Fate/SAKURA   作:アマデス

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前回の前書きのジョジョネタに誰も乗っかってくれなくて寂しい…_(:3」∠)_

というかもうこの作品二周年ですよ、それでこの進行度合い、泣けてくるね。


14話 愛しくて/護りたくて/殺したくて

 ───最後の魔法陣を刻み終えた。

 

 メドゥーサ(ライダー)は桜の身柄を衛宮邸に安置した後、直ぐ様遠坂邸に蜻蛉返りしてとある()()()を施していた。

 

 他者封印・鮮血神殿(ブラッドフォート・アンドロメダ)

 メドゥーサの魔眼(キュベレイ)を拡大投射する事で形造られ、嘗て『形なき島』に踏み入った者を石にし、その生命を貪り喰ったとされる血の神殿(結界)

 

 施す場所に事前に魔法陣を設置する必要がある為、その場その場で臨機応変に発動させる事が出来ない他、その性質上魔眼と同じで効果範囲内に居る者は縦え味方だろうと容赦無く巻き込んでしまうという、使い所が中々に難しい宝具である。

 

 だがそれは裏を反せば、条件が嵌まった際にはこの上無く凶悪な宝具となる証左でもある。

 結界内ならば何れ程相手との距離が開いていようと効果を持続させられる為、対魔力の低い者なら直接刃を交える迄も無く一方的に()()()()事すら可能としている。

 また一対多の状況に凄まじく打って付けでもあり、相手が何人いようが効果が弱まる等という事が無く、更には結界内の者の生命(魔力)を奪って吸収するという性質故に相手が多ければ多い程大量の魔力を補給しながら戦えるという訳だ。

 そうでなくとも、本来なら使用する際に莫大な魔力を消費するのが常である英霊の宝具において、使用すれば魔力を回復出来(奪い取れ)るという性質は破格だ。

 (たと)え相手が少人数でも全力で()()()()()のならば仕掛けない理由は無い。

 

 

(全力──そう、全力で)

 

 徹底的に、嬲り殺す。

 (主人)がこれ以上傷付かずに済む様に、(少女)がこれ以上過去に囚われる事の無い様に。

 

 (いず)れ座に帰り消えてしまう自分では、桜の()()()()()事は出来ても()()事は出来ない。

 魔術師の闇に囚われ、それを()()()()()()()善しとする、そんな彼女を光差す側へ導く等、()()()()()に出来る筈も無い。

 

 彼女を救えるのは、彼女を魔術師等と云う括りで見ない人間。

 何者でも無い少女を受け入れる、何者でも無い人間。

 神秘()の側に属する自分が、そんな者になれる筈が無い。

 

 だからせめて、彼女がそれと巡り合う迄の露払いをするのが私に出来る最善。

 邪魔な存在には消えて貰う、それを成すのが兵器(サーヴァント)である自らの役目(使命)なのだから。

 

 

「ですので、優しく殺して等あげませんよ。貴女方は、この世の全ての悪に対する見せしめなのですから」

 

 

 惨たらしく死ね。

 完膚無きまでに()ね。

 

 私は溢れ出る怨気を一切抑えず、己の魔性を顕現させた。

 

 

 

 

 

 

 

          ∵∵∵

 

 

 

 

 

 

 

「なっ────に、よ、これ!?」

「───っ!!」

 

 同盟を巡る対話の最中、突如視界が鮮血の如く(くれない)に染まった。

 それと同時に感じたのは此方の身を磨り潰さんばかりの圧力と、それに伴い全身から生気や元気と云った活力が、まるで雑巾から搾られた水の様に抜け落ちる、いっそ解脱(快楽)に感じる程の極まった脱力(不快)感だった。

 マスターである凛は(おろ)か、最上級と言って過言ではない対魔力を持つ私にすらこれ程の影響を与える等、間違いなく宝具級の魔術結界。

 

 

「ぐ…!キャスターっ!何だ…これ…!?」

「ぅ…これは、何等かの宝具を用いた結界ですね。しかも結界内の生者から根刮ぎ生命力を奪う為のとんでもなく物騒な」

「なっ…クソッ、こんな時に敵襲か」

「………いや、でも、この魔力の質は、明らかに…………うわぁ~、どないしましょうこれ」

 

