Fate/SAKURA   作:アマデス

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案の定お気に入り減ったぜちくしょー!
悔しいので連日投稿です。

今回は前回よりマシな筈(震え声)

そろそろ「お前が好きなの士桜じゃなくて凛桜だろ」って言われそう(笑)


22話 エッチな回 後半

 屋敷の一室…もとい俺の自室。

 昨夜とは違う部屋で、昨夜と同じ行為を、俺は再び行おうとしていた。

 

 

「…もぅ、マスター、もっと此方へ寄ってください。じゃないと始められませんよ?」

「あ、ああ、すまんキャスター」

 

 同じ布団の上、俺の目の前で横座りしているキャスターが悪戯っぽい笑みを携えて此方を促す。

 二度目という事もあって昨夜よりは心に余裕がある、一回目はキャスターが本当に後の無い状態だった事や、蟲の毒で身体(本能)を操られた事等の要因が重なって、只管自身の肉欲をぶつけるだけの獣の如きやり方しか出来なかった。

 だが今は昨夜とは違う。

 

「その…昨夜はすまなかった。今日は、ちゃんと優しく出来る様に頑張る」

 

 状況や手段が限定されているが故の仕方の無い処置だとしても、自分を受け入れてくれる女性に一方的に苦痛を強いるなんて事をしてはならない。

 確り人としての理性と愛情を保ち続けなければと、気合いを入れる。

 そんな俺の言葉を聞いたキャスターは、一瞬訳が分からなそうにキョトンとした後、朗らかに笑った。

 

「いえ、昨夜のあれは私が悪いんです。自分が消えたくないばかりに、マスターの心身に干渉してまで強引に事を運んでしまいました。マスターはただ求められたから応じただけ、至らぬ使い魔に魔力を提供したに過ぎません。貴方が罪悪感を感じる道理は何処にもありませんよ」

「っ!馬鹿言うな!キャスターは至らなくなんかない!」

 

 巫山戯た事を口走るキャスターの両肩に、俺は思わず掴みかかってしまった。

 

「マスター」

「お前の何処が至らないって云うんだよっ、お前はこの短い期間で、もう何回も俺達の事を助けてくれたじゃないか。キャスターは凄い、キャスターは何も悪くない、悪いのは───」

 

 

 ───そこまで一気に捲し立てて。

 気付いてしまった。

 俺が掴みかかった事で僅かに着崩れたキャスターの着物。

 

 その下に隠されていた傷に。

 

 俺が急に黙った事、視線を固定した事で悟ったのだろう、キャスターはしまったと云う表情になった。

 

「…キャス、ター。その傷…」

「あ…えーっと、これはですね…」

「───お前まさか、自分の体は治してないのか」

 

 俺の台詞に、キャスターは観念した様に苦笑を浮かべて喋り始めた。

 

「はい…自分の傷を治していたらセイバーさんの治療に回す分の魔力が足りなくなると思ったので…取り敢えず出血を止めて見た目だけ誤魔化しました。なので服で隠れてる部分は殆んど後回しにしてる感じです」

「そ、ん」

「黙っていて申し訳ありませんマスター。傷物の女なんて、気持ち悪くて抱けませんよね。何とか魔力を絞り出して見た目だけは治しますから」

「────」

 

 

 もし可能なら、俺は。

 自分の顔をボッコボコに殴り潰してやりたかった。

 バキンと、音が鳴る。

 奥歯が砕けた様だ。

 

「っ!?ちょ、マスター!」

 

 尋常ではない俺の有様を感じ取ってキャスターが声を上げる、俺を心配する類いの声。

 馬鹿野郎、自分の方がボロボロの癖に何俺の心配なんかしてるんだ、もっと自分を大切にしろ。

 

 ────そんな、自身の無能さを棚に上げてキャスターを責める己の思考にも反吐が出る気分だった。

 

「───すまん、キャスター……本当にっ、すまんっ…!!」

「何を───」

「俺は、とんだ無能だ。半端者の屑野郎だ。キャスターの相棒(マスター)なのに、魔術での掩護どころか碌に魔力を供給してやる事も出来ないっ…!そのせいで、お前に負担を強いてしまっている自分が許せない。俺は、何度もお前に助けられているのに…!」

「……」

「魔力に関する事だけじゃない…俺はお前が戦ってる時も、ライダーやバーサーカーに痛め付けられてる時も、桜の忠告が頭を(よぎ)って動けなかった…駆け寄る事さえ、出来なかった」

「…それは、マスターが桜さんに言われた事を確り理解して実践しているだけです。何もおかしい事じゃ───」

「おかしい事だろっ!!……キャスター、お前は、女なんだぞ。サーヴァントとかどうとか以前に、女の人じゃないか…男の俺が護らなきゃいけないのに、全く以てあべこべなんて、こんな…!」

 

 俺は切嗣に拾われてから、今までの人生一体何をやっていたんだ、肝心な時に役立たずじゃまるで意味なんて無い。

 

「力が無いからとか、弱いからとかそんなの全部都合の良い言い訳だ。いざって時心が動くってのは…本当に大事なものの為なら理屈なんて無視して動ける筈じゃないか……俺は、臆病者だ。女の人を前に立たせて後ろで縮こまってる事しか出来ない卑怯者だ」

