を考えているのかまるで分からない。

 

「先ず一つお聞きしたいのですが、貴女は遠坂凛さんのサーヴァントで間違いないですか?」

「────」

 

 分からない、何を企んでいるのか、どこまで答えてもいいのか。

 いけない、頭を働かせろ、相手の狙いを読め、マスターを護る為にすべき最適解はなんだ──

 

「───衛宮、くん?」

「っ!」

「っ、遠坂」

 

 思わずといった様子で、誰かの名前──恐らく目の前の敵マスターの名前──を溢しながら凛が林の陰から歩み出て来た。

 

 ──────衛宮?

 

 聞き覚えのあるその名前に、思考が一瞬停止した。

 

「遠坂凛さんですね?」

「っ!…そうだけど、何?」

 

 身構えながら敵の問いに正直に答える凛、それに対して笑みを崩さないサーヴァント。

 

「良かった、桜さんの予想はちゃんと当たっていた様ですね」

「ぇ…桜?」

「はい。あ、申し遅れました。私はキャスター、此方の衛宮士郎さんのサーヴァントです。今、貴女の妹の間桐桜さんと同盟を組ませて貰っている者です」

「は、へぇあっ!?ちょ、え、何!どういう事!?桜って……え、まさか……今飛んでいったのって…?」

「あぁ~ははは…はい、そういう事です」

 

 

 サーヴァントの返答を聞き届けた凛はこの世の終わりと云わんばかりの表情になって思いっきり膝を着いた。

 両手も着いて項垂れながら何事か呟くその姿は幽鬼の如く憔悴し切っている。

 

「終わった………桜に嫌われた」

「り、凛!?一体どうし──」

「お、おい!どうしたんだ遠坂!」

「──っ!近寄るなっ!貴様等、我がマスターに一体何を!!」

 

 目の前の、キャスター陣営に対する私の警戒心は最大限にまで高まった。

 ()()()と同じ名を冠する少年、恐らくは息子だろう、それだけで脅威と判断して剰りある。

 私はもう二度と隙は曝さぬと己に誓って、油断無く二人に剣を向けた。

 

「ま、待て!待ってくれ!俺達に敵対の意思は無い!」

「黙れ!問答は無用だ、貴様等のやり口は分かっているぞ()()。今すぐ此処で叩き斬ってくれる」

「?どういう…兎に角だな、今日此処に来たのは桜、さっきキャスターが言ったが、そっちのマスターの妹に提案されたからなんだ。遠坂と同盟を組もうって」

「同盟だと?」

「ああ、重ねて言うが俺達に敵対の意思は無い。頼む、これ以上状況をとっ散らかさない為にも、一先ず話をさせてくれないか」

「………」

 

 両手を挙げて無抵抗の意を示しながらそう話し掛けてくる衛宮。

 その表情は至って真摯なもの、嘘や演技の類いが含まれている気配は感じ取れない…が、やはり油断は出来ない。

 その程度の腹芸やポーカーフェイスが出来る者等生前幾らでも見てきた、ましてや相手は衛宮、全てが相手の掌の上と思って動いた方がまだ利口だ。

 

「えぇ…いいわよ…話を聞こうじゃない」

「っ!凛!」

 

 何時の間に立ち上がっていたのか、未だに憔悴した気配を引き摺りながらゆらりと上体を起こす凛の言葉に、私は思わず顔を顰めてしまった。

 

「いけません凛。この者達の口車に乗っては、どの様な辛酸を舐めさせられるか分かったものではありません」

「あ~っと、セイバー?貴女が何をそこまで警戒してるのか分からないけど、たぶん衛宮君なら大丈夫よ。さっきは驚いたけど…うん、結局それが素なのよねこいつは」

「しかし!」

 

 納得出来ない私は拒否の姿勢を崩すまいと引き続き凛に食って掛かるが、凛のそのどこか呆れたというか色々馬鹿馬鹿しくなったとでも言いたげな表情に、徐々に気勢を削がれてしまう。

 やがて私は徐に剣を下ろした。

 

「………分かりました。ですが、我がマスターを害そうとしたら即座にその首を()ねる」

「ああ、肝に銘じておくよ。ありがとう」

「それじゃー取り敢えず、家来る?」

 

 やはり表裏の無い、その真っ直ぐな感謝の言葉に私は僅かに面食らう。

 だが、何度でも私は己に言い聞かす。

 油断はするな、と。

 昨夜の様な失態は二度と犯さない、(マスター)を護る、その一心を己の中心に置いて私は三人に続いた。




桜「私何時になったら実家に帰れるんですか?」

なんかもう抑止力が遠坂姉妹の仲を引き裂こうとしてるんじゃないかなって(※伏線でもなんでもありません)

桜ちゃんとライダーさんの絡み…あれだよ、直接的な単語での表現はしてないから大丈夫だよ、これよりヤバイ描写の作品もハーメルンにあるし(震え声)

遠坂家の地下通路は独自設定、実際在ってもおかしくはないんじゃないかな?


ライダーさんがエクスカリバーを凌げたのはセイバーさんの調整+魔力不足による威力減衰と、ペガサスの竜種並みの護りのお陰です。それでも割りとボロボロですが。

キャスターちゃんは生前、姉のうっかりのせいで数回死にかけた事があったので万が一に備えて即座に緊急回避出来る手段を用意していました。


いやね、当初は普通に遠坂さん家に着いて普通に同盟結んで姉妹のイチャイチャ書く感じかなーって思ってたんですが、何故かみんな自分で勝手に難易度上げていくんですよ。どうしてこうなった…頼むから同盟組む前に自滅だけはしないでくれよ…。

次回もよろしくお願い致します。



P.S
ついさっき小説情報を編集してたら、評価の際のコメントの必要最低文字数が50文字になってる事に気付きました。そりゃ誰も評価してくれねーわっ!!
執筆開始から約2年間もこの事実に気付かんかったとか…orz
という事で0文字にしときました…これを気にバーに色付くといいな…ウン…。

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