 魔術と云えばキャスター、やはり同盟の話を持ち掛けたのはフェイクでこの状況が真の狙いか。

 そう思って対面の二人を睨み付けるも、彼方(あちら)は彼方で不足の事態に慌てている様子だった、どうやらまんまと此方を嵌めたという訳ではないらしい。

 それに…やはり、私の直感は反応しなかった。

 日常行動下においてもそれなりに働き、有事の際は未来予知レベルで鋭敏化する、これ以上無く頼りになる私のスキル。

 状況的にはかなりグレーだが、確証が無い状態で剣を振るう事は(マスター)を含めて後の無い今の私には出来ない、仕方無く剣を構えて周囲に注意を払うに留まる。

 

「衛宮君、これ貴方達の仕業?」

「んな訳あるか…!見りゃ判るだろ!」

「でしょうね。ごめんごめん、言ってみただけよ。にしても今日は千客万来ね、何時から遠坂(うち)はこんなに人気のレジャースポットになったのかしら」

「まあ霊地(パワースポット)ではありますよね…って呑気な事言ってる場合じゃありませんよ」

 

 余裕が有るのか無いのか、妙に息の合った軽口を叩き合う凛とキャスター。

 とは云え流石に状況が状況、直ぐに(たしな)めると真剣な表情で全員に向かって語りかけ出した。

 

「軽く魔力を()()みましたが、一目瞭然でした。この結界を構成している魔力は、ライダーさん…桜さんのサーヴァントの魔力(もの)です」

「!そんな、何で…」

「───何でって、そんな事も分からないの衛宮君」

 

 

 冷えた声が凛と流れる。

 キャスターの見解を聞いた凛は先程までとはまるで別人の様に()を纏い、表情を一分の隙も無いものに固めた。

 

 それは既知であると共に未知。

 生前にもこの様に平時と有事とでガラリと装いを変える者は多く見てきたが、王としてではなく自身が仕える者となって主のそんな様を仰ぎ見るのは初めての経験だった。

 

 

「要するに桜は、私を完全に敵として見なしたって事でしょ。ま、しょうがないわよね。先制攻撃で宝具ぶちかましたのはこっちだし」

「!まっ…おいっ、遠坂っ」

「残念だけど交渉は決裂ね。賢明だわ、ええ、寧ろ安心したわよ。これでノコノコと同盟結んでくださいなんて言いに来てたら妹と云えど流石に神経疑ってたわ」

 

 その声色は悲しそうに、寂しそうに───だが同時に愉快だとでも言いたげに震えていた。

 沈んではいるが今にも弾けそうな、未知に対する怖いもの見たさの興奮と云った所か。

 単純な言語では表せない、妹に対する混色(まだら)な想いが凛の内に幻視出来た。

 

「待て!待てって!憶測で結論を急ぐなよ!」

 

 だがその(はや)りを衛宮士郎が諌める。

 

「桜が…あの魂が半分は優しさ(バファリン)で出来てる女の子が、こんな事する筈無い!」

「人の妹を頭痛薬扱いしてんじゃないわよっ!!」

 

 

 凛の鋭い突っ込みが飛んだ。

 この空気(シリアスな場面)の中でする喩えでは無いと思った。

 

「…そう、ですね。マスターの比喩は兎も角、私も桜さんが敵対した訳ではないと思います。あの娘の性格からして、同盟を諦めたのだとしてもこんな間髪入れずに反撃する様な事はしない筈ですし。あの半ば鈍臭いと表現しても語弊が無いくらいに慎重な性格の桜さんなら、もっと入念な準備をしてから来る筈です」

「…どいつもこいつも人の妹を何だと思ってんのよ、ったく」

 

 擁護なのかそうじゃないのかイマイチ分からない見解を述べて己のマスターに賛同したキャスターに凛は嘆息する。

 やはりキャスター陣営(この二人)と会話をしていると知らぬ間に緊張感が抜けていってしまう、凛の気迫も若干薄れて普段の様子に戻りかけているのが目に見えて分かる。

 