 

 口にすればする程、手前(テメー)のちっぽけさに嫌気が差す。

 そんな、懺悔とも言えない、只管弱音、泣き言を垂れ流す情けない(マスター)に。

 

 

「マスター」

 

 

 キャスターは、只抱き締めるという形で応えてくれた。

 

「そんなに自分を卑下しないでください」

 

 優しさ、慈愛が乗っている、安心する声だ。

 

「自身を責める事、省みる事は大切です。けど、必要以上に思い詰めてはいけません。肉体(からだ)精神(こころ)に引っ張られます。()()を繋いだままでは何も出来なくなってしまう」

「…重り」

「ええ。ライダーさんの結界から脱出する時に言った事、覚えてますか?」

「………今を見て、次を考える。忘れずに、捨てていく」

「うん、そうですそうです」

 

 俺がちゃんと覚えていた事が嬉しいのか、キャスターは弾んだ声を上げてニコニコする。

 

「自分の力不足を嘆く、仲間の為に動けなかった自分を責める、女性は大切にしなければという認識…ええ、ええ、全部、全部大切で尊い事です。でも実行出来なかったのなら、それは仕方の無い事。力が足りなかったのなら、どうしようもありません、()()()()()()()()のですもの、どんなに悲観しても元には戻らない…─────ですから、その想いを忘れず、後に実らせる為の糧にしましょう」

「…キャスター」

「後ろを振り向くのも良い、その場に座り込んで休むのだって必要です。でも後戻りするのはいけない、その場で足踏みし続けるのもいけません。何処までもポジティブに、呆れる程前を向いて行きましょう」

 

 そこまで言ってキャスターは俺の肩に手を置き体を離して向き合う形に。

 

 

 

「頑張れ、()()

 

 

 ────それは、無条件に頼りたくなる様な、信じたくなる様な、甘えたくなる様な。

 

 

「………おう」

「ん」

 

 本当に、俺はまだまだ未熟者だけど────せめて、その笑顔を曇らせないくらいの男にはなろうと決意を固めた。

 

 

 

 

「────それじゃ、シましょうか」

「────うん、分かってたけどやっぱ流れた訳じゃなかったんですのうんねえええ」

 

 さらっとそれまでの空気を蹴り飛ばして此方に撓垂(しなだ)れ掛かってきたキャスターの言葉に俺は情けなく呂律を縺れさせた。

 

「流れる訳がないじゃないですか。言ったでしょう?もう本格的に魔力がスッカラカンなんですってば」

「あいやえっと、そういえば傷は治したのか?」

「話をしてる最中にとっくに。ほら、此方はもう準備万端ですよ。女に此処まで言わせておいて、何時まで縮こまってるつもりですか?」

 

 喋るのと並行して着物を着崩してゆくキャスター、その輪郭の内の白が占める割合がどんどん増えていく。

 あ、これ駄目だすいません見栄張ってましたやっぱまだ全然余裕持てないこれヤバイエロイ。

 

「ぉぅぐ、す、すまん」

「…んふふ、これから色々と頑張っていって貰いたいですけど…取り敢えず今は、男を磨いてくださいな」

 

 

 

 ──────そして俺達は褥に臥す。

 

 取り敢えず思ったのは、少なくとも聖杯戦争中に、()()()()()でキャスターに勝てるだけの力を身に付けるのは無理だろうという事でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

          ∵∵∵

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────所変わって、遠坂凛が休んでいる衛宮邸の客間。

 

 

 

「───お待たせしました皆さん」

 

 過剰に昂っていた疼きの()()を何とか終えて、漸く私は皆さんが待つ客間に訪れる事が出来た。

 ほんともー、随分と時間懸けちゃったな、きっと皆さん待ち草臥(くたび)れ、て?

 

「あれ…?先輩とキャスターさんは?」

「私の治療が終わりましたので、一足先に魔力供給作業に入っています」

「ア、ソウナンデスカ」

 

 姉さんの直ぐ傍で正座して控えているセイバーさんの返答に、私は何とも言えない気分になる。

 私がモタモタし過ぎたのか、それともキャスターさんは性欲が強いタイプの人なのか…多分両方ですねこれ。

 

 まあ、ほんの少し予定と違いましたが、それはそれとして置いとけばいい、何の問題も発生しない変更点です。

 さあ、気合いを入れろっ。

 

 

「姉さん」

 

 

 呼び掛ける。

 

 

「っ、さ、桜」

 

 

 呼び返される。

 

 遠坂凛。

 冬木のセカンドオーナーを務める令嬢にして、私と同じ始まりの御三家の当主でもある魔術師、表裏の両方にて強者で在り続ける才女。

 私と同じ世界に生きる人。

 私と同じ血を受け継ぐ人。

 私の原点。

 私の目標。

 私の血縁。

 私の家族。

 私の姉妹。

 私の大切な人。

 私の好きな人。

 私の愛する人。

 

 

 ────────そんな人と、これから、する。

 

 

「お待たせしました…えっと、はい……し、しましょうっ」

 

 布団から上半身だけを起こした姉さんの傍に、ぐいっと大股で近寄って腰を下ろし、膝立ちになって目線を合わせた。

 上手い切り口が分からなくて、中途半端にストレートという矛盾した物言いになってしまった、何とも格好悪い。

 声は変に震えていなかったかとか、上擦っていなかったかとか、自分の事だけで精一杯で姉さんの様子を上手く分析出来ない、ああもう、確り確り!

 

「あっ…と、ね、ねぇ桜?」

「ひゃいっ!!」

「わっ!?ちょ、ひゃいって…」

「ぁ、あわわごめんなさい!吃驚(びっくり)させちゃって」

「いやそんな気にしなくていいわよ…うん、あの、あれ、ライダーはどうなったの?」

 

 あ、そうだ、それを先に報告しないと。

 先輩とキャスターさんが居ないし、取り敢えず簡単に言っておこう。

 

「えっとですね…私から離れて単独行動した理由、姉さん達を襲撃した暴走の理由、諸々聞いて、私もライダーにして欲しい事をお願いして、お互いの本音と本心を全部出し合いました。取り敢えず、和解は出来たと云うか、少なくとももうあんな事しないと思います」

「…ふーん、確かなのね?」

「はい」

 

 此方を見定め、試す様な姉さんの眼。

 それに対し此方も真っ直ぐ見詰め返す。

 もう懸念は要らないと、これ以上姉さんや皆さんを不安にさせない為に。

 

「…そう、ちゃんと手綱を握れたなら結構よ。お疲れ様桜」

 

 そう言って私の事を労ってくれる姉さん。

 …今更ながら、罪悪感が沸々と湧いて来た。

 

「…ごめんなさい、姉さん」

「は?え、ちょ、何、どうしたのよ」

「ライダーの事です。私がもっと確りしてれば、上手くやってれば、こんな大変な事にはならなかったのに」

 

 結局のところ、これです。

 私がもっとライダーと話し合っていれば、お互いを理解出来ていれば…それ以前にもっと慎重に動いて姉さんを刺激しない様にしていればこんなメッチャクチャな有り様にはならなかった筈だ。

 何処まで行っても行き着く結論は、私がなっていなかったという事。

 

「私が甘かったせいで、姉さん達を危険な目に遭わせてしまいました。それこそ、死も十二分に有り得た状況に。自分のせいで、自分の大切な人達を喪う所でした」

 

 頭を下げる。

 

「ごめんなさい。苦しい思いをさせて、ごめんなさい…!」

 

 こんな風に謝った所で許して貰えるとは思わない。

 許して貰おうとも思っていない。

 私は、それだけの事をしてしまった、姉さんを傷付けてしまったのだから。

 

 お父様の、お母様の、おじさんの死を後から知った時。

 私は何も力になれなかった、赴く事も、そもそも事態を把握する事も出来なかった。

 

 お爺様を殺してしまった時。

 自身の力を制御出来ず、大切な人を(いたずら)に傷付けただけ。

 

 嗚呼、改めて、心身が震える。

 私はまた、また…っ!過ちを、犯す所だったんだ。

 

「…やっぱり、私は駄目な娘です。悪い娘です。ほんと、穢くて嫌になっちゃいます……私に、姉さんの妹を名乗る資格なんてあるんでしょうか」

 

 遠過ぎる。

 何時まで経っても遠過ぎる。

 貴女の様な綺麗な人に、私が触れていいのだろうか。

 近付く事すら恐いのに。

 穢れ切った私の一部を、貴女の中に流し、注ぎ込むなんて、そんな冒涜的な事が許され───

 

「あほかい」

「にょ!?つ、あ」

 

 ───思いっきりデコピンされた。

 何とも軽い言葉と共に姉さんは私の言葉を一蹴する。

 

「ね、姉さん」

「あのねぇ桜…貴女は色々と深刻に考え過ぎなのよ。何て言うか、重過ぎ」

「ぉぅふ」

 

 い、言われてしまった。

 先輩やライダーに引き続き、遂に姉さんにまで、何気にショックです。

 

「いいこと桜?これは聖杯戦争なのよ。今この世界に於いて、奇跡の杯を掴む権利を与えられた、たった七人の人間と英霊による仁義無き殺し合い。無傷で済む筈の無い戦いなんだから。負った痛みは全部私の自業自得、私だけの財産(もの)なの。貴女に譲ってなんかあげないんだからね」

 

 ふんっ、と唇を突き出す姉さん。

 その言霊(たましい)に心を奪われる。

 

「仮に何の障害にぶつかる事も無く、ストレート勝ちで手に入れられる様な賞品なんて此方から願い下げよ。()()()()()()()()()()()()()()、私は()()()()()為にこの戦争に参加したんだから。踏ん張って、歯ぁ食い縛って、血反吐吐いて、磨き上げてきたこの魔術()が、超常の闘争に通用するのかどうか見極める。通用しなくたって諦めてなんかやらない、今度こそぎゃふんと言わせる為により高みに登り詰める。何度打ちのめされて叩き潰されようと、その度に立ち上がってやるんだから。足掻いて藻掻いて乗り越えて、負債も丸ごと利益に変えて掻っ攫って、聖杯(ゴール)まで突っ走る」