「兎も角ですね、煽った私が言うのもなんですけど桜さんが自発的にこんな暴挙に出るとは考えにくいんですよ」

「そうだよ、強い憧れは同じくらい強い憎しみに変わる…キャスターの言う通りだと思うけど、人の想いはそんな簡単に切り替わってしまうものじゃない。桜なら尚更だ。きっと何か擦れ違いがあるんだ!」

 

 そんな凛の気配に好機を見出だしたのか、二人は再び捲し立てる。

 結界の与える影響に苦しみながらも只管(ひたすら)真っ直ぐに凛の顔を見据えて言葉を紡ぐ二人。

 そこには、紛れも無い人の心の輝きがあった。

 

 ─────嗚呼、変わらない。

 今も昔も、人の想いの美しさは変わらない。

 

 自らの手の内にある聖剣の重み(人の想いの結晶)を確かに感じながら、私は()()()()()()()()()()()()()()()

 私が護るべきものは、これなのだと。

 

 

「───凛、兎に角今は、この結界を仕掛けた犯人を見付け出しましょう。討ち取るにしろ、撃退するにしろ──或いは誤解を解くにしろ、相手と面と向き合わなければ始まらない」

「っ!セイバー…」

 

 私の言葉の含む所に目敏く気付いたらしく、衛宮士郎は一転表情に喜色を滲ませる。

 ……ぬ、む、ぐ…切嗣(かつてのマスター)とは似ても似つかない純粋さ…この顔に見詰められていると、何とも、こそばゆくなってくる。

 

「…そうね。どっちにしろこれ、このままだと搾り殺されるだけだし。ちゃっちゃと見付け出してとっちめてやりましょう」

 

 私達の意気を汲んでくれたのだろう、苦笑しながら方針を決めた凛に従い、圧し潰されそうな心身を奮い立たせて四人全員が動き出す。

 

 

 

 その数瞬後、屋敷の外で強大な魔力が顕現した。

 

 

「「「「!!?」」」」

 

 再びこの場に居る四人全員に戦慄が走った。

 この膨大な神秘の発露は、まさか───。

 

 急ぎ気配の元を確認する為、私は窓に駆け寄り乱雑にカーテンを取り払う。

 

 

 そこには白亜の星が在った。

 

 冗多さの欠片も無い、乱れ崩れ等とは無縁の(しな)やかな流線形を保つ引き締まった肢体、及び光塵を散らす(おお)きな双翼。

 つい先程も飛び去っていく姿を見た────あれは、天馬(ペガサス)だ。

 

 私を含め、全員が天を駆ける幻想の輩に目を奪われていた。

 当然、黄金の手綱を()りその背に跨がる漆黒も全員が視認していた。

 

「ライダー…!」

 

 黒い女の姿を認めた衛宮士郎が言葉を漏らす。

 最早疑念を差し挟む余地は無い、先程と今の状況から見ても明らか。

 奴がライダー、(マスター)()のサーヴァント。

 

 此方がそこまで思考を纏めたのとほぼ同時に、ライダーを乗せた天馬が動く。

 体の向きを変えて私達に背を向けた。

 

 ?何故背を向ける?この様な大胆な襲撃を行っておきながらまともな交戦もせずに逃げるというのか?

 辻褄が合わない相手の行動に疑問符を浮かべている間に、天馬は空を駆けて大きく旋回すると再び此方に頭を向けた。

 

 

 ─────っ!!

 ランサー戦に続き、己の不明を呪った。

 何故今この時に限って直感も頭もまともに働かなかったのか。

 どう考えてもあれは、突撃の前段階、特攻の準備行動、助走ではないか───!!

 

「凛っ!宝具で迎撃します、魔力を回してください!」

「っ!分かったわ、お願いセイバー!」

 

 風王結界を解除し刀身を晒すと同時に、己の炉心(心臓)に火を点ける。

 

 くそっ、やはりランサーの魔槍によって受けたダメージが未だ回復し切っていない、生み出せる魔力が普段より少なくなっている。

 天馬が更に加速した、恐ろしいスピードで隕石の如く此方に向かって来ている、着弾まで後数秒も無いだろう。

 魔力を充分にチャージする猶予も無い、しかも結界の影響で魔力を吸い取られている。

 今日は既に聖剣を一度解放し、まともに休息すら取っていない凛の魔力も体力も気力も、生命力そのものが心許ない。

 何もかも余裕が無い現状。

 

 ───だからこそ、全霊を尽くす。

 生前(此れ迄)と何等変わらない、余裕なんてものは有った試しが無い───だがそれこそ関係が無い。

 護るべき者が後ろに居る限り、退くという選択肢は無いも同然なのだから。

 

 それにあの時とは確かに違う事がある。

 今私の後ろに居るのは、只々護られるだけの弱者等では断じてない。

 共に歩み、支え、戦ってくれる者。

 対して敵は、たった一騎。

 あの頃と比べて、何と楽な(いくさ)か。

 

約束された(エクス)───」

騎英の(ベルレ)───」

 

 

 さあ、来るがいい蛮行の徒よ。

 その無道、阻んでみせよう。

 

 

「───勝利の剣(カリバー)アアアアアアアアッ!!!」

「───手綱(フォーン)ッッ!!」

 

 

 

 

 極光と流星の激突が、周囲の夜を一時朝に変えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

          ∵∵∵

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『この  に神座を く』

 

『なるほ 、こ な 必 や  にも届   』

 

『こ  、   ツベル の結   て』

 

『奇跡は成 のか』

 

『また、御逢いしま   』

 

『  に見 けたぞ』

 

『我等 宿願に到る、第一  過ぎな のです』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「      ぅ  んん… ぁ、んぇ…?」

 

 ……………?

 ………???

 ぼーっとする。

 目がしぱしぱする。

 私、寝てた…?

 

「……っ!ぃ、つ」

 

 特に何の考えも無く布団から手を出して真上に伸ばしてみた。

 すると全身のあちこちからじんわりと、ヒリヒリとした痛みが広がってきた。

 それに伴いズ~ンと頭蓋を圧迫される様な、気怠さに似た痛みも頭に帯び始めて。

 単なる寝起きの悪さとは明らかに違った不調が身体中を蝕んでいる。

 

「…~~~っ……ぅ~、ぁ~」

 

 伸ばした手をそのまま重力に任せて、両目を覆う様に顔の上に落とした。

 そのまま数秒動かずに居たが体の痛みは当然治まらない。

 今度は痛む頭もとい額に手を持っていってみる。

 特に熱は無い、風邪ではない、痛みは無くならない。

 徐に起き上がって布団から上半身だけを出す。

 中途半端に腰を捻った体勢で体中を(まさぐ)ってみる、余計痛みが増した。

 

 痛い所に手を持っていって触ってしまう、人間の本能的な益の無い行動を続ける事約1分、漸く脳味噌が現状に対する疑問を抱き始めた。

 いや、起きた当初から疑問符は浮かんでいたのだが、それを解消する為の働きを為していなかったという話だ。

 

 

(今の夢……何…?)

 

 でもまだ優先順位を明確に出来る程覚醒してはいなかったらしく。

 目の前の現状(げんじつ)よりも、やけにハッキリ記憶に焼き付いている夢の内容の方に思考が飛んだ。

 

 沢山の人が、話していた。

 沢山の人が、哀しんでいた。

 沢山の人が、希望を託していた。

 沢山の人が、瞳に熱を灯していた。

 

 どこか既視感のある外見の人が大勢。

 でも所々でノイズが掛かっていて。

 確かな事は一つ。

 

(私の記憶じゃない)

 

 それだけは間違いない。

 なのに何故既視感を?

 

 …記憶が混濁している?兎にも角にもスッキリしない、頭の中を靄が覆っている。

 

 

(あれ…?ひょっとしてこれって…)

 

 精神干渉型の魔術乃至(ないし)宝具。

 確かライダー(メドゥーサ)がその手のものを所持していなかったか。

 

 

「─────Anfang(セット) , Es Inneren(声は深く) , Alles niedermähen Nass Einweichen(   闇を払い影に浸し   ) , Alles rund um Wunden des Herzens(   一切の束縛   ) , Mein Behoben(我に還れ)

 

 五小節、精神への悪影響を遮断、安定させる魔術、得意分野である呪文(それ)を紡ぐ。

 

 

 

 ズキリと胸が痛んだ。

 

「─────っ!!!ひっ…」

 

 呪文を唱えた瞬間魔力が廻り、頭の痛みが消えて靄が晴れた。

 晴れてしまった。

 だからこの痛みは頭じゃなく心に負ったもので。

 