 

 きゅっと、自分の胸の前で何かを集約させる様に握り拳を作る姉さん。

 要するに、若い内の苦労は買ってでもする…と云うか私の方から掻っ払いに行ってやるから首洗って待ってろとでも云わんばかり。

 

(あくまだなあ)

 

 相変わらずな姉に内心で苦笑する、昔から全然変わっていない。

 そういう所が凄くて、尊敬する。

 ピンチをチャンスに変える、自ら苦難に立ち向かう、諦めずに努力し続ける。

 人が人として生きていく為の正しい行い、そんな正しさを途中で放り出さず当たり前と云わんばかりに全うし続ける…言うは易し、だがそれが出来る人は本当に限られている。

 

 ()()()()()()()()()()()な人。

 こういう人だから、私の尊敬は尽きないんだ。

 

 

「ま、そんな感じ。これが、遠坂凛の生き方なの。闘争(探究)の果てで見付けた幸福(宝石)は根刮ぎぶんどらせて貰うわ。うん、私はこういう容赦の無い人間(魔術師)だから、貴女もそんな変に気を遣う必要無いの。ただでさえ姉妹なのよ?そんな風に気負ってたらこの先の人生色々保たないでしょうに」

「え」

 

 当たり前の様に私を姉妹扱いしてくれた。

 

「何よ?」

「あ、え…私の事、妹って言ってくれるんですか?」

「今更何言ってんの…」

 

 心底呆れたという風な表情になる姉さん

 …うん、まあ確かに今更ですけど。

 

「妹を名乗る資格がどうこうってねぇ…資格も何も血が繋がってるのよ?私達が姉妹だって事実は誰にも消せないし変えられないわ。当人達にだって、ね」

「姉さん…」

「桜、私は貴女の事妹だって思ってるし……た、大切に思ってるからっ。事実としてだけじゃなくて、心からそう思ってるの!自分の中でそう思ってるならそうなの!いい!?いいわよね!?いいって言いなさいっ!」

「いや急にキレないでくださいよ!」

 

 照れ隠しで突発的にヒートアップされても反応に困る、紅くなった顔や吊り上がった目は可愛いと思うけど…そんなに恥ずかしいなら言わなきゃいいのに。

 いや、でも、それは違う、姉さんは自分の恥ずかしい気持ちを押して私に本心を伝えてくれたんだから、文句を言うのは筋違いだ。

 

「っていうかほんとーに今更過ぎでしょ!?私達が実の姉妹だってあっさりカミングアウトしちゃったのは何処の誰よ!?」

「うぐ、それを言われてしまうとあれですが…」

「いきなりクラスメイトにその事聞かれて私がどれだけ焦ったか分かる!?不干渉掲げてる家の当主同士なんだからその辺はキチッとしなさいよ!」

「いや、それはその、あれなんですよ。不干渉とは云ってもお互い先代の当主が亡くなられてその辺りはもう殆んど形骸化してましたし、魔術に関してノータッチなら仲良くしちゃいけない理由も無いと思って…」

 

 ううう、姉さんの睨みが辛い。

 なーに甘ったれた事抜かしてんのこの贅肉はそんなんだから無駄に脂肪が付くのよまあ確かに公に仲良く出来るのは私としても嬉しいけど、的な………あれ?満更でも無さそうですね。

 

「それにほら!姉さんは有名人ですし、カミングアウトしても殆んどの人はそういうネームバリューに目が行きます。敢えて事実(情報)を小出しにして、より目立つものに目を向けさせる…トリックの基本ですね。私なんかに注目したり、()して興味を持つ人はいないでしょうし。ほら!これなら寧ろ逆に神秘の秘匿はバッチリでしょう?」

「桜、あんたもうちょっと自分に向けられる人望を自覚した方がいいわ」

 

 はぁ~と深い溜め息を吐く姉さん。

 ?今何て言われたのかよく聞き取れなかった。

 もう、人と話す時はもっと大きい声で相手の方を向いて言ってくださいよ。

 

(学園のアイドルがセカンドオーナーの家から養子に出されてたなんて思いっきり注目されるに決まってるでしょうが。私が蒔寺さんはじめ新聞部の連中締め上げるのにどれだけ苦労したと思ってんのよ…)

「姉さん?」

「あーうん…兎に角ねぇ桜、前から言おうと思ってたけど何でもかんでも自責に転嫁するのはやめなさい。自分の価値を決められるのは自分だけなんだから。魔術師ならもっと背負うべきものと()ててもいいものの区別を明確にしておきなさい」

 

 そう纏めて姉さんは私にアドバイスを送ってくれた。

 人としての正しさを一切損なっていないのに、魔術師としての冷静さ、冷淡さ、冷血さ、冷酷さで、何処までも公平に物事を取捨選択する。

 矛盾している筈のそれ等を当たり前の様に両立出来る、道理に合わせるのではなく道理を自らの力で己に沿わせる、正しく強者の在り方。

 

 余裕をもって、優雅たれ。

 ナチュラルにフォーマル。

 

 改めて思う、何度でも想う、()()()は凄い。

 

 

 

 

 なのでその凄さを見習ってみる事にしました。

 

 