「ゃ、嘘、ぁ、だめ…!」

 

 記憶が一気に浮上する(戻ってくる)

 

 光に呑まれた。

 敵の奇襲を受けた。

 ライダーに助けて貰った。

 ライダーに謝った。

 ライダーに酷い事を言ってしまった。

 ライダーに眠らされた。

 

 

 

 

 

 先輩が死んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ先輩が死んだ─────

 

 

 

 

「お゛っ   ぐ、ぶ…う、ううぅぅぅぅぐぅぅぅ~~~…っ!!」

 

 胃液が()り上がってくる。

 両手で思いっきり口を押さえて全力でそれを吐き出すまいと堪えた。

 

 何の意味がある行動なのか、自分でも解らなかった。

 でもそうしないと、ここで()()()()()()()()何もかも全て終わってしまう様な気がして。

 同じ所に戻ってこれなくなる様に感じて。

 

 なのに、涙は止めどなく溢れてきてしまう。

 両手で口を押さえている以上、それらを拭う事も出来ず。

 ボロボロと(たま)の様な雫が尋常じゃない勢いで流れ出して(かわ)濡らし(腐らせ)、とっくにボロ衣になっている服と布団に滴っていく。

 このまま十分もしたら脱水症状で死ねるかな、なんて色んな意味で笑えない馬鹿みたいな感想すら浮かんでくる。

 

 涙が熱い、背中は氷を押し付けられたかの様に冷たい。

 折角の魔術も意味は無かったみたいです、精神の安定なんてまるで図れない、寧ろ悪化する一方。

 

 

(いやだ……もう、いやだよぉ…!)

 

 

 一体、何回目だ。

 後悔を重ねるのは。

 

 お爺様を殺した時。

 雁夜おじさんが死んだ時。

 お父様が死んだ時。

 お母様が死んだ時。

 魔術師である事を放棄しようとした時。

 遠坂に帰ろう(逃げ込もう)とした時。

 先輩が魔術師だと気付いた時。

 

 情けない。

 情けない情けない情けない。

 いっそ死にたい。

 誰かに思いっきり罵倒されたい。

 どうか、愚かに過ぎるこの身に正当な罰を与えてください。

 

 

(でも───駄目なの)

 

 それでも、許されない。

 そんな事は許されない。

 安易に罰を求めて罪を清算しようと、裁きによってこの穢れ切った身に洗礼を受けようと、簡単にこの悲しみ(苦しみ)を切り離そうとしては、いけない。

 

 全部、全部、他ならぬ自分自身の心身で背負い、呑み干し、糧にしていかなければならないもの。

 それが魔術師の在り方。

 それが間桐を継ぐ者の責務。

 全て()()()()()()ならないんだ。

 

 

(だから…お願いだから…止まってぇ…!)

 

 でも残念、()べなるかな、理性のみで暴走する感情は止められない。

 止めようと、背負って立ち上がろうと意識すればする程に悲嘆()は際限無く。

 

 

 先輩が死んだ先輩が死んだ───もう駄目だお終いだ───何がお終いなの───まだ何も終わってなんか───何もって何───だって先輩が───先輩はもう居ない───私のせいで───そう私の責任───だからこそ前を向いて───既に終わってしまった事に心を囚われている暇は───何それ───吐き気がする───薄情にも程がある───所詮そんなものだったの私の先輩に対する想いなんて──────。

 

 

 もう先輩に逢えない先輩の表情が見れない先輩と話せない先輩と触れ合えない先輩と一緒に料理が出来ない先輩と一緒に学校に行けない先輩と先輩の先輩が先輩先輩先輩先輩先輩イヤダ先輩先輩イヤダ先輩イヤダイヤダイヤダイヤダ先輩イヤダ先輩先輩イヤダ先輩イヤダイヤダイヤダ先輩先輩先輩イヤダ先輩イヤダ先輩イヤダ先輩イヤダ先輩イヤダ先輩イヤダ先輩イヤダ先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや────────っっっ!!!!!