「それで、ほら、あれよ……わ、私の事を、姉って呼びたいなら、妹を名乗りたいなら、桜の好きに───」

「そうですね、姉さんの言う通り何でも自分のせいにしちゃうのは良くないですよね」

「───ふぉへ?」

 

 間の抜けた声、今のは優雅さ/zeroだった。

 

「ああ、いけないいけない。うっかり忘れてしまう所でしたよ」

「……さ、桜?」

「姉さん、屋敷(ここ)に来る前に言いましたよね。後でお話しましょうって」

 

 

 私のその一言で、姉さんの顔色ががらりと変わった。

 そう、そうですよ。

 姉さんが両立しているのは凄さだけじゃない。

 遠坂家に代々受け継がれている、家訓とは真逆の呪い。

 取り敢えず、うっかりカリバーなんて超弩級のポカをやらかしてくれた文句だけは言わせて貰わないと気が済まない!!!

 

「余裕が無い状況で2体1の構図になりそうだったから不意討ちで宝具ぶち込んでアドバンテージを得る、あわよくば纏めて葬って被害/zeroで勝ちをもぎ取る…ふむふむ成る程、実に鮮やかで合理的な起死回生の一手ですね─────でも普通相手の顔確認してからするもんじゃないんですかそういうのっ!!?」

 

 うがーっと、一気に気勢を盛り上げて吼えたてる、我ながら藤村先生の様だと思った。

 そんな私のタイガー直伝冬木之虎拳を受けた姉さんは一瞬ばつが悪そうな顔で怯むも、直ぐに持ち直して反論して来た。

 

「あ、あれはしょうがないじゃない!あの時は本当に余裕が無くて無意識に焦ってたっていうか、そこまで気が回らなかったっていうか」

「その回らなかった気のせいで此方は殺されかけたんですよ!?しょうがないの一言で片付けられたら堪らないってんですよ!」

「何よ!それを言うならそっちだって気が回ってないじゃない!聖杯戦争は基本全員敵のバトルロワイアルなのよ、コンタクト取りたいなら事前に使い魔の一匹くらい寄越して連絡入れなさいよ!」

「だから事前の確認ならそっちでも出来るじゃないですか!拠点に敵が侵入したのを察知したなら次は正体を確認しようとするものでしょ普通!?姉さんこそ使い魔の一匹くらい寄越して確認取ってくださいよ!」

「だ、だからあの時はマジで焦ってて余裕が無くて───」

 

 

 ───そんな感じで話の内容が二転三転とループした後、言葉では埒が明かないと痺れを切らしたのだろう、遂に姉さんが直接攻撃に出て来た。

 両手で私の頬を引っ張って喋れなくしてくる、反撃に私も姉さんの頬を両手で挟んで思いっきり顔を潰してやった。

 それで怯んだ隙にシュドオッ!と右手でのチョップを脳天に叩き込み、ふらついている上体を空いている左手で軽く押して再び布団の上に倒してやる。

 当たり前と云えば当たり前だが姉さんはまだ全然体力が回復していない様だ、普段と比べて動きが鈍過ぎる。

 これは好機とばかりに私は姉さんに覆い被さってマウントを取るとその無防備な脇に手を突っ込んで指を素早く小刻みに動かし始めた。

 

「ちょひ、ぃぃいいっ!?しゃ、ぁぐら!あんちゃそれこ、らっはっはあ!!」

「ふはははは!迂闊でしたね姉さん!そんなグロッキー状態で直接対決に移行するなんて不用意に過ぎるってぇもんじゃあないですか!?」

「いや何よその喋り口調キャラ定まってな…ああっっひゃはっはははははははは!!!!やめな、ば、がぃ!やーめなさいって桜っ!うお、ひゅぐふぅぅふっふふふははははははは!!じ、じぬっ、ちょ、こきゅうできな…ぐうううはははっはははははは、ぎゃはぎゃははははは!!!駄目っ!顎下ってあんたなんつーポイントを…ぶはっ!足の裏は駄目!足の裏は駄目だから!!!そこは死ぬ!そこは死ぬマジで…あぎゃっはははははははははははははは!!!」

 

 

 

 ───そうして、姉さんを(くすぐ)り続ける事、約十分。

 お互いに体力を使い果たしぐったりと、荒く熱っぽい息をはぁはぁと吐いて布団の上に倒れ込んでいた。

 今朝ライダーともこんな事したっけな…何ともワンパターンな自分自身に苦笑が漏れる。

 

「………満足した?桜…」

「……いいえ、まだまだ全然です。これくらいじゃぜーんぜん埋め合わせにならないんですからね」

「んもぅ、桜って昔っからそうよね。根に持つタイプってやつ?そうやって何時まで経っても引き摺って来る所も重いっていうか」

「もう一戦お望みなら付き合いますよ」

「ごめん!ごめんって!」

 

 私が手をワキワキさせながら微笑みかけると慌てて謝ってきた。

 焦ってる姉さん可愛い。

 

「取り敢えずあの、あれ…キャスターにも言われたけど、今回はどっちもうっかりしてたって事で…過失の割合は50:50(フィフティフィフティ)でいい?」

「むぅ……そうですね。一方的に殺されかけてそれは釈然としませんけど…私の使い魔(ライダー)も随分と皆さんに迷惑かけてしまいましたし。結局の所痛み分けって事でチャラですかね」

「…まぁ最終的に見たら明らかに私が受けた被害だけ飛び抜けてるけどね、家ぶっ壊れちゃったし…………どうしよう」

「……建て直し費用は、折半しましょう」

「言質取ったわよ桜」

 

 一切の感情が抜け落ちた無表情で静かに涙を流されては助け船を渡すしかありませんでした。

 涙目で頬を膨らませながら此方を睨む姉さんの視線に私は小さくなってしまう。

 些細な会話の流れで優勢になったり劣勢になったり、私達姉妹の力関係は不思議なものです。

 

 

「反省、しなくちゃいけませんね、お互いに」

「…そうね。聖杯戦争が始まってから、どーも今一つ優雅に決められないなぁ」

「そうですね~。今日の姉さんは正直格好悪かったです」

「うぐ…ほんと言うようになったわね桜」

「ふふ…ですから、今日はいっぱい休んで、いっぱい反省して、明日からまた頑張ってください。─────格好良いお姉ちゃんで、居てね」

「っ……はいはい」

 

 何処か不機嫌そうにそっぽを向く姉さん、それが照れ隠し故の行動だと判って頬が緩んでしまう。

 分かりきっていた事だけど、こうして話してみてまたまた再確認出来た。

 

 私はお姉ちゃんが大好きだ。

 

 

 

 

「────さて、それじゃこの話は決着が付いたという事で……そろそろ、始めます?」

「…っ……う、うん」

 

 

 結構時間を潰してしまったが、そろそろこの部屋へ訪れた本来の目的を果たそう。

 

 姉さんへ、魔力を供給する。

 

 …供給するのは良いのだが、問題が一つ。

 

 

「ねえ、姉さん。やり方はどうします?」

 

 

 まあ、これです。

 一口に魔力供給と云っても、その方法や種類は中々多岐に渡り、効率や得られる結果にも結構な違いがあるのです。

 

 最もポピュラー(?)なのは性交、または体液の交換。

 先述の通り、魔力とは原初の生命力である為、性交と云う最も原始的で直接的な生命を育む行為によって、特に術式等の下準備を必要とせず魔力を受け渡す事が可能なのです。

 男性の精液はその最たるもので、文字通り魔力の塊、そうでなくても血液や汗、唾液等、体液を交換する事で簡易的に魔力の受け渡しは行える。

 無論直接体を重ねる行為に比べれば効率は劣りますが、それでも一番手軽に行えるのはこれ等なのです。

 …場合によっては全く好意を抱けない相手と肌を重ねる、そういった倫理観や感情を無視して行動出来るというのが前提となりますが。

 

 次に魔力ライン、魔力パスの接続。

 これは文字通りで、魔術を用いた儀式で自分と相手の間に目に見えない通路を繋げ魔力を流通させる…要は聖杯戦争におけるマスターとサーヴァントの関係になる訳です。

 これならば直接体を重ねる必要は無い為…相手と()()()()関係になる事を忌避するのならば此方を選択する方が無難でしょう。

 まあ魔術師という、倫理観を持ち合わせない人でなしがそんな感情を抱くのかは私の知る所ではありませんが。

 ですが無論、先の手段と比べて優れている所も劣っている所もあり。

 繋りを確立している以上、物理的な距離を考慮する必要が無く、魔力が尽きない限りほぼ永続的に供給が行えますが、性交の様に短時間で多量の魔力を渡す事が出来ない、また確り儀式を執り行う必要があるので緊急時には都合が悪い、基本この手の術式は魔力を提供する側が上位になるので相手との信頼関係が必要不可欠等々…正しく一長一短。

 

 他にも魔術師としての力量が低い為そういった儀式が行えない、若しくは緊急時に短時間で魔力を供給し且つラインを繋げる為に上記の二つを併合した、所謂(いわゆる)性儀式によるラインの確立を行ったり、より強固な接続の為に魔術回路、魔術刻印を相手に移植する等、ほんとーに様々な手法がある。

 無論、状況に合わせて使い分けるべきですが…今回は微妙に判断に困る。

 

 

「や、ヤリ方って…」

「取り敢えず屋敷の周辺にはキャスターさんが張ってくださった結界がありますし、セイバーさんも傍に居てくれています。仮に今敵襲があってもある程度余裕を持って対処出来る筈ですから、焦らず、無理せず、ゆっくりと、パスを繋げて継続的に供給する方が無難かと思うんですが…」

「……ぁーやり方ってそういう…」

 

 ?