 

 

 

「─────   っ    い ぎ、ぐ   ~~~~~   あ゛あ゛っ!!」

 

 

 いよいよ以て呼吸すら覚束無くなってきた。

 両手を口から離して叩き付ける様に地面()に置く。

 項垂れる様な姿勢で荒々しく、だけれど妙に静かに、そんな矛盾した呼吸を繰り返す。

 

 一転、今度は呼吸と共に思考が落ち着いてきた。

 否、落ち着いたと云うよりは止まったという方が適切でした。

 呆然と、頭が空っぽになる。

 エネルギー残量/zero、外から何等かの刺激を受けなければ再起動は不可能。

 でも今この場にそれを期待出来そうなものは何も無く。

 加熱された血流、その熱を奪う冷汗、肺を満たす冬の冷気、それら生命活動の副産物的刺激で少しずつ神経延いては脳髄に活力を促す。

 

「………これから、どうしよう」

 

 思考を言葉にする。

 考えている事を口に出す。

 一人っきりだから意味が無い様にも思えるけど、言霊、験担ぎ、自身を鼓舞するという行為、精神論というものは案外馬鹿に出来ない。

 

 ───そう、一人っきりだ。

 

「ライダー…何処に行ったんだろう」

 

 メドゥーサ。

 強くて優しくて、ちょっと過保護でエッチだけど、その分とても頼りになる、私が召喚した、私のサーヴァント。

 彼女の気配を感じない。

 

「…パスは通ってる」

 

 召喚時から繋がっている魔力供給のラインは未だ途切れていない。

 という事は少なくとも死んで(脱落して)しまった訳ではない、その事に一先ずホッとする。

 でもそうなると別の疑問が頭を(よぎ)る。

 パスが通じているのに居場所が分からない所か気配すら感じられないなんて、彼女は今相当私から離れた遠い所に居るという事だ。

 幾ら単独行動のスキルが有るとは云え…いや、そもそもあの過保護なライダーが意識の無い私を一人放置して何処かに行くなんて事があるだろうか。

 

 

「…やっぱり…嫌われちゃったのかな」

 

 ポツリと、そう溢す。

 

 思ってしまった。

 言葉にしてしまった。

 そうしたら後は堕ちるだけ。

 

 あんな、危機感が足りてない所じゃない、護って貰った癖に、我を忘れて暴走して、罵詈雑言を吐いて、冷静さを失って、足を引っ張って…。

 きっと、見限られてしまったんだ。

 ひょっとしたら、誰か別のマスターと契約し直す為に私から離れて単独行動をしているのかも。

 

 

「ぁぁ……は、ふふ、はっ、はは……」

 

 一つ発見。

 人って失意のどん底に堕ちると、本当に笑えてきてしまうんだ。

 こういう乾いた笑い方、創作物の中だけの表現かと思ってた。

 

 

 頑張ってきた。

 此れ迄、本当に頑張ってきたんですよ。

 家族の為にって。

 その結果がこれか。

 想い人を護れず、使い魔に見限られた、こんなボロボロの惨めな有り様が、()()桜の終着点か。

 お父様の言葉を思い出す。

 お爺様の教えを思い出す。

 

 嗚呼、はは、何やってんだろ私。

 

 

 本当に、何をやっているのよ。

 こんな所で終わる気か?

 それでお前は納得出来るのか?

 

 

「出来る訳、ないじゃないですか…!」

 

 気合一発、先ず自分の頬を叩く、次に床を叩くかの如く手を突いて反動で体を立ち上がらせる。

 腐り切った精神に火を()べて無理矢理にでも暴れさせる。

 

 一回打ちのめされたくらい何だ、無様を晒したくらい何だ────先輩が、死んだくらい…何だ…っ!!

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()じゃないかっ!!

 無様を晒すなんて、今更に過ぎるだろう、此れ迄の人生、何度失敗してきたか。

 これくらいの事で歩みを止める理由にはならない、寧ろ追い詰められたからこそ足掻かなくては。

 

 廊下を抜けた先、居間に併設されている台所に向かう。

 水道で顔を洗い、コップに注いだ水を飲む。

 ちょっとは冷えましたか、私?