 またも姉さんが小声で何かを呟いた。

 一先ず気にせず語りを続ける。

 

「でも、今は戦争中です。何時如何なる時も、どんな危機的状況に陥るか分かりません。なので少しでも早く回復する為に…せ、性儀式の方のやり方で効率を高めるのも一考の余地ありなのではないかと…」

 

 ぅぅ…やっぱり意識すると恥ずかしい。

 仕方の無い事とは云え、姉さんに対してこんな内容の提案をしなければならないとは。

 そ、それどころか…告げた事を実行に移さねばならないかもしれないなんて─────。

 

 

「あっ、あの!あのですね!違うんですよ姉さん!別に姉さんとそういう事したいから変な提案してるって訳じゃなくて、ほんと、あの、そういう選択肢もありますよねっていう…あ、いや、別に姉さんと()()のが嫌って言ってる訳でもなくてですね!?寧ろ、仮に姉さんが受け入れてくれるのなら私としても吝かでは無いと云いますでしょうで申し訳でありましてってて!!」

「いやうん分かった!分かったから!落ち着きなさい桜!此方まで恥ずかしくなってくるからお願い!!」

 

 自分でも何を口走っているのか判断がつかない、現状で何が最適な方法か只淡々と計算する思考とはまた別の感情(部分)が暴走して声帯から吐き出されていく。

 そんな私の暴走を止めてくれるのはやはり姉さん、重ね重ね面倒な妹で申し訳無い。

 

 若干紅い顔で姉さんはふぅーと、呼吸を落ち着かせ此方に語りかけてきた。

 

「そうね。桜、貴女の考え方は間違ってないと思うわ。現状どちらを選んでも大差は無いだろうけど、なんたって聖杯戦争だし。警戒し過ぎて損って事は無いと思うわ」

 

 私の意見を冷静に肯定してくれる姉さん。

 そこで一旦言葉が切られる────さあ、どんな判断を────。

 

「だから、まあ、うん。桜の好きな方にしなさいな」

「───え」

 

 返ってきたのは、何とも気軽な丸投げ。

 え、ええ…事此処に及んでそれですか姉さん。

 

「どっちにしろ大差無いんなら、自分がしたい方にすれば良いのよ。───桜、貴女が何を選んだって、私は貴女を否定したりしない。大事な妹のする事なら、私はちゃんと受け入れるから」

 

 

 そう言って、此方に微笑みかけてくれる姉さんの───姉さん、の……。

 

 ぅああ、もう、何を考えているの。

 相手は血の繋がった家族で、同性で────。

 

 ああもう関係あるか、こんな殺し文句告げられて大人しくしてられるか。

 

 私は、この人が、好きなんだ。

 

 

 

 

「───姉さん」

 

 自身の衣服に手をかける。

 なんやかんやでまだ着替えていなかったボロボロの上着一枚を肩から抜き取る、下も外す。

 

 これで、今私が身に付けているのは、下着のみだ。

 

 姉さんは一切体を動かさずに、此方を見詰めるのみ。

 笑うでも怒るでもない、形容し難い真顔。

 私の事を見定める様な、全てを受け入れる様な。

 

 姉さんの服に手をかける。

 ドクリドクリと高鳴る胸の鼓動。

 姉さんは抵抗しない。

 完全に脱力しきっている訳ではない、此方に合わせて、私が脱がせやすい様に動いてくれる。

 やがて全てが露になっていく。

 

 下着姿の姉さん。

 私と同じ白色のそれ。

 綺麗な色白の肌とでは境界線が曖昧だ。

 横座りのまま、恥ずかしげに腕で胸と股間を隠す様なポーズ────ああ、全く、またそんな挑発する様な行為を。

 

 姉さんの両手首を掴んで、体を隠せない様にどかす。

 そのままずいっと体を近付けて、半ば伸し掛かる様に押し倒した。

 

「あっ、ん…」

 

 短く上げられる鳴き声。

 押し倒されて驚いたのだろうか、思わずと云った風だ。

 柔らかい肌とは裏腹に体はガチガチだ、実に分かりやすく緊張している。

 

 安心させる為に口を開いた。

 

 

「大丈夫ですよ姉さん……これ以上は、しませんから。簡易契約で一晩パスを繋げます。肌と肌を密着させている方が少しは効率が良くなりますから。汗の交換も出来ますし、ね…?」

 

 そう、そうだ。

 服を脱いだのはその為、私の体を使って姉さんを癒す為。

 姉さんを襲うつもりは、断じて無い。

 

 

 そう自分に言い聞かせる。

 

 じゃないと今にも本能が理性を喰い破って表に出て来そうだ。

 なんやかんやでまだ刻淫蟲の催淫効果が体から抜け切っていないのです、昂る欲望を純粋に魔力へと変換し、只々作業的に姉さんへ注ぎ込む。

 

 間違ってもそれを姉さんへぶつけるな。

 この愛しい人を己の下劣な肉欲で穢すな、欲情を(ほぐ)す道具に貶めるな。

 

「…?桜?辛そうだけど…」

「っ、大丈夫、です。何も、問題はありません、何も」

 

 心身を戒める事に集中し過ぎて険しい表情になってしまっていたか、姉さんが心配した風に声を掛けてくる。

 問題は無い、本当に何も無い、要するに只私がムラムラしちゃっているというだけの話だ、この恥知らずが。

 

「では、始めます」

 

 片手を姉さんの肩に、もう片方を自分の胸に。

 目を閉じる、己の内から熱源を放出、発露させ姉さんへ注ぐ。

 私は呪文の詠唱を開始した。

 

 

 

 

 

          ∵∵∵

 

 

 

 

 

 約一時間後。

 既に日付が変わってしまった真夜中、布団の中に五体を収めているにも関わらず、私はまだ起きていた。

 

 私の腕の中で姉さんが眠っている。

 

 無防備に晒されるあどけない寝顔、普段はキリッと整えられたその美貌がふにゃりと柔らかく弛緩している様はギャップ効果抜群で。

 窓から差し込む申し訳程度の月明かりしか光源が無い中でも、姉さんの肌は白く映えて美しかった。

 すらりと伸びた、細身ながらも確りと柔らかな肉を備える、艶やかな肢体。

 本来なら不躾な色欲(視線)から身を守る為に纏う衣服は、今は最低限の上下の下着のみ。

 寧ろそうやって秘所を隠されているからこそ余計に情欲を掻き立てられる、逆効果な有り様。

 

 

 嗚呼────────綺麗だ。

 

 溜め息が出るくらい綺麗だ。

 生唾を飲み込みそうなくらい綺麗だ。

 涙が出そうなくらい綺麗だ。

 

 感動。

 文字通り、心を動かされる程の美しさ。

 

 

 もし私が男だったら、血の繋がりとか関係無しでペロリといただいちゃってますよこんなの。

 って、あ~駄目だ、まだ脳みそが色ボケモードだ、一体何時になったら抜け切ってくれるの淫液の効果。

 それともあれか、これが私のデフォルトなのか、中学生男子みたいに常時発情モードなのが私の素なんでしょうか、流石にそれは無いと思いたい。

 

 

「何はともあれ、楽になったみたいで良かった」

 

 未だ現在進行形で昂る本能を抑えながら、そっと姉さんの頭を撫で、髪を梳かす。

 (たなごころ)に込めるは、欲情ではなく愛情。

 

 ラインを繋げて魔力の供給を開始したのと同時に、私は催眠の魔術をラインを通して姉さんにかけ始めた。

 それは極々小規模な効力しか持たず、数十分に渡って絶えず対象へ施し続けなければ碌に効果が出ない程にちっぽけな、効率を度外視したまるで子供の遊びの様な魔術。

 だからこそこう云った戦闘ではなく治療の場に於いて有用な代物。

 小規模故に回路や刻印による自動防御にも引っ掛からず、治療する者とされる者と云う関係上警戒心を抱かれにくいので、下手に相手の精神へ悪影響を及ぼす心配も無い、寧ろ少しずつリラックスさせる事が出来る。

 物の見事にこれにかかってくれた姉さんは心身共に脱力しきって間も無く眠ってしまった、これで明日にはすっかり回復している事でしょう。

 

 姉さんの頭を軽く撫で続ける。

 掌から伝わる滑らかな感触、光の反射で煌めく黒と白のコントラスト。

 

「────…勿体無かったかな」

 

 

 この期に及んでそんな戯れ言を漏らす自分自身に心底呆れ返る。

 …ノーマルの、筈…なんだ、けどなぁ……先程ライダーの告白を受けた時に感じたときめきと云い、私まさか()()()なのか?

 い、いや、違う、違いますから。

 姉さんやライダーが私の中で特別に特別だと云うだけの話だ、誰彼構わず欲情する訳じゃない、刻淫蟲の体液のせいでちょっと色々不安定になったが故の錯覚ですよ錯覚。

 

 んああっ、もういいっ、寝よう。

 今日…あ、もう日付けは変わっちゃってたっけ、昨日はほんと色々有り過ぎて私も疲れましたし、眠っている間にこの疼きも治まるでしょう。

 そう決めた私は、寝る前に最後の仕込みを姉さんに施す。

 

 

 

 プチリ、と。

 

 ビニールが破けた様な軽い音が響く。

 姉さんの頭を撫でている私の掌。

 その皮膚を破って一匹の蟲が這い出て来る。

 直径1cmにも満たない、小さな小さな私の使い魔の一種。

 それは私の掌から姉さんの髪、頬へとチョロチョロしながら移っていき。

 

 やがて姉さんの唇に辿り着く。

 薄く開いたそこへするりと入っていった。

 

 これでよし。

 恨むならどうぞ存分に恨んでくださいな、どんな災難や不幸や不利益が起こっても自業自得と宣ったのは姉さんなんですから。

 まだ正式に同盟を結んでいない()の前で無防備に眠る方が悪いと云う事で。

 

 

 もぞりと、上体を僅かに起こして、私は眠り姫の瞼へ唇を落とした。




そんな感じでエロスを追求した前後編でした。仲の良い姉妹が薄着で添い寝し合っただけだからセーフ(強弁)。

魔力供給の方法論あれこれは原作のPC版やレアルタのあれこれを自分なりにあれこれ解釈して纏めてあれこれしました。あれこれ御意見待ってます。

桜ちゃんが脱ぎ始めた辺りから凛ちゃんが静かになったのは、内心ビビり倒してアクションが起こせなかったからです。全てを受け入れる様な真顔()

瞼へのキス=憧憬



次回から暫く幕間を続けて色々整理しようと思うので、書き溜め期間に入ります。半年程待っていてくれ()。


俺は止まらねえからよ…お前らが評価と感想を送り続ける限り、その先に俺は居るぞ…!

だからよ、止まるんじゃねえぞ…!
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