 前向きに前向きに、愚直な迄に前進を。

 大雑把にでも今後の方針を決める。

 

 先ずはライダーを見付けて説得しよう。

 謝罪か、それとも逆に説教か、兎にも角にも対話をして、私の下に帰ってきて貰う。

 こんな所で脱落してなんかいられない、サーヴァントが居なければ作れる行動の起点が大幅に制限されてしまうのだから。

 何より、私自身もっとライダーと一緒に居たいんだ。

 彼女を他のマスターなんかに渡して堪るものですか。

 

 そしてライダーと合流したら、もう一度遠坂邸(姉さんの所)に向かう、それで今度こそ同盟を組んで─────そして、先輩の仇を討つ。

 

 

 不意討ちしてきたのが誰かは分からない。

 相手の姿を見た訳じゃないし、ライダーからも敵の正体を聞きそびれてしまった。

 だとしても関係無い、絶対に見付け出してやる。

 私の大切な人達に手を出す輩は、絶対に許さない。

 

 肚の内で昂る熱を敢えて抑える事なく、私は魔術回路を起動させた。

 

 

Anfang(セット) , Es Sensing(我が声に応えよ)

 

 蟲という数の多さを利点とする使い魔を使役している以上、管理が行き届かなくなるというヒューマンエラーが起こる可能性も十二分に有る。

 故に私は魔力ラインを通して相手の位置を把握する術式を開発している。

 無論この魔術の効果が及ぶ相手はサーヴァントとて例外ではない。

 相手が高次元の存在(英霊)だろうと『支配』の(すべ)を研鑽してきた間桐()の手からは逃れられないのです。

 

(ライダー…何処なの…?)

 

 辿る、辿る、ラインを辿る。

 意識の触覚が延びて、飛んで、遥か遠くまで。

 数秒と経たずライダーの居場所を感知した。

 

 

 あれ?でも、此処は?

 

「何で遠坂の屋敷に…」

 

 

 そう、ライダーの魔力の発生源は遠坂邸、さっきまで私が目指していた場所に在った。

 つまり私を先輩の家に放置した後、蜻蛉返りした?何故そんな事を。

 

「先輩を探す為?姉さんに助けを求める為?…いや…でもそれなら私の意識が戻ってからでも良い筈…」

 

 

 何だろう、この焦燥感は。

 酷く嫌な予感がする。

 せめてライダーが遠坂邸で何をしているのか分かれば───あ。

 

「視覚共有すれば良いじゃないですか」

 

 そうだ、念話(テレパシー)と同じくマスターにはサーヴァントとお互いの視覚を共有出来る権利(機能)があった。

 そうでなくとも使い魔と感覚を繋げる魔術を行使すれば。

 いやはや全く、ほんとお馬鹿だなぁ私、こんなマスターとして初歩的な事も忘れてたなんて。

 内心で苦笑しながら早速ライダーと視覚をリンクさせる───

 

 

 

 ───真っ暗だった。

 

 

(え?)

 

 視界一面黒一色、色どころか光源すら無い。

 予想外の事態に一瞬慌てるも───直ぐに思い出した。

 

「眼帯してるんだった…」

 

 そう、ライダーは自らの魔眼を封印する為常に宝具(眼帯)を身に付けている、そんな彼女と視界を共有した所で何も見えないのは当たり前だった。

 そんな事も分からないとは…私ってば本当の本当に馬鹿。

 

 

「……兎に角、行くしかない!」

 

 どの道行動を起こさなければどうにもならない。

 当然というか、残念ながらというか、先輩の家には私の私服なんて置いてない、着替える事もままならずボロボロの薄着のままで私は再び2月の寒空の下へ駆け出した。




桜ちゃんのメンタルはオリハルコン()


そんな感じの今話です。
二つの宝具の激突、遠坂邸の安否や如何に!?(震え声)

ライダーさん、しれっと宝具の真名解放二つ併用してますけど、そういうのって可能なんですかね?もし設定が食い違ってても今更書き直すとか無理ですが…知ってる人は教えてね!

というか意識の無いマスター一人放置して敵を殺しに行くとか愚策以外の何ものでもないよなぁ…既に冷静さなんて言葉とは無縁ですライダーさん。


果たして桜ちゃんは無事みんなと合流してライダーを説き伏せる事が出来るのか、向こうは向こうで桜ちゃんと合流するまでちゃんと生き延びる事が出来るのか、それは作者にも分からない()
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